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18年1月号文字情報

味の再発見! 昔ながらのニッポンの郷土料理 第9回

秋田県 だまこ鍋

せりの根が欠かせない、食材のうまみを味わう鍋
秋田の郷土料理といえばきりたんぽ鍋が有名だが、だまこ鍋はいわばそのお手軽版。主に県中央部から北の地方で食べられている。

「つぶした米を秋田杉の棒につけて焼いたのが、きりたんぽ。つぶした米を丸めるだけの、だまこは作りやすいので、よくやりますよ」とは地元の方の声。

私も一度食べてすっかりハマり、自宅でもよく作るようになった。難しいものではないので、ぜひ試してみてほしい。

まず、ややかために炊いた白米をすりこぎなどでつぶす。全体の半分ぐらいをつぶして、残りは粒が立つように。地元ではこのことを「米をはんごろしにする」なんて言う。手に塩水をとって、米をピンポン玉の大きさに丸めておく。ごぼうはささがきにし、まいたけ、とりもも肉は一口大にする。これらを鍋に入れて、とりガラスープとしょうゆ、酒で煮れば完成だが、欠かせない野菜がせりなのである。

秋田人がせりといえば長い根が付いたもので、ここから野趣あふれる強い香りが出る。今回の料理写真では「せりは根付きで食べる」ということを強調して撮らせていただいた。せりは県全域でよく食べられ、湯沢市の三関(みつせき)地区が名産地として知られている。

まいたけ、ごぼう、そして根付きのせりという、香りの強いものが、とりのうまみとしょうゆと合わさり、一つの鍋の中で溶け合ってゆく。その風味をいっぱいに吸っただまこは、たまらないおいしさだ。ねぎやしらたき、天然のきのこを入れる人もあり、スープは秋田名物の比内地鶏(ひないじどり)でとる人も。秋から冬にかけての、ごちそう鍋なのだ。

ちなみにだまことは丸い形を「お手玉」になぞらえたとも、丸めるという方言の「だまける」から来ているとも言われる。

[写真1]
撮影/島 誠 料理制作/三好弥生

[写真2]
田沢湖(秋田県仙北市)

[写真3]
春の七草の一つとしても古くから親しまれてきたせり。根は土を落とし、きれいに水洗いされたものが県内では売られている。


文/白央篤司
フードライター。研究テーマは日本の郷土食と「健康と食」で、月刊誌『栄養と料理』(女子栄養大学出版部)などで執筆。著書に『にっぽんのおにぎり』(理論社)『ジャパめし。』(集英社)などがある。
ブログhttp://hakuoatsushi.hatenablog.com/[外部リンク]

特集1 ジビエ

野生の鳥獣肉は、今が食べごろ。人気が高まりつつあるジビエの魅力に触れてみましょう。

[イラスト]
貴族の料理として発展してきたジビエ料理

ヨーロッパの貴族たちが愛した野生の味
食材となる野生鳥獣の肉をフランス語でジビエ(gibier)といいます。

中世のヨーロッパでは、ウサギなどの小動物は、誰でも狩って食べていたようですが、大型の獣の狩猟は、広大な領地を持つ階級の人々にのみ許されていました。しとめた獲物は貴族にふさわしい食べ物とみなされ、客をもてなす料理の材料にされました。

料理は丸のままローストされることが多く、食卓に運ばれ、屋敷の主人が肉の塊を短剣で切りました。肉の切り分けは優れた剣の使い手であることを示す演出でもありました。

このように、シカやキジ、マガモ、野ウサギなど野生鳥獣の肉を用いるジビエ料理は、ヨーロッパにおいて貴族の料理として発展してきました。

調理の工夫が現代に伝わるレシピのもとになる
野生鳥獣は、しとめてから時間が経つと熟成が進み過ぎて、クセの強い肉になってしまいます。冷凍・冷蔵保存の有効な手段がなかった時代のヨーロッパの料理人たちは、ワインやスパイスを用いるなど調理法に工夫をこらすようになり、これが現代に伝わるジビエ料理のレシピのもとになりました。

野生の動物は家畜と異なり、同じ種類でも個体差が大きく、年齢や健康状態、さらには育った環境や食べていたエサなどでも肉質が異なるため、それぞれの個性を見極めて調理する必要があります。正しい調理法を用いることで、ジビエのうまみを存分に引き出すことができるのです。

野山を駆け回っていた動物の肉は脂肪が少なく、筋肉質です。ヘルシーで栄養価が高いのがジビエの特徴とうたわれています。

日本でも野生の獣は昔から食べられていた
ヨーロッパと異なり、日本は仏教の影響から肉食の文化がなかったと思われがちですが、野生の動物を食べる習慣は古くからありました。

鎌倉時代の武士は狩ったクマやウサギなどを食べていましたし、戦国時代の武将、織田信長や徳川家康は鷹狩りの獲物のキジなどを食べたといわれています。

武士だけでなく、山間部の村に猟師がいることは珍しくありませんでした。また東北地方や甲信地方にはクマなどを追うマタギと呼ばれる狩人がいました。

とはいえ、野生鳥獣の料理は長らく地域の伝統的な食文化という位置づけでした。

今でも、イノシシ肉を「山くじら」と言い換えたり、ウサギを1羽、2羽と鳥のように数えたり、イノシシ鍋を「ぼたん鍋」、シカ鍋を「もみじ鍋」と呼んだりします。表向き獣の肉を食べることがはばかられていた時代の名残と考えられます。

利用が広まりおいしくなった日本のジビエ
日本におけるジビエをめぐる状況が近年、大きく変わりつつあります。全国でシカやイノシシによる農作物の食害が問題になり、捕獲が進められるとともに、ジビエとして利用する動きが広まっているのです。

厚生労働省は、平成26年に「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」を発表しています。捕獲後の処理や調理を正しく行うことにより、特有の臭いや硬さがなくなり、生食を避け、十分加熱することで安全に食べることができます。

処理方法などの改善により、日本のジビエはおいしく食べられるようになったとされます。

「害獣」とされてきた野生動物が、食文化をより豊かにしてくれる味わい深い食材、あるいは山間部を活性化させてくれる地域資源とみなされるようになっているのです。

参考:ジャン=ピエール・プーラン、エドモン・ネランク著『フランス料理の歴史』(KADOKAWA)、宮本常一著『山に生きる人びと』(河出書房新社)

