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平成12年11月に、IT基本法が制定され、すべての国民が情報通信技術の恵沢を享受できる社会の実現、経済構造改革の推進及び産業国際競争力の強化、活力ある地域社会の実現及び住民福祉の向上等が定められた。
○平成9年度頃からは、双方向の情報受発信が行える高速インターネット機能を有する高機能型CATV及び多様な情報システム等の整備を推進している。
CATVの導入目的は、テレビの難視聴地域解消、産業振興、若者の定住、高齢者対策及び都市住民との交流などである。CATV等の情報システムを活用した家畜の管理や農林漁業者支援など新たな展開が進められているが、CATVにより提供されている情報に対し、約6割の市町村等で情報が少ないとの不満がある。
以上のことは、一般的な高速インターネットにもあてはまるものと思われるが、農林漁業者、農山漁村の住民、都市住民等さまざまな主体を意識し、情報コンテンツの充実を図る必要がある。
農山漁村ではさまざまな情報提供の要望がある一方で、利用者数が少ない場合が多い等の理由から、地域ごとでの情報コンテンツ等の制作や情報提供には限界がある。さらに民間事業者が提供している情報サービスと同等の情報提供を行政主体の運営組織が対応できるのかといった問題もある。
ここ近年は、飛躍的に情報通信基盤の整備が行われ、特に都市部では、民間事業者による整備が進み、整備水準の向上が際だっている。しかしながら、農山漁村では、民間事業者による基盤整備が期待できない条件不利地域がなお多く存在する。
山漁村では、高齢者が多く、パソコンや情報端末など情報機器の操作が困難である、情報利活用システムの利用に慣れていない等情報利活用能力が遅れている。
過疎地域等条件不利地域の住民にとって、高度情報通信基盤の整備により、デジタル・ディバイドの是正、農林漁業情報の迅速な取得、都市への情報発信等さまざまな効果が発生するが、どの程度の効果をもたらされるか、定量化が困難なものが多い。
情報通信基盤の整備、維持管理において、財政負担、人材確保等が課題となっているケースもある。また、魅力的なコンテンツの不足や設定した利用料金が高いことなどから、CATVや高速インターネット等への加入率が向上しないケースもある。
食品や農林水産物に対する消費者の信頼を回復するために、農林水産物の生産者、生産地、品質等の情報を提供するシステムの導入を推進する一方で、生産者にとっては、情報を発信することは手間もコストもかかることから、できる限り多数の消費者と生産者との信頼を醸成し、消費者が安全・安心で高品質な農林水産物を求めることができるよう、生産者にもメリットがある仕組みでなければならない。
このため、多くの農林水産物について、トレーサビリティシステムを含む生産者単位でその生産履歴等の情報が消費者まで届く仕組みを構築するとともに、ITを活用して、消費者の農林水産物に関する評価をはじめとした意見やニーズ等が直接、生産者に届き、それらが生産等に反映でき、生産者の努力が十分に報われるシステムの構築が求められている。
農林水産物の生産、販売等にかかる情報システムの整備は、農林漁業者や農林漁業団体等が経営の視点に立って行うことが重要である。ITを活用して生産管理の効率化、流通のコストの削減を図るとともに、消費者の反応を捉えて、生産・流通を戦略的に行うなど、企業的農林漁業経営の展開を促進することが必要であり、農林漁業者のニーズに応じ、充実したコンテンツ等を作成するとともに、コストを可能な限り抑えて、多くの収益を上げるという経営的視点からの情報システム整備が重要である。
また、農山漁村ではその情報システム自体の規模が小さく、民間事業者による単独の事業実施は難しい場合もある。この場合、国・地方公共団体による補助、支援が必要となるが、公的機関や民間企業のいずれが主体であっても、経営の視点での整備を進める仕組みが必要である。
森林の測量や効率的な林業経営のために、GIS(地理情報システム)やGPS(全地球測位システム)が用いられている。また、農業でも、農地等の担い手への利用集積、土地利用計画の策定や農業用用排水路システムの管理等への利用が進んできている。今後、森林や農村の空間的な広がりの中で、担い手が効率的に農林水産業や農山漁村にかかる施設や資源を管理、活用するためにはGISやGPSを一層積極的に利活用する必要がある。
