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農林水産省

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特集1 東日本大震災からの復旧・復興 あれから5年(3)

[PART1]復興のフロントランナー 明日を拓く水産業のプロたち


津波で全壊し、再建中だった宮城県の石巻市水産物地方卸売市場石巻売場が、昨年竣工しました。
世界三大漁場に数えられる三陸にあり、目の前には栄養豊富な北上川の水が流れ込む魚影濃い海─。
「仲間と力を合わせて世界一の魚市場を目指す!」。"復興の一丁目一番地"である新しい魚市場にはプロたちの熱気がみなぎり、街全体を活気づけています。


石巻市水産物地方卸売市場石巻売場


山根睦寛(むつひろ)さん 株式会社山根漁業部の沖帳場。「寒流の親潮と暖流の黒潮がぶつかる三陸にあり、しかも後背地に多くの加工業者があって、確実な需要が見込める。産地市場として最高の立地条件」と石巻の魅力を語る。45歳。須能(すのう)邦雄さん 大手水産会社の北洋サケマス船団長などを経て、2001年に石巻魚市場株式会社代表取締役に就任。敷地面積6万3,445ヘイホウメートルの市場を「人の集う[市]と して賑わいの場、海の文化・魚の文化を伝える拠点にしたい」と話す。72歳。三浦政洋さん 20人の従業員で年間9億7,000万円(2014年度)を売り上げる株式会社三政商店の代表取締役。「ライバルの仲買も市場を一歩出れば頼もしい仲間。力を合わせて石巻を盛り上げていきたい」。50歳。
三浦政洋さん 須能(すのう)邦雄さん 山根睦寛(むつひろ)さん
20人の従業員で年間9億7,000万円(2014年度)を売り上げる株式会社三政商店の代表取締役。「ライバルの仲買も市場を一歩出れば頼もしい仲間。力を合わせて石巻を盛り上げていきたい」。50歳 大手水産会社の北洋サケマス船団長などを経て、2001年に石巻魚市場株式会社代表取締役に就任。敷地面積6万3,445平方メートルの市場を「人の集う"市"と して賑わいの場、海の文化・魚の文化を伝える拠点にしたい」と話す。72歳 株式会社山根漁業部の沖帳場。「寒流の親潮と暖流の黒潮がぶつかる三陸にあり、しかも後背地に多くの加工業者があって、確実な需要が見込める。産地市場として最高の立地条件」と石巻の魅力を語る。45歳

三政商店 石巻魚市場 水揚げのようす


建て替えが終わり、昨年9月に全面供用が始まった宮城県の石巻市水産物地方卸売市場石巻売場の外観は、まるで空港のターミナルのよう。震災前から"東洋一"と称されていた水揚げ棟はさらに拡がり、全長は実に876メートルに達します。何台ものフォークリフトが走り回る内部は、底引き網船や定置網船など、水揚げの形態や魚種ごとにゾーンが分けられ、200種類もの魚を効率的に仕分けられる構造になっています。

地域ブランド「金華さば」の味を届ける技術と心意気
約10万トンの同市場の年間水揚げ量のうち、約4割を占めるのがさばです。そのブランド化を狙い、金華山周辺で獲れた高鮮度で脂のりがいい大型の真さばを「金華さば」として売り出したところ、人気に火がつきました。東京の築地市場では、1尾1万円の値がつくことも。

地域ブランドの価値を支えるのが、関係者たちのプロ意識です。

60名の従業員を擁し、三陸の定置網漁でその名をはせる山根漁業部の山根睦寛さんは「漁業者のやりがいにもつながる金華ブランドを守るため、常に良い物を出しながら、水揚げ高を毎年更新していきたい」と抱負を語ります。

金華さばの選定は、仲卸業者の目利きにすべて任せられています。200社に及ぶ石巻の仲卸業者の中で、トップクラスの鮮魚の取扱量を誇るのが、今年で創業101年を迎える三政商店です。代表取締役の三浦政洋さんは新技術の導入に意欲的で、「都会の消費者に魚本来のおいしさを知ってほしい」と、昨年、超低酸素状態で移送する技術を採り入れました。また、香港の物販施設で働いた経験があるという三浦さん。「将来は流通のノウハウや和食文化をアジアに輸出したい」と言います。

欧米への輸出を視野にHACCP(ハサップ)対応に取り組む
新たな魚市場は、EU(欧州連合)や米国などへの輸出を見据え、国際的な食品衛生管理方式であるHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)の取得を目指しています。施設は鳥獣類やほこりの侵入を防ぐ閉鎖型の構造になっているほか、トラックのタイヤ滅菌自動洗車場を設けるなど、衛生管理を徹底しています。

運営にあたる石巻魚市場代表取締役社長の須能邦雄さんは「あらゆる漁業種がそろう石巻で、高度衛生管理型の産地卸売市場のモデルをつくろうとがんばっている。この素晴らしい器を活かし、港の仲間とともに世界一の市場を目指します」と目を輝かせました。


取材・文/下境敏弘
撮影/島 誠
写真提供/石巻市


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