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農林水産省

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味の再発見! 昔ながらのニッポンの郷土料理 第1回

貝柱をたっぷり使い、うまみを楽しむ会津の味
福島県の西側、会津地方。この地を思うと、まず美しい鶴ヶ城が思い出される。城下町として栄えた会津地方は、郷土料理も大きく発展した。その代表的なものが、こづゆ。汁ものと煮ものの中間のような料理で、もともとは武家料理。たっぷりの野菜から出る甘み、そして干し貝柱のうまみが溶け合い、まさにその"つゆ"は絶品だ。味つけはひかえめ、ほんのりしょうゆ味。その上品な味わいに、一度食べてすっかりファンになってしまった。

「人が集まるときに欠かせません。お盆や年末、お祝い事とかね。鍋いっぱいに作らないとおいしくならない。少量じゃ味が決まらないんです」とは地元の人からよく聞かれた声。にんじん、里いも、きくらげ、しらたき、しいたけ、麩が代表的な具材となる。季節によって山菜やたけのこ、ぎんなんなども加わる。

作り方のコツをたずねると、みな口をそろえて「干し貝柱をケチらないこと」と言う。

「ケチるぐらいなら作らないほうがいい。たしかに高いものだけど、干し貝柱用のお金はへそくりしてありますよ」と笑って教えてくれたお母さんもいた。

難しい料理ではない。貝柱のもどし汁で具材を煮て、しょうゆで味つけすれば完成だ。貝柱はひと晩かけてじっくりもどす。材料は大きさをそろえて細かく切ることが多いが、これは家によってもさまざま。郷土料理は家ごとに少々変わるものだ。共通点といえば、うす味であること。これは干し貝柱の香りを生かすためである。

江戸時代、会津地方は北前船から河川を経由して魚介の乾物がもたらされた。干し貝柱しかり、名物料理"にしんの山椒漬け"に使われる身欠きにしんもしかり。船で運ばれる海産物から、昔の人々は遠き海に思いをめぐらせたのではないだろうか。

[写真1]
福島県|こづゆ

[写真2]
鶴ヶ城(福島県会津若松市)

[写真3]
こづゆに欠かせない具のひとつ、豆麩(左)。直径1センチメートルほどの小さなもの。干し貝柱(右)はこの料理の味のベースとなる。前の晩から水に浸けてゆっくり戻すのがポイントだ。

文/白央篤司
フードライター。研究テーマは日本の郷土食と「健康と食」で、月刊誌『栄養と料理』(女子栄養大学出版部)などで執筆。著書に『にっぽんのおにぎり』(理論社)『ジャパめし。』(集英社)などがある。
ブログhttp://hakuoatsushi.hatenablog.com/[外部リンク]

撮影/島 誠 料理制作/三好弥生

特集1 外食

国内外の消費者をひきつける日本の外食。
産業として大きく発展した背景には家の外での食事の価値を追求する人々の努力があります。

暮らしに欠かせないもう一つの食卓

食の外部化の進展と定着が進む

子どものころ、誕生日やお出かけの日にデパートのレストランで食べたお昼の楽しさが忘れられないという方も多いことでしょう。

戦後の食料難を過ぎてもしばらくは非日常的な行事だった外食ですが、それも昔の話。今やすっかり日常の行為となり、家族や友達と気軽に楽しむものとなりました。また生活時間の多様化に合わせて朝ごはんから夜食までさまざまな料理を選べるようになっていますし、一人でも入りやすい構えの店も増えました。外食はもはや「第二の食卓」ともいうべき存在です。

食事の仕方は3つに分類できます。レストランなどへ出かけて食事をする「外食」、家庭内で手作りの料理を食べる「内食」。そして、市販の弁当やそう菜など調理済みの食品を家庭や職場で食べる「中食」です。

外食産業の市場規模は平成9年の29兆702億円をピークに一時期やや減じたものの、近年は復調傾向にあり、平成27年は1人当たりの支出や外国人観光客の増加などもあって前年から2.2パーセント増の25兆1816億円でした。また中食産業はコンビニエンスストアやスーパーのそう菜人気などから右肩上がりに成長をしています。

日本人の飲食料消費の3分の1を占める外食ですが、これに中食の支出を加えた「食の外部化率」は44パーセントとなり、この広義の外食産業の市場は30兆円を超える規模となっています。

消費者のニーズに応えて食材の国産化を推進

外食産業を発展させた原動力として長年にわたって続けられてきた企業努力も見逃せません。

味の追求は当然ながら、接客指導の徹底、安全・安心の重視、健康への配慮、厨房やセントラルキッチンのハイテク化などによる生産性向上などが行われています。また、食材の国産化を進めたり、自社農場を経営したり、生産者を指定したりするなど、こだわりの食材を活かしたメニューを開発する企業も増えています。

時代の波をくぐり、切磋琢磨し、消費者のニーズに応えながら、たくましく成長してきた日本の外食。国際的な評価も高く、訪日外国人が期待することのトップとなっており、海外進出を果たす外食企業も多くなっています。

[写真1]
三越日本橋本店新館5階にあるカフェ&レストラン「ランドマーク」(営業時間:11時~19時半)のショーケース。今も人気のお子様ランチは、昭和5年、三越日本橋本店本館の食堂に「御子様洋食」として登場。当時は、「子どもに夢のある食事を」との願いから、ご飯は富士山をかたどり頂上に"マル越"の旗を立て、コロッケ、ハム、スパゲティ、サンドイッチなどを配していました。

[写真2]
■外食産業の市場規模の推移
出典:(一社)日本フードサービス協会による推計

[写真3]
■外食率と食の外部化比率
出典:(公財)食の安全・安心財団による推計

[用語の説明]
【外食率】
▷食料消費支出に占める外食の割合
【食の外部化率】
▷外食率にそう菜・調理食品の支出割合を加えたもの

取材・文/下境敏弘(P4~9)
撮影/長谷川 朗(P4)

時代に合わせて変化し続けるサービス 外食の50年史

高度経済成長、バブルとその崩壊、消費者の節約志向など時代の波を乗り越えてきた日本の外食の歴史を振り返ってみましょう。

1970年
日本万国博覧会(大阪)・・・「ケンタッキーフライドチキン」が実験出店
ファミリーレストラン1号店オープン…「すかいらーく」(東京・府中)

