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農林水産省

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お茶の井ヶ田株式会社

働き方改革インタビュー
井ヶ田の写真

   お茶の井ヶ田株式会社は、大正9(1920)年に製茶業として創業し、昭和52年に井ヶ田製茶株式会社より卸小売部門を独立し設立した会社です。お茶の製造販売や茶道具類の販売をはじめ、「食べるお茶」をコンセプトにお菓子や食事を提供する複合施設「喜久水庵きくすいあん」を宮城県を中心に東日本で店舗展開しています。
   この度、働き方改革の取組について、店舗開発部主任(アグリエの森 統括リーダー)の石垣直哉さんにお話を伺いましたので、その内容を紹介いたします。

写真:お茶の井ヶ田株式会社 店舗開発部主任(アグリエの森 統括リーダー)石垣 直哉様

期日:2019年12月16日
場所:お茶の井ヶ田株式会社 喜久水庵アグリエの森店[秋保あきうヴィレッジ内]にて
~自ら考え、チームで解決~

働き方についての考え方

井ヶ田の社是

   弊社の経営陣には、従業員に対して「やりがいを持って長く働いてもらいたい」との思いがあり、5年前(2015年)に改訂した弊社の社是では、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると共に、和の食文化の継承発展に貢献すること。」と従業員の幸福を前面に出しています。従業員にとっては、「働くということは何か、仕事とは何か」がわかりやすく、明確になったと感じています。
   また、毎月の社内報や、毎年行う経営方針発表会で示される「今期の目標とビジョン」において、これからの時代に向けた弊社の在り方などといったことを経営陣から全社員に向けて発信しています。

自ら考えて仕事に取り組む社風

    弊社には、経営陣の指示を待つのではなく、自ら考えて仕事に取り組むという社風があります。エリアマネージャーが月に1回会議を行い、連絡事項の共有のほか、エリア内の従業員から吸い上げた意見・アイデアを出し合い、必要に応じて経営陣に提案しています。経営陣も従業員の意見を取り入れてくれていましたが、平成28(2016)年度に、仙台市の「仙台“四方よし”企業大賞[※]」の受賞を契機に、従業員のモチベーションがより高まったと感じています。

『仙台「四方しほうよし」企業大賞』
仙台市が創設した、市内の中小企業を表彰する制度。「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」という「三方よし」の取組みに加え、「働き手よし」(従業員のワーク・ライフ・バランス等)に関する状況も評価し、従業員を含めた企業、消費者、地域に良い効果を生み出す優れた取組みを行う企業を仙台の「四方よし」企業として表彰。

心に描いた夢を実現させる
基本行動100ヶ条

   弊社には、「心に描いた夢を実現させる基本行動100ヶ条」を掲載する社員手帳があり、全従業員が携帯しています。「心に描いた夢を実現させる基本行動100ヶ条」とは、全従業員から募集した「5年後のありたい姿」を基に、若手社員が編纂したものであり、1項目10ヶ条ずつ、全10項目計100ヶ条から構成されています。「心に描いた夢を実現させる基本行動100ヶ条」の編纂は、20年前に開始し、5年毎に改訂しており、現在の社員手帳は4冊目のものです。毎日の朝礼の際に、「心に描いた夢を実現させる基本行動100ヶ条」から、いくつか抜粋して読み上げることで、夢の実現、プライベートの充実の意識付けを行っています。

100ヶ条100ヶ条
お茶の井ヶ田  心に描いた夢を実現させる実践100条
~自分自身の夢を描き、生きがいを持って輝いて生きる~
第1節  明るく意欲的な人と職場づくり
1.経営理念実践10ヵ条
2.人間力を高めるための実践10ヵ条
3.人に喜ばれるための実践10ヵ条
4.組織力を高めるための実践10ヵ条
第2節  当たり前のことをキチンとする
5.お客様に感動を与えるための実践10ヵ条
6.より良いものを生み出すための実践10ヵ条
7.発信力を高めるための実践10ヵ条
第3節  心に描いた夢を実現する
8.夢を実現させる実践10ヵ条
9.100年ビジョン10ヵ条
10.心をときめかす夢の10像

   このうち、例えば、「夢を実現させる実践10ヶ条」の中に「私たちは有給休暇を取れる体制を整え、プライベートも充実させ、生き生きと仕事をしている」というものがあります。

夢を実現させる実践10ヶ条【抜粋】
私たちはプライベートの目標を明確に持ち、やりがいを持って仕事に取り組んでいる
私たちは有給休暇を取れる体制を整え、プライベートも充実させ、生き生きと仕事をしている

   サービス業は有給休暇を取りづらく、以前は、有給休暇とは、体調を崩したときに取得するものくらいの認識でしたが、この条項が5年前に明記されたこともあり、今では、従業員が有給休暇を取りやすい体制になっています。100ヶ条は、経営陣の押し付けではなく、従業員自ら描いた夢なので、これを着実にやっていけば、従業員にとって、より良い会社になっていくと考えています。
   なお、この100ヶ条には、以前は経営陣が実現したい夢も選定されており、20年前に発行した第1冊目には、当施設(秋保ヴィレッジ[※])の構想が記載されており、当施設はこのときの夢を実現したものです。

秋保ヴィレッジ[※]

   2014(平成26)年、秋保温泉の近くにオープンしました。敷地内には、地元の農家と協力し、農産物や加工品等の販売、フードコートなどを併設した「アグリエの森」のほか、ビニールハウスでは野菜を栽培しており、家族向けに農業体験もできます。
   また、「秋保ヴィレッジ」は、中山間地である秋保地区に農産物の販売拠点を設け、地元の農家の方々と連携してこの地を盛り上げていこうという想いで始めましたので、ヴィレッジ内にある「アグリエの森」では、地場の農産物を使った商品開発に力を入れており、付加価値の創出と地元への貢献へつながるよう実践しています。

