第3回農林水産省改革チーム「有識者との意見交換会」の概要について
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平成20年11月14日(金曜日)に、第3回農林水産省改革チーム「有識者との意見交換会」を開催し、土門剛氏(農業評論家)及び広瀬勝貞氏(大分県知事)をお招きし、意見交換を行いました。
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(1) 意見交換を始めるにあたって、まず、石破農林水産大臣より、厳しい意見を頂かなければ農林水産省の立て直しは前に進まない、そのためにも先生方には忌憚のない意見を伺いたいとの話がありました。
(2 )次に、土門氏より以下のような指摘がありました。
- JAバンク法(農林中央金庫及び特定農業協同組合等による信用事業の再編及び強化に関する法律)や米政策改革大綱を策定した頃と比べ、農林水産省の雰囲気が暗くなっており、ミスを犯さないということにほとんどのエネルギーが使われている印象がある。BSE問題により辞任した熊沢英昭元農林水産事務次官が、チェコ大使に就任したこと、これは民間企業では考えられない処遇だが、これを契機として慢心や責任感の欠如が蔓延るようになったのではないかと思う。今回の事故米の問題を現場農政事務所のミスと見る者もいるが、私はそれだけとは思わない。幹部にも責任があるはずであり、幹部の責任の取り方ということを農林水産省はどう考えるのか。
- このままでは、食料危機という事故米よりも遙かに深刻な問題が発生する可能性がある。今年の米の作況指数は結果的に102だったからよかったが、例えば85~90であれば、緊急食料輸入が必要になっただろう。一方で、今年春のフードパニックでもわかるように、食料を売ってくれる国はない。気象が複雑化しており、それに零細農家がついて行けない。生産力は今後下がると見ており、食糧危機は十分起こりうる事態であるが、農林水産省は将来のシミュレーションをしておらず、緊張感・危機感がない。
- 肥料に関しても、農林水産省は今年500億円にもなる肥料高騰対策を実施しているが、まさにバラマキである。世界の肥料を巡る状況を見ると、肥料調達のために全農や三菱商事がヨルダンの現地企業と合弁で設立した「日本ヨルダン肥料」という会社があるが、合弁の相手である国有企業が最近民営化され、日本の肥料調達に影響を与える懸念がある。こうした重要な情報も当初農林水産省の担当者は把握していなかった。今、国に求められていることは、税金をばらまくような対策ではなく、例えば肥料調達のためのシンジゲート(企業連合)を設立すること、新たな鉱山開発に利子補給すること、肥料原料の輸出国と外交交渉で有利な調達を目指すことなど、これらが本当の意味での政策である。若手はこういう政策をやりたいと思って官僚を目指すのだ。
- 農林水産省が目下進めているGAPについては、民間主導、特に流通主導で進めなければ失敗するといった、その本質をまるで理解していない。つまりGAPは、農産物の買い手 、つまりスーパーや生協などが率先してやるべきことであって、国は民間の取組を側面支援するべき性質のものである。日本のGAPは、零細兼業農家が圧倒的多数を占める日本の農業事情を考慮せず、ヨーロッパの基準をそのまま取り入れたが、今に至るも大手スーパーや生協でさえ取り入れていないのが現状である。消費・安全局は、なぜそうなっているかを分析もせず、各地に協議会などをつくって行政指導でGAPを普及しようとしているが、その本質を理解しない取組は必ず失敗するものである。民間が取り組むべきものは、マーケットの力を信じて民間に任せるという発想がなく、民がやるべきことまで官がしゃしゃり出て、最後は何の成果も得られないというケースがあまりにも多い。税金を使わずに、マーケットを動かすことで政策目的を遂げるということも大切だ。 JAバンク法や米政策改革大綱のように、マーケットから評価される政策立案もあったのではないか。
- 農林水産省はこれだけ大きな組織なのだから、影響力はまだある。その影響力があるうちに、課題に背を向けずに正面から取り組めば、再建への道を拓くことができると信じている。部下は上司の背中をみて仕事をするもので、上司がこのような姿勢で取り組めば、組織全体の意識が変わってくるだろう。農林水産省の再建は、組織をあれこれいじくるのではなく、組織の背骨(はいこつ)を担う幹部が抵抗勢力に対し壁となり、若手にもっと勇気を持たせ、強い指導力で農林水産省をリードしてほしいと願っている。