1971年
ドーナツチェーン1号店オープン
…「ミスタードーナツ」(大阪・箕面)
ハンバーガーチェーン1号店オープン
…「マクドナルド」(東京・銀座)

1974年
コンビニエンスストア1号店オープン
…「セブン─イレブン」(東京・豊洲)

1976年
持ち帰り弁当店1号店オープン
…「ほっかほっか亭」(埼玉・草加)

1977年
ファミレス初の24時間営業店…「デニーズ」(千葉・幸町)
ファストフード初のドライブスルー…「ケンタッキーフライドチキン」(東京・久米川)

1980年
コーヒーチェーン1号店オープン…「ドトールコーヒーショップ」(東京・原宿)

1985年
宅配ピザ1号店オープン…「ドミノ・ピザ」(東京・恵比寿)

1986年
外食市場規模が20兆円を超える

1989年
消費税(3パーセント)導入

1992年
ファミレス「ガスト」で初のドリンクバーがスタート

1994年
初のフードアミューズメントパークがオープン
…「ラーメン博物館」(神奈川・横浜)

1996年
「マクドナルド」が日本の外食チェーン初となる2000号店到達

1997年
消費税5パーセントへ 外食市場規模が29兆円超に

2001年
牛丼チェーン初の1000店舗到達…「�野家」

2007年
回転寿司が5000億円市場に
「ミシュランガイド東京2008」刊行

2008年
リーマン・ショック

2013年
「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録
お一人様、立ち食いスタイルなど新業態が流行
カレーチェーン店舗数でギネス世界記録に認定
…「カレーハウスCoCo壱番屋」

2014年
消費税8パーセントへ

2015年
ミラノ万博(ミラノ国際博覧会)

2016年
訪日外国人観光客数2000万人突破

2020年
東京オリンピック・パラリンピック開催

戦後急成長した日本の外食産業

日本における戦後の飲食店の歴史が語られるとき、「外食元年」とされるのが1970年です。

この年、大阪府で開催された日本万国博覧会で世界各国の料理が披露されました。とりわけ米国の大手外食チェーンが人気を博し、次々と日本上陸を果たします。背景には前年に実施された資本の自由化がありました。すると、国内資本も相次いで外食分野に参入。全国にファミリーレストランやファストフードのチェーンが急速に広がっていきました。同時に多店舗の調理をまとめて行うなど業務の合理化が進み、接客マニュアルの導入によりサービスも向上して、外食は産業としての形を整えていきます。

外食産業は国民の生活水準の向上を追い風に石油ショックを乗り越えて発展を続けます。1980年代のグルメブームでは、エスニック料理やフランス料理、イタリア料理などが客を集めました。また、手ごろな価格や手軽さなどから外食は日常化していきます。

一次産業との連携強化などで新たな付加価値を追求

1990年代に入ると、バブル経済が崩壊して消費が冷え込む中、外食市場の伸びは鈍化します。一方で、簡便化志向の高まりなどから、中食市場は拡大していきます。

この状況に、低価格路線を採る外食企業もある中で、食の質やサービスを見直す企業もありました。2000年代には、食の安全・安心が社会的にも大きなテーマとなり、外食企業は危機管理や食の安全に対し、徹底して取り組み始めました。

また、ブランド化を図る生産者と連携し、食材の産地を表示して付加価値の「見える化」を行うといった取り組みが進んでいます。さらに2009年の農地法改正により農地の賃貸借が自由化されたことから、自ら農場を経営する外食企業も出てきました。

和食の無形文化遺産登録やミラノ国際博覧会で日本館が好評を博すなど、海外からも注目される日本の外食。訪日外国人観光客数は2000万人を突破し、2020年にはオリンピック・パラリンピック東京大会に多くの人が集まります。広がる市場を見据え、生産者と外食企業が連携する中で、外食はさらなる進化を遂げようとしています。

[写真1]
「すかいらーく」1号店となった国立店。

[写真2]
1970年11月に「KFC」第1号店(名西店)が名古屋に開店。

[写真3]
ピザなどの宅配サービスも急速に広がった。

[写真4]
東京版は、欧米以外で初めて出版されたミシュランガイド。
写真:ロイター/アフロ

[写真5]
食をテーマに開催されたミラノ万博。日本館には多くの外国人が訪れた。

取材協力/一般社団法人日本フードサービス協会

国産肉にこだわり続けて145年 生産者から消費者へとつなぐ「柿安本店」の挑戦

国産黒毛和牛にこだわる老舗は「おいしさ、育む。」を企業メッセージに、自社名を冠したブランド牛を育てるなど、生産者との二人三脚で優れた食材を追求し続けています。

農家との共同研究を原点として最高の食材を追求

良質な食材を求めて特定の生産者と連携する外食企業が多くなっています。これを明治時代から続けてきたのが、三重県桑名市に本社を置く株式会社柿安本店です。

果樹園を営み、柿の行商をしていた創業者の赤塚安次郎が桑名で牛鍋の店『柿安』を開いたのは明治4年(1871年)です。

まだ日本人になじみのない牛肉料理をおいしく食べてもらうには良い肉を仕入れる必要があると考えた柿安は、創業当時から生産者との交流を大切にしていたのです。以来、145年にわたり、生産者と共に育てる文化や、肉を見極め扱う技をつちかってきました。

同社は現在、祖業を継ぐレストラン事業を運営するほか、精肉事業でも大手の一角を占めています。

国産黒毛和牛を最高の状態で消費者のもとに届けるため、牛個体管理システムにより牧場から出荷店舗まで一貫管理しています。また、桑名市には国際的な食品衛生管理の手法であるHACCP認定(三重県版)の加工工場を構えています。

さらに食材を扱う企業として選別や加工、調理に関わる職人づくりを重視しています。このため、研修を体制化するとともに各種コンテストの実施により向上心を高揚させ、各自の技量を磨いています。

各地の生産者と交流し優れた国産食材を確保

精肉の大手として松阪牛などのブランドを扱うほか、社名を冠した黒毛和牛のブランド化にも取り組んでいる同社。三重県北勢地域の15の契約牧場で育てた但馬牛系統の未経産雌牛のうち肉質、歩留まりとも最高評価のA5等級の牛を、『柿安牛(かきやすぎゅう)』として、精肉店や料亭で提供しています。 国産食材へのこだわりは牛のほかにも及び、豚については、沖縄県産銘柄豚「あぐ~」から、柿安オリジナルブランド『プレミアムあぐ~』を契約牧場と共同で開発しました。