[コラム]
シカ、イノシシ肉の栄養価は?
ジビエの中でも捕獲数の多いシカ肉、イノシシ肉の栄養価を、それぞれ牛肉、豚肉と比較したのが下の図です。イノシシ肉は鉄分が豚肉の4倍で、ビタミンB12が3倍です。シカ肉もカロリーが牛肉の半分で、脂質が5分の1、しかも鉄分は1.7倍です。中でも注目される成分がシカ肉に含まれる「アセチルカルニチン」です。アミノ酸の一種であり、脳機能向上や疲労・ストレス軽減などの効果があると報告されている成分ですが、シカ肉には牛肉の2倍も含まれています。アスリートにも適した食材として注目されており、ダイエット食や高齢者の介護食としての利用も期待されます。

[図]
栄養成分の比較(100グラム当たり)
出典:文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」

取材・文/下境敏弘
イラスト/立原圭子


各地で食べられるジビエ料理 [東日本編]
郷土に伝わる味から、新しい創作メニューまで、さまざまなジビエ料理が食べられるレストランや宿をご紹介します。

冬には野生のタンチョウが飛来する道の駅のレストラン
[写真1]
阿寒丹頂(あかんたんちょう)の里 赤いベレー「レストラン鶴」[北海道]
釧路の「マリモ国道」と呼ばれる国道240号線沿い。温泉宿泊施設「赤いベレー」のレストランでエゾシカメニューを提供。近くに「タンチョウ観察センター」も。
https://www.akan.jp/[外部リンク]

[写真2]
低カロリーで高タンパクの「阿寒エゾシカステーキ」1,800円(税抜き)。

マタギの里として知られる温泉宿のレストラン
[写真3]
打当(うっとう)温泉 マタギの湯 お食事処「シカリ」[秋田県]
店名の「シカリ」はマタギ言葉で「頭領」の意味で、クマ肉も扱う食事処。近隣には日本の滝100選の「安の滝」や阿仁熊牧場「くまくま園」などが。
http://www.mataginosato.com/[外部リンク]

[写真4]
入念な下ごしらえで臭みを抑えた「熊肉ラーメン」1,550円。

奥多摩の大自然の中でジビエが味わえる渓流沿いのカフェ
[写真5]
キャニオンズCafe AWA[東京都]
アウトドア体験もできる施設内のカフェ。ランチや地ビールを楽しめる。奥多摩のシカ肉を使った「ローストベニソンボルケーノ」は、特産のワサビを付けるとさらにおいしい。
https://canyons.jp/ja/tour-areas/okutama/awa[外部リンク]

[写真6]
シカ肉を低温調理した「ローストベニソンボルケーノ」2,000円。

迎賓館の近く、閑静な住宅街にある一軒家レストラン
[写真7]
オテル・ドゥ・ミクニ[東京都]
世界的に有名なオーナーシェフの手による自然派創作フレンチが堪能できる。季節によってエゾシカや京丹後のイノシシなどのジビエを、コース内の一品として提供。
https://oui-mikuni.co.jp/[外部リンク]

[写真8]
昨年11月に始めたディナーコースの一品「京丹後の猪のロティ」。

富山湾に面したイノシシとシカ肉ぎょうざ専門店
[写真9]
ジビエぎょうざ家[富山県]
北陸自動車道黒部ICより車で約10分。東京から移住した店主により昨年1月に開店。「イノシシ餃子」は脂分が甘く、「シカ餃子」は女性に人気。
https://www.zibiegyozaya.shop/[外部リンク]

[写真10]
ニンニク有り、無しがある「イノシシ餃子」「シカ餃子」各6個入り各540円。

木々に囲まれた屋外ダイニングでジビエのディナーを楽しむ
[写真11]
星のや富士[山梨県]
河口湖に面した丘陵にある日本初のグランピングリゾート。屋外ダイニング「フォレストキッチン」ではダッチオーブンで調理する「冬の狩猟肉ディナー」が。客室で食べられるジビエメニューもある。
https://hoshinoya.com/[外部リンク]

[写真12]
客室のテラスで楽しめるルームサービスメニュー「山麓の鹿しゃぶ鍋」。

道の駅で食べられるイノシシ肉のラーメン
[写真13]
もっくる新城(しんしろ) 奥三河製麺[愛知県]
新東名高速道路新城ICよりすぐの国道151号線沿いにある。イノシシ肉を使ったラーメンやぎょうざのほか、温泉卵をのせた「温玉鹿カレー」も食べられる。
http://www.mokkulu.jp/index.html[外部リンク]

[写真14]
イノシシ肉入り「ししラーメン」780円。スープの出汁にもイノシシの骨を使用。

宿場町で"猪ホットドッグ"をテイクアウト
[写真15]
道の駅 藤川宿(ふじかわしゅく)[愛知県]
徳川家康生誕の地として知られる岡崎市の東側、国道1号線沿いの道の駅。軽食メニューに、イノシシ肉を使ったホットドッグや、八丁みそだれの「猪肉の焼肉定食」がある。
http://fujikawa37.com/index.html[外部リンク]

[写真16]
岡崎市のイノシシ肉を使った「ふじかわ イノちゃんドッグ」370円。

価格は(税抜き)表示のないものはすべて税込みです。

取材・文/Office彩蔵


各地で食べられるジビエ料理 [西日本編]
水族館や鉄道博物館がある梅小路公園前の創作ラーメン店
[写真1]
拳(こぶし)ラーメン[京都府]
JR丹波口駅より徒歩約9分。シカ骨を使ったスープを開発したラーメン店。限定メニューのジビエラーメンのほか、さまざまなメニューにシカ骨スープをブレンド。

[写真2]
隠し味にシカ骨スープを使った「拳ラーメン『淡』」800円。

神戸元町繁華街のシカ肉料理専門レストラン
[写真3]
鹿鳴茶流 入舩(ろくめいさりゅう いりふね)[兵庫県]
シカのカツレツやタンシチューなど、バラエティに富んだ料理がそろう。「ニホンジカ一頭まるごと有効活用」を実現し、運営会社ではシカ皮の服飾雑貨も製造販売。
http://rokumeisaryu.com/[外部リンク]

