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農林水産省

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18年11月号 文字情報

aff(あふ)agriculture forestry fisheries:November 2018

平成30年11月1日発行(毎月1日発行)


[表紙]
今月の「手」

加藤 陽大(はると)くん
お母さんと初めて作った味噌汁を手に
撮影/千倉志野


CONTENTS

  • 連載 私のおもいで弁当[岐阜県]vol.7 … 2ページ
  • 特集1 和食再発見 … 4ページ
  • 特集2 新そば … 14ページ
  • 全国の日本一を訪ねて vol.7 … 18ページ
  • MAFF TOPICS … 20ページ
    あふラボ
    抹茶に適した新品種誕生
    News
    子どもたちが「和食」で競う
    「和食の日」イベント開催
    魚料理のグランプリが決まる
    そばと日本酒の祭典
  • 読者の声 … 23ページ

今月のクイズ

和食の基本形である、汁物1品、おかず料理3品の献立を何と言うでしょうか。(答えは23ページ)



広報誌『aff(あふ)』について
農林水産業や農山漁村は、食料の安定供給はもちろんのこと、国土や自然環境の保全、良好な景観の形成などの多面的機能の発揮を通じ、国民の皆さまの毎日の生活において重要な役割を担っております。また、農林水産行政は、生産などの現場に密着したものであると同時に、毎日の生活に深く関わっています。農林水産省では 「aff」を通じ、農林水産業における先駆的な取り組みや農山漁村の魅力、食卓や消費の現状などを紹介しております。

Webサイトのご案内
「aff」は農林水産省のWebサイトでもご覧になれます。
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/

本誌に掲載した論文などで、意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。


私のおもいで弁当

子どもたちに伝えたい郷土料理や懐かしいふるさとの食材を使ったお弁当を、著名人が、お弁当へのあふれる想いと共に紹介します。全国のふるさとの美味を、あなたもお弁当に入れてみませんか?


【vol.7】岐阜県 栗

日本原産の栗は和栗とも呼ばれ、天津甘栗などに使われる中国産の栗とは種類が異なる。和栗は他の種類に比べて甘みは少ないものの、上質な風味があるのが特徴。近年、品種改良により渋皮が簡単にむける品種も開発されている。

[写真1]


[写真2]
鈴木ちなみ
Chinami Suzuki

1989年生まれ。岐阜県・多治見市出身。モデル・タレント・女優として活躍中。料理は食べるのも作るのも好き。現在、岐阜のさまざまな農畜産物を紹介する「鈴木ちなみの元気のみなもと~ちなみな!~3rd Stage」(岐阜放送)絶賛放映中!

[写真3]
鈴木ちなみさんの実(みの)り弁当


大きく二つに分かれる岐阜県の食文化

今、飛騨・美濃観光大使をやらせていただいています。そのおかげで、ふるさと岐阜のおいしい料理や食材にたくさん巡り合っています。岐阜県は北にある飛騨地方と、名古屋に近い南部の美濃地方とでは、食文化がだいぶ異なるんです。私は南の多治見市出身なので、飛騨地方に出かけると初めて知る味がたくさんあって驚かされています。

高山で作られている「こもどうふ」はその最たるものでした。最初は何を食べたのか分からなくて「これ何ですか?」と尋ねたくらい。味がよくしみこむところは、高野豆腐に近いのかな。とってもおいしかったです。

飛騨地方の料理の中には、お弁当に入っていたりして、子どものころから親しんでいた味もあります。「漬物ステーキ」は白菜の漬物を炒めて卵を絡めたもので、漬物の塩味でご飯をたくさん食べてしまう、ちょっと危険!?な料理です。


食材の宝庫を代表する秋の味覚は栗と柿

「秋は食べるのに忙しい」と感じるほど、岐阜は秋の味覚にあふれています。

なかでも栗は真っ先にあげたい岐阜の自慢。特に恵那栗(えなぐり)は、栗きんとんで全国に知られていますが、私はやっぱり栗ご飯にして食べるのが楽しみでした。お弁当に入れてご飯が冷めてしまっていても、ホクホクした栗のほのかな甘みは、むしろ引き立っていて、大好きなお弁当のご飯だったな。

お弁当のおかずと言えば、やっぱり明方(みょうがた)ハムははずせない一品です。厚切りにして焼くだけで立派なおかずになるので、手の込んだ栗ご飯を作るとき、母や祖母にとっては、とても重宝がられたかもしれませんね。

そして秋の果物と言えば、栗と同じくらい楽しみなのが柿です。私はしっかり食感のあるカリッとした柿も、ちょっとトロミの出た柔らかい柿も両方大好き。目がないので、お弁当のデザートに持っていくことがありました。そのころは知らなかったのですが、岐阜県には「天下富舞(ふぶ)」という高級柿があります。産地で食べるとひと味もふた味も違うので、ぜひ岐阜に食べに来てください!


[レシピ]栗ご飯

【材料(4人分)】

うるち米…2合から、大さじ4減らした量
もち米…大さじ4
栗(皮つき)…500グラム
塩…小さじ1
酒…大さじ1

【作り方】

  1. 栗を洗い、40度のお湯に30分ほど浸けて皮を柔らかくする。皮をむき、水に20分から30分つけてアクを抜き水気を拭き取る
  2. うるち米ともち米を合わせて研いで、ザルにあげ15分ほど水気をきる。炊飯器の釜に入れ、2合の目盛りまで水を入れ30分間浸す
  3. 水に浸した後、塩と酒、栗を加えて炊き上げれば完成。冷めても、もっちりとした仕上がりに

監修/飯倉孝枝、取材・文/柳澤美帆、撮影/三村健二


特集1 和食再発見 世界が認める日本の味

ユネスコ無形文化遺産登録から5年。「和食」は今、世界に広がっています

[写真1]
和食の写真

[写真2]
アンジェイ(イギリス)
名古屋のひつまぶし、広島のお好み焼きなど地方のおいしい料理が魅力的です。

[写真3]
ヒューゴ(香港)
和食は味が繊細で、素材の味が生かされる料理が多いと思います。

[写真4]
シーシー(中国)
刺身や納豆などシンプルな和食が好きです。

[写真5]
タオ(ニュージーランド)
ベジタリアンなので豆腐をよく食べます。ヘルシーで栄養価が高く大好きです。

[写真6]
マック(アメリカ)
和食は、肉、野菜、豆腐、のり、などさまざまな栄養素をバランスよく取れるのがいいですね!

