このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

今月の農林水産大臣賞 vol.9

女性目線で経営を発展! 「木頭(きとう)ゆず」の手作り商品



注文を待つだけだった経営から、商品を売るための努力と創意工夫、積極的に取り組む経営で売上額が約5倍にアップ! その背景には、女性ならではの細やかな目線と心配りがありました。


平成27年度農山漁村女性・シニア活動表彰 農林水産大臣賞 受賞 農山漁村男女共同参画推進協議会では、農林水産業および農山漁村生活ならびに農山漁村の活性化に優れた活動の実績を持ち、男女共同参画の推進または生き生きとした高齢者の活動の推進のために、積極的に活動している経験豊富な女性・高齢者の個人または団体を毎年表彰しています。最優秀者に農林水産大臣賞が贈られます。


写真左から時計回りに、「木頭ゆず すっぱ果汁」540円、「木頭ゆずゼリー」324円、「木頭ゆず なべものにかけるだけ」648円、「木頭ゆず なごみ柚子」378円、「木頭ゆずの手作り柚子みそ」648円、「木頭ゆずとはちみつのジャム」540円(すべて税込み)。
写真左から時計回りに、「木頭ゆず すっぱ果汁」540円、「木頭ゆずゼリー」324円、「木頭ゆず なべものにかけるだけ」648円、「木頭ゆず なごみ柚子」378円、「木頭ゆずの手作り柚子みそ」648円、「木頭ゆずとはちみつのジャム」540円(すべて税込み)。


有限会社柚冬庵(徳島県)榊野瑞恵さん 有限会社柚冬庵(徳島県)
榊野瑞恵さん

1960年生まれ。1981年にゆず農家へ嫁ぎ、1男2女に恵まれる。1995年から義母が経営に携わっていた柚冬庵でアルバイトを始め、2006年に高齢化による経営陣の引退に伴い、代表となって経営を継承した。
所在地/徳島県那賀郡那賀町木頭南宇字ナカバン26
http://yutouan.com/[外部リンク]


木頭ゆずと手作りにこだわる
ふたを開けた瞬間から鮮烈なゆずの香りが漂う果汁、酸味と甘みのなかにゆずのほろ苦さがほどよく感じられるジャム……。すべて徳島県那賀郡那賀町木頭(なかぐんなかちょうきとう)地区で採れた「木頭ゆず」を使った手作り商品です。

「『木頭ゆず』の特徴は爽やかな香りと独特の酸味。その特徴を活かした商品を、お母さんが安心して子どもに食べさせられるように、女性たちが一つ一つ手作業で丁寧に作っています」と、柚冬庵(ゆとうあん)の榊野瑞恵(さかきのみずえ)さん。

剣山(つるぎさん)を主峰に険しい山々が連なる木頭地区は、山林が98パーセントを占め、清流・那賀川とともに自然に恵まれた地。降水量が多く、寒暖の差が大きい気候が、甘みもある香り豊かなゆず栽培に適していることから、全国トップクラスのシェアを誇っています。


徳島県の豊かな自然の中で育まれる「木頭ゆず」。 徳島県の豊かな自然の中で育まれる「木頭ゆず」。
徳島県の豊かな自然の中で育まれる「木頭ゆず」。


女性目線で商品を見直す
1982年にゆずの加工製品化のために立ち上げ、1990年に法人化した柚冬庵。ゆず農家の女性たちが農業の空き時間に注文を受けた商品を製造・販売するという経営スタンスでした。

21歳でゆず農家に嫁いだ榊野さんも、義母が柚冬庵の経営に携わっていたため、一番下の子どもが小学校にあがると同時に、アルバイトとして週に何日か働くようになりました。

「でも、当時はみんな農業がメインで、商売っけはゼロ。900ミリリットルの濃縮ジュースなど、誰がどう使うのだろう?と思うような商品も多く、"売るための努力"を全くしていませんでした」

2006年、高齢化に伴う経営陣の引退で、榊野さんが代表に就任、経営を継承することに。しかし、「引退していく人たちに戻す出資金もないような経営状態でした」。

そこで、まずは売り上げを伸ばそう!と一念奮起した榊野さん。東京など県外へ営業に出向くとともに、バイヤーが集まる展示会にも積極的に参加。同時に、各加工品のレシピも見直して原材料から化学調味料を排除、容量や容器・パッケージのデザインも一新することにしました。「その間の5年間がいちばん大変でした」。

でも、その奮闘のかいあって、継承当時400万円に満たなかった売上額は、なんと2000万円近くに伸びたのです。


木頭ゆずにこだわった製品加工はすべて手作業で行っている。
木頭ゆずにこだわった製品加工はすべて手作業で行っている。
柚冬庵のスタッフの皆さん。みんな明るく元気なお母さんたちばかり。後列左端が代表の榊野瑞恵さん。
柚冬庵のスタッフの皆さん。みんな明るく元気なお母さんたちばかり。後列左端が代表の榊野瑞恵さん。

パッケージングも一つ一つ丁寧に手作業で。
パッケージングも一つ一つ丁寧に手作業で。


女性にも高齢者にも交流の場を
柚冬庵の経営を見事に発展させた榊野さんが次に取り組んだのが、柚冬庵のカフェ部門「くるく」の開設でした。「くるく」とは、木頭地区の言葉で「来るところ」。地域の高齢者が増え、空き家も多くなってきたことから、古民家を再生して、みんなが集まれる憩いの場を作ったら……という発想でした。

2013年にオープンし、今では毎週金曜日に郷土料理のランチを提供したり、高齢者向けのお弁当の配達をしたり、不定期でイベントなども行い、地域内はもちろん、地域外の人たちとの交流の場になっています。

この豊かな発想と経営発展が評価され、柚冬庵は平成27年度農山漁村女性・シニア活動表彰で農林水産大臣賞を受賞しました。

「農家の嫁はずっと姑と一緒で息を抜けない。柚冬庵は、そんな女性たちのストレス発散の場であり、仲間作りの場でもあります。しかも、働いた分だけちゃんとお金がもらえる。子育てしながらでも働きやすい環境は整えたし、売り上げも十分確保できるようになったので、あとはそれを地域にどう還元するか。そのためにもこれからは『くるく』で木頭ゆずを使った料理を、もっと県外の人に提供できるようにしたいと思っています」


古民家を再生した、柚冬庵のカフェ部門「くるく」。室内から見る景色は、まるで一枚の絵のよう。県外から訪れるファンも多い。 古民家を再生した、柚冬庵のカフェ部門「くるく」。室内から見る景色は、まるで一枚の絵のよう。県外から訪れるファンも多い。
古民家を再生した、柚冬庵のカフェ部門「くるく」。室内から見る景色は、まるで一枚の絵のよう。県外から訪れるファンも多い。



取材・文/岸田直子
撮影/野口雅裕


読者アンケートはこちら