[写真4]
希少部位を丁寧に煮込んだ「鹿タンのデミグラスシチュー」980円。

和歌山県・大阪府に16店舗あるパン屋さん
[写真5]
パン工房 カワ[和歌山県]
本店は熊野古道の宿場町、湯浅にある。「全国ご当地バーガーグランプリ」では3年連続優勝。2016年のジビエバーガーのほか、2014、2015年は紀州梅を使ったバーガーで優勝している。
http://bakery.e-kawa.co.jp/[外部リンク]

[写真6]
紀州備長炭とシカ肉を使った「里山のジビエバーガー」483円。

県立博物館内のカフェでジビエのランチが楽しめる
[写真7]
カフェ・ダール ミュゼ[鳥取県]
壁一面がガラス張りになっており、鳥取城跡がある久松公園の景色が眺められる。シカ肉をさっくりと仕上げたチーズカツ丼は、サラダ感覚で楽しめるランチメニュー。
http://www.tottori-musee.jp/[外部リンク]

[写真8]
「鳥取鹿肉のチーズカツ丼黒らっきょう和風醤添え」1,300円(税抜き)。

田舎暮らしを体験できる宿でイノシシ肉と山菜料理を
[写真9]
民宿うり坊[徳島県]
讃岐(さぬき)山脈の山の幸が味わえる田舎体験宿泊施設。イノシシやシカの肉は宿の主人が自ら捕獲したものを使用。JR阿波池田駅、阿波加茂駅、高速バス停からの送迎あり。

[写真10]
宿泊者限定、要予約の「いのししフルコース」。
写真提供/徳島県

幅広い年齢層に人気 西中洲のジビエとワインの店
[写真11]
情熱の千鳥足 CARNE(カルネ)[福岡県]
シカやイノシシといった九州のジビエを一頭買いで仕入れ、手ごろな価格の料理に仕上げて提供する肉バル。ワインにあうジビエのソーセージやサラミ、パスタなども。
https://chidorishicarne.owst.jp/[外部リンク]

[写真12]
シカ、イノシシ、キジ肉使用の「ジビエのメンチカツ2個」650円(税抜き)。

歴史ある洋館のダイニングで江戸時代から続く長崎ジビエ
[写真13]
出島内外倶楽部(でじまないがいくらぶ)レストラン[長崎県]
オランダから食文化が伝わり、江戸時代からイノシシやシカの肉が食べられてきた出島にある。明治36年に建てられた洋館で、ジビエを含む長崎の食文化を楽しめる。

[写真14]
「猪肉・豚肉のテリーヌ」1,500円(税抜き)。

大分城跡から徒歩圏内の県内初ジビエ専門炭火焼店
[写真15]
炭火焼ジビエ 焼山(やきやま)本店[大分県]
駆除した害獣を地元で消費することを目的にした店。狩猟肉を加工する自社工場が県内にあり、イノシシ、シカのほか、ヒヨドリなどの希少な肉や部位も食べられる。
http://yakiyama.com/[外部リンク]

[写真16]
シカのしぐれ煮がのった卵かけご飯(480円)。

価格は(税抜き)表示のないものはすべて税込みです。

取材・文/Office彩蔵


全国に広がるジビエの魅力
シカ肉などの学校給食での利用、味を楽しむイベントなどジビエを利用する動きが広まり、食べる機会が増え、親しみやすい食材になりつつあります。

ジビエを使った学校給食を実施
地域の自然環境を学ぶジビエ給食の試み
福井県小浜市では、ジビエを市民にとってなじみのあるものにしていくため、学校給食に取り入れる試みを実施しています。

そのための準備として、平成25年に給食の献立の作成に関わる栄養教諭や学校栄養職員を対象としたジビエ料理研修会を開催して、鮮度の判定方法や調理での留意点を学んでもらいました。

また市立内外海(うちとみ)小学校の児童たちに、総合学習で、地域の自然環境やジビエについて学んでもらったうえで、平成26年6月、学校給食として地元産のシカ肉を用いたカレーライスを全学年の79人に提供しました。

児童からは「普通の肉と同じようにおいしい」「スーパーマーケットで売ってほしい」「シカ以外の肉を食べるときも感謝しながら食べたい」といった声があがりました。

小浜市では、その後も毎年度、自分たちの住む地域の環境を知り、命の大切さを学ぶ食育の一環としてジビエ給食を実施しています。

小浜市のような学校給食へのジビエの利用が西日本の自治体を中心に広まっています。

文部科学省は、平成27年12月から学校給食の栄養指導の基礎データである「日本食品標準成分表」にシカ肉を掲載しています。

[写真1]
近隣六市町が共同で整備した食肉処理加工施設から運ばれたシカ肉を用いたカレー。

[写真2]
松崎晃治(こうじ)市長も児童たちと一緒にジビエ給食を食べた。

[写真3]
「おいしい」「いつも食べる肉と変わらない」と子どもたちの評価も上々。

[写真4]
学校給食に向けて児童たちは地域の自然環境や野生鳥獣の生態などを学んだ。

[コラム]
シカやイノシシをペットフードに
駆除したシカ、イノシシの活用方法の1つがペットフード。

例えば、捕獲したシカは焼却処分にするか、市内の動物園でライオンのエサにしていた長野県小諸市は、平成28年度からペットフードに加工する事業を始めました。

もちろんジビエを原料にする場合も、通常のペットフードと同じように法律に基づき、成分規格や製造方法の基準、表示の基準に沿って、安全なものが作られています。

また、国では業界からのヒアリングを通じて、ペットフードの活用が広まるよう働きかけています。

[写真5]
肉や内臓を乾燥させたイヌやネコ用のジャーキー。

[写真6]
骨を加工したイヌ用のおしゃぶり。

ジビエイベントに行ってみよう
ジビエ料理フェアからサミットまでさまざま
ジビエのおいしさを知ることができるイベントが、全国各地で開かれています。

地域の飲食店が期間限定でジビエ料理を提供するフェアや、解体ショーのようなイベントとともにジビエの出店が並ぶジビエまつりなど、さまざまです。4回目を迎える日本ジビエサミットのテーマは、国産ジビエの本格流通です。下の表に、現在開催中もしくは近日開催のイベントをいくつかご紹介していますので、気軽に参加してみてはいかがでしょうか。

