このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

働く人も企業もいきいき食品産業の働き方改革検討会(第四回)概要

PDF版はこちら(PDF : 242KB)

日時

 平成30年3月6日(火曜日) 10:00~12:00

場所

農林水産省   食料産業局第1・2会議室

出席者

(委員) 大塚委員、小澤委員、斉之平委員、竹井委員、林委員、藤野委員、松澤委員
(食品流通事業者) がんこフードサービス(株)新井氏、
(株)クリタエイムデリカ  栗田氏、
(株)KRフードサービス  大家氏、
(株)吉野家未来創造研究所  春木氏

発言内容

外食・中食産業4社からのヒアリング。

(がんこフードサービス株式会社)

  • 大阪に本社がある和食を中心とした飲食業。従業員数は3700名(うち、正社員数732名)、店舗数は96店舗となる。現在の課題として、人口減少からの顧客の減少、従業員の減少と有効求人倍率の増加により採用人数の減少、従業員の高齢化となり、従業員数の減少が大きな課題。課題に対し、少人数でもオペレーションを改善し、CSの向上、サービス品質を向上させるための仕組みづくりが必要と考え、現場では、作業・レイアウト・設備の改善に着手した。
  • 滞在客数に対し労働人員数が不足している。その対策として、来客時間前の労働時間の減少のために、自動掃除機の導入や、来客中でも掃除が可能となる静音掃除機の導入を行った。また、器の数の増加や顧客の少ないアイドルタイムの仕込みの集中化、1人3ポジションができるよう多能工化、厨房のレイアウト変更も実施した。このような取組により労働時間(出退勤・残業時間)の短縮と売上、生産性の向上につながった。
  • 現在では、大型店舗の配膳に対応するために、無人運搬の自動走行ワゴンを導入し、効果を検証している。また、中居さんにセンサーを付けて身体への負荷を確認し、従業員にいかに少ない負荷で働いてもらうかシミュレータ―を用いて行動分析をしている。

(株式会社クリタエイムデリカ)

  • 創業時は製麺業であったが、現在は惣菜製造業を営んでいる。従業員は約400名(社員72名)であり、24時間365日営業となる。コンビニエンスストアが増えるとともに受注が増え、人手不足となっていることが課題となっている。
  • 何事も成文化するということを心がけ、企業内保育園をつくることなど職場改革に取り組んでいる。また、組織図の作成やES調査の実施、誇りの持てる会社づくり、見える化の取組に対して様々な賞を取っている。高齢者雇用にも力を入れている(例:シェアダイニングサルーテの立ち上げ)。
  • 従業員を大切にすることを目指した経営理念を作り、良いと思う会社へ訪問するなどの取組を行っている。社内に共育専任のチームを作り、研修やグループワークを実施している。結果的に、女性管理職比率も上がり、定着率も向上している。近年では外国人人材の育成にも力をいれており、食品事業に特化した人材確保事業を行っている。

(株式会社KRフードサービス)

  • 和食しゃぶしゃぶを中心とし、店舗数121店舗、社員数619名、臨時雇用6573名の従業員数となる。時間外労働の増加、人件費・採用費の上昇等により収益力が低下していた。また、社員への負荷が増加し、人材確保のため時給上昇を行っても人が採れない状況に直面していた。
  • 働き方改革に向けた取組として、まずは意識改革と業務改革に取り組んだ。意識改革としては、時間当たりの売上を上げることを意識し、営業時間の短縮、月間の所定労働時間の削減、アニバーサリー休暇の取得推進(3連休×2回または6連休)や勤怠管理システムの導入などを実施した。
  • また、業務改革として、機械化・IT化の導入や夜間と朝業務の入れ替えといった業務の組み立て方の見直し、アウトソーシング等を行った。さらに、制度改革として、働きやすさ・定着率の向上を目的とし、雇用体系の見直し、家族勤務手当の支給、従業員紹介制度による褒賞金支給、専門学校との提携による教育訓練なども実施している。

(株式会社吉野家未来創造研究所)

