このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

日本全国の麺文化をご紹介! ニッポン麺探訪 第11回

信州そば[長野県]




善光寺本堂(長野県長野市)
善光寺本堂(長野県長野市)
 


信州そば
そばは日本で古くから食されてきたが、「そば切り」と呼ばれる細長い麺状になったのは江戸時代中期以降で、信州が発祥と言われている。それまでは、そば粉を湯で練って固めた「そばがき」にして食べていたそう。


さすがはそばの本場!のどごしと香りが秀逸
小学生のころ、「牛に引かれて善光寺参り」ということわざを習ってからというもの、僕はなぜか長野県に強い憧れを抱いていた。大人になって長野市の善光寺へ行く機会に恵まれ、その想像を超えたスケールの大きさに驚かされた。

長野県は農業が盛んで、中でも冷涼な気候が育んだそばは全国2位の収穫量を誇り、「信州そば」として広く知られている。その歴史は古く、現在の切り麺タイプのそば(そば切り)のルーツとも言われ、1574年、定勝寺(じゅうしょうじ)仏殿の竣工祝いでそばがふるまわれた記録も残っているそうだ(諸説あり)。

「長野県へ来たなら、そばは外せない!」。そう思って参道沿いの一軒ののれんをくぐった。出てきたもりそばは「九一(くいち)」と呼ばれるタイプで、そば粉90パーセント、小麦粉10パーセントで打ったもの。のどごしはもちろん、そばの香りが秀逸で、さすが本場だとうなった。

「一口に信州そばと言っても、いろいろあるんだよ。そば粉100パーセントの『十割(とわり)そば』、そば粉80パーセントの『二八(にはち)そば』とかね」とご主人。クルミを使ったそばつゆや、"ぼっち盛り"なる独特の盛り方もあるそうだ。

そば大国ならではのバリエーションを楽しむ
ちなみに、長野県信州そば協同組合では、そば粉を40パーセント以上配合した良質の乾しそばを「信州そば」として認定し、商標登録したロゴマークの使用を許可している。長野県は人口約200万人に対してそば店が1000軒以上あると言われる激戦区。それだけの数になると、タイプもさまざまありそうだ。ならば、と教えてもらった上田市にある1軒へ向かった。

早速頂いてみると、今度は麺がモチモチ! しかもかみしめると甘さが伝わってくる。「そばなのにこの食感と味は?」と驚いていると、「そばの実をあらかじめ発芽させているのです」と店主。玄そばを一晩水に浸して発芽させ、それをペースト状にして打つことで、特に甘みが出るのだそう。そんな打ち方があるのか!

県内には「戸隠(とがくし)そば」や「開田(かいだ)そば」など、土地の名前を冠したご当地そばも多く、さすがはそば大国。近年では県内産だけでは間に合わず、全国から取り寄せたそば粉を用いる店もあるほどだ。「長野県に来たらまた食べよう」。そう思いながらそばをたぐった。


文/はんつ遠藤
1966年生まれ。早稲田大学卒業後、海外旅行雑誌のライターを経てフードジャーナリストに。取材軒数は8500軒を超える。『週刊大衆』「JAL旅プラスなび」「東洋経済オンライン」などで連載中。著書多数。

撮影/原田圭介


読者アンケートはこちら