大自然の中で公私ともに充実した田園生活(岩手)
三宅博都さん(42歳)・岩手県雫石町
きっかけは東京駅で見かけた
移住体験ツアー
電子部品を製造するメーカーで基礎研究から開発、技術営業まで経験した三宅博都さんはIT産業の世界的な中心地であるアメリカのシリコンバレーでも4年間、駐在員として働いたことがあるといいます。
「巨大化しつつあるIT企業を顧客とする刺激的な仕事ではありましたが、時差のある中、日本の本社とひんぱんに連絡を取らなければならず、昼も夜もないような日々でした」
帰国後、小さな家庭菜園で過ごす休日で息抜きしつつ、大きな組織の一員として働くうち、本格的に農業に取り組んでみたい、という思いが強くなります。
そんなとき、たまたま通りかかった東京駅で雫石町への移住体験ツアーのブースを見かけ、参加しようと即座に決めました。
初めて訪れた快晴の雫石町で待っていたのは雪をいただく岩手山(いわてさん)の雄大な景観。自然の素晴らしさに魅了された三宅さんは、真剣に移住を考えるようになりました。何回か通い、町役場で相談するうち、雫石町の「地域おこし協力隊」に採用され、2016年9月に家族4人で移住します。当初、農業振興指導センターに所属して、6次産業関連の業務などに関わることになりました。
心行くまで家庭菜園を楽しめる
三宅さんが住まいにしたのは、「岩手県雫石町南畑コテージむら」という広々とした農地の付いた分譲地の空き家でした。
「家の目の前にある広い庭で好きな家庭菜園を心行くまで楽しめるので、ここでの暮らしにとても満足しています。私の妻は中国人で、田舎で育ったのですが、自然豊かな環境が合っているようですね」
コテージむらは、パイロットやビジネスマンなど世界で活躍されていた移住者が多いといいます。「広い敷地を利用して野菜を作ったり、羊を飼ったり、古民家を移築したり、それぞれのライフスタイルを楽しまれています」
新技術を導入する農業生産法人で活躍
三宅さんはより本格的に農業に取り組むため、2018年4月に、地元の農業生産法人の株式会社みのり片子沢に入社しました。
岩手県オリジナル水稲品種「銀河のしずく」や、そば、ミニトマトなどを生産する同社は、トヨタ自動車の生産方式「カイゼン」にならって作業の生産性と安全性の向上を図っています。2018年には、ドローンや食味センサー付きコンバインなど新たな技術を積極的に導入するなどの取り組みが評価され、「全国農業担い手サミット」で全国担い手育成総合支援協議会会長賞を受賞しました。
能力を買われ、同社の専務として迎えられ、さまざまな事業に取り組む三宅さん。農作業の即戦力としても期待されており、入社早々、トラクターを運転するため大型特殊免許を取得しています。
地域社会を動かす大きな歯車になれる
「地元の人たちにも温かく迎え入れていただき、年齢に関係なく仲良くしてもらっています」と言う三宅さん。辺り一面が銀世界になる冬季は、町道の除雪の作業を請け負い、あるいはお年寄りの困りごとを助けるなど、高齢化の進む地区で何かと頼りにされる存在になっています。
また、農作物の鳥獣被害に問題意識を持った三宅さんは、自ら狩猟免許を取得して、雫石町の町鳥獣被害対策実施隊の隊員となりました。さらに地元の名人の打ったそばに感動したことをきっかけに「岩手山そば打ち愛好会」を立ち上げ、代表として腕を磨くほか、写真撮影、天体観測、味噌づくりといろいろな趣味を楽しんでいます。
多忙ながらも充実した日々を過ごす三宅さんは、雫石町での暮らしについて、「その気になって探せば、地域のためにできることがいろいろ見つかります。若手がひとり入れば、地域を動かす大きな歯車になれるのが農村での生活のおもしろさです」と笑顔を見せます。
私のピカイチ
移住を決断したときに
眺めたのが、
この雫石の雄大な景観です。
どんな移住支援があるの?
岩手県雫石町南畑コテージむら
岩手県農業公社が宅地と農地をセットで分譲している「岩手県雫石町南畑コテージむら」は総面積63ヘクタール。購入して就農する場合、土壌改良などのため営農資金が販売価格の最大10パーセント支援されます。2017年に農林水産省は次世代を担う農業後継者が自信と誇りを持って住み続けられる「農家住宅推進に取り組むモデル地区」として全国6カ所を選定しましたが、その1つでもあります。
お問合せ先
大臣官房広報評価課広報室
代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449