  • 少子高齢化に備え、シニア層や女性が楽に楽しく働ける職場環境を目指している。まず、店舗の現象や課題を調査し、オーダー時や補充時の動作による身体への負荷、間違えやすい備品の使い分けによる有効視野の範囲などデータ収集を行った。
  • 従業員の大きな負荷として清掃があったが、様々な取組を実験的に行っている。例えば、汚れが付着しにくい壁素材の検証、滑りやすい床をすべりにくく、掃除の楽な親水性の高い床材へ変更したことで、作業時間が大幅に削減され、従業員の安全性も向上した。また、ロボットで丼のピッキングを自動化し、食器洗浄作業時間の短縮を図っている。さらに、食器の浸漬や予備洗いで手荒れが発生していたため、親水性を高めた特殊な食器の開発を行っている。

ヒアリングに関する意見交換の内容については以下のとおり。

  • 小澤委員
    がんこさんに質問。最近、クレームや予約した、しないなどが問題になっているが、実態はどうなっているのか。また、深夜営業などが短縮されているが、売上げに対する影響などはどうなっているのか。
  • 新井氏
    ドタキャンは正直あるが、そこまでではない。12月の繁忙期に1件あるかないかくらいであり、100店舗あるが月に1件あるかないか程度。でも実際、同業者からはそういう声も多々聞いているので、業界全体では大きな問題になっていると思う。
    営業時間に関しては、私たちもアイドルタイムをカットしたり、時間短縮で閉店時間を22:30にしたりしている。以前は開店時間が11:30だったが、それをあえて11時にし、その分閉店を短くした。これは店舗毎、立地により短くしているが、売上は正直あまり変わらない。
  • 小澤委員
    KRフードさんもアイドルタイムを15時~17時に導入されているが、営業成績はどうか。
  • 大家氏
    正直売上は若干影響を受ける。
  • 小澤委員
    ただマンパワーが減るので生産性は上がるということなのか。
  • 大家氏
    ピークタイムに集中する分、効率が良くなる。
  • 竹井委員
    がんこさんに質問。最後のスライドの取組の産官学連携は、以前テレビでも取り上げられたが進んでいるか。
  • 新井氏
    実際はあのテレビでも期間が3か月くらいあり、最終的にはレイアウト変更していた。仲居さんが客席に行くよりバックヤードにいる時間の方が長いことがデータから分かった。この結果を受け、店のレイアウトを変更し、仲居さんがお客様から見えるところでサービスする時間を増やしたところ、注文の皿数が増えた。また、レイアウトの変更を厨房の改善につなげていったので、データをしっかり分析することはすごく重要。
  • 竹井委員
    従業員の意識改革、特に中間層は、長く働くことが良しとされているからそういう習慣なのだろうが、どうしても上からのプレッシャーとか、自分たちが働けば何とかなるという意識があると思う。そういうところは変わってきているのか。
  • 新井氏
    中間管理職の意識改革は重要で、やはり長い時間働くのが美徳というのが我々にもあった。だが、会社の制度が変わったことがきっかけとなり、会社は本気だということを伝えることができた。実際現場まで落としていこうという時に、中間管理職から案をもらい、現場の意見を吸い上げながらやっていた。一方で、中間管理職によって、働き方を変えられる人とできない人に完全に分かれた。
  • 大家氏
    かごの屋でも同様でスタイルチェンジできた人とできない人に分かれた。一方で、新たに短時間でも同じ給料が与えられるということで、自分がそういうことができる環境や体制を整えて、権限移譲したり教育訓練したりと非常に自立した従業員が増えてきているのも事実。
  • 松澤委員
    予め注文やお客様の数が分かっていれば、人の確保も少しは楽になるのではないか。いろいろなご苦労をされていると思う。特に栗田さん、具体的に取り組まれていることは何かあるか?人の確保と生産量との一致というところで何かされているか。
  • 栗田氏