鶏に関しても、熊本の地鶏として有名な「天草大王」をもとに、熊本県養鶏農業協同組合と飼育方法を開発した『柿安 天草大王』などの取り組みがあります。

肉以外にも九条ねぎであれば、京都府伏見区の名人が育てたもの、米なら島根県奥出雲町産の仁多米(にたまい)など選び抜いた食材を取り入れています。6代目の現社長・赤塚保正さんも田植えや収穫に参加するなど生産者との交流を大切にする伝統を守っています。

事業の新たな柱を求めて外食、中食、内食をカバー

食を扱うノウハウを蓄積しつつ、嗜好の多様化や健康志向といった消費者のニーズの変化、時代の流れを読みながら、柿安本店は常に新たな事業の柱を求めてきました。今ではレストラン・精肉・そう菜・和菓子・食品の5事業を展開するに至っています。

レストラン事業では料亭やビュッフェ、グリルなど業態の多様化を進めています。食品事業では贈答用として人気の牛肉しぐれ煮を生み出し、そう菜事業では百貨店内に専用厨房を設けて調理、販売する「柿安ダイニング」のスタイルを確立するなど、同社は外食、中食、内食のすべてをカバーしながら成長を続けています。

[写真1]
飲食業態の1つ、ビュッフェレストランの「三尺三寸箸」。作りたての和洋中の豊富なメニューから選べる。

[写真2]
契約牧場は自社の衛生基準、管理基準に基づいて設計し、定期的に視察、指導を行う。

[写真3]
祖業を受け継ぎ、すき焼き、しゃぶしゃぶなどを供する柿安料亭本店。

[写真4]
精肉柿安アカデミーでの研修で技術や知識、肉に対しての心構えを学ぶ。

[写真5]
期間限定発売している「松阪牛しぐれ煮」は、パッケージで生産者と使用牛が一目でわかる安全安心な一品。

取材・文/下境敏弘

消費者の関心、健康志向に応える 飲食店の表示の取り組み

消費者による食の安全性への関心や健康志向の高まりにより、外食産業において、原産地やカロリー等の情報を開示する動きが広がっています。

食の安全性を脅かす問題が頻発消費者の関心が高まるように

1980年以降、家計の食料消費支出の3割以上を占めている外食。単身世帯や働く女性の増加などの社会変化もあり、暮らしの中で日常的に利用するものとして定着しています。

そんな中、90年代~2000年代初頭にかけて発生したBSE問題や、2002年に発生した輸入農作物の残留農薬問題、2000年代以降相次ぐ食品偽装問題など、食の安全を脅かす問題が頻発し、消費者が食の安全性に高い関心を寄せるようになりました。とくに外食産業に対し原材料の原産地表示を求める声は強く、農林水産省は2005年に「外食における原産地表示に関するガイドライン」を整備。消費者に対する外食産業への信頼回復を促すよう努めてきました。

大手外食企業の9割が原産地表示を実施

世論の高まりを受け、農林水産省と連携し努力を続けてきた結果、現在では多くの外食企業が店舗メニューやホームページ上で積極的に情報提供を行っています。メニュー数、店舗数とも非常に多いファミリーレストランチェーンや居酒屋チェーンであっても、迅速に正確な情報を顧客に届けるため、グループ全体で表示のルールと体制を整えています。

表示に留まらず、原材料のトレーサビリティや安全基準をより高いレベルで実現している企業もあります。居酒屋「庄や」「日本海庄や」など多くの外食店を持つ庄やグループは、食材の安全性に強いこだわりを持ち、農薬使用量を低減した野菜など食材の独自基準を設定。基準を満たしているかを確認するための検査機関も社内に設置し、結果を公表しています。

カロリーや塩分、アレルゲン表示の努力も

外食産業は近年、カロリーや塩分、7大アレルゲン物質の表示にも力を入れてきました。外食が日常の行動となった今、カロリーや塩分摂取量を制限した食生活を送る消費者に配慮した結果です。アレルゲンについても、子どもを持つ母親たちの要望を受けて開示する企業が増えています。

カーネル像が教えてくれる鶏肉の産地
ケンタッキーフライドチキン(KFC)

カーネル像にかけたボードとレシートへの印字により、主力商品である「オリジナルチキン」の産地を表示。顧客の目に留まりやすい場所での情報公開をしている。

[写真1]
県名までしっかりと表示している。

[写真2]
KFCは125カ国・地域に約2万店舗。国内には1153店舗(4月末現在)を展開。

[写真3]
2007年10月以降、レシートでも鶏肉の産地が確認できる。

[写真4]
KFCホームページでは2003年以降栄養成分表示、アレルゲン表示に対応。2008年以降、主要商品の原産地表示が確認できるようになった。

原料・メニュー変更に応じて正確に情報提供
すかいらーくグループ

BSE問題を受け、肉類の原産地表示を開始。以後、主要食材について表示する方針で、ホームページでは米飯類と肉類の最新情報を確認できるようにしている。

[写真5]
すかいらーくグループは、「ガスト」や「バーミヤン」「ジョナサン」といった多くのファミリーレストランブランドを持つ。

[写真6]
迅速に正しい発信を行うため、情報提供はホームページへ一部切り替え。店舗メニューでは、栄養成分はカロリーと塩分に限定して表示。

食材に独自基準を設け検査体制も完備
庄やグループ

独自基準を設けて安全性に配慮した食材のみを使用。原産地情報や残留農薬検査などさまざまな検査結果はホームページで公開。検査機関が迅速な情報提供のためSNSも運営する。

[写真7]
「庄や」「日本海庄や」「やるき茶屋」など居酒屋を中心に数多くの外食ブランドを持つ庄やグループ。

[写真8]
原材料、検査結果、栄養成分と情報が膨大なため、メニューのQRコードからホームページを参照してもらう仕組み。

外食の原産地表示ガイドラインについて

消費者の方に安心して食事をしてもらうため、農林水産省では外食事業者が自主的に原産地表示を行えるよう「外食の原産地表示ガイドライン」を作成しています。

対象はすべての外食事業者です。外食事業者は、食材が多く、1つの食材からさまざまなメニューを作っているため、創意工夫して原産地をわかりやすく表示しています。表示されている場所は、メニューブックやウインドーサンプルのほかに、ホームページや店内ポスター、卓上メニューなど、店舗の規模や形態によってさまざまです。