ITを活用したむらづくりは、農林漁業者、農山漁村住民をはじめ多様な主体が参画して議論を深めて、推進しなければならない。その上で、空間的移動の補完・代替、保健、医療、教育等でITを活用した農林漁業の振興や農山漁村の生活環境の改善を図っていくことが重要である。また、移動通信を利用し、いつでもどこでも必要な情報の受発信ができ、安心して農林漁業に従事するシステムや、IT人材の確保や地域の雇用創出に貢献するテレワークセンター等の情報拠点の整備も重要である。さらに市町村合併、農山漁村の集落再編等の支援にもITは貢献する。
農山漁村の情報化は、情報システムの利用者である農林漁業者や農山漁村住民の意向を踏まえたものとしなければならない。農林漁業者等への意向調査はもちろんのこと、地方公共団体、民間事業者、学識経験者、住民等地域の多様な主体が広く参画し、地域の情報化のあり方、進め方等について議論する場の設置を推進させることが重要である。このような場は、地域の情報化のサポート機関としての役割も期待できる。
例えば、空間的な広がりがあり、都市と比べて疎な居住空間である農山村においては、住民間の日常的な情報交換の場が少ないことなどから、農山漁村の情報化の進展は、地域内のコミュニケーションの機会を増やし、住民間の情報交換を活発にすることにより、地域でのグループ活動を活性化する等の効果が期待できる。
農山漁村の情報化による生活環境の改善は、現在居住している住民だけを対象にするのではなく、UIJターン等により将来住む可能性のある人や農山漁村を訪れる人々の意向を含めて考える必要がある。
高齢化の進行した農山漁村では、高齢者の健康管理、福祉が大きな課題となっている。農山漁村では医療機関も少なく、また、あっても遠方にあることが多い。医療・保健機関と高齢者宅を情報システムでつなぎ、健康相談、健康管理、遠隔医療等を実施可能にすれば、移動に伴うコストを低減し、高齢者の安全・安心を高めるとともに、老人医療費、介護費用等の軽減につながることが期待できる。
また、ITを活用することで、他地域の大学等の高度な教育を受けること(e-ラーニングなど)、過疎地の小中学校と他の小中学校のテレビ会議を通じた交流、複式学級をとっている学校同士をつなぐことにより教育機会の増加や充実が可能となる。
市町村合併により広がる行政区域内で、一定水準の行政サービスを維持したり、過疎化、高齢化等に対応するコミュニティづくりを行うためにIT活用が必要である。
農林漁業者は、ほ場、畜舎や山林など屋外での活動が多い。このため、農林漁業に関する情報に加え、生活に関する情報の受発信(例えば、在宅の高齢者の安否確認等)に、いつでもどこでも(ユビキタスな)必要な情報の受発信が可能な携帯電話等移動式の情報端末を利用した情報システムの整備が重要である。これにより、農林業業者が安心して農作業等に従事できるようになる。
ゆとりある生活空間、豊かな自然、農林漁業をはじめとする地域資源を活用した産業など、農山漁村の魅力に関し、都市住民を含む多くの国民がその価値を見直しつつある。農山漁村の魅力に対する多様な関心に応じて多くの国民がこれを享受できるよう、農山漁村が自らの持つ魅力を再認識し、これを適切に維持・保全するとともに、その積極的な活用を図り、効果的に情報発信していくことが必要である。
特に、農山漁村から都市に積極的に情報を発信する仕組みの構築、民間事業者やNPO等多様な主体の参画による情報発信・交流促進、自然、史跡、文化等といった農山漁村の魅力のデジタル・アーカイブ化等が重要である。
農山漁村に都市住民の関心を引きつけるためには、農林水産物、行事、施設利用等の直接的な情報だけでなく、豊かな自然、史跡、文化など農山漁村の魅力を感じさせるような情報を蓄積・発信していく必要がある。このため、ITを活用し、都市と農山漁村の交流に活かす方策として、農山漁村の豊かな地域資源、歴史や伝統に根ざした文化、伝統産業等の多様な農山漁村の情報をデジタル・アーカイブ化することが望まれる。
農山漁村の情報をその地域から発信することは重要であるが、それを地域がすべて担うことは、人員や経済的な面から限界がある。このため、農山漁村からの情報発信は、地域の人々のみではなく、第三者が取材し発信する仕組みの構築も必要である。例えば、都市側の視点で農山漁村の情報発信を行うことにより、都市住民の興味や関心を引くことも考えられる。このような機会を増やすためにも、農山漁村からの情報発信を行うとともに、都市住民も興味を持ち、農山漁村の魅力を感じさせるようなむらづくりが求められる。
地球温暖化対策が喫緊の課題となっているが、例えば、木材のCO2吸収効果に関する情報が国民に浸透していない。森林の有する地球温暖化防止、国土保全等をはじめ農林漁業の公益的な機能に関する情報が国民に十分浸透するよう工夫する必要がある。
また、里山は古来より住民の生活と深く関わりを有し、生物の宝庫となっているが、近年、管理がなされないために荒廃してきており、森林ボランティア等の参加も求めて復元を図ることが取り組まれている。里山に限らず、農山漁村の価値や環境を維持する活動への取組にITを活用することを考える必要がある。