[写真7]
エロディー(フランス)
焼き芋のおいしさにびっくり。さつまいもはフランスにもあるけど、日本のような食べ方はしない。芋の本来の甘みが生かされていると思います。

[写真8]
シェリル(シンガポール)
おだしやこんにゃくなど素朴なものが好き。薄味でも深みを感じます。

世界に広がる和食人気

2013年に「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されて、早5年。少子高齢化とともに、生活様式の変化による国内での需要減を食い止めるため、和食文化の保護・継承を念頭に置いた登録でしたが、一方で海外での和食人気は右肩上がりです。世界的な健康志向もあり、日本食レストランが2013年の5.5万店から2017年には11.8万店と大幅に増加。これを裏づけるように、2013年には5,505億円だった農林水産物の輸出額が、2017年には8,071億円に増大しました。2018年の上半期も前年同期比15.6パーセントの伸び率を記録するなど、2019年の農林水産物・食品の輸出額1兆円という目標に向けて、明るい兆しが見えています。

また、訪日外国人も増え続けており、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を目前に、いわゆるインバウンドブームが和食人気と重なっていることも見逃せません。ジェトロ(日本貿易振興機構)の調査によると、外国人が好きな外国料理では日本料理が1位となっており、好きなメニューでは「寿司・刺身」(1位)、「焼き鳥」(2位)、「天ぷら」(3位)となっています。

この和食人気の背景には「味の良さ」、「健康への配慮」、「洗練され、高級感がある」といった理由があります。米や緑茶などの主力農産物以外にも、味噌やしょうゆなどの調味料、ゆずやわさびまでも人気となるなど、その風雅な味わいとともに、奥深い和食文化がさらに世界に浸透していくことは、間違いなさそうです。

[図1]
外国人が訪日前に期待すること
【1位】「日本食を食べること」(複数回答で68.3パーセントが回答)
【2位】「ショッピング」
【3位】「自然・景勝地観光」
観光庁「訪日外国人消費動向調査」(2017年確報値)

[図2]
商業用米の輸出量と金額の推移
2013年の3,121トン(10億3000万円)が2017年は11,841トン(31億9800万円)と3.8倍に
財務省「貿易統計」をもとに農林水産省作成

[図3]
外国人が好きな外国料理
【1位】「日本料理」(複数回答で83.8パーセントが回答)
【2位】「中国料理」
【3位】「イタリア料理」
ジェトロ「日本食品に対する海外消費者アンケート調査(中国、香港、台湾、韓国、米国、フランス、イタリア)7カ国・地域比較」(2013年3月)

[図4]
海外にある日本食レストランの数
2013年の5.5万店が2017年は11.8万店と2.1倍に
外務省調べにより、農林水産省において推計


和食の危機

みなさーん!和食食べていますか?

作るのも、食べるのも…危機的な和食の現状

海外で高い人気を誇る一方、私たちの日常食からは、実は和食がどんどん減ってきている現状があります。ある統計によると、「和食が好き」な人が9割以上にのぼりましたが、その実態をみていくと、正反対の現状が浮かび上がってきます。

きっかけは、1950年代の物資不足の中で、体位向上のためにパン食・肉食を推奨したことでした(余剰農産物協定、食生活改善運動など)。さらに経済成長の波に乗り、選択肢が徐々に増えていく中で、インスタント食品やファストフード、コンビニ・中食が一般化。平日の夕食作りにかける平均時間が約40分といわれる中で、一汁三菜を理想とし、品数を要する和食は手間がかかると避けられて、単品で食事が成り立つ洋食化が進みます。現実に、2010年には1世帯当たり年間の支出額でパン(23,773円)が米(23,315円)を上回り、その差はさらに広がっています。

また、人口減少と世帯人数の減少、個食化が進む中で、地域や家庭で食文化の継承が行われなくなっていることも問題です。行事食の機会減少、箸の正しい持ち方を4割以上が知らない、だしをとった経験がない人が3割以上などと、和食を取り巻く現状には実に厳しいものがあります。


ありがちな夕食の風景から

一人暮らし歴5年 女性

和食のわの字もなかった。
気がつくとお菓子がメインになっちゃって。朝は納豆ご飯が基本ですけど、カップラーメンでも平気です。実家が新潟なので米は送ってもらって常備があるし、本当は和食も作りたいんです。でも作るとお総菜買うより割高になるんですよね。

【最近1週間の夕食メニュー】
月曜日:野菜炒め、もずく、納豆、ご飯
火曜日:パスタ、ミルクレープ、豆乳
水曜日:一人鍋(豆腐など野菜類にサバ缶)
木曜日:チョコ、ホットの豆乳
金曜日:お総菜(野菜、ハンバーグ)、ご飯
土曜日:(外食)ファストフードのハンバーガー
日曜日:お総菜、チョコブラウニー

[写真1]
火曜日の献立:パスタ、ミルクレープ、豆乳の写真


一人暮らし歴11年 男性

旬がよく分かってないんです。
作るのは蒸し鶏とサラダぐらい。味噌汁はだしをとるって知らなくて、味噌の味しかしなかった(笑)。和食も好きですし冬はおでんとか食べますが、1品ではお腹いっぱいにならないから…。野菜不足はサプリメントで補います。

【最近1週間の夕食メニュー】
月曜日:ラーメン
火曜日:キャベツ、サラダチキン
水曜日:おにぎり、雑穀スープ
木曜日:冷やし中華
金曜日:(外食)焼肉
土曜日:(外食)焼き鳥
日曜日:(中食)たこ焼き

[写真2]
火曜日の献立:キャベツ、サラダチキンの写真


両親と同居中の大学生 女性

料理をする時間がもったいない。
一人暮らしのときは作る時間がもったいなくて、外食かお総菜でした。今は一応手伝うよと言うんですが、母が手伝わせてくれない(笑)。和食も好きですが、だしをとったことはないです。でも結婚するときは、祖母が仕込んであげると言ってくれているので、ちょっと安心かな。

【最近1週間の夕食メニュー】
月曜日:ロールキャベツ、ぎょうざ、漬物
火曜日:すき焼き
水曜日:クラムチャウダー、から揚げ
木曜日:(外食)カレイの丸揚げ、刺身、うなぎ丼、味噌汁、トマトと玉ねぎサラダ
金曜日:しゃぶしゃぶ、カレー
土曜日:マーボーなす、里芋スープ、カキチーズ、サーモンと玉ねぎサラダ、肉巻きほうれん草
日曜日:もんじゃ焼き、ステーキ

[写真3]
水曜日の献立:クラムチャウダー、から揚げの写真


子ども2人と夫婦の4人暮らし 共働きの女性

保育園が食育もしっかりしてるので…。
下の子の保育園で行事食が出るから、お月見のときなんか家でもお団子を食べたいといわれて、そのときは買ってきました。和食は好きなので旬にサンマぐらいは食べます。でも作るのは大変なので、麺や丼が多いですね。汁物はないです。