    営業部との話し合いを通して、いくつか取組を行っている。最盛期は外注を前年度から始めた。顧客層が関東中心なので、少し遠距離だが名古屋地区のバッティングしない同業者に委託して、名古屋から商品を夜中に運んで供給するという体制で生産量を減らすことができた。また、1月1日の新発売を全部しないことに決めたことで、12月31日から1月3日まで営業部は全員休めた。実際に委託すると、営業部のお客様に対しての説明が大変だったが、今年の夏も、委託量をもっと増やすことで従業員の残業をもっと減らしていきたい。
  • 松澤委員
    外食のお店は何かやっているか?取り組まれていることがあれば。
  • 新井氏
    我々はやはりどれだけご予約いただけるかが重要になってきており、店によっては8~9割と高い予約率のとこも出てきている。
  • 斉之平委員
    栗田さんに質問。経営理念の話をされていたが、経営者としてこれを従業員に浸透させるのはどういった形でされているのか。
  • 栗田氏
    社内で少人数のグループディスカッションをし、テーマとして経営理念だけではなく、誇りの持てる会社とは何か?などについて意見を出し合っている。私は表彰されることが誇りにつながると考え、重視していたが、グループ討論の中で“友達や親戚にどこで働いているか言える会社”との意見を出され、新たな発見となった。
  • 林委員
    吉野家さんに質問。当面の課題として人材不足や労働時間の面で特に力を入れていることは?
  • 春木氏
    お店の運営スタイルを変えていこうとしている。店内では、従業員が動き回っている時間が多い。そのような中で、お客様にも少しセルフで手伝っていただいたり、自ら席を確保していただき、そこへ商品を運んだり、最近はオーダーのタブレット等も使いながら工夫をしている。
  • 大塚委員
    栗田氏に質問。冒頭に経営危機のお話があり、成文化されて立て直しを図ったというお話があったが、そのストーリーをもう少し詳しくお話いただきたい。
  • 栗田氏
    先ほど売り上げと利益の表を出したが、まともになったのはこの7年くらい。それより前、私が常務をやっていた頃、「なぜ一生懸命働いているのに利益が出ないのか」と考えていた。そのような中、成文化することで捨てることと新しくチャレンジすることが見えてきたと思っている。例えば、今保育園をやっているが、これをやった時には従業員の反対にあった。しかし、最近は多能工も進んでおり、何のために経営するかが伝わることで、従業員の理解が得られてきている。
  • 大塚委員
    成文化のきっかけは?
  • 栗田氏
    経営の内容が悪かったのが主な理由。良い会社を見た時に皆さん書いていたので、良いものは真似しようということで始めた。
  • 藤野委員
    私は採用活動もやっているが、やはり食品産業はどこも厳しいと感じている。給与の低いところもあるようだが、なぜそうせざるを得ないのか、やはり食の単価をもう少し上げればいいのでは。もし生産者側が価格決定権を握れれば従業員の給与にも反映できるし、付加価値もいろいろ付けられるが、今の日本ではなかなか難しいのが現状。地位向上と言うと大袈裟だが、もっと業界全体を付加価値の高いものにしていかなければならないと考えている。また、リスク分散を考えながら経営しなければいけない。リスクの観点で言うと、夫婦や兄弟で勤めている従業員に表彰や報奨を与えるという取組は非常に有用かと思っている。また、従業員満足度の向上はとても重要で、食の安全にも直結するし、会社の経営にも直結する。
  • 栗田氏
    今やっていて効果があるのは、今まで教育の機会があまりなかった短期間の従業員を対象に年2回一人30分のヒアリングを徹底している。ヒアリング中から出てきた課題やその対応策の進捗状況を毎月従業員に提示することで、いろんな取組が進んでいる。経営者層が話を聞いてあげるだけで随分変わると感じた。
  • 大塚委員
    もう一度栗田氏に。かなりコミュニケーションにまつわる研修の機会を多く取られている印象的だが、その辺りの効果はどう出ているか。
  • 栗田氏
    効果が出ていると言えないかもしれないが、エンジェルカードというものをJRの真似をして「褒めてくださいね」ということでやっている。意見を言う、話し合いをするといったことや、社内で劇をやるなど遊び感覚を入れながら違った体験をしてもらうことで、少しずつ変わってきていると感じている。従業員のご家族で参加してくれたりすることも出てきている。

