このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー
aff 2019年5・6月号
5ページ目/全6ページ(特集1)

教えて!ぶどう先生

ぶどうの研究をしている薬師寺です。新たな品種の作り方や、ぶどうの未来についてお話しします。

薬師寺博先生

国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)
果樹茶業研究部門ブドウ・カキ研究領域長

新品種への期待と育成

ぶどうの品種改良は、主に交雑育種という方法で行います。交配したい品種の花粉をもう一方の品種のめしべに授粉し、種子を取り、翌年の春にまき、その芽が出た中から優れた個体を選びます。こうして選抜した候補は全国で試作栽培し、地域への適応性や普及性を総合的に判断して新品種とするのです。私が所属する農研機構で開発した品種にシャインマスカットがあります。皮ごと食べられて、しかも雨が多い日本の気候でも裂果のないぶどうを作ろうということで研究を進めたのですが、交配から品種登録まで18年もかかりました。現在、シャインマスカットを親に使った交配が盛んに行われ、新品種が発表されています。

これから注目されそうな新しい品種に黒色系のグロースクローネがあります。果粒が大きく、糖度は巨峰なみです。また通常、ぶどうは暖かい地方で着色不良が起きやすいのですが、この品種は高温下でも容易に黒紫色になります。赤色系のぶどうでいえば、大粒で美しい赤の果皮を持ち、食味に優れ、甘い香りがあるクイーンニーナが人気品種になりそうです。

グロースクローネ 写真提供/農研機構
グロースクローネ 写真提供/農研機構
クイーンニーナ 写真提供/農研機構
クイーンニーナ 写真提供/農研機構

種なしぶどうはどのようにして作るの?

開花期のぶどうの房をジベレリンというホルモンの溶液につけることで種なしになります。ジベレリンはもともと植物が持っているホルモンで、安全性が確認されています。種なしぶどうの研究は世界に先がけて日本で始まりました。そのきっかけは、山梨県の果樹試験場がデラウェアの粒が密着して裂けてしまうのを防ぐため軸を伸ばす研究をしていた際、ジベレリンを使用したところ、偶然、種なしになることが分かったからです。

ジベレリン処理は、種なし以外の目的でかんきつ類やトマト、いちごなどでも使用されています。

日本のぶどうの課題と未来

農研機構では夏、高温になっても着色不良を起こさない品種、長雨になっても病気が発生しにくいぶどうの開発を目標に品種改良に取り組んでいます。果皮の着色に関しては、2004年に農研機構が英『Science』誌に発表した研究成果がきっかけとなり、着色の仕組みが遺伝子レベルで解明され、苗の段階で果皮の色を判定できるようになりました。

ぶどうは年間の作業時間が多い樹種で、労力がかかるため経営規模を拡大するのが難しいという問題もあります。また棚栽培ですから両腕を長時間あげて作業しなければなりません。こうした課題に対し、省力栽培の技術開発も進められており、例えば通常2回行うジベレリン処理を1回ですませる方法が開発されています。

このようにして、より生産しやすいぶどう、より美しく、おいしく、食べやすいぶどうの開発が進められているのです。

ぶどうの葉の葉緑素を測定しているところ(薬師寺さん)。

お問合せ先

大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449
FAX番号:03-3502-8766