第1回農林水産省改革チーム「有識者との意見交換会」の概要について
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平成20年10月27日(月曜日)に、第1回農林水産省改革チーム「有識者との意見交換会」を開催し、猪瀬直樹氏(作家・東京都副知事)及び數土文夫氏(JFEホールディングス(株)代表取締役社長)をお招きし意見交換を行いました。
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(1)意見交換を始めるにあたって、まず石破農林水産大臣より、株価急落など危機的状況から日本が脱却を図るにあたっては、農林水産省の役割は大きく、その行政のあり方を根幹から見直し従来の発想から脱却する必要があるとの話がありました。
(2)次に、猪瀬氏より以下のような指摘がありました。
- 農林水産省には2.2万人の職員が働いており、そのうち1.6万人は地方農政局、農政事務所で働いている。事故米穀の不正規流通問題はここで起こった。福岡農政事務所は事業者に対して事前通告をして検査を行って、何も問題はなかったとしていたわけだが、信じられない出来事だ。
- これはインセンティブ機能が働いておらず明確な目的がないからではなかろうか。驚きと同時に怖さを感じる。地方農政局や農政事務所をチェックする機能がない。彼らは本当に必要なのかという議論にもなる。地方分権の観点からも再編する必要がある。
- 統計部門には3500人のスタッフがいるのだが、総務省の統計部門のスタッフはたったの600人である。何故3500人も必要なのか。どのような統計を実施しているのか。
- 耕作放棄地は何故こんなに多いのか。自給率は40%だが、耕作放棄地で働きたい人が耕すことができれば自給率の確保が期待できる。株式会社が参画しその中で若い農業従事者が活躍できればいいのだが、いつまでたってもそれが実現しない。彼らは大規模経営、きめ細かな農業をする能力を持っている。自給率が低いのに減反して耕作放棄地を増やすというおかしさをいつまでもやっている。農業を開放し、自由にやらせればよい。
- 農林水産省は生存に不可欠な食料を扱う重要な役所である。それが実際は霞が関で最も遅れた役所となっている。保護行政がそれを阻害している。農業の民営化があっていい。
(3) 続いて、數土氏より以下のような指摘がありました。
- 経済界、産業界としての意見、消費者としての意見、組織論としての意見の3点について話をしたいが、その前に経済同友会の農業改革委員会の状況を紹介したい。この夏に軽井沢で農政の意見交換会を行った際に、農政の問題点や課題を明らかにし、解決方法を探り、それを実現するための方策と実現を阻む要因について議論を行ったところである。
- WTO、EPA、FTAの推進は国益にとって喫緊の課題であるが、農業がネックとなって必ずしもスムーズにいっていないと経済界・産業界は強く思っている。また、21世紀は農業のマーケットが拡大すると予想されているのに、日本の農業が今後発展する兆しやその戦略が明確にされていない。
- 企業にとっては顧客満足度(カスタマー・サティスファクション)が非常に重要な指標であり、日本の農政も顧客である消費者・納税者の立場から見た視点で真摯に議論されなければならないはず。ところが日本の農業は、食料自給率、農家戸数、農業者の年齢層、農地面積、耕作放棄地など、どれをとっても将来展望が開けるものに結びついていない。これは消費者・納税者から見ると非常におかしな話。農林水産省のアカウンタビリティ(説明責任)も不足している。
- 組織論としては、コーポレートガバナンスの問題を重視すべきである。企業にはコーポレートガバナンスという言葉があり、取締役会、監査役会、会計監査法人が三権分立しつつ三者が協力して企業経営のガバナンスにあたっている。加えて当社には強い権限を有した社長直轄の内部監査部門を持っている。内部監査とは悪事を暴くものではなく、ヒト・モノ・カネの効率的運用をチェックし、社長に助言するのが役目である。役所ではこうした機能があるのか。また、企業の柔軟性を確保するために内部告発制度が奨励されており、毎年告発件数が増加している。今やこれがなくては企業のコーポレートガバナンスは成り立たない。
(4)以上の指摘を受け、石破農林水産大臣からは以下のような発言がありました。
- 農林水産省は団体や業界を向いて仕事をしていると言われる。今まではそれでよかったかもしれないが、これからはそうはいかない。これまでの権力構造や利益構造をひっくり返すことになるかもしれないが、今の仕組みができたのにも理由がある。それを除去するためには世論を味方につける必要がある。
- これまでの既得権益構造を壊さないと農林水産業そのものがもたない。農業に従事する人のほとんどが高齢者であり、あと10年もすれば農地と農林水産省はあるがヒトがいないという状況になりかねない。その時になって気づいたのでは手遅れであり、そのような危機意識については共有できているものと考えている。
(5) また、農林水産省改革チームメンバーより、猪瀬、數土両氏に対し以下のような質問・意見がありました。
- 自給率アップを目指しているのに減反をしている。方策があるのにそれが実現していない。そこに問題の根幹があると考えている。
- 課題を明らかにして解決方法を探ることは重要であると考えるが、農業分野において様々な問題の解決を阻んでいる要因とは何なのか。
- 農林水産施策は団体、与党、農水省の三者懇で決まることが多く、今回はそのあり方を見直すのだが、一体、国民視点とはどのようにとらえれば良いものなのか。企業と株主の関係について最近変わったことがあるのか。