「働き方に関するアンケート」「検討会とりまとめの構成案」に関する意見交換の内容については以下のとおり。

  • 藤野委員
    アンケートの問10で、工場と店舗では現場の危険性は全く違うにも関わらず一律の聞き方にしているのは気になる。また、従業員の回答例としても「あまりない」と「ない」が大半を占めている。確かに、「危険性がまだ残っている」ということをグラフから読み取ることもできるが、一方で見方を変えると、潜在的な危険に気づいていないという事を読み取ることもできる。アンケート結果は複数の読み取り方ができるということを気にする必要がある。危険性がないという回答が多いことは良い結果のように見えるが、従業員が滞在的なリスクに気づいていないだけだとすると、良い話ではない。危険性は常にあるという認識を持っていないと、労働リスクマネジメントの観点からでは不十分である。
  • 企画課長
    もう少し答えた人の属性に応じて細分化させなければいけない。
  • 小澤委員
    働きがい、働きやすい環境だけでなく、労災という言葉をしっかり入れておかなければならない。一方で、クレーム対応などによるメンタルヘルスの問題が近年深刻になっている。しっかりストーリーやチェックリストの中にもメンタルヘルスの問題は入れておかないといけない。
  • 斉之平委員
    労働力人口が減少している中、正社員は比較的採用しやすいがパートが採用しにくい。パートさんの活性化が大事だと思う。私どもの会社では、パートさんから正社員になった方、管理職になった方もいる。元々比率が高いパートさんをどのように活性化させるかが大事。内閣府で女性活躍の会議があり、2030年までに女性管理職を30%以上にするという国の目標に向かってどのように進んでいくかが議論された。そこでの議論の中で、やはり社長のリーダーシップが何より大事という話がでた。社内には男性で正社員、大卒という既得権益の層がいるので、それを変えていかなければいけない。
  • 松澤委員
    ハンドブック作成のイメージは具体的で内容に沿っていてわかりやすいが、チェックリストはわりと漠然とした表現になっているため、一部Yes・Noで答えにくいものがある。働き方改革の必要性を感じている人はハンドブックを見ていただけると思うが、そうではない方については経営者の意識を変えるようなインパクトが必要かと思った。
    もう一つは今の話と絡むが、安全・安心のところで働く方の人権やハラスメント防止とかは、いろいろな会社で感度が高くなりクローズアップされていると思うので、例の中のどこかにハラスメントのない職場が実現できているかどうかを入れたほうがいい。
  • 小澤委員
    有効求人倍率とか失業率とかが一般的な言葉だと思うが、欠員率などは、皆がわかりやすい常態的な言葉に変えるべき。欠員率という言葉はあまり使われていない。
  • 大塚委員
    働き方を巡る状況のところの引用データが今は様々ご紹介いただいているが、何をピックアップするかでかなりチェックリストに影響するのではないかと思う。例えば今日の話の中で多くの企業が採用や売り上げや利益、安全性やハラスメントということが課題としてあるので、そういうことにまつわるデータを紹介していくべき。
    また、チェックリストも働き方を巡る状況のデータから見た時に出てきたチェックリストという流れにしないと、チェックリストが意図的に作られたような状況になってしまうかと思う。ここでのデータをどう見せていくかが肝になると思う。
  • 竹井委員
    人数の多い企業も家族営業もあるが、外食で言えば個人営業が多い。企業側としては、企業側を縛るような制度が厳しくなっており、パート雇用に関しても社会保険適用拡大や、4月からの無期転換などによる負担が大きい。我々のような500人以上の事業所は社会保険適用拡大が大きく影響してくるので、パートさんの雇用を上げていかなければいけない。こういう制度を見直していただければと思うし、フレックス制度は実はかなりの縛りがあり、本来我々のような企業にとってはこういう制度を導入できればいいが実際ハードルが高い。
  • 林委員
    今日の会社も以前の会社も、人が採れないというのはとても大きな課題だったと思う。どういう人が採れないのか。正社員が取れないのか、非正規が取れないのか、あるいは女性が足りないのか男性が足りないのか、その辺りの分析がこのアンケートの中では見えてこない。人と言ってもいろいろな人材がいる。もしかしてパートが足りないと言っているのか、基幹職、マネジメント職が足りないのかによって対応が違うということを感じた。
    また、アンケートの問3でマネジメント層に将来の課題を聞いている設問が、どこの業種も人材の育成・強化が最も大きな課題であり、現在の従業員の採用、定着もそれに付随して大きな課題であるという結果が明らかに出ているが、人材の育成・強化に向けて働き方改革として何をしていったらいいかが本当にこのハンドブックで示せるかどうかは重要になってくる。この課題はこの業種に限らず、現代の社会構造の中でどの業種でもほぼトップに来ているが、食品に特化したハンドブックの中で、食品産業の人材の育成・強化は具体的に何をしたらいいのかということが分かるようにしないと、実際に使っていただくことが難しいと懸念している。

(以上)

お問合せ先

大臣官房 新事業・食品産業部 新事業・食品産業政策課

代表:03-3502-8111(内線4136)
ダイヤルイン:03-3502-5742

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。

Get Adobe Reader