【最近1週間の夕食メニュー】
月曜日:カレー
火曜日:親子丼、お総菜
水曜日:ラーメン、お総菜
木曜日:うどん、お総菜
金曜日:(外食)カルボナーラ、マルゲリータ、プリン
土曜日:手巻き寿司
日曜日:ハンバーグ、お総菜

[写真4]
水曜日の献立:ラーメン、お総菜の写真


[図1]
魚介類の1人当たりの年間消費量
2001年の40.2キログラムから2015年は25.8キログラムに36パーセント減少
農林水産省「食料需給表」1人1年当たり供給純食料の値

[図2]
米の1人当たりの年間消費量
1962年の118.3キログラムから2017年は54.2キログラムに最盛期より54パーセント減少
農林水産省「食料需給表」1人1年当たり供給純食料の値

[図3]
地域や家庭で受け継がれてきた伝統的な料理や作法等を継承し、伝えている国民の割合
2015年の41.6パーセントから2017年は37.8パーセントに10パーセント減少
農林水産省「平成29年度食育に関する意識調査」

[図4]
味噌の1人当たりの年間消費量
1960年の8.8キログラムから2017年は3.7キログラムに最盛期より58パーセント減少
農林水産省「食料需給表」1人1年当たり供給純食料の値


「和食」とは

「和食」には、「自然を尊重する」という日本人のこころに基づく「日本人の食習慣」を前提とした、4つの特徴があります。その特徴と、手軽に取り入れるアイデアを料理家の梶山葉月さんに伺いました。

梶山葉月さん
料理家。CMや広告を中心にレシピ提案・ケータリングを手がける「食」のトータルコーディネーター。日本テレビ系「秘密のケンミンSHOW」フードコーディネートの他、笠原将弘氏の料理書のスタイリングも担当。

[写真1]
梶山葉月さんの写真

多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重

一年のうちで最も栄養価が高く、食材がもっともおいしい季節を旬といいます。旬には出始めの「走り」、ピークとなる「盛り(旬)」、終わりの時期の「名残り」があり、野菜などは生産コストが抑えられる露地物が出回るため、安価なことも見逃せません。

また、旬の食材は香りやうま味が凝縮し、素材自体の味が濃いですね。少ない調味料でも味がしっかりと決まります。季節ごとの特徴もあり、春野菜の苦味やえぐ味も旬ならでは。 暑くて汗をかく季節の夏の野菜が水分を補い体を冷やしてくれる一方、根菜類など冬の野菜は逆に体を温めてくれるので、旬の食材を上手に取り入れたいですね。

[写真2]
魚の写真

[写真3]
野菜の写真

旬は年に1回じゃない?

鰹(カツオ)の旬
黒潮に乗って太平洋を北上する初夏のものを「初鰹」といい、さっぱりとした味わいです。もう一つの旬「戻り鰹」は秋に南下したもので、脂が乗りもっちりとした食感で、「とろ鰹」ともいわれます。初鰹ならたたき、戻り鰹ならステーキもおすすめです。

[図1]
初鰹と戻り鰹の解説図

旬は3度楽しめます
「走り・旬・名残り」と、旬を3期に分けて楽しむ食材がいくつもあります。その代表格がタケノコ。春先の走りは香りがあってやわらかな新タケノコと新ワカメの“出会いもの”、若竹煮がおすすめ。名残りでは、しょうゆを絡めたタケノコの炒めものなど歯ごたえも楽しめます。

[写真4]
タケノコ料理の写真


自然の美しさや季節のうつろいの表現

器や盛り付けも、季節を表す重要な要素の一つ。夏ならガラスや、青の染めつけが入っている磁器の器も涼しげにみえますね。一方で、冬はぽってりとした陶器や、土鍋を囲んで温かみを演出してみては。

また、盛り付けにも一工夫し、野菜を器に見立ててみても粋ですね。例えば、夏はトマトをくり抜いて酢の物を入れたり、冬はゆずを器にし、魚や野菜などを入れると香りが移り、五感で季節を楽しめます。

[写真5、写真6]
季節の移ろいを表現した料理の写真

手軽に季節を取り入れるなら

100円ショップなどで買える抜き型を用いた、野菜の切り飾りもいいですね。桜や梅、もみじやいちょうなど、料理に散らして季節感を演出できます。かまぼこの飾り切りもいろんな種類があるので試してみては。

[写真7]
抜き型の写真


健康的な食生活を支える栄養バランス

栄養バランスが優れているのも和食の特徴の一つ。その基本となる一汁三菜は、千利休が茶の湯を完成させる中、空腹で茶を飲むことを避けるため供される食事として成立した、懐石料理に由来しています。

このメニュー構成は実に合理的です。主食のご飯はどんなおかずとも相性が良く、主菜の肉や魚でタンパク質を、副菜でビタミンやミネラル源となる野菜を取る。漬物や発酵調味料で味のバランスをはかりつつ消化を促し、汁物で体を温める。脂質の取り過ぎによるカロリー過多が懸念される欧米で、低カロリーな和食が人気なのもうなずけます。

とはいえ、忙しい生活の中で一汁三菜を用意するのが大変なら、一汁一菜でも構いません。注目したいのは汁物です。だしで野菜を煮れば、野菜のうま味も出てきます。味噌汁はいろんな食材との相性も良く、卵を落としたり、肉を入れたりして動物性タンパク質も一緒に取ると、ボリュームが増して栄養バランスも良くなります。あとは、漬物におひたしなどの1品を足せば、りっぱな一汁一菜の出来上がりです。

一汁三菜

[写真8]
【一汁】汁物:水分補給のほか、舌をリセットし、食べやすさを促す役割も。
【一菜】主菜:肉や魚、卵などでタンパク質を取るメインディッシュ。
【二菜・三菜】副菜:煮物やあえ物など、野菜中心でビタミン・ミネラルを補給。
【主食】ご飯:白米はもちろん、栄養豊富な五穀米や玄米もおすすめ。
【香の物】漬物:酸味や辛味で食欲を増進し、消化を助けます。栄養も豊富。


一汁一菜

[写真9]
汁物を具だくさんの豚汁にして、ご飯以外は納豆、卵、漬物と、簡素ながら栄養は十分。


年中行事との密接な関わり

[写真10]
祝い肴(ざかな)3種「黒豆」、「田作り」、「かずのこ」の写真

行事食の代表格はおせち。まずは基本となる祝い肴(ざかな)3種「黒豆」、「田作り」、「かずのこ」にトライしてみては。地域ごとに多少異なりますが、「これがあればお正月を迎えられる」といわれ、カジュアルなワンプレートおせちにしても素敵です。

やっぱりお重にしたいなら、友達数人でのおせち合宿もおすすめです。手分けして作れば時短になり、食材が高騰する時期に経済的な負担も減り、楽しく作れていいことづくしですよ。

五節句について

節句は、季節の変わり目に無病息災、豊作、子孫繁栄などを願いお供えや食事をして、邪気をはらうもの。文化や風習を理解しつつ、料理もひとひねりすると、楽しめるのでは。

1月7日:(人日(じんじつ)の節句)春の七草がゆ
3月3日:(上巳(じょうし)の節句(桃の節句))ちらし寿司
5月5日:(端午(たんご)の節句)ちまきや柏もち
7月7日:(七夕(しちせき)の節句)そうめん
9月9日:(重陽(ちょうよう)の節句)菊料理

[写真11]
型に入れたケーキ寿司にして、楽しくデコレーションしましょう

[写真12]
そうめんを天の川に見立て、星型に切った野菜を散らしても素敵です


「うま味」の魅力

あなたは本当に、「うま味」を知っていますか?