(3) 続いて、広瀬氏より以下の指摘がありました。
- 大分県も農業者数がどんどん減少している一方、新規就農者数は毎年100人程度であり、耕作放棄地は8,000ヘクタールに達している。この原因は、農業が他産業並みの所得を上げられないということである。事実、販売に力をいれ、一定の売り上げを上げている農家にはちゃんとした後継者がいる。農業の振興のためには、販売力を強化するための施策を実施し、生産体制を整え、農家所得を向上することが重要である。しかしながらそれだけでは8,000ヘクタールの耕作放棄地の解消は難しい。
- このため、異業種や県外企業の農業参入が重要ということで、企業参入を進めているところであり、実際建設業など、農業参入に意欲を持っている企業は意外に多いということがわかってきた。一方で、こうした企業に提供する2ヘクタール以上のまとまった農地のデータベース化に取り組んでいるが、耕作放棄地における不在地主の問題など流動化しづらい状況がある。農地の流動化を促進するための法律・税制面の検討を進める必要がある。経営主体としても農業法人に限らず、株式会社にも所有を認めるような制度とするべきである。その上で、農地を農地として利用することを一定の規制により担保すればよい。
- 森林に関して言えば、大分県の県土の72%は森林であり、今後県としても適切な整備・管理に力を入れていきたいと考えている。一方で、現在の森林計画は水源涵養など森林の多面的機能を十分に評価する仕組みとなっておらず、また、森林計画が策定されても、計画に基づいた整備・管理が行われないこともある。時代にあった適切な計画を作らせ、それをちゃんと実施させるための担保措置が必要である。
- 平成16年に大分で鳥インフルエンザが発生した際には、農林水産省とうまく連携して適切な対策をとることができたと考えている。農林水産省には、専門的・科学的な観点から鳥インフルエンザのまん延の危険性の判断や科学的データの提供等で協力してもらい、迅速に事態を収束することができた。今回の事故米の問題でも、もう少し国が県と連携をすることができれば、混乱も少なくすることができたのではないか。
(4) また、農林水産省改革チームメンバーより、土門、広瀬両氏に対し以下のような質問・意見がありました。
- 農林水産省の職員は自らがその分野の専門家であるというプライドがあり、外部から指摘があった際に、素人の言っていることとし、データを持ち出して理路整然と反論しがちである。このような閉鎖性が縦割り・縄張り意識を生み出していると思うが、これを是正するためにはどうすればよいか。
- 政と官との関係を考えた場合、最近の農林水産省は政ばかりを見て政策を進めていると思うが、外部から見てどのように考えるか。
- 情報の発信に関して、鳥インフルエンザは比較的うまく情報が発信できたケースと考えられるが、今回の事故米では失敗している。どうすれば適切な情報発信ができるか。
- 現在地方分権改革が議論されているところであり、特に地方出先機関のあり方が大きな問題となっている。農林水産省の地方出先機関に期待するものがあれば教えて欲しい。
- 民間はマーケットのシグナルという評価の指標があるが、官は民間と違ってそのようなものが無く、競争する環境が整っていない。そのため、リスクの予見という点でも後手に回りがちと考えられるが、その点についてどのように是正すればよいか。
- 今の農林水産省は国民からはすべてがダメだと見られており、頑張っている人も含めて皆モチベーションが低下してしまっている。組織全体のモチベーションを向上するためにはどうすればよいか。
(5) これらの質問・意見について、土門氏より以下のような指摘がありました。
- 役所と民間の違うところは、役所はもっぱら統計データに頼って現場を見ようとするが、民間はマーケットの動きをみるという点だ。今年の米の作況指数は実態と合っていないと考えているが、そのきっかけは、春に米が暴騰したことがヒントだった。これだけ暴騰すれば、作況指数はちょっとおかしいのではないかという現場感覚なり問題意識をもつことが求められるのだが、省の幹部にはそれがなかったことは残念だ。
- 政治家から見ると日本の農業者280万人の票は魅力的なマーケット(票田)であり、そのため農林水産省は霞ヶ関の中でも特に政治との結びつきが強い。だからこそ、農林水産省はきちんと現場の情報や国際的な情報を集め、理論武装して、税金のバラマキではないマーケットや現場に響くような戦略的な政策を立案すべきである。幅広く、かつ正確な情報がなければ、現場の情報を持っている政治家に負けてしまう。政治家も、国の発展を願う点では志は同じであり、そうした政治家に理解してもらえるためにも、情報収集力を高めなければならない。