[イラスト]
取材・文/千葉貴子イラスト/あべかよこ

日本食ブームを背景に急増 海外に広がる日本の外食

続々と海外に進出し、約9万店舗に達する日本の飲食店。
世界に広がる日本食レストランの今を取材しました。

「和食」が無形文化遺産に登録外国からの注目が高まる

2013年、「ユネスコ無形文化遺産」に、「和食;日本人の伝統的な食文化」が登録されました。これを契機として、国内はもちろんのこと、海外でも「和食」に対する関心がさらに高まっています。

2015年の観光庁による調査では、訪日外国人が訪日前に期待していたこととして、約7割が「日本食を食べること」と回答し1位となっています。また、2014年に行われた日本貿易振興機構による「外国人が好きな外国料理」の調査でも「日本料理」が1位に挙げられています。

海外で増加している日本の飲食店

こうした日本食ブームを受け、近年海外における日本食レストランの数は大幅に増加しています。2013年に約5万5000店だった店舗数は、わずか2年で約1.6倍に。出店数が多いのはアジアですが、世界のどの地域も増加傾向にあることから、日本食が幅広く受け入れられていることがわかります。

海外進出している日本食のジャンルは多岐にわたります。「寿司」はもちろん、40年以上も前にアメリカで初出店し各地で展開する「牛丼」、近年欧米で好調の「ラーメン」、アジアでは「うどん」や「カレー」「居酒屋」も人気を博しています。このように、日本食と言ってもその内容はさまざま。多様性に富んだ日本食だからこそ、世界中で愛されているともいえるでしょう。さらにどの日本食レストランでも共通していえるのは、質の高い料理と効率的な運営を両立していることです。長年日本国内の高い要求に応え続けてきた日本の外食産業。海外での躍進は今後も続いていきそうです。

[写真1]
海外に出店した日本の飲食店数
2013年から2015年で1.6倍の88,703店

数字は2015年時点、伸び率は2013年時点との比較
出典:外務省調べ、農林水産省推計

今、日本のラーメンが海外で大人気

ラーメンも日本酒も日本の食文化を世界へ発信
一風堂

出店:アメリカ、シンガポール、香港、オーストラリア、台湾、中国、マレーシア、タイ、フィリピン、インドネシア、イギリス、フランス、ミャンマー
海外出店数:63店
海外初出店:2008年

[写真2]
洗練された空間で日本酒や一品料理も楽しめる「ラーメンダイニング」として出店、会食やデートでも使われるポジションを確立。ラーメンは現地の嗜好に合わせつつも、食後の印象は日本と変わらないよう工夫している。

まろやかな豚骨白湯スープ。海外でも手作りの味を提供
らーめん山頭火

出店:アメリカ、カナダ、香港、台湾、シンガポール、マレーシア、タイ、フィリピン
海外出店数:37店
海外初出店:2003年

[写真3]
「日本人がおいしいと思うものでなければ海外でも受け入れられない」と考え、日本の店舗と同じように、各店舗で約16~20時間かけて豚骨スープを作り、日本流のサービスを提供している。

お取り寄せサイトから発展し「お店と変わらない」8店の味を提供
Ramen Gallery Takumen ラーメンギャラリー 宅麺

出店:シンガポール
海外出店数:3店
海外初出店:2014年

[写真4]
日本の名店8店舗の味を再現し提供する。一方で、現地の方向けに、たれの量を減らしたスープも用意。基本的に魚介系のだしは日本産、たれに使うしょうゆやみそ等もすべて日本から輸入して使用している。

タイで圧倒的人気を誇る。野菜たっぷりのラーメンを手ごろな価格で
8番らーめん

出店:タイ、香港
海外出店数:122店
海外初出店:1992年

[写真5]
バンコクに初出店して以来、タイで115店舗まで拡大。食材の多くを現地調達し、手ごろな価格で野菜たっぷりのラーメンを提供している。タイ独自メニューのトムヤムクンらーめんは現地で一番の人気となっている。

日本発のカレーやうどんも好評

各国文化と融合させながら打ちたてゆでたての味を
丸亀製麺

出店:カンボジア、ベトナム、オーストラリア、台湾、インドネシア、ロシア、香港、韓国、中国、タイ、ハワイ
海外出店数:190店
海外初出店:2011年

[写真6]
日本国内と同様に、海外でもゆでたてにこだわり、注文を受けてから客の目の前でうどんをゆでる方式を貫く。一方で、各国の文化に合わせて各国独自のメニューや薬味を展開、好評を博している。

日本のカレーライスが世界へ日本式の接客も躍進を後押し
カレーハウスCoCo壱番屋

出店:ハワイ、中国、台湾、韓国、タイ、香港、アメリカ、シンガポール、インドネシア、マレーシア、フィリピン
海外出店数:160店
海外初出店:1994年

[写真7]
どの国でも共通して心がけていることは、「ニコニコ・キビキビ・ハキハキ」。その接客と日本のカレーの味わいが各国に受け入れられ、続々と海外店舗をオープン、躍進を続けている。

取材・文/千葉貴子

特集2 駅弁

日本を代表する食文化である駅弁。歴史ある伝統の味から、地域の食材を活かした新しいものまで、全国各地の駅弁を集めました。

旅先での楽しみから自宅での夕食代わりにも

駅弁の起源は古く、一説には明治18年、宇都宮駅で売り出された、おにぎりとたくあんのセットが最初といわれています。

明治22年には、歌舞伎の芝居小屋で売られていた幕の内弁当を原型に、幕の内駅弁が姫路駅で販売され、全国に広まりました。

もともとは列車内で食べるためにホームなどで売られていた駅弁ですが、現在では持ち帰って自宅で食べるスタイルでも人気。日本鉄道構内営業中央会の沼本忠次さんによると、百貨店などの催事や、地域イベントでの販売も増えているそうです。

「容器や具材に工夫を凝らし、汁がこぼれないようにするなど、各メーカーは持ち帰りニーズにも対応する駅弁を作っています」

[写真1]
三宝めし
北海道 稚内駅(宗谷本線)
北海道を代表する、うに、かに、イクラのセット。ご飯は、それぞれの具材に合うように味つけを変えている。
1,150円/稚内駅立売

