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農林水産省

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aff 2019年10月号

ギネス世界記録™ 挑戦者たち vol.5

世界一長い食用きのこ

ホクト株式会社/長野県長野市

2014年7月25日、ギネス世界記録達成の際にはメディア各社が集まり、記者発表が行われた。
2014年7月25日、ギネス世界記録達成の際にはメディア各社が集まり、記者発表が行われた。ホクト株式会社きのこ総合研究所の松倉聖史さん(左)と高野克太さん(右)。

国内有数のきのこメーカーが挑戦

長さ59センチメートル、重さ3,580グラムの巨大なエリンギが、「世界一長い食用きのこ」として、2014年にギネス世界記録に認定されました。

長さ59センチメートルのエリンギ。
こちらは失敗作。大きさも形も満足のいくものができず、試行錯誤が続いた。
左が一般的なエリンギ。
一般的なエリンギ(左)に比べると、長さが約10倍、重さが約70倍にもなる。

特別な品種ではなく市販品と同じもので、一般的なエリンギと味もほぼ同じというから驚きです。このエリンギは、きのこの総合企業・ホクト株式会社が創業50周年を記念し、世界一長い食用きのこのギネス世界記録を目指す一大プロジェクトとして栽培されたもの。そして、このメンバーに選ばれたのが、同社きのこ総合研究所の高野さんと松倉さんでした。

「きのこをある程度大きく育てる技術は社内で確立されていたこともあり、周囲は“できて当たり前”という雰囲気でした。でも現実は、なかなかうまくいかない。終業後や休日もきのこのことで頭がいっぱいで、プレッシャーを感じる日々でしたね」と高野さんは当時を振り返ります。

きっかけはひとつの偶然

与えられた期間は、約半年。「当初は培地(注)を増やせば大きく育つと考えていましたが、違いました。培地の量が多すぎると成長が止まり、枯れてしまうんです。加えて、傘の重みで柄が曲がってしまうことも悩みのタネでした」と高野さん。周囲のアドバイスを受けながらの試行錯誤は4カ月以上も続き、合計100個以上ものエリンギを栽培し続けました。

1983年に設立された「きのこ総合研究所」
1983年に設立された「きのこ総合研究所」では、新商品の開発や栽培技術の開発など、きのこに関するあらゆる研究が行われている。
栽培時の様子。
栽培時の様子。傘の重みで柄が曲がらないよう、上から吊るし棒で支えた。

流れが変わったきっかけは、ひとつの偶然でした。「実は私が設定を間違えて、光の量を予定より多くしてしまったんです。すると、大きくてきれいなエリンギが育っていたので、びっくりしました」と松倉さん。結果的に、特定の条件下でエリンギに当てる光の量を増やしたことが功を奏し、一気にゴールが見えてきたと言います。きれいに育ったいくつかのエリンギの中から、特に色が濃く傘の形も美しかった1本を“ギネス世界記録候補”として選択。ギネスワールドレコーズ社の計測日に向けて、慎重に管理を続けました。

(注)とうもろこしの芯を細かく砕いたコーンコブミールに、米ぬかやふすまなどの植物由来の栄養素を混ぜ合わせ、これらを水で混ぜたもの

誰も抜くことができない記録に

2014年7月25日、丹精込めて育てたエリンギは無事、ギネス世界記録に認定されました。思わず涙ぐんだ高野さんと笑顔の松倉さん。「当時はうれしいというより、ホッとしたというのが正直な気持ちでしたね」と話します。

実は、エリンギと同時進行でブナシメジでの世界最長記録を目指すチームも栽培を進めていたんです。こちらの記録は長さ52センチメートル。エリンギに及ばず世界一は逃したものの、互いに競い合いながらアドバイスを送り合う、良きライバルだったと言います。

現在は樹脂加工され、きのこ総合研究所内のガラスケースに展示されている。
現在は樹脂加工され、きのこ総合研究所内のガラスケースに展示されている。水分が抜けて少し小さくなり、まるで彫刻のよう。
ギネス世界記録の認定証は研究所に保管されている
ギネス世界記録の認定証は研究所に保管されている他、2人の自宅にもそれぞれ飾られているそう。

「記録を達成するまでに、とてつもない労力と時間、技術が必要でした。だから今後も、少なくともエリンギでは世界中の誰にも抜かれない自信はあります。今後は誰でも簡単に美味しいきのこを栽培できる技術を確立するために、日々研究を続けていくつもりです」(高野さん)。ギネス世界記録で得た自信を胸に、きのこを愛する専門家たちは今も歩みを進めています。

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