[写真7]
北見エゾシカフェスタ(北海道)。

[写真8]
白山麓いのししまつり(石川県)。

[写真9]
毎年11月に開催される「八ヶ岳、お酒とジビエの冬祭り」(山梨県)。

[表]
これから参加できるジビエイベント一覧

取材・文/下境敏弘


鳥獣被害対策と安全な食肉供給のために
鳥獣による農作物などの被害を防止するための制度が作られ、ジビエとして有効利用する取り組みが進められています。

鳥獣被害の現状と対策
深刻化した鳥獣被害を減らしていく取り組み
シカやイノシシなどの野生鳥獣による全国の農産物の被害額は年間200億円前後に達します。金額もさることながら、生産者の営農意欲が削がれれば、耕作放棄や離農につながりかねません。

農水産物だけでなく、植林の苗木や牛の牧草も被害が深刻です。観光資源だった貴重な高山植物がシカの食害で全滅してしまった地域もあります。

地域に深刻な影響を及ぼす鳥獣被害を食い止めるには、市町村や農林漁業団体、猟友会など地域ぐるみで対策に取り組む必要があります。

そこで平成19年に鳥獣被害防止特措法という法律ができました。市町村が中心となって協議会を設置し、計画を策定して対策を推進するためのものです。地域の実情に応じた取り組みを、鳥獣被害防止総合対策交付金などで支援する仕組みになっています。

平成25年には農林水産省と環境省が抜本的な鳥獣捕獲強化対策を策定し、当面の目標として、シカとイノシシの生息頭数を10年後までに半減するという目標を掲げています。

環境省は鳥獣保護法を平成26年に改正し、鳥獣保護管理法が成立。保護から、管理も含めた対策に重点を置く政策へ転換しました。

これらの制度のもとで対策が講じられた結果、シカやイノシシなどの捕獲数は大きく伸びています。

野生鳥獣の肉を有効活用するためのジビエの普及
捕獲数は伸びる一方で、その多くはこれまで土に埋めたり、焼却したりされ、ジビエとしての利用割合は1割程度となっています。

安全性を確保したうえで捕獲鳥獣の肉をジビエとして活用することは、有効な対策となります。

そこで農林水産省は食肉処理加工施設の整備、商品開発、販売・流通経路の確立などの取り組みを支援するとともに、捕獲鳥獣の食肉利用のためのマニュアル作成や研修を実施しています。

平成28年には鳥獣被害防止特措法が改正され、食品としての利用について明記されました。

今後、捕獲数が増え、安全な肉が安定的に供給されるようになることでジビエの文化が広まり、定着していくことが期待されます。

[グラフ1]
農作物被害額の推移
出典:農林水産省調べ

[グラフ2]
シカ、イノシシの捕獲頭数の推移
出典:環境省調べ

[写真1]
農作物を食べるイノシシ。
提供/太田市

[写真2]
農作物を食べるシカ。
写真/タウンニュース秦野版平成28年8月4日号に掲載

捕獲した野生鳥獣を地域資源に
いなばのジビエ推進協議会(鳥取県)
行政と住民が協力して対策に取り組む
鳥取県も鳥獣による農林被害が深刻です。県では対策センターで捕獲などを支援することに加えて、食のみやこ推進課が中心となり、首都圏でフェアを開催して県産ジビエをアピールするなど販路の拡大に取り組んでいます。

また民間の関係者も力を合わせて対策に乗り出しています。

平成24年に県東部地域の1市4町の狩猟者や獣肉処理業者、食肉販売業者、飲食店などの39団体が結成したのが、いなばのジビエ推進協議会です。

「野生鳥獣をおいしくて安全な高級食材として利用し、さらに観光資源にしていきたい。そのため解体処理の勉強会の主催、会員の飲食店と連携したジビエイベントの開催といった活動に取り組んでいます」と言うのは、協議会のジビエコーディネーター・米村晴己さんです。

丁寧に処理したシカ肉が好評
米村さんは「重要なのは狩猟者と料理人をつなぐ処理施設です」と言います。

牛肉や豚肉と同様食肉であるジビエを飲食店で提供するには、許可を受けた施設で処理する必要があります。

この地域で平成25年から稼働しているのが食肉処理加工施設の「わかさ29(にく)工房」です。平成28年度には約1800頭のシカを処理しました。提供先は首都圏のレストランや地元の料理店、食品スーパーなど。道の駅でも販売します。

「このあたりは険しい山が多く、シカの運動量が豊富。水やエサを含めよい環境で育ったシカを徹底した衛生管理のもとで処理した肉は好評です。食材にこだわる首都圏のシェフからも肉質や香りが注目されています」と米村さんは胸を張ります。

[写真3]
ニホンジカの解体処理施設としては本州で初めて食品衛生管理システムHACCPの認証を受けた。

[写真4]
近隣のスーパーで売られているシカ肉。

[写真5]
若桜町(わかさちょう)と八頭町(やずちょう)が国の助成を受けて建設した食肉加工施設「わかさ29工房」。

[コラム]
捕獲後素早く処理できるジビエカー
高知県梼原町(ゆすはらちょう)
山奥で捕獲した重い野生獣を運ぶのは重労働です。しかも早く処理をしなければ肉質が悪化してしまいます。この問題を解決しようと一般社団法人日本ジビエ振興協会と長野トヨタ自動車株式会社が共同開発したのが、捕獲現場に駆けつけ、素早く処理を行えるジビエカー(移動式解体処理車)です。

平成28年から運用に向けた実証実験を行い、改良を加えて完成した導入第1号の納車式典が平成28年8月に高知県梼原町で開催されました。四輪駆動の2トン冷凍トラックがベースで、熱湯処理煮沸器や高圧蒸気滅菌器などを搭載しています。

このジビエカーの導入により、近くに処理施設がなかったり、運び出すのが難しかったりで、やむなく廃棄していた地域でも資源として活用できる道が開かれることになります。

[写真6]
給食での活用も想定し、ボディにはジビエ給食を描いた。

[写真7]
後部扉を開いたスペースは解体室。天井に引かれている懸吊レールを通って処理後は速やかに車体中央の保冷室で保冷される。

[写真8]
安全衛生管理のため殺菌処理を施す高圧蒸気滅菌器。

取材・文/下境敏弘

輝く! 未来を担う生産者 vol.9

NPO法人 いのちの里 京都村/京都府
食と命のあり方を広く伝えていきたい
自信をもってシカ肉を販売したい、と20代で飛び込んだ狩猟の世界。日本のジビエ界を牽引する存在として、若手女性ハンターに注目が集まっています。