野永喜三夫さん
京都の名店「菊乃井」で修業の後、「日本橋ゆかり」三代目若主人に。2002年、「料理の鉄人JAPAN CUP'02」で総合優勝。2015年イタリア・ミラノ万博で日本料理を披露。伝統を守りながらも、新しい日本料理を発信し続けている。

[写真1]
野永喜三夫さんの写真

第五の味覚「うま味」

私たちが感じる基本味(きほんみ)は、「甘味」、「塩味」、「苦味」、「酸味」、そして「うま味」の5種類に分類されています。この5つの味の組み合わせによって、さまざまな味わいを楽しむことができるのです。

日本では奈良時代より昆布や鰹を珍重していて、江戸時代にはだしをとることが一般化していました。そして1907年(明治40年)、化学者の池田菊苗博士により、昆布の味わいが「グルタミン酸」によるものだと発見。この味を「うま味=Umami」と命名し、第5の味覚は、今では世界の共通語となっています。

[写真2]
だしの写真

[写真3]
昆布:グルタミン酸

[写真4]
鰹節:イノシン酸

[写真5]
干し椎茸:グアニル酸

[写真6]
煮干し:イノシン酸

[図1]
五味(甘味、うま味、酸味、塩味、苦味)の図

[写真7]
池田菊苗博士


日本橋ゆかり 野永喜三夫さんに聞く「だし」と「うま味」

僕は小さいころから朝はご飯なんだけど、小学生時代のある日の朝、味噌汁を飲んだときに「あ、まずい」って思ったの。「なんかいつもと違う」と。そしたらお袋が、「だし入れるの忘れた…」って言ったわけ。僕が気付いたその味の差が、「うま味」だったわけです。今、だし入り味噌が多いですね。それって怖いことで、だしをとるということを知らないままになってしまう。基本を踏まえることはやはり大切です。

相乗効果でうま味が増す

だしのうま味は、昆布と鰹節のようにグルタミン酸とイノシン酸、干し椎茸のグアニル酸などの掛け合わせによる相乗効果で、うま味が増すことも覚えておいてほしいです。これは他の食材や調味料も同様で、例えば僕が「トマ味噌」と呼んでいるトマトと味噌のソースや、味噌汁にパルメザンチーズなんかもとても合う。時代に合わせて和食も進化していくことが必要ですね(笑)。また、それぞれの食材が熟成すると、さらにうま味が増すことも覚えておいてほしいです。

ただ矛盾しますが、調理時間が取れない中、だし入り味噌やだしパックが時代に合ってることも確かです。もっと言えば顆粒(かりゅう)だしで構わない。そこに鶏ガラスープの素などを少し足すと、味に深みが出ますよ。気をつけたいのは、レシピ通りよりも少し少なめにすること。食材からもうま味が出ますから、十分味が出るんです。


水だしも手軽で便利

前の晩に水に昆布を入れておくだけでできる水だしもいいですね。常温でも時間をかけて昆布が開き、ゆっくりうま味が出てくるので柔らかい味になります。朝にひと煮立ちするとそのまま味噌汁が作れますから。だしは毎日作る必要もなく、3日分ぐらいをまとめて作って冷蔵庫や冷凍庫で保存して使い分けると便利ですね。

[写真8]
野永喜三夫さんの写真


[野永シェフ直伝]おいしいだしのとり方

[写真9]
【材料】
水…1升(1800cc)
真昆布…25グラム
鰹節…20グラム

[写真10]
(1)昆布に汚れがある場合は軽く拭き取り(表面の白い粉はそのままで大丈夫)、鍋に投入します。火加減はごく弱火で、じわじわと火を入れていきます。

[写真11]
(2)30分程かけて60度程度まで温度を上げることで、じっくりとうま味を引き出します。

[写真12]
(3)時間をかけて煮出した昆布は、ふやけて元の3倍から4倍の厚みになります。指でつまむと弾力があります。

[写真13]
(4)そして鍋底から気泡がポツポツと上がってくる85度程度まで温度を上げてから味見をし、だしが出ていれば昆布を取り出します。

[写真14]
(5)さらに沸騰する直前まで温度を上げ、鰹節を投入し、火を止めます。鰹節が完全に沈殿するまでそのまま待ちます。濁りが出るので、かき混ぜないように。

[写真15]
(6)キッチンペーパーを挟んだザルでだしをこします。鰹節を絞るとえぐ味が出るため、水分が切れるまでゆっくりと待ち、完成。

[写真16]
左から水、昆布だし、合わせだし。上品で透明度の高い昆布だしは、すまし汁やおひたしなどに。合わせだしは乳白化する一方でうま味も強く、煮物をはじめ幅広く使えます。

こうしてとっただしが味と香りのいい「一番だし」。さらに煮込むことでとれる「二番だし」は雑味が出るものの、味の濃い料理にうま味を与えてくれます。使い終わっただしガラは、佃煮などの一品に仕立てると、無駄がありません。


だしを手軽に味わうには

日本橋だし場
[写真17、写真18]
創業300余年の鰹節専門店にんべんが展開する、手軽にだしを味わえるスタンディングバー。だしが飲める他、「一汁一飯」をコンセプトにした、うま味たっぷりのかつぶしめしやだしスープも人気です。
東京都中央区日本橋室町2-2-1 COREDO室町1・1階
営業時間:10時から19時
ランチメニュー:11時から14時(テイクアウト可)

[QRコード1]
http://www.ninben.co.jp/honten/dashiba/〔外部リンク〕

雅結寿(みやびゆいのじゅ)
[写真19、写真20]
コーヒーをドリップするように、だしをドリップして味わえる、「のむ天然おだし」の専門店。鹿児島県産の本枯れ節と北海道産真昆布を使用した「極み本枯れ節」をはじめ、お茶漬け用のだしもあります。
東京都世田谷区下馬2-27-14 玉川B&Sビル1階
営業時間:11時から19時
定休日:月曜日、火曜日(祝日除く)

[QRコード2]
http://miyabi-yuinojyu.com/〔外部リンク〕


Let's!和ごはん

忙しいとつい避けがちな和食ですが、栄養満点な味噌汁ならおかず要らずでとっても簡単!加藤さん親子が、料理家の梶山先生にコツを教わりながら、おいしい味噌汁作りに挑戦します。

[写真1]
加藤さん親子の写真。私たちが作ります!

