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日本全国の麺文化をご紹介! ニッポン麺探訪 第9回

博多うどん[福岡県]




大濠(おおほり)公園上空から博多湾を望む(福岡県福岡市)
大濠(おおほり)公園上空から博多湾を望む(福岡県福岡市)
 


博多うどん
博多といえば豚骨ラーメンが有名だが、「うどん発祥の地」とも言われているこの地では、博多うどんも古くから愛されている。ふわふわしたコシの弱い麺が特徴で、薄口しょうゆベースのかけ汁にごぼう天などをのせて味わうのが定番。


ふんわり・しっとりの柔らか麺が地元の定番
「この柔らかさは一体?」。それが「博多うどん」を初めて頂いたときの感想だった。小麦粉と塩と水で作られているのは同じでも、うどんは土地によってその印象を変える。麺はつくづく奥が深い。

一説によると、博多はうどん誕生の地。福岡市博多区にある承天寺には「饂飩(うどん)蕎麦発祥之地」と刻まれた石碑が建ち、臨済宗の僧・円爾(えんに)(弁円)が宋から製法技術を伝えたと言われている。

創業100年を超える地元でも評判の老舗うどん店を訪ねた。

「うちらはこのやわ麺が好いとうけんねぇ」と隣でうどんをすするおばあさんが言った。博多ではこの柔らかさが定番らしい。もっとも、「伊勢うどん」のように長時間ゆで上げた柔らかさではなく、太めのうどんを少し長くゆでた感じ。だからといってのびているわけではなく、器に「デン!」と居座る麺は、絶妙なタイミングで取り出したふんわり・しっとり加減だ。「前に香川で『讃岐(さぬき)うどん』を食べたときはびっくりしたねぇ。硬すぎて歯が折れるかと思った」とおばあさんが笑う。

甘めのかけ汁にごぼう天をのせて
従来、博多うどんのかけ汁は「すめ」と呼ばれていて、昆布とかつお節などの魚系のだしが優しく効き、薄口しょうゆで仕上げた味わい。少々甘めで一気に飲み干せる。

具も一風変わっていて、定番はごぼう天。薄く短冊切りにしたごぼうに衣をつけて揚げたタイプや、細切りにしてかき揚げにしたタイプなどがあり、そのまま味わっても、汁に浸して次第に深みが増していくのを楽しんでもいい。丸天も名物で、こちらはいわゆるさつま揚げのようなすり身で、丸く平べったい形が特徴だ。

そんな博多うどんだが、最近は柔らかい麺だけではなく、適度な弾力を持った麺を提供するうどん店が増加している。従来の博多うどんと讃岐うどんのちょうど中間のような歯ごたえだ。

また、小麦粉は老舗では輸入小麦を用いるところも多いが、新進の店舗では国産を用いているところも増えてきた。たしかに福岡県筑後平野は、国内有数の小麦の産地である。

そして今、東京でも博多うどんの看板を掲げる店が続々と誕生している。博多うどんが大ブレイクする日も近いかもしれない。


文/はんつ遠藤
1966年生まれ。早稲田大学卒業後、海外旅行雑誌のライターを経てフードジャーナリストに。取材軒数は8500軒を超える。『週刊大衆』「JAL旅プラスなび」「東洋経済オンライン」などで連載中。著書多数。


写真提供/福岡市


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