[写真1]
誤射を防ぐために、山に入るときは自然界にない色の服を着る。

シカの肉を売る立場から狩猟の世界へ
牛肉や豚肉は食べるけれど、シカの肉を食べるのは抵抗がある。そういう人は少なくありません。NPO法人 いのちの里 京都村の事務局長を務める林利栄子さんが、狩猟の世界に入ったのも、小さな女の子の一言がきっかけでした。

「京都村のイベントでシカ肉を使った肉まん『京都もみじ』を販売していたときのこと。『シカを食べるなんてかわいそう』と言われ、そのときの私はきちんと説明できなかったんです」

売る立場である以上、しっかりした知識を身につける必要がある。そう考えていたときに出会ったのが、ジビエハンター(獲物をさばいて食べる猟師)の垣内忠正さんでした。また、京都村の活動目的は、過疎や高齢化などの問題を抱える農山村と都市をつなぎ、双方の利益に寄与すること。「京都市内に生まれ育ったので、農山村に関する知識がありません。でも、自分には移住や農業は向いていない……」とも考えていた時期だったので、「狩猟をやってみたらいいやん」という垣内さんの一言が胸に響きました。狩猟免許を取れば、市内に住みながらでも農山村で活動できる。そこで、猟師になることを決めたのです。

猟師の知識をジビエハンターにつなぐ
2013年の免許取得以来、狩猟期間の11月から3月は毎週末、南丹(なんたん)市や京丹波町の山へ。年間5頭ペースでシカを捕獲しています。

林さんが所属する猟友会の会員は約40人。その3分の2は60歳以上で、林さんが最年少です。

「猟友会のメンバーは、鳥獣被害や『ジビエ』普及のためというより、趣味で猟をされている人が多いです。でも、山や獲物については知り尽くしている。その猟師としての知識を、ジビエハンターへ継承していくことが、私にできることじゃないかと思っています」

これから捕獲する動物が人の口に入るということを意識して狩りをし、衛生的な解体を行う。ジビエハンターは、厚生労働省によって定められた野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)を遵守しなければなりません。そうした正しい知識や技術を、広く伝える活動にも林さんは積極的に取り組んでいます。

何を選び、何を食べるのか 知識を広げるための食育
「今は食べ物がたくさんあり、簡単に手に入る時代です。だからこそ、何を選び、何を食べるのか、自分で選択していくための知識が必要だと思います」

そのため、獲った肉を鳥獣被害やシカ肉に興味のある人たちにおいしく調理してふるまうイベント「べにそん会」(「べにそん」とは英語でシカ肉の意味)を、2015年から主催しています。

また、子どもたちと一緒に山に行き、実際に農家が野生鳥獣から受けている被害を見せることで、捕獲の必要があること、その命を食として生かすことを伝える食育活動も行っています。

2016年からは京都市内の有害鳥獣駆除隊でも活動するなど、ジビエハンターになったことで世界がどんどん広がっていった林さん。おしゃれで人なつっこい京女は、狩猟が解禁されているこの時期、ジビエハンターとして命の現場に立ち会っています。

[写真2]
免許取得後は、先輩猟師から実猟を学んだ。現在は、これから猟師を目指す人に向けてのツアーなどに、先輩猟師として参加している。

[写真3]
猟のときに必ず身につける弾帯ベルトとナイフは、先輩猟師にもらったもの。

[写真4]
NPO法人 いのちの里 京都村の活動の一環として、農山村の野菜を京都市内で販売。

[写真5]
京都村のゆるキャラ・シカナイさんとイベントを盛り上げることも。

[写真6]
シカ肉を使った肉まん「京都もみじ」。

[写真7]
月1回開催している「べにそん会」。リピーターも含め毎回20人ほどが集まる。

[写真8]
参加者にふるまう、林さんが獲って調理したシカ肉料理。「おいしい!」と好評。

平日が活動的だから、休日は静かに過ごします
[写真9]
陶芸が好き。奥は陶芸市で買ったお気に入りのもの。手前は初めて自分で作った作品。

[写真10]
読書も好きで西加奈子さんの大ファン。「好きな本はボロボロになるまで繰り返し読みます」。

Profile
林利栄子さん
1988年、京都市嵐山生まれ。大学卒業後、大手生命保険会社で営業職として1年半ほど働き、離職。2013年にNPO法人 いのちの里 京都村の事務局長に就任。同年秋に狩猟免許取得、2014年からジビエハンターとして活動を始める。2016年から有害鳥獣駆除隊に参加。
所在地/京都府京都市上京区今出川通寺町東入一真町67
http://kyotomura.jp[外部リンク]

取材・文/岸田直子
撮影/原田圭介

特集2 おでん

おでん
日本の冬に欠かせない料理「おでん」。その歴史や地域特性など、知るほどに楽しいおでんの世界をのぞいてみましょう。

[写真1]
おでん

起源は豆腐田楽 江戸時代には庶民食
おでんの起源は、みそを塗った豆腐を串に刺して焼いた室町時代の「豆腐田楽(でんがく)」といわれています。江戸時代には屋台や振り売りにより、安くてうまい料理として人気を博したようです。「おでん」という名称は、宮中に仕える女房たちが「田楽」に丁寧語の「お」をつけ、「楽」を省略して呼んだという説があります。江戸時代の浮世絵には、振り売りがおでんの看板を掲げる様子が描かれており、このころにはこの名称が定着していたことがわかります。

現在のような煮込みおでんの発祥についても諸説ありますが、発展したのは明治以降、近代になってから。長らく屋台や専門店の料理でしたが、戦後、ねりものが調理素材として一般的に手に入るようになり、家庭料理としても広く食べられるようになりました。

地域色の豊かさも注目が集まるおでん
おでんは、だし、種(たね)、そして薬味の三点で構成されています。昨今、これらの組み合わせが地域によって異なることが再発見され、いわゆる「ご当地おでん」として人気が高まっています。