- 情報の開示に関しては、農林水産省の対応は必要十分の対応をしていると思う。国際交渉を考えると、逆に手の内を他国に知られるような情報の提供もあり、国益を阻害するのではないかと思ってしまうこともある。
- 地方分権に関してはまさに熱病にとりつかれたような状況だが、私は地方分権に反対であり、うまくいくとは思っていない。地方に、その実力がないからだ。地方分権を進めた場合、逆に国力が低下するとも考えている。
- 石破大臣のご尽力により、事故米のような不祥事は少なくなると思うが、いずれ制度設計の大失敗で、厚生労働省や社会保険庁の二の舞を演じるのではないかと心配している。農林水産省が省を挙げて進めている集落営農のことが格好の例である。新たな食料・農業・農村基本計画では、10年で3万組織増やす目標を立てている。単純に、年3,000組織増えなければならない計算だが、昨年増えたのは1,000~2,000組織にすぎない。企業なら、社運をかけて取り組んだ一大事業が、どのように進捗しているか、トップ以下、一喜一憂するところだが、農林水産省にはそのような責任感や緊張感がまるでない。集落営農も、幹部をキャラバン隊として各地に派遣しながら、それがうまくいっているのか、いっていないのか、きちんとした評価をしていない。こんなことは民間では考えられないことである。一つ一つの政策の評価がなければ、自給率向上という大政策も絵に描いたモチになってしまうばかりか、いずれ食料の安定供給ということで国民を大きな不安に陥れることだってあり得るのだ。
- 次官以下、幹部職員は、自分たちは民間との競争、他省庁との競争、外国との競争に直面しているという気概をぜひとも持っていただきたい。
(6) また、広瀬氏から以下のような指摘がありました。
- 農林水産省に多方面にわたる専門家がいることは認めるが、組織の中にはまって専門バカにしてはいけない。常識人が縦割りになっていないかチェックし、仮になっていたらそれを是正することが必要である。また、農業改革にはスピード感が無いと感じており、これも問題である。食料安定供給などを考えると、これからは強い農業者をより強くするという施策が必要であり、それに向かって大臣・幹部の目標をはっきりと示し、その目標を実現させるためのプロジェクトチームを立ち上げ、スピード感をもって改革を進めるべきである。
- 農林水産業の分野では政の力が強いと感じる。一方で、今は政治家も自信をなくしているのではないだろうか。彼らも官に適切な方針を示してもらいたいと感じているのではないか。今農業には追い風が吹いているので、自信を持って農業の体質強化に取り組んでもらいたい。
- 全員が満足するような完全な情報開示は無理だが、情報開示に積極的に取り組むという姿勢を見せることにより、国民を安心させることができる。しかしながら、情報開示以前の問題として、農林水産省が現場の情報を把握していないことが深刻な問題である。政と官の関係においても、どこから情報をとってどこへ流すか、政からの情報だけに偏ってはいけない。また、真っ先に政に情報を流すようではイニシアティブはとれない。
- 過去には国の出先機関が必要だっただろうが、今は役割は限られてきているのではないか。ただし、例えば有害鳥獣をどのように駆除・共生・管理するかなど、新しい課題に対する先進的な研究は国でやる必要があると考える。
- 自給率向上は政策目標としてピンとこない部分がある。それよりも、どうしたら自給率が上がるか、もう一つブレークダウンした目標を作成し、その達成の責任を個々の部局に負わせた方がいいのではないか。
- 職員全員のモチベーションを下げないということは時代と逆行している。重要課題をまず洗い出し、そこに人材など資源を集中的に投入することが必要である。
(7) 最後に、井出事務次官から以下の挨拶がありました。
- 農林水産省は伝統的に開かれた、現場主義の役所であったが、その伝統がどんどん薄らいでいると私も考えている。今回先生方から頂いた意見は、まさに現下の農林水産省の問題点であり、非常に身が引き締まる思いである。頂いた意見、問題点を真摯に受けとめ、また、引き続き先生方にご指導をいただきながら、農林水産省の改革を進めていきたい。
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