これ一品でおかず代わり!秋の旬がゴロゴロ味噌汁

【材料4人分】
小松菜…1袋
しめじ…1パック
長ネギ…適量
さつまいも…150グラムから200グラム
水…1リットル
だしパック…2個
味噌…大さじ4から5

[写真2]
材料の写真

【ポイント】「彩り」と「食感」でさらにおいしく
青ネギを散らす、大根やえのきなど食感のある野菜を入れるなど、少しの工夫でもっとおいしい味噌汁に!


(1)まずは材料を切ろう

さつまいもや小松菜は食べやすい大きさに切る。しめじは石づきをとり、小ふさに分ける。長ネギは小口切りにする。

[写真3]
材料を洗う加藤さん親子の写真

【ポイント】具材の切り方で満足感もアップ

[写真4]
具材は大きさをそろえて切ると火の通りが均一に。大きく切れば食べ応えのある味噌汁になります。


(2)だしをとって、具材を煮よう

鍋に水、だしパック、さつまいもを入れ中火にかける。沸騰してきたら、少し沸いているくらいの弱火にしてしめじを入れ、具材に火を通す。

【ポイント】味の決め手はしっかりおだし

[写真5]
だしは濃いめに利かせましょう。だしパックなら簡単にだしをとれるので、和食がグッと身近になります。

【ポイント】「時間差煮」で煮崩れを防ぐ

[写真6]
火が通りにくい根菜類は水から煮はじめ、逆に葉物野菜は、食感が失われないように味噌をとく直前に鍋に入れましょう。


(3)味噌をお鍋に投入

小松菜を入れて煮立たせたら、だしパックをとり出す。火を消して味噌をとき入れ、再び火をつける。ぐらっとさせたら火を止めておわんによそい、長ネギを散らす。
※味噌によって塩分量が違うので必ず味見をしましょう。

【ポイント】味噌のベストタイミング
[写真7]
煮立たせると、せっかくの味噌の香りが飛んでしまいます。味噌を入れるのは食べる直前にしましょう。


(4)完成!

おいしそう。いただきます!

[写真8]
完成した味噌汁の写真

[写真9]
食事を取る加藤さん親子の写真


【Column】やっぱり、みんな和食が好き

和食離れが進んでいると指摘される。しかし、白米や調理された米の主食の地位は決して揺らいではいない。おにぎりも丼も人気である。日本人は相変わらず米が好きな国民なのだ。和食は面倒で敷居が高いというのは正しくない。料亭料理だけが和食ではない。和食とはお米のご飯を食べることだ。台所の炊飯ジャーにいつも温かいご飯さえあれば和食は簡単。冷蔵庫に漬物なんかがあればもっと簡単。冷めた味噌汁を温めればもう本格的。カレーや豚カツ、冷凍からあげでも、ご飯を美味しく食べればどれも和食である。なんでもご飯で食べちゃえと私は勧めたい。

[写真10]
一般社団法人 和食文化国民会議 会長:伏木 亨さん


和食についてもっと知りたいなら

おうちで和食~和食で子育て応援サイト~

「おうちで和食」は、日本の食文化や子育てに関する情報を発信している、農林水産省の特設サイト。普段当たり前だけれど、実は奥深い日本の食文化に触れ、親子で「食べる力」を育んでもらうことを目的としています。栄養士・保育士向け研修会や子育て世代向けワークショップの情報は、子育て中のパパやママにも役立つこと間違いなしです。

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Webサイトのスクリーンショット

[QRコード1]
http://ouchidewashoku.com/〔外部リンク〕


Let's!和ごはんプロジェクト

味覚が形成される子どものうちに和食の体験機会を増やし、和食文化の保護・継承につなげていきたいという想いから生まれたプロジェクトです。プロジェクトのロゴマークは、「和ごはん」を食べて子どもがすくすくと元気に育つ姿をイメージしたもの。子どもたちや子育て世代に、身近・手軽に健康的な「和ごはん」を食べてもらう活動を官民恊働で行っています。

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Let's!和ごはんプロジェクトのロゴマーク

[QRコード2]
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/culture/wagohan_project.html


グッズを使えば和食がもっと簡単に!

身近・手軽に和食を食べる機会を増やしてもらいたいと、Let's!和ごはんプロジェクトのメンバー、株式会社にんべんと江崎グリコ株式会社が出している「お手軽和ごはんグッズ」をご紹介します!

[写真12、写真13]
にんべんの「農家の乾物物語」とん汁の素
国産のみずみずしい大根とにんじん、椎茸、ごぼうを丁寧に乾燥させました。別添の本枯鰹節だしパックと豚肉、味噌を加えて簡単にとん汁が作れます。

[写真14、写真15]
グリコの炊き込み御膳
具だくさんだから、炊くだけで逸品。手間暇かけずに豪華な食卓の出来上がり。だしは、さば節、むろあじ節、宗田がつお節、かつお節からとった黄金すましだしをブレンドしました。


カメラマン/千倉志野、レシピ監修/梶山葉月


特集2 新そば

秋に収穫されたばかりの新そばは、この時期ならではの新鮮なおいしさを楽しめます。知っているようであまり知られていない、そばの歴史や産地、おいしい食べ方までをご紹介します。

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秋の山形県のそば畑
日本三大急流の一つ、最上川を擁する山形県。その澄んだ水源と水はけの良い土壌、寒暖差の大きな気候風土によって、デンプン質が多く、うま味の強いそばの産地として知られています。秋になると、あたり一面が白くかれんなそばの小花で埋め尽くされ、新そばの季節到来を告げてくれます。

縄文時代から日本人を救ってきたそば

そばの原産地とされているのは、中国南部。日本へは縄文時代に伝わり、山間部や痩せた土地でも育ち、短期間で収穫できることから栽培が広がりました。平安時代にまとめられた『続日本紀(しょくにほんぎ)』にも、救荒作物としてそばの栽培を推奨したという記録が残されています。

ところでそばが「麺」として親しまれるようになったのは、江戸時代以降。それまでは、黒く硬い殻を外したそば米を炊いた「そば粥(がゆ)」や、挽(ひ)いたそば粉を水か湯で練った「そばがき」などが一般的な食べ方だったようです。包丁で細く切った麺状のそばは「そば切り」と呼ばれ、手軽に素早く食べられることから江戸で大流行。江戸時代中期以降、当時の大都市、江戸では約100メートルに1軒、4000軒ものそば屋が軒を連ねていたといわれています。