例えば、牛すじでだしを取り、濃口しょうゆを加えた黒いつゆの静岡おでんは特徴的。水産業が盛んな北海道や青森県、石川県では貝やカニなどの魚介が種になります。ねぎだれをかける長野県の飯田おでんや生姜(しょうが)じょうゆをかけて食べる姫路おでんなど、薬味やたれに特徴のある地域もあります。

たんぱく質が豊富で消化もいいねりもの
おでんの主役ともいえるのが、魚のすり身で作られるかまぼこなどのねりものです。たんぱく質を多く含み、はんぺんやちくわは脂質が少なく、青魚で作られるつみれは必須脂肪酸の一種、DHAを含みます。ねりものは、消化のよい食べ物でもあります。胃腸の調子がよくないときにも、おでんはおすすめのメニューです。

おでん種に欠かせないねりものいろいろ
[写真2]
はんぺん
ヨシキリザメやアオザメのすり身に山いもを加えたねりもので、ふんわりした食感が特徴。東京や千葉が主な産地。

[写真3]
すじかまぼこ
サメのすり身を主に、筋や軟骨も混ぜて作る。軟骨のコリコリとした食感と、筋のモチモチとした食感を同時に楽しめる。

[写真4]
しんじょ
やさしくのばした魚のすり身を蒸すか、ふんわりとゆで上げたものがしんじょ。京都や神奈川のおでんに見られる。

[写真5]
さつま揚げ
鹿児島ではつけ揚げ、関東ではさつま揚げ、関西では天ぷらと呼ばれる。すり身を油で揚げたかまぼこ。

[写真6]
なると巻き
切り口が渦巻き状のゆでかまぼこ。ラーメンの具としてのイメージが強いが、静岡ではおでん種として使われる。

[写真7]
黒はんぺん
焼津の名産品。サバやイワシを原料にした半月状のゆでかまぼこ。静岡おでんには欠かせない。

[写真8]
カニ風味かまぼこ
カニ肉状に成形され、カニの風味を楽しめるかまぼこ。北陸などの一部地域ではおでんにも使われる。

[写真9]
ちくわ
すり身を竹に巻きつけてあぶり焼いたちくわは全国的に定番のおでん種。そのままでもあえものや炒めものにしてもおいしい。

[写真10]
ごぼう天
下処理したゴボウをすり身で包み、油で揚げた揚げかまぼこ。さっと焼いて生姜じょうゆで食べても。

[写真11]
あんぺい
ハモが主原料の関西のはんぺん。山いもなどのつなぎは使わない。冷やしてわさびじょうゆで食べるほかおでんにも加える。

取材・文/千葉貴子
取材協力/全国蒲鉾水産加工業協同組合連合会


地域の味わいがひとつの鍋に 熱々! 全国おでん食べ歩き
所変わればおでんも変わる。おでんには、各地の歴史や特色がよく表れています。だし、種、薬味、それぞれに異なる全国各地のおいしいおでんをご紹介します。

[写真1]
青森おでん
おでんを皿に取り、生姜みそだれをかけて食べる。冬の厳しい寒さのなか、客のからだを温めようとある 一軒の屋台のおかみさんがみそに生姜をすりおろして入れたものが発祥とされる。

[写真2]
関東おでん
かつおのだしに、濃い口しょうゆで味付けをするのが関東風。特徴的なおでん種は、ちくわぶ、はんぺん、すじかまぼこなど。特にちくわぶは、東京近郊を主にしたご当地おでん種で、他ではその名前を知らない人が多い。

[写真3]
ちくわぶ
関東発祥で、主に東京近郊で食べられる。小麦粉をこねて棒に巻きつけて蒸したもので、もちっとした食感が特徴。

[写真4]
静岡おでん
主に牛すじをだしとした黒いつゆが特徴。具材を串に刺してじっくりと煮込む。青のり、だし粉と呼ばれるいわしやかつおの削り節をかけて食べる。

[写真5]
名古屋おでん
関東おでんに赤みそだれをかけたみそおでんや、かつおだしと八丁みそをベースとしたつゆで種を煮込んだおでんなど、甘めのみそを使うのが名古屋ならでは。

[写真6]
大阪おでん
大阪ではおでんのことを「関東煮(かんとだき)」という。欠かせない種がクジラの「コロ」だったが、今ではその代わりに牛すじやタコを入れるのが定番。

[写真7]
牛すじ
関西ですじといえば、牛すじ肉。牛のアキレス腱の部分で、串を打ち、トロトロになるまで煮込む。

[写真8]
姫路おでん
小皿に取って生姜じょうゆをかけるか、生姜じょうゆを入れた小皿におでん種を付けて食べる。濃く甘い味付けと薄味と二種類あるが、生姜じょうゆで食べるものはすべて姫路おでんと呼ぶ。

[写真9]
福岡おでん
鶏から取っただしを基本に、ぎょうざ巻や鶏の手羽先が入っているのが特徴。屋台メニューとしても人気。
提供/(有)豊島蒲鉾

[写真10]
ぎょうざ巻
ぎょうざを魚のすり身で巻いたもので、おでん種としてはもちろん、近年では総菜としても人気。九州全域で食べる習慣が広まりつつある。
提供/(有)豊島蒲鉾

[写真11]
長崎おでん
長崎名物の焼あごのだしをベースに、長崎のかまぼこを煮込む。竜眼と呼ばれる卵をすり身で巻いたものも定番のおでん種。ゆずこしょうを付けて食べることもある。

[写真12]
沖縄おでん
琉球文化にはなかったおでんだが、今ではおでん屋が多く、スーパーやコンビニエンスストアでも沖縄風のおでんが売られている。テビチと呼ばれる豚足やソーセージが入り、コクのある味わい。

[コラム]
進化を続ける「コンビニおでん」
夏も冬も、一年中おでんを販売しているコンビニエンスストア。そんな「コンビニおでん」の売れ行きがよくなるのは、9月からなのだとか。気候が定まらず暑い日と寒い日が交互にやってくるような季節、急に肌寒くなると、おでんを食べたくなる人が増えるようです。