[写真2]
たらば寿し
北海道 釧路駅(根室本線)
たらばがにの棒肉とフレーク、イクラのしょうゆ漬け、サーモンの入ったすし弁当。港町、釧路ならではの海の幸が味わえる。
1,480円/釧祥館

[写真3]
元祖森名物いかめし
北海道 森駅(函館本線)
生いかの胴に生米を詰め、火力の強い3連ガスバーナーでボイル。いかから出るうまみと甘辛いたれの相性が抜群。
650円/いかめし阿部商店

[写真4]
八戸小唄寿司
青森県 八戸駅(東北新幹線)
昭和36年発売のロングセラー。八戸近海産のさばと紅鮭の押しずし。三味線をイメージした"ばち"で、好みの大きさに切って食べる。
1,150円/吉田屋

[写真5]
仙台名物牛たん弁当
宮城県 仙台駅(東北新幹線)
厚切りの牛タンは、食べごたえ十分。添え物は厚焼き卵、山くらげなど。ご飯には、宮城県産の環境保全米「ひとめぼれ」を使用。
1,350円/こばやし

[写真6]
牛肉どまん中
山形県 米沢駅(奥羽本線)
山形県産米「どまんなか」の上に、甘辛しょうゆだれの牛肉煮と牛そぼろを敷き詰めている。山形新幹線開業に合わせて開発された。
1,250円/新杵屋

[写真7]
峠の釜めし
群馬県 横川駅(信越本線)
だしの効いたご飯を益子焼の器に収めた、温かい釜飯。具材はタレをからめた国産若どり、栗、ごぼう、あんず、うずらの卵など。
1,000円/荻野屋

[写真8]
だるま弁当
群馬県 高崎駅(高崎線)
だるまを開くと、中には山の幸がたっぷり。高崎の開運だるまをモチーフにした容器は、食後に貯金箱として再利用できる。
1,000円/高崎弁当

[写真9]
漁(あさ)り
千葉県 千葉駅(総武本線)
あさりのだし汁で炊いたご飯の上に、しょうがの効いた煮あさりをどっさりとのせてある。貝好きにはたまらない一品。
1,150円/万葉軒

[写真10]
深川めし
東京都 東京駅(東海道新幹線)
農山漁村の郷土料理百選にも選ばれたあさりご飯「深川飯」に、あなごも加えた漁師風の弁当。江戸っ子に愛されてきた粋な味。
900円/NRE大増

[写真11]
シウマイ弁当
神奈川県 横浜駅(東海道本線)
冷めてもおいしいひと口サイズのシウマイは発売以来、変わらない。おかずのたけのこ煮や、小梅をのせた俵形ご飯も人気。
830円/崎陽軒

[写真12]
鯛めし
神奈川県 小田原駅(東海道新幹線)
手もみ仕上げの鯛おぼろは、ほんのりとした甘さ。香ばしいしょうゆ味のご飯とのバランスは絶妙。スプーン付きで、食べやすい。
830円/東華軒

[写真13]
もち豚まいたけ弁当
新潟県 新潟駅(信越本線)
越後もち豚を使った角煮や肉団子、そぼろのほか、雪国まいたけもプラス。ご飯もコシヒカリで、新潟県の特産品づくしの駅弁。
1,080円/神尾商事

[写真14]
ますのすし(一重)
富山県 富山駅(北陸新幹線)
明治45年の発売。今や富山の代表食に。ほどよい脂のますと県内産の酢飯を合わせ、国産の笹の葉で香りと彩りを与えている。
1,400円/源

[写真15]
元気甲斐(げんきかい)
山梨県 小淵沢駅(中央本線)
昭和60年、テレビ番組の企画から生まれた二段の折り詰め。上段は京都、下段は東京の料亭が開発に協力。東西の味比べが楽しい。
1,600円/丸政

[コラム1]
容器も食べ方も楽しい駅弁
駅弁は楽しみ方も様々です。「だるま弁当」や「アンパンマン弁当」などコレクションしたくなる容器はたくさんあります。「ますのすし」の容器も立派で、自宅での押しずしづくりにも使えそう。また、「シウマイ弁当」のように食べ方が話題になるものも。5個のシューマイと8等分になった俵形のご飯をどうバランスよく食べるかといったことで、家族で盛り上がってみてはいかがでしょう。

価格は税込み価格です。

取材・文/Office彩蔵
取材協力/( 一 社)日本鉄道構内営業中央会

[写真1]
山賊焼(さんぞくやき)
長野県 松本駅(篠ノ井線)
とり肉を豪快に揚げた「山賊焼」は、松本市のご当地グルメとして有名。副菜に信州のわさび漬けやまいたけの煮物など。
760円/イイダヤ軒

[写真2]
炙りのどぐろ棒寿し
石川県 加賀温泉駅(北陸本線)
のどぐろという呼び名で知られる高級魚あかむつを使用。"白身のトロ"といわれるほど脂の乗った切り身をあぶった押しずし。
1,600円/髙野商店

[写真3]
加賀白山おったから弁当
石川県 金沢駅(北陸本線)
郷土料理の治部煮、なめこそばの実あえなどの詰め合わせ。器には伝統工芸の九谷焼、箸に山中塗を用いた郷土色あふれる弁当。
1,600円/髙野商店

[写真4]
荘兵衛(そうべえ)さんの焼きさばずし
福井県 敦賀駅(北陸本線)
敦賀駅はもとより全国の駅弁大会でも有名。焼いた真さばは、外はパリパリで、中はジューシー。隠し味のしょうがで、後味もサッパリ。
1,080円/塩荘

[写真5]
浜松三ヶ日牛&遠州しらす弁当
静岡県 浜松駅(東海道新幹線)
甘みのある脂ときめ細かい肉質で定評がある浜松のブランド牛・三ヶ日牛と、磯の香り豊かな遠州灘のしらすの両方を堪能できる。
1,030円/自笑亭

[写真6]
松浦のみそカツ
愛知県 名古屋駅(東海道新幹線)
風味豊かな八丁味噌が、やわらかな熟成ロース肉のカツを引き立てる。八丁味噌には地元岡崎産のものを使用。
980円/松浦商店

[写真7]
だし巻きと穴子のお弁当
京都府 京都駅(東海道新幹線)
独自製法で味わい深く煮詰めたあなごに、甘さ控えめで上品な京風だし巻き卵を併せて。ちりめんざんしょうを効かせたご飯も美味。
1,050円/淡路屋