- 民間企業にとっては消費者とはある程度範囲が決まっていると思うが、行政の場合はどこまでが消費者ととらえるべきなのか。消費者のほとんどは意見を言わない。どのようにして本音を政策に反映すべきなのか。
- 地方分権をすれば本当に地方出先機関で働く職員のインセンティブが上昇するのか。
- 民間企業の場合は、社員が株主となるのはモチベーションを引き上げることにつながるだろうが、行政機関の場合と状況が異なるのではないか。
- 役所の組織には柔軟性がない。企画は企画、現場は現場でやっておりインセンティブが落ち込んでいる。スペシャリストやジェネラリストをうまく育てる人事政策とは何か。
(6) これらの質問・意見について、猪瀬氏から以下のような指摘がありました。
- 食料自給率が低いのに減反している問題について私に聞かれても困るわけで、本当は皆さんが分かっているのではないか。それが解決できないのは、その問題がタブーになっているのではないか。タブーとは何か。誰がタブーにしているのか、といったことを明らかにして、それに沿った改革がなされる必要がある。
- 政策と組織形態は深い関係にあり、セットで考えないといけない。
- 地方分権の考え方が重要である。まず農林水産省が、今回の事故米穀の問題を契機に突破口となることができないか。地方農政局、農政事務所を切り離すというくらいの大きな変化を打ち出さないといけない。世論をつくらなければ見えない消費者の声は上がってこない。
- 農林水産省にも内部告発がいろいろあるはず。例えば企画調整室というところがあるが、そこではどのように予算が使われているのかという内部告発がある。
- 地方分権の長所は近接性の原理である。1999年に包括外部監査が導入され、地方議会もある。見える場所にチェック機関を置くことでガバナンスが効くようになる。地方の出先機関はブロック単位となっており、県には外部監査があるので、地方分権を進めてその監査に晒すようにしてはどうか。国には会計検査院はあるが外部監査がない。
- 職員のモチベーションを上げるためにはそこで働いて何を成果と考え、何を目的に働くのか見えなければならない。それが全然見えない世界が残っている。
- 民営化などの手法により市場原理を取り入れなければならない。市場でしか測れないものさしでもって淘汰やインセンティブ向上が可能となる。
- 大臣が組織や政策について、地方分権、市場化、民営化の観点で、思い切った改革方針を明確に打ち出し、組織を引っ張っていってもらいたい。
(7)また、數土氏から以下のような指摘がありました。
- 産業とは顧客があって成立するもの。農業関連の議員の先生方はどちらか一方のスタンドポイントに立っており、それが当たり前となっている。世界で競争力を引き上げるためには顧客からの厳しい評価が投げかけられなければならないが、一方に偏っている。
- 需要があるのに減反して耕作放棄地が増えている。本来国家としては効率的な仕組みを構築すべきところ、米価のキープを通じてそういう仕組みに心地よくなっている人がいるためにこのような矛盾が生じた。
- 当社にも強い権限をもった社外監査役がおり、その役割は明文化されている。また社長宛の内部告発も内部監査の者が開封するなど、ルールを決めて運用している。
- 現在の株主総会は参加人数も多く、総会屋が蔓延る環境にはない。また、外国人株主の比率も高くなっており、オープンで丁寧な説明をしないと理解が得られない。さらに、自社株を保有している従業員も株主であり、彼らが率直に意見が言える仕組みを整備することが重要である。
- 顧客の声を把握することはビジネスの効率性を高め、収益を上げるための有益な手段。農業の問題も農業関係者だけにまかせればいいというものではなくなった。消費者の意見を吸い上げて業務に反映させていくことが重要。
- 世界がパラダイムシフトしている中で、未だに三者懇が力を持っていることは問題。
- 企画部門は本来誰も発想しないようなことをする必要がある。それができない人を企画に送り込めば国家が滅びる。人事交流はまさに企画部門において必要である。
- 農林水産行政が遅れをとれば産業全体を道ずれにする結果となる。国益の点で農業をオープンにしてなんとかしていく必要がある。
(8)この中で、石破農林水産大臣より以下のような発言がありました。
- 内部告発に関するルールが存在しない。受け取った人なり課長なり権限がない人が告発を握りつぶすことがないようルール化が必要である。また、きちんとした内部監査を設けて、優秀な人材を集めて皆に嫌われるくらいの仕事をしないと不正の摘発はできない。摘発する人が昇進できるようなキャリアパスも構築する必要がある。
- 地方分権の究極の姿は農林水産省の規模が大幅に縮小すること。しかし、地方分権の議論のいかがわしさは省庁再編とセットになっていないところにあるのではないか。地方農政局を廃止するのかしないのか、それとも権限を今以上に持たせて本省の機能を落とすのか、白紙的に議論する必要がある。
- 生産調整については、これを廃止して好きにやらせることも考えられる。しかし、米価が低下すると、育てるべき大規模農家がまず撤退しもともと米をあまり作っていない兼業農家が残ることになるかもしれない。また、米価が下がれば国民は米を食べるというわけでもない。米の消費の拡大のためには餌米や海外への輸出なども考えなければいけない。
- 農林水産省自身が目指したいものを持たなければならない。現状に対しては非常に危機感を持っている。
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