新そばならではの色と香りを楽しめる

一般的に70日から80日で収穫できるそば。かつては高原地帯や山あいの斜面などを利用して栽培されていましたが、現在は平坦地も含めた各地で、他の作物からの転作作物としても栽培されています。よりおいしく、多収穫ができるそばをめざして品種改良が進み、いまや各地でさまざまな品種のそばが育てられています。

秋は、新そばのシーズン。一般的に9月下旬から10月中旬に収穫される「秋そば」が出回り、新そばならではの、香り豊かなそばを楽しめます。

[図1]
栽培カレンダー
春にタネをまいて夏に収穫する「夏そば」、夏にタネをまいて秋に収穫する「秋そば」に大きく分けられ、それぞれの作型に適した品種が用いられています。寒暖差のある北海道・本州で種蒔(タネまき)の時期が違うところも注目です。

【北海道】
秋そば:種蒔…6月ごろ、開花…7月中旬ごろから8月中旬ごろ、収穫…9月ごろ

【本州】
夏そば:種蒔…4月上旬ごろから5月上旬ごろ、開花…6月ごろ、収穫…7月中旬ごろから8月上旬ごろ
秋そば:種蒔…7月中旬ごろから8月中旬ごろ、開花…8月中旬ごろから9月中旬ごろ、収穫…9月下旬ごろから10月中旬ごろ


そば小噺(こばなし)

古くから親しまれてきたそばにまつわる雑学を、いくつかご紹介します。


ことわざ

【うどん一尺、蕎麦(そば)八寸】
一尺は約30.3センチメートル、八寸は約24.2センチメートル。それぞれのいちばん食べやすいとされる長さを表した言葉。

【蕎麦と大麦】
そばとオオムギは、生育期間が短いため、凶作と感づいたときに急いでまくのによい作物。


文豪とそば

「鬼平犯科帳」などの時代小説で知られる昭和の作家、池波正太郎は食のエッセイストとしても知られ、「そば前なくしてそば屋なし」と語っていました。「そば前」とは、そばが茹で上がるのを待つ間、酒と肴(さかな)をいただく粋な楽しみ方です。

[イラスト1]
そばのイラスト


落語

「そば清」は、大食い自慢の清兵衛が謎の薬草を使い、そばの大食いに挑戦する演目。じつは薬草は人間を溶かすもので、最後はそばが羽織を着て座っていた…という怖いオチに驚かされます。

[イラスト2]
「そば清」のイラスト


食べなきゃ損損!新そば名産地

秋は、新そばならではのおいしさが楽しめるシーズン。秋が深まるにつれ、その豊かな香りはしだいに落ち着き、熟成により甘みが増してまた違うおいしさが待っています。

【北海道】日本一の作付面積でオリジナル品種を栽培

全国のそば作付面積のうち、約3分の1を占める北海道。とくに北部の幌加内町は、大規模な産地として有名です。北海道のオリジナル品種に「キタワセソバ」、「レラノカオリ」などがあります。

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ニシン漁で栄えた江差町などでは、かけそばの上に身欠きニシンの甘露煮をのせたにしんそばが名物。


【山形県】農村地帯に伝わった素朴な味わいのそば

「そば街道」と呼ばれる地域がいくつかあり、古くから農作業後にそばを振る舞う風習がありました。県の育成品種に「最上早生」、「でわかおり」、「山形BW5号」などがあります。

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“そば振る舞い”の風習がルーツとされる「板そば」。太くてかみ応えのある田舎そばです。


【福島県】独特のそばの打ち方や食べ方も発達

南会津の山間部ではそば生地を折らずに何枚も重ね、布を裁つように切る「裁ちそば」が主流。平成19年度より県のオリジナル品種「会津のかおり」の種子生産が開始されました。

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喜多方市山都町に伝わる「水そば」。水につけて味わうことで、そばの豊かな風味を楽しめます。


【茨城県】ブランド品種「常陸秋そば」の産地

江戸時代から知られていたそばの産地。県が昭和60年に在来種を選抜育成した「常陸秋そば」は実が大きく、甘み、香りともに全国トップクラスのそばとして知られます。

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秋そばの豊かな風味を楽しめる茨城特産のそば。県内150店以上の常陸秋そばの店があります。


【長野県】山あいの傾斜地が育んだ良質なそば

高原地帯や山あいの傾斜地で古くからそばが育てられてきました。江戸時代中期には、戸隠そばの名が全国的に知られるように。県の育成品種「信濃1号」などがあります。

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更科(現・千曲市)の出身者が考案したと伝わる「更科そば」。そばの実の中心部を使う白い麺が特徴です。


【福井県】栽培されているそばは在来種が主流

小粒で風味が強い「大野在来」など、古くから各地に伝わる38種以上の在来種が現在も主流となっています。江戸時代に大根おろしを添える食べ方が始まったと伝えられています。

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ぴりっと辛みのある大根おろしとともに、ネギや鰹節を添えた「越前おろしそば」が名物です。


取材・文/本吉恭子、監修/前島敏正



郷土色豊かな新そばを楽しもう

古くから地域に伝えられてきた、そばの打ち方や食べ方はさまざま。その土地で採れる農産物や、山海の恵みを使ったそばの味わい方が伝えられてきました。また、現在は全国各地で多くの品種のそばが栽培され、品種による香りや味わいの違いも楽しめます。

そんな郷土色豊かなそばの新鮮な香りや甘さを楽しめるのは、新そばの季節ならでは。新そばの黄緑色を帯びた美しい色を眺めつつ、秋にしか出会えない豊かな香りを存分に楽しみましょう。

新そばの風味を楽しむ食べ方

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まずは眺めて、香りを確かめる。そばの切り口がピンと角ばっているとつゆが絡みやすい。

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数本を箸でとり、つゆにつけず、そのまま食べる。そばそのものの味わいがよく分かる。

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わさび以外の薬味をつゆに入れ、そばを3分の1だけつゆにつけて食べる。こうすると、そばとつゆの味の調和をより楽しめる。わさびはそばに少しずつつけていただく。

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まずはそば湯だけを飲んで、そこにつゆを少しずつ注いで飲む。体が温まり、そば湯そのもののおいしさもしっかり楽しめる。

お話を聞きました

前島敏正さん
そば研究家。蕎麦鑑定士、江戸ソバリエおよびルシック(ソバリエ上級者)の資格をもつ。ブログや本などでそばの情報を発信。セミナー主宰など、幅広く活動している。