[写真8]
旅のにぎわい御膳
大阪府 新大阪駅(東海道・山陽新幹線)
大阪のソウルフードといってもよいたこ焼き、串カツをはじめ、人気の食材がたくさん。ご飯も赤飯としょうゆ飯の2種類。
1,000円/淡路屋

[写真9]
旨い!たこめし
兵庫県 姫路駅(山陽新幹線)
真だこを大根で叩いたあと、さらに両方を一緒に煮ることで、とてもやわらかく仕上げてある。たこの煮汁で炊いたごぼうも入っている。
1,000円/まねき食品

[写真10]
元祖かに寿し
鳥取県 鳥取駅(山陰本線)
半世紀を超えるロングセラー弁当。地元で水揚げしたかににこだわる。八角形の容器はかにの甲羅をイメージしたもの。
1,080円/アベ鳥取堂

[写真11]
島根牛すき焼き煮切り丼
島根県 松江駅(山陰本線)
うまみが凝縮するまで煮詰めた島根牛のすき焼き。すっぽん出汁、「まつえ蜂蜜」を加えた別容器の「煮切り汁」をかけて食べる。
1,200円/一文字家

[写真12]
桃太郎の祭ずし
岡山県 岡山駅(山陽本線)
江戸時代から続く地元の祭り料理を駅弁に。桃太郎にちなみ、桃をかたどったピンク色の容器も特徴的なちらしずし。
1,000円/三好野本店

[写真13]
夫婦あなごめし
広島県 広島駅(山陽本線)
たれの甘みが染みたしょうゆ飯の上には、仲のいい夫婦のように2本並んだあなごが。あなごの骨せんべいも付いている。
1,150円/広島駅弁当

[写真14]
げんき100ばい!アンパンマン弁当
香川県 高松駅(予讃線)
子どもが大好きな食材がいっぱい。アンパンマンの顔がデザインされたふたを開けると、中のご飯にもアンパンマンが。
1,300円/ステーションクリエイト東四国

[写真15]
瀬戸の押寿司
愛媛県 今治駅(予讃線)
瀬戸内海、来島海峡の潮流で身の締まった鯛を押しずしに。透き通るような鯛の白身の美しさと、笹の葉の香りが食欲を刺激する。
1,350円/二葉

[写真16]
かしわめし
佐賀県 鳥栖駅(鹿児島本線)
大正2年発売の伝統ある駅弁。かしわ肉とガラを長時間煮込んだスープで炊いたご飯に、錦糸卵、かしわ肉、刻みのりがのせてある。
700円/中央軒

[写真17]
黒豚横丁
鹿児島県 鹿児島中央駅(鹿児島本線)
黒豚とんこつ、黒豚とんかつ、黒豚炭火焼の3種を揃えた黒豚づくしの弁当。原材料の豚肉はブランド「かごしま黒豚」のみを使用。
1,080円/松栄軒

[コラム1]
駅弁マークって何?
駅弁の掛け紙や容器に印刷されている「駅弁マーク」は、駅弁の由来ともいわれる歌舞伎の幕の内弁当をイメージしたもの。歌舞伎の勘亭流の字体を使用し、日本の食文化を世界に発信する意味もこめて、ローマ字も併記してあります。日本鉄道構内営業中央会が昭和63年に制定した登録商標。同会加盟企業が製造・販売するものに使用できます。

[コラム2]
電子レンジでの温めに注意!
冷めた状態でおいしく食べられるように作られているのが、駅弁の特徴。そのため、電子レンジで温めることを想定していない駅弁が多いので、注意が必要です。ポリスチレン(PS)製の容器は、一般的には電子レンジは不可です。包装紙の注意書きなどをよく読みましょう。また、峠の釜めしのように、電子レンジでの温め方をホームページで案内している駅弁もあります。

価格は税込み価格です。

取材・文/Office彩蔵
取材協力/( 一 社)日本鉄道構内営業中央会

輝く! 未来を担う生産者 vol.1

近藤スワインポーク(有限会社近藤スワインビジネス)/群馬県
子どもにも安心な豚肉と加工品を

自分たちの子どもを授かったときから、より強くなった安心安全な"食"への思い。
父母の視点から取り組む自社豚肉の無添加加工食品に、子育て世代を中心としたファンが増えています!

上質の豚肉で作った無添加のソーセージ

群馬県前橋市、赤城山の南麓にある近藤スワインポーク。自社の豚肉を使った無添加のソーセージと精肉を販売しています。営んでいるのは、ともに30代の近藤さん夫妻。小学校3年生の長女を頭に、3女の子育て真っただ中のパパ&ママでもあります。

社長の崇幸(たかゆき)さんは養豚農家の2代目。水や餌にこだわって豚を育てていました。でも、当時は食肉卸売市場へ出荷するだけ。

自分が育てた豚を、誰がどう食べてくれているのかわからない。もっと消費者の近くで販売できないか――。そう考え続けていたとき、長女の芽依(めい)ちゃんが誕生。妻の久美さんが離乳食を始めるにあたりいろいろ調べたところ、肉の加工品は添加物が多いことを知りました。そして、着色料や化学調味料などの添加物を使用していないソーセージは高価で、子育て世代が手軽に購入できない現実と直面したのです。

「安心して子どもに食べさせられる無添加のソーセージをうちの豚肉で作って、購入しやすい価格で販売したら?」。まさに、消費者目線の久美さんの提案で、近藤スワインポークは6次産業化をスタート。2014年のことです。

イベント出店で広がる口コミとネットワーク

少量でも無添加で作ってくれる工場に製造を依頼し、生まれた加工品はソーセージ4種類とベーコン。近隣の道の駅やインターネットで販売しています。

前橋市が地元産の高品質の食品を認定する「赤城の恵ブランド認証品」に選ばれたことから、前橋や高崎のレストランで使われるなど評価もどんどん上がっています。

「イベントにも積極的に参加しています。お客さんの声をじかに聞けるのはもちろん、食の安心安全や6次産業化に関する情報を出店者同士で交換できる機会でもあるからです」

おいしい野菜を作っている農家と知り合い、ソーセージ作りの参考にしたり、販売方法を教えてもらうことも。また、昨年5月から自宅の一角で始めた直売所も、近くでチーズの製造・販売を行っている仲間からヒントを得ました。