そんな「コンビニおでん」は常に進化を続けています。だしの配合もおでん種も、毎年必ず見直しを行うとのこと。その結果、「ファミリーマート」では、だしは地域ごとに七種類、一方で、九州発の「シュウマイ巻」や北陸発の「肉いなり」など、地域で人気が高かったおでん種は全国区に格上げされて、地域差はほとんどありません。

販売個数のランキングでは、1位大根、2位たまごという結果に。やはり定番のおでん種は欠かせないようです。

人気のおでん種ランキング
1位…大根※
2位…たまご※
3位…しらたき
ファミリーマート2016年度年間販売個数より
商品名は「厚切大根」「こだわり味付たまご」

[写真13]
コンビニおでん

取材協力/ユニー・ファミリーマートホールディングス株式会社

取材・文/千葉貴子

MAFF TOPICS

MAFFとは農林水産省の英語表記「Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries」の略称です。「MAFF TOPICS」では、農林水産省からの最新ニュースなどを中心に、暮らしに役立つさまざまな情報をお届けいたします。

あふラボ コンパクトなねぎを開発
4品種のリレー栽培で周年出荷が可能に
寒い季節の定番・鍋料理に活躍する長ねぎ。特に関東中心に食べられている根深ねぎ(白ねぎ)に関して、消費者アンケートを実施したところ、「長いねぎは買いもの袋からはみ出たり、冷蔵庫に収まりきらないのがイヤ」「青い部分は捨ててしまうのでもったいない」という2つの意見が多く寄せられました。

そこで、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)では丈が短く、葉先まで食べられるコンパクトねぎの開発に着手。その結果、ねぎの白い部分が約20センチメートル程度で収穫できる品種・冬どり用の「ふゆわらべ」、秋冬どり用の「ゆめわらべ」を開発しました。これらは一般的なねぎのおよそ3分の2の長さです。使いきりサイズで葉先まで無駄なく食べられ、手軽に持ち運べて冷蔵庫の収納も楽にできます。

そして、コンパクトねぎを安定的に生産するために、さらに春どり用「こいわらべ」、夏どり用「すずわらべ」を開発・育成しました。

4品種がそろい、リレー栽培をすることによって、周年の生産が可能になります。また、それぞれを使い分けることで、さまざまな地域に適応が可能になり、出荷の拡大が期待されます。

「わらべシリーズはどれも葉身部までやわらかく、辛みが少なく筋っぽくないのが特長です。薬味などの生食から鍋もの、炒めものと幅広い料理に利用することができます。さらに、土寄せの回数が減り、栽培期間も短いので、労力の軽減、低価格化にもつながります」(農研機構野菜花き研究部門野菜育種・ゲノム研究領域ネギ属ユニット長・山田朋宏さん)

育成の際、畝(うね)の間隔も10センチメートル程度狭くできるので、同じ面積で多くのねぎを作ることができます。

現在は種苗が市場に流通する段階ですが、コンパクトねぎがスーパーに並ぶ日も近いことでしょう。

[写真1]
5月下旬のこいわらべ(手前)。この時期では奥の一般的な根深ねぎは、ねぎ坊主ができてかたくなるが、こいわらべは葉のまま。春~初夏までおいしく食べられる。

[写真2]
右はふゆわらべ。白い部分は短くて太く、全長約40センチメートル。左は一般的な根深ねぎ。

[写真3]
コンパクトねぎは、葉先まで入れても買いもの袋(スーパーのレジ袋)にすっぽり収まるサイズ。

[図]
コンパクトねぎの品種と栽培時期
こいわらべ、すずわらべ、ゆめわらべ、ふゆわらべの"わらべ4兄弟"を組み合わせることで、周年出荷が可能に。土寄せ作業は通常の半分、栽培期間も1カ月程度短縮。手間がかからず、量を多く収穫できる。

あふトリビア
ねぎは日本で古くから食されていますが、古くは「葱(き)」という一文字で表していたため、「ひともじ」と呼ばれていました。今でも熊本県にはねぎを使った「ひともじのぐるぐる」という郷土料理があります。


NEWS1 「おいしい日本の逸品」を選定
受賞産品のおいしさを皆さまの食卓にも
地域の農林水産物や食文化を生かした魅力的な産品を発掘するコンテスト「フード・アクション・ニッポン アワード」。国産農林水産物の消費拡大に寄与する事業者・団体の優れた取り組みを表彰するものです。

応募のあった1111産品の中から、一次審査で100産品が選ばれ、最終審査(品評会)で「受賞」10産品を決定しました。これらの受賞産品は、審査委員でもある大手百貨店、流通、外食事業者の販路を通じて、消費者へと届きます。

また、最終審査に先駆けて、公式Webサイトでは「入賞100産品」の中から一般の方々の投票による「消費者投票」も実施され、1産品が選ばれました。

受賞10産品

[写真4]
日和高原ミルクジャム
一般社団法人邑南町(おおなんちょう)観光協会(島根県)
邑南町・坂根牧場産の生乳を使用し、低脂肪乳と砂糖だけで作ったジャム。
[選定:アマゾンジャパン合同会社]

[写真5]
漁師のまかない海苔
株式会社前田屋(広島県)
愛媛県産のバラ海苔のみを使用。独自開発の機械でムラなくそのままの形で焼き上げ、風味も格別。
[選定:イオンリテール株式会社]

[写真6]
野菜シート
株式会社アイル(長崎県)
ペーストにした野菜と寒天だけで作った"紙(シート)"。規格外野菜を使用し、農家の新たな収入源にも。
[選定:株式会社イトーヨーカ堂]

[写真7]
干柿と胡桃(くるみ)と無花果(いちじく)のミルフィーユ
有限会社一善や(京都府)
吊るし柿、くるみ、セミドライいちじくをホワイトチョコレートとビターチョコレートでミルフィーユに。
[選定:株式会社オンワードホールディングス]

[写真8]
OIL SABADINES (R)
駿河燻鯖 オリジナル味・ナチュラル味・ガーリック味
有限会社かねはち(静岡県)
沼津伝統のさば節の製法を取り入れ、素材の良さと燻製のうまみを引き出した。
[選定:株式会社紀ノ國屋]

[写真9]
京さわらの旨味だし
福島鰹株式会社(京都府)
全国初のさわらの煮干しを使用しただしパック。淡白で甘味の強い上品なだしは、さまざまな料理に合う。
[選定:株式会社東急百貨店]