[写真11]
前島敏正さんの写真


撮影/小倉和徳、撮影協力/芳とも庵


あっぱれ 全国の日本一を訪ねて vol.7

塗箸の生産量日本一!福井県 小浜市

小浜市は全国の8割を生産する塗箸の産地。江戸時代からの伝統を持つ若狭塗箸は、美しい模様が特徴です。匠の技が生み出す逸品が、和食の味を引き立たせます。


海底をイメージした美しい模様が特徴

若狭塗が誕生したのは、江戸時代初期のこと。小浜藩の漆職人が、中国の漆器をヒントに、海底の様子をイメージして模様を考案したのが始まりです。以来、歴代藩主によって手厚く保護されて発展を続け、江戸時代の中後期には、200種類にも及ぶ塗りの技法が完成していたといわれています。明治以降もその技は受け継がれ、1978年には経済産業大臣から「伝統的工芸品」の指定を受けました。

若狭塗の最も特徴的な技法が、貝殻などでつけた模様の上に漆を何度も塗り重ねた後、表面を研いで浮き上がらせる「研ぎ出し」。キラキラと漆に映える美しい模様に、職人の技が光ります。

[写真1]
塗箸制作の様子

[図]
福井県 小浜市
【DATA】若狭湾に面し、古代から大陸との交易で栄えた町。港で陸揚げされた日本各地の食材だけではなく、大陸文化なども、「鯖街道」を経て京都や奈良へ運ばれた。


小浜市ってこんなところ

その1 鯖(さば)街道

[写真2、写真3]
鯖街道の起点として知られる「いづみ町商店街」の中には、起点を示す石碑があります。また、熊川宿(若狭町)などの宿場町も栄えました。


その2 小浜よっぱらいサバ

[写真4]
近年サバの水揚げ量が激減している小浜。「鯖街道の起点」である小浜のサバを復活させようと、市が主体となり、酒粕を混ぜた餌を使った養殖に取り組んでいます。


その3 食のまちづくり条例

[写真5]
豊富な食材を朝廷に献上する「御食国(みけつくに)」と呼ばれた歴史を背景に、全国初の「食のまちづくり条例」を制定。キッズ・キッチンなどを通じて「義務食育」を行っています。


日本一にズームイン

繊細で手間も掛かる分丈夫で長持ち

若狭塗箸は、木地に下地漆を塗る作業に始まり、模様をつけ、漆や金箔を重ね、「研ぎ出し」や艶を出す「摺(す)り」を繰り返し、1年かけて作ります。何度も漆を塗り重ねるので、熱や水に強く、長持ちするのが特徴です。また、漆器の産地の多くは分業制ですが、ここでは工程を一人で行います。

若狭塗箸の要は「研ぎ」。特に「研ぎ出し」は、漆の厚さの微妙な違いを感じ取りながら、模様がバランス良く見えるように少しずつ研いでいく繊細な作業で、手間もかかります。模様を思った通りに出せたときはうれしく、一人ですべての作業をする醍醐味も感じることができます。


新しい挑戦を続けファンを増やしたい

代々若狭塗職人の家に生まれましたが、後を継ぐように言われたことはなく、高校卒業後は洋服店などで働きました。昔から好きだったものづくりを仕事にしたいと考え、この道に進んだのが22歳の時です。最初の3年間は「研ぎ」を修業しました。

「手を抜かず、質を落とさなければ、あとは好きにしていい」という師である父の言葉に後押しされ、鮮やかな色合いの塗箸やパソコンのマウスなど、現代的な商品にも挑戦しています。皆さんに触れてもらう「道具」づくりにこだわり、若狭塗を次代に残せるよう、若狭塗のファンを増やしていきたいと思っています。

[写真6]
加福漆器店 加福宗徳さん(左)、加福清太郎さん(右)
4代目に当たる宗徳さんは、22歳で父・清太郎さんに師事し腕を磨いた。2人とも伝統工芸士の認定を受けている。


おみやげにも人気
小鯛の笹漬け

日本海で獲れた小鯛を三枚におろし、塩と酢でしめて樽漬けにした小浜の名物。生に近い風味なのでお刺身のようにも楽しめます。

[写真7]
小鯛の笹漬けの写真


何重にも漆を塗り重ねる「塗り込み」

[写真8]
貝殻、卵の殻、松の葉などでつけた模様の上に、漆を何度も塗り込んでいく


「研ぎ出し」を繰り返して模様を出す

[写真9]
石、サンドペーパー、炭と次第に目の細かいもので研ぎ、表面をなめらかに整える


「摺り」で艶を出し、磨き上げて完成

[写真10]
海底をイメージした繊細な模様が美しく輝く、若狭塗箸


取材・文/丸山こずえ、撮影/川本聖哉


MAFF TOPICS

「MAFF TOPICS」では、農林水産省からの最新ニュースなどを中心に、暮らしに役立つさまざまな情報をお届けいたします。

あふラボ

抹茶に適した新品種誕生

日本人にとって昔から身近な飲み物だったお茶。中でも抹茶は、「和」を感じさせる味として、国内だけでなく海外でも注目され、抹茶スイーツなど加工品も大人気。国内外での需要増に合わせ、生産量も伸びています。

抹茶の材料には、摘む前に数週間日光を遮る「被覆栽培」を行った新芽を使います。しかし、日が当たらないことで木が病気になりやすくなる問題がありました。さらに、需要増に対応するため、より広い地域で栽培できる品種が求められていました。こうした課題を解決する新品種として誕生したのが「せいめい」です。

「せいめい」は、寒さに強く収量が多い「ふうしゅん」と、被覆栽培に適した高品質の「さえみどり」を交配して生まれました。両方の長所を受け継ぎ、被覆栽培しても収量が多く、病気や寒さにも強いのが特徴です。うま味が強く色も鮮やかで、品質の高い抹茶を作ることができます。日本産抹茶のブランド力を高める品種として、期待が高まっています。

[写真1、写真2]
茶の名産地である鹿児島県の茶畑とせいめいの一番茶

[写真3、写真4]
日光を遮光素材で15日遮ると…
(1)が日光に当たり、(2)が15日間、日光を遮ったもの。(2)の茶葉の色が濃いのが分かる。

[写真5]
「やぶきた」(左)と「せいめい」(右)の粉末茶を比較
粉末は「せいめい」のほうが色が濃い。抹茶風に点てても色が鮮やか
※現在の栽培品種の約8割が「やぶきた」


あふトリビア

お茶はどれも同じ?
緑茶、紅茶、ウーロン茶などお茶の種類はいろいろありますが、茶葉はどれも同じ木の葉なのをご存じでしょうか。違いは茶葉の発酵の度合いによって生まれ、発酵させないと緑茶、完全にさせると紅茶、途中で止めるとウーロン茶になります。


NEWS1

子どもたちが「和食」で競う

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全国子ども和食王選手権のロゴマーク

子どもたちがお絵かきやクイズで和食への理解を深める「全国子ども和食王選手権」の全国大会が、12月16日(日曜日)に開催されます。

小学1年生から3年生が参加する「和食お絵かき部門」は、和食や郷土料理をテーマにした絵とひと言コメントを募集。全国8ブロックで金賞に選ばれた受賞者を表彰します。小学4年生から6年生の「和食王部門」では、地方予選を通過したブロック代表の8チームが、和食王の座をめざして「実技」、「クイズ」、「自由発表」の3つのカテゴリーで競います。