「玄関先などの小さいスペースでも大丈夫なんだ、と気づかされたんです」

営業しているのは火曜日と金曜日。久美さんが店頭に立ちます。

人にも豚にも環境にもやさしく

「親父の代では考えもしなかったこと」を、柔軟な発想と行動力で次々に実現してきた近藤さん夫妻。もともと好きなアーティストが一緒で、2人で行った環境問題をテーマにした野外フェスティバルをきっかけに、農場の電気に太陽光発電を利用することに。豚の糞尿から出る臭気対策には脱臭層「ファイバーボール」を導入するなど、「人にやさしく、豚にやさしく、環境にやさしく」をモットーに事業展開しています。

子どもを育てる身になって、改めて実感した命の尊さと重みが、2人の原動力になっているようです。「この5月からは、塩だけを使って1年半熟成させた生ハムも販売します」と崇幸さんが言えば、「夏季限定の生バジルソーセージの販売も間近です」と久美さん。仲良し一家の未来は、明るく、果てしなく広がっています。

[写真1]
「豚肉、大好き!」という次女・瑠菜(るな)ちゃん、三女・寧音(ねね)ちゃんと近藤さん夫妻。肥育舎の前で。

[写真2]
ポリフェノールやミネラル、乳酸菌が豊富な特製配合飼料と天然水や新鮮なホエー(乳から乳脂肪などを取り除いたときにできる液体)を与え、丈夫で健康な豚を育てる。

[写真3]
広大な敷地には分娩舎、交配舎など全10棟が並んでいる。

[写真4]
2016年5月にオープンした直売所。自宅の玄関を改装した。

[写真5]
自社の豚肉を無添加で加工したソーセージ4種とベーコン。

[写真6]
冷凍パックでの精肉販売も行っている。

オフの日は夫婦でゴルフ、家族で音楽を楽しんでいます

[写真7]
夫婦ともに大ファンというMr.Children(ミスターチルドレン)のCDやDVD。

[写真8]
ゴルフ好きの崇幸さん。久美さんも一緒にラウンドできるよう練習中。

[写真9]
家族で野外フェスに行くことも。

Profile
近藤崇幸さん・久美さん
崇幸さんは1978年生まれ。明治大学農学部卒業後、3年間の飼料会社勤務を経て、養豚業を営む父親の跡を継いで就農。久美さんは1981年生まれ。看護師を経て崇幸さんと結婚。夫を手伝いながら、3女を出産。農業女子プロジェクトメンバーとしても活躍。
所在地/群馬県前橋市富士見町皆沢73
http://www.kondo-swine.com/[外部リンク]

MAFF TOPICS

MAFFとは農林水産省の英語表記「Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries」の略称です。「MAFF TOPICS」では、農林水産省からの最新ニュースなどを中心に、暮らしに役立つさまざまな情報をお届けいたします。

News1 米粉がもっと選びやすくなります

米粉の用途表記とノングルテン表示

お米を粉末にした米粉。製粉技術の進歩により、パンやケーキ、麺類などに幅広く利用されています。独特のもちもち感に加え、油の吸収率が低くて揚げ物のサクサク感が長く続き、料理のときダマになりにくいなど、長所はたくさん。しかし、米粉の品質には、ばらつきがあり、小麦粉のように「薄力」「中力」「強力」といった表示がなく、用途に応じて選ぶのが難しい状況です。

そこで、業界の自主的な取り組みとして、米粉の用途別基準が策定されました。「菓子・料理用」を1番、「パン用」を2番、「麺用」を3番とし、番号で使い道がわかるようになります。

また、グルテンの含有量検査を行い、1ppm(100万分の1)以下であると確認された米粉を、「ノングルテン」と表示するためのガイドラインも策定されました。欧米で認められている「グルテンフリー表示」の含有量の基準値は20ppm以下で、1ppmはその基準を大きく下回ります。

今後、事業者の準備が整えば、順次、用途別基準に則した表示の米粉が出回っていく見込みです。この機会に、米粉を手にとってみてはいかがでしょうか。

[写真1]
収穫の稲穂。

[写真2]
米を粉末にしたものが米粉。

[写真3]
米粉を使った代表的な製品
業界は国産米粉メーカーや食品メーカーが活用できるよう、「米粉の用途別基準」、「米粉製品の普及のための表示に関するガイドライン」を策定した。

[表1]
各米粉の具体的な用途の例およびアミロース含有率に応じた用途詳細
アミロースは米に含まれるでんぷんの一種。

米粉をもっと楽しむには
米粉に関する情報がいっぱい。商品やレシピも紹介しています。
米粉倶楽部 http://syokuryo.jp/komeko/[外部リンク]

News2 鳥獣被害対策優良活動を表彰

先進的な取り組みを紹介し、被害防止活動を推進

野生鳥獣による農林水産業被害は、全国的に深刻な状況です。こうした中で、野生鳥獣被害の防止対策を各地域で推進しています。

その一環として、鳥獣被害防止や捕獲した鳥獣の食肉(ジビエ)の利活用等に取り組み、地域に貢献している個人及び団体を表彰する「鳥獣被害対策優良活動表彰」を実施しています。

平成28年度は農林水産大臣賞2点、農村振興局長賞4点の受賞者を決定し、今年2月28日に表彰式を行いました。

表彰を通じ、それぞれの取り組みを広く紹介することによって、各地域での被害防止活動がさらに進み、鳥獣による農林水産業への被害が軽減することが期待されています。

農林水産大臣賞

【 被害防止部門(団体)】
[写真4]
長野県
小諸市
専門知識を有する者を鳥獣被害対策実施隊に加え、科学的な視点に基づく被害防止活動などを実現。地域住民と鳥獣被害の現場を確認しながら、普及活動をする。

農林水産大臣賞

【 捕獲鳥獣利活用部門(団体)】
[写真5]
熊本県
くまもとジビエ研究会
県内の処理加工施設、飲食店、捕獲従事者、行政などが集まり、ジビエ研究会を設立。写真は全国で初めて調理師専門学校のカリキュラムに正式に採用された「ジビエ」の授業風景。

農村振興局長賞

【 被害防止部門(団体)】
[写真6]
富山県
氷見(ひみ)市鳥獣被害防止対策協議会
「いのししパトロール隊」による柵やわなの見回りなど、いのしし被害の発生初期段階で対策をとり、被害を軽減。写真は集落環境調査で電気柵を点検する様子。

