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日本全国の麺文化をご紹介! ニッポン麺探訪 第6回

水沢うどん[群馬県]




水澤寺の本堂(群馬県渋川市)
水澤寺の本堂(群馬県渋川市)
写真提供/五徳山 水澤観世音


水沢うどん
伊香保の温泉街のほど近く、水澤寺の周辺には水沢うどんを提供する店が軒を連ねており、「水沢うどん街道」と呼ばれている。小麦粉、塩、水沢の水のみで作られた麺は純白でコシが強く、のどごしのよさが楽しめる。


小麦の産地・群馬が誇るご当地うどん
群馬県では江戸時代からうどんを食べる習慣があり、「水沢うどん」「桐生(きりゅう)うどん」「館林(たてばやし)うどん」という"群馬三大ご当地うどん"が古くから存在している。それもそのはず、群馬県は昔から小麦の一大産地で、現在も全国4位の生産量を誇る。年間を通して日照時間が長く、水はけのよい土壌が小麦の栽培に適しており、かつては「農林61号」、近年では「さとのそら」「きぬの波」「つるぴかり」などの品種が栽培されている。

中でも"大御所"と呼べるのが、群馬県渋川市伊香保町水沢周辺に広がる「水沢うどん」だ。飛鳥時代の創建と伝えられている水澤寺(水澤観世音)の門前で、参拝客にうどんを振る舞っていたのがルーツだという。400年以上の歴史があり、今では「水沢うどん商標登録店組合」がブランドの維持・推進に努めている。

水澤寺の門前までは、群馬の名湯・伊香保温泉から車で10分弱。周辺には、組合に加盟する13軒のうどん店が集まっている。観光バスが何台も入る駐車場を備えた大型店舗がずらりと並ぶさまは圧巻で、「"うどんの神様"の勢いに、本尊の十一面千手観音も驚いているのでは?」と思ってしまう。

純白でコシがあり食べごたえも十分
その中の一軒に入ってみた。定番は、冷たい麺を冷たいつけ汁で食べるスタイル。ざるに盛られたつややかな麺は、純白でコシがあり、かみしめれば適度に跳ね返す弾力を備えている。量はやや多めで、食べごたえも十分だ。

「地元の農家さんから分けてもらった小麦を、石臼を使って自家製粉したメニューもあるんですよ」とご主人。さらりとおっしゃるが、そば粉とは違って、小麦粉を自家製粉する店は全国でもめったにない。そうしたこだわりと真剣さは、料理からも伝わってくる。

さらに、水沢うどんのもう一つの特徴は、2種類あるつけ汁だ。上質な昆布とかつお節でだしをひいたしょうゆだれは、爽やかでいて深みも感じられる。そこに香ばしさ漂うすりごまを合わせたごまだれは、まろやかで芳じゅんな味わい。どちらも捨てがたく、迷ってしまうほどの完成度である。でも大丈夫!両方とも一度に楽しめる店舗も多いのだ。


文/はんつ遠藤
1966年生まれ。早稲田大学卒業後、海外旅行雑誌のライターを経てフードジャーナリストに。取材軒数は8500軒を超える。『週刊大衆』「JAL旅プラスなび」「東洋経済オンライン」などで連載中。著書多数。

撮影/原田圭介


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