都市とは地理的条件や人口集積が異なること等のため、民間事業者による情報通信基盤の整備が進まない農山漁村においては、農山漁村独自の情報ニーズに対応した効率的な基盤整備を進める必要がある。 既存施設の活用などコスト意識を持った整備、電子自治体との一体的整備、地域情報システムの広域ネットワーク化等、さらに、民間事業者との適切な役割分担のもと、関係府省連携による情報通信基盤整備も重要である。
さらに情報基盤整備には多額の費用を要することから、将来の住民も含め、住民や利用者等のニーズを的確に把握すべきである。
情報通信基盤の整備は重要であるが、建設等に関する国や都道府県等の支援を含めても市町村等の事業実施主体には運営・維持管理等には大きなコストがかかる。このため、将来を見越した情報量や利用方法を踏まえた情報通信基盤の整備を行うことは必要であるが、厳密なコスト比較を行い、維持更新費を含めて最もコストのかからない方法を選択することが必要である。
主なコスト低減の手法としては以下の2つが掲げられる。
将来、農山漁村においてどのような情報が求められ、あるいは発信する必要があるのかを整理した上で、必要なアプリケーションと情報通信基盤の整備を計画する必要がある。現在、農山漁村から都市への情報発信は多くはないが、都市住民は農山漁村に関する多くの情報を求めており、将来の情報量及び技術進歩を見通して光ファイバー等情報通信基盤の整備を検討することが重要である。
CATV、地域イントラネット等の情報通信基盤は、市町村単独や複数市町村にまたがって整備されることが多いが、その情報通信基盤を相互に連結し、都道府県単位またそれを超える広域的なネットワークを構築することにより、コンテンツや情報の充実や相互利用、利用者の利便性の向上、コストの低減等が可能となる。さらに、市町村や農業協同組合(JA)の合併等に資すると思われる。
加えて、今後、電子自治体の整備が進むにつれて、行政のネットワーク化も進み、近隣の市町村間で協力・連携し合う体制が整備されるようになる。これら自治体間の行政ネットワークとの接続や業務を共同してのアウトソーシング化を行うことにより、コストの低減や充実を図ることが必要である。
情報通信基盤整備に当たっては、国、地方公共団体、民間事業者の適切な役割分担が必要である。情報通信基盤は、原則として民間事業者が中心となって整備を行うものとするが、国・地方公共団体は条件不利地域等で民間事業者が対応できない部分について、情報通信基盤や利活用システムの整備を、関係府省と連携し支援を行うことが必要である。また、農山漁村での情報通信基盤整備によって、地域住民だけでなく、農山漁村の情報が入手できる等都市住民もITの恵沢を享受できるよう進めていくことも必要である。
農林漁業者等を対象とした研修や普及員、農協職員等をIT指導人材として育成する他に、地域での人材育成や情報リテラシー向上を図るための方策の検討及び実施が必要である。
農林水産物に対する消費者の信頼を確保していくためには、農林漁業者が消費者や都市住民に対して、農林水産物の安全性に関わる情報を発信していくことが重要であるが、情報リテラシーが遅れているなど農林漁業者がITに関心がなければ対応できない。このため、ITの有用性の理解の促進や利活用能力の向上を図り、積極的に情報発信することができる農林漁業者を育成していくことが重要である。
注意すべき点として、情報リテラシーの向上がコンピュータの操作に関する能力向上、いわゆるコンピュータリテラシーに留まっている場合が多いということである。今後、ITを農林漁業や農山漁村に係る情報の発信や活動に実践的に活用する、情報を使いこなすという意味での情報リテラシーの向上を図る必要がある。
中山間地域等の農山漁村では過疎化、少子化等を背景として、IT化に熱心に取り組んでいる地域も多い。このような地域でIT化を進めていくためには、将来の担い手を育成するとともに、児童・生徒を通じての親世代のIT化も期待されることから、小中学校からのIT教育が重要であり、市町村等は積極的にIT教育に取り組むことが望まれる。また、関係府省と連携して、積極的に支援することが望まれる。
農山漁村をはじめとする地方では、ITに携わる人材が少ないこともあり、地域の農林漁業者や住民に対する利活用技術の普及・啓発が遅れている場合も多い。例えば、高速インターネット機能を有するCATVを整備しても、インターネットの利用が進まず、CATVとしての利用が中心になっている場合も見受けられる。