【 捕獲鳥獣利活用部門(団体)】
[写真7]
岐阜県
所産業株式会社、株式会社キサラエフアールカンパニーズ
総合建設業からの異業種参入により、獣害対策事業を本格化。ジビエに適した捕獲技術の普及から衛生的な処理加工技術の確保まで総合的に展開する。

【 被害防止部門(団体)】
[写真8]
岩手県
猪去(いさり)自治会
自治会が中心となり、くまを地域に寄せつけない対策を継続的かつ精力的に実施する。写真は電気柵の共同設置作業の様子。

【 被害防止部門(団体)】
[写真9]
高知県
四万十市東富山(ひがしとみやま)地区大屋敷(おおやしき)集落
住民主導の被害対策に、実施隊や若者などの担い手を巻き込んで、集落を活性化。写真は集落環境整備の一環として防護柵を設置するところ。

News3 食育推進全国大会を岡山で開催

食育推進運動を実施する食育月間の全国行事

食育基本法に基づいて策定された「食育推進基本計画」では、毎年6月を「食育月間」として食育推進運動を重点的かつ効果的に実施することとされています。

「食育推進全国大会」は、この「食育月間」の中核的行事として、国と地方自治体との共催により開催される全国規模の行事であり、第12回となる平成29年度は、岡山市で開催します。食育への理解促進と関係者相互間の連携が図られるよう、さかなクンの「びっくりお魚講座」や料理研究家・土井善晴氏の講演のほか、食育関係団体等によるさまざまなブース展示を行います。

皆様のご来場をお待ちししております。

第12回食育推進全国大会
「食育は人づくり!  みんなで ええ 『食』 を次世代へ~桃太郎のまち岡山から  未来へつなげる食と健康 ~」
日程:平成29年6月30日(金曜日)、7月1日(土曜日)
場所:岡山コンベンションセンター、ジップアリーナ岡山(岡山県総合グラウンド体育館)ほか
内容:シンポジウム、キッチンステージ、ステージイベント、ブース展示等

[写真1]
地元のシェフが子どもたちと県産食材をPR。

[写真2]
キャラクターによる食育ショー。

[写真3]
食育推進ボランティア表彰受賞者による発表。

[写真4]
料理を通じて特産品を紹介。

平成28年度(第11回)は福島県郡山市で開催。写真はすべて昨年度のものです。

[問い合わせ先]
農林水産省消費・安全局
消費者行政・食育課
TEL:03-6744-1971

大会情報はこちら!
食育推進全国大会 https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/taikai/gaiyo.html

News4 5月から全面施行される改正個人情報保護法

小規模事業者も改正により対象に

平成29年5月30日よりすべての事業者に、個人情報保護法が適用されます。個人情報保護法は企業の個人情報の取り扱いを決めたルールで、平成27年9月に改正され、平成29年5月30日に全面施行されます。法の改正により、現在適用対象外とされている、小規模事業者(保有する個人情報が5000人分以下の企業)も対象になります。
5つの基本チェックリストを参考に個人情報を適切に取り扱いましょう。

[イラスト1]

個人情報保護法の5つの基本チェックリスト

1.個人情報を取得するときは、何に使うか目的を決めて、本人に伝える。
2.取得した個人情報は決めた目的以外のことには使わない。
3.取得した個人情報は安全に管理する。
4.個人情報を他人に渡す際は、本人の同意を得る。
5.本人からの「個人情報の開示請求」には応じる。

[問い合わせ先]
個人情報保護法質問ダイヤル TEL:03-6457-9849

多面的機能支払交付金[第1回]

地域みんなで農と食を子どもたちのために

三重県の多気町(たきちょう)勢和(ぜいわ)地域資源保全・活用協議会では、地元小学校・図書館・地域が連携し、遊休農地を活用した体験学習「おまめさんかなぁプロジェクト」を行っています。

子どもたちは、学年に応じて大豆等の栽培や収穫、伝統食作りの体験や学習をしますが、その企画から実施までのすべてを地域の人が行います。子どもたちは、地域社会とのつながりを深めながら、食べ物を作る楽しみや苦労を体験し、農業の大切さなどを学習します。

この協議会が、交付金を利用して遊休農地を解消し、その農地を活用することで、子どもから大人まで地域みんなの学習と交流の場が生まれました。さらにプロジェクトによって獣害等の発生も抑制しています。

遊休農地を体験学習の場にした「おまめさんかなぁプロジェクト」

[写真5]
夏は、大豆の種まき学習会を開催(1~4年生)

[写真6]
秋は、みんなで収穫(3・4年生)

[写真7]
収穫した大豆で豆腐作り(3年生)

[写真8]
みそ作りにも挑戦(4年生)

[写真9]
授業で教えるのは学校の先生ではなく、地域のお母さんやおばあちゃんが中心。

[写真10]
勢和小学校6年生が調理実習で作った大豆ハンバーグなどの「勢小定食」。

多面的機能支払交付金とは・・・

農業・農村の有する多面的機能が、適切に維持・発揮されるよう、農用地や水路、農道等の地域資源を保全している地域の共同活動を支援するための交付金です。

読者の声
読者の皆さまから寄せられた『aff(あふ)』3月号へのご意見・ご感想を紹介します。

「農業高校」の記事を読んで、頼もしくうれしく感じました。わが県内の農業高校でも商品の開発や即売会が催され大人気です。(50代・女性)

学科の種類が多いのに驚きました。非農家の子どもさんが農業高校に進学して農業生産者に1人でも多くなって、生産者の裾野が拡がるといいと思います。(60代以上・男性)

それぞれの特色を持った農業高校で、さまざまな勉強に真剣に取り組んでいる様子がすばらしいと思いました。これからの日本の、私たちの食を支える若者が育っていることを知り、うれしく思います。(60代以上・女性)

わが家の近くの農業高校も毎年秋に行われるシクラメン祭りは大盛会。3月号を拝見し、全国の頑張っている農業高校を更に応援したくなりました。(60代以上・男性)

「農高"良品"」のように、私も近くの農業高校から野菜やみそを購入していますが、市販品とは違う温かみと品質の良さを感じながらいただいております。(40代・女性)

高校生たちが丹精込めて作っている加工品にとても興味をひかれました。機会があったら買ってみようと思います。(50代・女性)

広報誌aff(あふ)の感想をお聞かせください
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