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農林水産省

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aff 2019年9月号
東京2020 × 和食

私を支えた「食」

高橋尚子さん(マラソン金メダリスト)

東京オリンピック2020|東京パラリンピック2020

東京2020オリンピック・パラリンピック大会開催に向け、トップアスリートなどの地元食材を生かした
思い出深い「和食」を紹介します。

高橋尚子さん(マラソン金メダリスト)
写真提供/月刊陸上競技
高橋尚子さん(マラソン金メダリスト)
1972年岐阜県生まれ。県立岐阜商業高校、大阪学院大学を経て実業団へ。1998年の名古屋国際女子マラソン初優勝以来マラソン6連勝。2000年シドニー五輪で金メダルを獲得、同年国民栄誉賞受賞。2001年ベルリンマラソンでは女性として初めて2時間20分を切る世界記録(当時)を樹立し、2008年10月現役を引退。現在、(公財)日本陸上競技連盟理事、(公財)日本オリンピック委員会理事、(公財)東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会アスリート委員会委員長ほか、多方面で活躍中。
ヘアメイク/小森真樹(337inc.)

「朴葉(ほおば)の味噌焼き」は
家族が揃う朝の定番料理

大学に入るまでは郷里の岐阜で、母の作る和食中心の食生活を送っていました。春になると、近くの山で採れたわらびやゼンマイ、せり、たんぽぽの葉など、山菜を使った総菜もよく食卓に並んでいましたね。

中でも思い出深いのは「朴葉の味噌焼き」。母の出身地・飛騨高山の郷土料理です。父と近所の山の中で集めてきた朴の木(ほおのき)の葉を洗濯ばさみで吊るし、一夜干しにします。その朴葉の上に、合わせ味噌とねぎを混ぜたものをたっぷりのせ、炙り焼きに。プツプツプツ……と味噌が煮立ち、香りが立ち上ってくると「早く食べたいなぁ」とワクワクしました。これをご飯の上にのせて食べるのがとてもおいしいんです。我が家では、日曜日の朝の定番料理でした。

他にもよく食べていたのは「あぶらえ(エゴマ)」。飛騨高山の名産品で、血行を良くするα-リノレン酸が多く含まれ、栄養価がとても高いんです。この「あぶらえ」をフライパンで炒ってからすり鉢ですり、味噌などの調味料と合わせていただきます。名物の五平餅に付けて食べるのもおいしいですよ。

モクレン科の朴の木の葉。
モクレン科の朴の木の葉。火に強い性質で殺菌作用があるとされ、岐阜県では朴葉の味噌焼き、朴葉寿司といった郷土料理に用いられている。
雪深い飛騨地方で保存も効く郷土料理。
朴葉の味噌焼きは、保存が効く、飛騨高山の郷土料理。家庭によって使用する味噌や具材が違うため、それぞれ異なる風味が楽しめる。芳香性がある朴葉と味噌の香ばしさは素朴で懐かしい味わい。

大学進学後は、マラソン選手としての身体づくりを第一に考えていました。カロリー計算に基づいたバランスのよい食事と、エネルギーとなるたんぱく質や鉄分をしっかり取ることを、今まで以上に意識していましたね。長距離を走り抜く持久力を維持するためには、体脂肪を減らし、心肺機能を高めなければなりません。マラソン選手は貧血になりやすいので、私は鶏レバー、ひじき、納豆をよく食べていました。

また、試合に向けてベストな身体にするために、練習内容に合わせて食事も変えていましたね。例えば、猛暑の中でのトレーニングでは、そうめんやうどんなど喉越しがよい炭水化物を選び、エネルギーを補給していました。練習メニューによっては食欲が湧かないときもありますが、しっかり食べないと数日疲れが残ってしまいます。私は「しっかり食べて、しっかり走る」ことを大切にしていました。

トレーニングのため、米国に長期滞在したときも和食中心で過ごしました。現地の食事ではカロリー過多になってしまいますが、和食ならたくさん食べても安心。自分の身体をコントロールする上でも和食が支えになったと思います。

沿道で選手のスピードを
体感してほしい

東京2020のマラソンコースは東京の中心地がメインです。日本の選手にとってはなじみがある場所で、応援も多い。自国開催をぜひ、自分のアドバンテージにして思い切り戦ってほしいですね。

2008年名古屋国際女子マラソンでのラストランの様子。
引退後も、各種イベントに参加し、マラソンの普及に貢献。写真は、2008年名古屋国際女子マラソンでのラストラン。
写真提供/月刊陸上競技

初めてマラソンを観戦するなら、沿道がおすすめ。きっと選手のスピードに驚くと思います。マラソン競技は、各選手がどうやって自分のレースに引き込んでいくのかを注目してみましょう。

選手の位置取りもポイントです。例えば、常に集団の端にいる選手は給水ポイントで素早く水分補給することを意識しています。道路の傾き方も視野に入れたバランス重視の選手は、道路の中央側を走ることが多い。また、足が当たるのを防ぐため同じような走りやリズムの選手がかたまる場合もよくあります。各選手が集団の中で、なぜそのポジションを取っているのかを考え、30キロメートルを過ぎてからのラストスパートではどんな仕掛けをしてくるのかを予想しながら観戦すると楽しめると思います。

沿道からの声援は必ず選手に届きます。エールの他にも「前の選手との差は○秒」など具体的な秒数を言ってもらうのも状況がわかるので実はうれしいんです。観客の皆さんも監督やコーチになったつもりで応援をお願いしたいです。試合当日は炎天下が予想されるため、ボランティアの方も沿道で応援する方もしっかり熱中症対策をしてくださいね。

陸上競技のルールとメダルへの道

東京2020オリンピックの陸上競技(マラソン)は、オリンピックスタジアム(新国立競技場)をスタートしてフィニッシュ。浅草雷門、東京タワー、皇居外苑、歌舞伎座など東京の名所を回る42.195キロメートルのコース。開催は2020年8月2日(女子)、9日(男子)で両日とも午前6時スタート(2019年4月時点)。

給水ポイントはスタートとフィニッシュ地点、コース上5キロメートル間隔での設置が定められている(給水ポイント以外での飲食は禁止)。選手は自分でペース配分しながら、仕掛けるタイミングを見極めなければならない。選手同士の駆け引きは熾烈を極め、仕掛けられたときでも自分のペースを維持するか、相手についていくかなど勝負をかける走りのポイントに注目したい。

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