[写真10]
梨フルーツらっきょうディップ(わさび入りタルタルソース)
有限会社田畑商店(鳥取県)
鳥取県の特産品である二十世紀梨と砂丘らっきょうを使用し、うまみを凝縮したタルタルソース。
[選定:株式会社トランジットジェネラルオフィス]

[写真11]
みそまる
株式会社ミソド(神奈川県)
みそにだしと具材を混ぜて丸めた、チョコレートのような見た目の即席みそ汁。無農薬など原材料も厳選。
[選定:株式会社阪急阪神百貨店]

[写真12]
あおさのり納豆
株式会社小杉食品(三重県)
三重県産スズオトメ大豆100パーセントの小粒納豆に、伊勢志摩産あおさを使ったタレをあわせた一品。
[選定:株式会社フォーシーズ]

[写真13]
糸島産ふともずく
株式会社アジアン・マーケット(福岡県)
通常のもずくより太く、麺のような食感が楽しめる。地元高校などと連携したプロジェクト商品。
[選定:株式会社ローソン]

消費者投票「FAN特別賞」受賞産品
[写真14]
牛窓ホワイトマッシュルームの食べるドレッシング
岡山ルートサービス株式会社(岡山県)
岡山県牛窓産のホワイトマッシュルームのうまみと食感を活かした、今までにない新しいドレッシング。


NEWS2 森のベストショットを大募集
森に親しむフォトコンテスト
わたしの美しの森 フォトコンテストでは、林野庁で選定した「日本美しの森お薦め国有林」(※)をはじめとする日本国内の森林や山村地域の魅力的な風景・場面を撮影した写真を募集中です。

フォトコンテストによって、多くの人に森林・山村の魅力が伝わり、山村地域との交流・理解が深まることなどが期待されています。最優秀作品には林野庁長官賞が、ほかにも各賞が授与されます。

コンテストでは景観のみならず、森の動植物や森での体験の写真なども幅広く募集対象となります。森林の美しさや感動が伝わる写真の応募をお待ちしています。

全国で「レクリエーションの森」として整備されている中から選ばれた、93カ所の森林。

[写真1]
食事中のモモンガ(然別湖/北海道)。

[写真2]
山の目覚め(朝日連峰/山形県)。

わたしの美しの森 フォトコンテスト
募集期間:
平成29年12月11日(月曜日)~平成30年2月13日(火曜日)
募集部門:
景観部門:森の絶景・森から見える眺望など森の風景を撮影したもの
生命部門:森で育まれる生命・動植物の営みを撮影したもの
体験部門:森での体験・活動・発見を撮影したもの

詳細はこちらへ!
わたしの美しの森 フォトコンテスト
http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/kokusou/171120.html


NEWS3 日本全国のご当地鍋を食べ比べ
冬の風物詩である「鍋」。各地にさまざまな鍋料理が存在し、その地域・家庭ならではの食材や調理方法があって、寒い時期の食卓に欠かせません。

そんな全国の自慢の鍋料理が集結するイベント「ニッポン全国鍋グランプリ」が、今年も埼玉県和光市で開催されます。これは、郷土料理から創作料理までいろいろな種類の鍋料理を持ち寄った60チームが一堂に会する日本最大級の鍋料理コンテスト。来場者の投票により、その年の「ご当地鍋日本一」を選出します。参戦する鍋料理は、必ず「安心安全な国内食材資源・ご当地食材」を加えることが条件です。

当日はグランプリ(金の鍋賞)、準グランプリ(銀の鍋賞)、第3位(銅の鍋賞)など各賞が決定されます。さまざまな創意工夫あふれる鍋料理が勢ぞろいする楽しいイベントに、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

[写真3]
グランプリの「もちぶた炙りチャーシューバージョンとん汁」(千葉県八千代市)。

[写真4]
準グランプリの「牛すじシチュー鍋」(埼玉県和光市)。

[写真5]
各ブースでオリジナリティあふれる鍋料理を提供。

[写真6]
広い会場に10万人以上がつめかけ、自慢の鍋料理に舌鼓をうった。

写真はすべて平成28年度のものです。

[画像]
ニッポン全国鍋グランプリのキャラクター・にこむっち。

ニッポン全国鍋グランプリ2018
開催日時:
平成30年1月27日(土曜日)、28日(日曜日)10時~15時
開催場所:
埼玉県和光市役所内市民広場特設会場

詳細はこちらへ!
ニッポン全国鍋グランプリ
http://wako-sci.or.jp/nabe[外部リンク]


多面的機能支払交付金[第7回] 鴨がたくさん集まる環境を
石川県加賀市の片野鴨池(かたのかもいけ)は、ラムサール条約にも登録されている湿地で、その周辺地区を含め全国有数の渡り鳥の越冬地です。また、昔からかんがい用水池としても地域住民に大切に守られてきました。

しかし、渡り鳥のエサ場である周辺の水田の乾田化が進み、飛来数が減少。このため、住民によって平成16年度から冬季に田に水を張り、渡り鳥のエサ場を作る「ふゆみずたんぼ」の取り組みを始めました。その後、組織を作ってこれを引き継ぎ、さらに独自の取り組みとして秋起こし(秋に田を耕すこと)をした場所を交互に作る「シマシマたんぼ」も実施しています。これにより、エサ場環境はさらに向上しました。ふゆみずたんぼで収穫された米は、ブランド米として販売されています。

また、参加する地元の子どもたちには、この活動が環境学習の場になり、地域の豊かな環境を守るという意識を育むことができました。

「ふゆみずたんぼ」は渡り鳥のオアシス

[写真7]
渡り鳥は昼間は池で過ごし、夜間はエサを求めて水田にやってくる。

[写真8]
シマシマたんぼでは、秋起こしによって土にすき込まれた稲わらは肥料になる。残った稲の二番穂や落ちたもみなどは渡り鳥のエサに。

[写真9]
田への水入れ作業には、地元の子ども会も参加。環境教育活動もあわせて実施。

多面的機能支払交付金とは…
農業・農村の有する多面的機能が、適切に維持・発揮されるよう、農用地や水路、農道等の地域資源を保全している地域の共同活動を支援するための交付金です。

取材・文/細川潤子

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