当日は会場での観覧も可能ですので、どのチームが栄冠を手にするのか、ぜひ足を運んで確かめてみてください。なお、今年の優勝チームは子ども向けバラエティ番組に出演予定。併せてご注目ください。

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小学生が創意工夫をこらして発表

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和食をテーマにしたクイズに挑戦

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目隠しをして香りと味でだしを当てる

※写真はすべて昨年度のものです。


第3回全国子ども和食王選手権

開催日:12月16日(日曜日)
場所:日本科学未来館
詳しくはこちら
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http://washoking.info〔外部リンク〕


NEWS2

「和食の日」イベント開催

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「和食の日」のロゴマーク


秋は実りの季節であり、日本の食文化においても重要な季節です。そこで、毎年秋に、和食文化について認識を深め、その大切さを再認識してもらえるよう、平成25(2013)年に11月24日を“いい日本食”「和食の日」と制定しました。

それに合わせ、11月中は和食について学ぶ出前講座を小学校で実施しています。昨年はだしについて学ぶ授業を行い、子どもたちは実際に味わって、そのおいしさを体験しました。

また、和食の日当日は東京・ららぽーと豊洲でイベントを開催。タレントなどによるステージイベントや、親子で楽しめる和食文化体験コーナー、子どもや子育て世代向けに官民協働で活動している「Let's!和ごはんプロジェクト」ブースなど、盛りだくさんの内容です。ぜひ足を運んでみては。

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おいしい味噌汁に夢中

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パパママもワークショップで学ぶ

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小学校では「だし」をテーマにした授業

※写真はすべて昨年度のものです。

和食文化の保護・継承の取り組みはこちら
[QRコード2]
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/culture/index.html


NEWS3

魚料理のグランプリが決まる

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「Fish-1グランプリ」のロゴマーク

魚を存分に楽しみ、その魅力を再発見する「第6回Fish-1グランプリ」が11月25日(日曜日)、東京・日比谷公園で開催されます。

Fish-1グランプリのメインイベントは2つのコンテストです。「プライドフィッシュ料理コンテスト」は、全国各地の漁師さん一押しの魚「プライドフィッシュ」を素材に使った料理コンテスト。「国産魚ファストフィッシュ商品コンテスト」は、国産の水産物を手軽に食べられる商品を作っている企業や団体が参加します。

どちらのコンテストも、来場者の投票によってグランプリを選出。また、ステージイベントなどの催しも開かれます。出場者の料理や商品を味わいながら、新しい魚の食べ方を発見してみてください。

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お魚と触れ合うコーナーも

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会場でできたての料理を販売

※写真はすべて昨年度のものです。

昨年度(第5回)の結果
プライドフィッシュ部門

【プライドフィッシュとは】 全国各地の漁師が選んだ、本当においしい旬の魚介類。春夏秋冬ごとに、地元で水揚げされる自慢の魚を「プライドフィッシュ」として選定した

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「プライドフィッシュ部門」のロゴマーク

【グランプリ】いか様丼
JF静岡漁連(JF伊豆 仁科支所)

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いか様丼の写真

【準グランプリ】庄内おばこサワラ炙り丼
JFやまがた

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庄内おばこサワラ炙り丼の写真


ファストフィッシュ部門

【ファストフィッシュとは】 気軽・手軽に食べられる、国産水産物を使った商品や食べ方のこと。現在、3,000以上の商品が選定され、スーパーなどで販売されている

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「ファストフィッシュ部門」のロゴマーク

【グランプリ】剣先イカレモンオイル漬
佐賀・JF佐賀げんかい

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剣先イカレモンオイル漬の写真

【準グランプリ】三陸産秋刀魚つみれ さんまコロコロ つみれ汁
岩手・小豆嶋漁業株式会社

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三陸産秋刀魚つみれ さんまコロコロ つみれ汁の写真


第6回Fish-1グランプリ

日時:11月25日(日曜日)10時から17時
場所:日比谷公園(ジャパン・フィッシャーマンズ・フェスティバル会場内)
入場:無料(料理、商品などの販売物は有料)

今年の出場団体など詳しくはこちら
[QRコード3]
http://www.pride-fish.jp/F1GP/〔外部リンク〕


NEWS4

そばと日本酒の祭典

秋はそばとお酒がおいしい季節。絶品のそばと約100種類の日本酒が集まる「そばと日本酒の博覧会 大江戸和宴(おおえどわえん)」が11月29日(木曜日)から12月2日(日曜日)の4日間、東京・代々木公園イベント広場で開かれます。

全国でも有名なそば処や名産地のご当地そばが集結し、打ち立て、茹でたてで味わえるそば好きにはたまらないイベント。また、全国の日本酒も販売され、晩秋にぴったりな熱燗もあります。さらに、「ご当地大鍋」として味わえる各地の鍋料理も。会場で食べ比べ、飲み比べを楽しんでみませんか。

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そばは打ち立て

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全国各地の地酒も楽しめる

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大鍋で作った温かい料理も

※写真はすべて昨年度のものです。

そばと日本酒の博覧会 大江戸和宴

開催日:11月29日(木曜日)から12月2日(日曜日)
場所:代々木公園イベント広場
入場:無料(そば、日本酒などの販売物は有料)

詳しくはこちら
[QRコード4]
http://www.oedo-waen.com/〔外部リンク〕


クイズの答え

一汁三菜

ご飯と漬物に、汁物と3つのおかずから成る献立で、栄養をバランス良く摂取できるだけでなく、低カロリーな食事でもあります。

一汁三菜を用意するのが大変なら、一汁一菜という手段も。味噌汁を具だくさんにすれば、おかず分の栄養も補えます。さらに、より手軽な手段として、お湯を注ぐだけのフリーズドライ食品を活用する方法もあります。

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フリーズドライ食品の味噌汁

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お湯を注ぐとあっという間に味噌汁が完成


取材・文/丸山 こずえ



編集・発行 農林水産省大臣官房広報評価課広報室
〒100-8950 東京都千代田区霞が関1-2-1
TEL:03-3502-8111(代表)
FAX:03-3502-8766

編集協力 株式会社文化工房
〒106-0032 東京都港区六本木5-10-31 矢口ビル4F
TEL:03-5770-7114(代表)
FAX:03-5770-7132
編集/中村麻由美、小尾悠梨子、糸瀬早紀、 藤田紫糸、小竹結女、伊藤高
アートディレクション/釜内由紀江
デザイン/石川幸彦、清水桂