秋保ヴィレッジ秋保ヴィレッジ

社長直行便・お客様感動接客例

   弊社には、各店舗にハガキを置き、お客様からご意見・ご要望・ご提案をいただく「社長直行便」という制度があります。お客様にハガキを投函していただくと直接本社に届く仕組みです。
   また、お客様と従業員との暖かな交流を「お客様感動接客例文集」としてまとめ、全スタッフで共有し、NO.1のスタッフを新年会で表彰しています。お客様の感謝の言葉を共有し、従業員のやりがいに繋げていいます。
   なお、例文集は平成15(2003)年から毎年1冊作成していますが、2019年に入社した社員向けに、これまでの受賞者のエピソード等を集めた総集編を初めて作りました。

エピソード集表紙エピソード集

生産性向上と時間外労働の
削減に向けて

   2019年4月から店舗の管理体制を変更し、エリアマネージャーの管理する店舗数を少なくし、従業員の労働時間管理や店舗間のヘルプ対応をきめ細かに実施できるようになりました。
   また、繁忙期・閑散期に応じてフレキシブルな働き方を可能とするため、2019年9月から試験的に一部の店舗で変形労働時間制を導入しています。
   労働時間の管理を1日単位から週単位・月単位に変更し、週末等の繁忙日には長く働き、比較的に落ち着いている日には、勤務時間を短くして早く帰ったり、休むなど、繁忙期・閑散期で対応する人員を調整することで生産性を高め、収益性を上げるようにしています。
   まだ取り組み始めたばかりなので試行錯誤しながらですが、全体として時間外労働は確実に減っています。引き続き、課題等を検証しながら、2020年4月からは全店舗での変形労働時間制の導入を目指しています。

部門の垣根を越え、
チームで解決

   ここ秋保ヴィレッジには、店舗勤務の販売部門、工場勤務の生産部門、事務部門の70名ほどのスタッフがおり、うち約半分はアルバイトの方です。部門が違うと顔を合わす機会も少なく、特に生産部門の方は工場内では帽子とマスクをしているので目元しか分からず、作業内容も違うので、お互いの業務内容をよく理解していない、といった状況でした。
   そこで、2019年10月から、店舗の備品管理やお客様向けの情報発信、イベントの企画など、職種に関わらず横断的な6つのチームを編成し、月1回勤務時間中に集まり、ミーティングを行っています。
   これにより、部門の垣根を越えて情報交換できるようになっただけでなく、それぞれの「役割と責任」が見えるようになり「皆が楽しく働くために足りないことを皆で考える」という結束力が強くなったと思います。また、以前よりも物事の進むスピードが速くなったと感じています。

【秋保ヴィレッジの運営組織と仕事内容】秋保ヴィレッジの組織秋保ヴィレッジの仕事

安心安全に向けた取組

   弊社で販売するお菓子は冷凍商品が多いのですが、お客様からは、購入後の取扱いの容易さから、常温保存できるお菓子のニーズが高く、常温保存のお菓子の開発に力を入れています。また、その一方で保存料の使用の抑制や品質へのお客様のニーズにも応える必要があるため、これを委託製造で進めると細部の調整が難しいので、商品仕入のリードタイムも考慮し、商品の内製化を進めています。
   最近では、どら焼きとクッキーの内製化をスタートしており、どら焼きは既存の他の商品のラインを活用して製造し、クッキーの製造機械は新たに導入しました。 また、衛生管理の徹底のため、現在、FSSC22000[※]の取得に向け、商品部門が中心となって社内で勉強会等を実施しています。

「Food Safety System Certification」食品安全マネジメントシステムの国際規格

SDGsの取組

   従業員から吸い上げた意見により、秋保ヴィレッジでの取組として、SDGsに向けた取組もスタートしています。「喜久福きくふく」という、柔らかいお餅の冷凍商品について、製造過程で包装不良等、が発生した場合、これまでは試食用としてお客様に提供していましたが、その一部を子ども食堂に提供することを始めました。
   当店舗に野菜を提供して下さっている農家さんが子ども食堂にも野菜を提供していると聞き、農家さんに相談し、弊社の包装不良等の商品も一緒に子ども食堂に持って行っていただいています。
   また、2020年度からは、飲食部門で使用しているストローについて、プラスティックから紙製に切り替える予定です。
   SDGsについては、セミナー等に参加して情報収集する、少しずつ社内の取組事例を増やすなど、出来ることから少しずつ始めていきます。

今後

   今後も、効率的な店舗等の運営・収益性の向上と従業員の幸福・働きがいの両立を目指して取り組んでいきますが、それには、働いている人それぞれの環境での課題や問題点等をしっかりと把握し、意見を吸い上げて実現していくことが重要だと考えています。
   2019年10月の経営方針発表会で従業員(約250人)向けに無記名のアンケートを実施したところ、7割以上の方が現時点のやりがいを感じており、人間関係が良い、お客様からのお褒めのお言葉が嬉しいなどのコメントもあり、現状としては、やりがいのある働きやすい環境と評価されていると感じています。
   ただし、「今後やってみたいこと」という設問に対しては、3割くらいしか回答がなく、現状に満足することなく、今後の改善点として重く受け止める必要があると考えています。
   このため、特に、自分のスキルを有効に生かした働きやすさ、中長期的なやりがいに繋げるため、入社してからのキャリアプランをもっと明確に示していく必要があると思っています。

お茶の井ヶ田株式会社の皆様、
インタビューのご協力
ありがとうございました。

お問合せ先

大臣官房 新事業・食品産業部 新事業・食品産業政策課

代表:03-3502-8111(内線4136)
ダイヤルイン:03-3502-5742