ITは進展が非常に早く、専門的な知識が必要であるため、専門家がいない市町村単位で設置した地域情報システム等の運用体制では、新たな取組が難しいものも多い。このため、このような農山漁村地域の独立した情報システム相互のネットワーク化を積極的に進めていくための支援、指導を行う総合的なサポート体制が必要である。
また、ITを利活用して地域活性化に取り組んでいる機関・団体やNPO等と連携した取組を関係府省と連携して積極的に進めることも重要である。
高齢者や農林漁業者など普段IT機器に接する機会が少ないために、情報弱者となっている人々に対してどのように対処するかは重要な課題である。IT講師や指導員による研修制度に加えて、情報弱者にも確実に情報が伝わり判断できるような仕組みや操作しやすい情報機器・システムの提供等を充実させることも必要である。その意味で、情報に対するバリアフリーもしくはユニバーサル・デザインの概念は大きな意味を持つ。
農林漁業者の高齢化が進む中で、効率的な農林漁業経営を行うためには、情報システムやネットワークの整備に加えて、ほ場や作業現場などにおいても情報の受発信がいつでもどこでも(ユビキタス)できる環境やITを活用したロボット技術など新たな農林漁業機械・施設等の技術開発及び普及等が期待される。
農林漁業は国内外で厳しい価格競争を強いられており、今後、このような厳しい価格競争に打ち勝つためには、高品質、安全・安心かつ新鮮な農林水産物を、適正な価格で消費者に提供することが重要であり、ロボット技術を活用し、操作性だけでなく、農林水産物の生産コスト低減に資する農林漁業機械等の開発が望まれる。
農山漁村では女性や高齢者が重要な働き手となっていることを踏まえ、農林漁業の生産性の向上や高度化を推進するため、農林漁業の担い手が利用し易いロボットの開発が望まれる。
また、農業用ハウスや温室等の遠隔環境制御・監視システムの設置、畜舎、農地等の監視用モニターなど、効率的な農林漁業経営を行うシステムの開発や整備を推進する必要がある。
農山漁村の情報化は、農林漁業・農山漁村の振興、都市との交流を促進し、農山漁村に利益をもたらす一方で、例えば、農業や林業にかかる土地等個人の財産にかかる情報のように、プライバシー保護の観点から、そのまま外部に発信することには問題があるものが多く含まれる。そのため、農山漁村の情報をデータベース化し、利用する場合には、個人情報保護のルールを確立し、個人情報が含まれる情報のセキュリティに配慮した使用や情報発信が必要である。
情報ネットワークに1ヶ所でもセキュリティの手薄な部分があると、外部からのウィルスやハッカー等の侵入を許し、システムを混乱・破壊される恐れがあるため、外部からの侵入に対する防御を行うことが重要である。
農山漁村においては、行政をはじめ小規模な情報通信システムが運営されており、セキュリティに対して必ずしも十分な体制が整備されていない場合もあることから、今後、情報化を進めていく上でシステムの管理者に対する情報の提供や支援を行う体制も検討する必要がある。
整備した情報システムやネットワークは、農林漁業者のみならず地域住民が利用できるものであることから、施策の実施主体として、地方公共団体以外に、関係機関・団体、地域住民、民間企業、NPO及び地域のコミュニティ等も加える仕組みとすることを検討すべきである。また、地域の情報化は、地方公共団体の財政的かつ人材的な制約があり、地方公共団体がすべて対処するのではなく、NPOや地域コミュニティ等と連携して進める必要がある。特に、NPOや地域コミュニティ等は農林漁業者へのIT指導や情報コンテンツの整備等の分野での活躍が期待される。
情報通信基盤、利活用システムの整備等農林漁業・農山漁村の情報化施策は、多くの人が利用し、便利になれば良いというものではなく、信頼性、利便性に加え、生産者や消費者、利用者等にメリットのあるものでなければならない。そのため、国や地方公共団体から補助を受けて整備するものや公的な情報を提供するものについては、利用効果を測定するとともに、評価を行うことが重要であり、評価基準を検討することが必要である。
我が国は、海外より多くの農林水産物を輸入し、消費している。ITの進展により、海外での農林水産物の市況状況、安全・安心に関する情報を容易に入手できるようになっている。また、海外の農林漁業に関する栽培技術の入手、調査研究論文の入手、海外への情報提供、国際的な病害虫対策、伝染病対策、技術移転等が可能となる。これにより、農山漁村では、従来、触れることが少なかった海外の情報の入手や海外への情報発信が身近なものとなり、国際的な視点に立った農林漁業への取組などが期待される。
上記の「ITを活用したむらづくりの推進」の他に、次の事項にも考慮し、「e-むらづくり計画」の策定を進める必要がある。
「e-むらづくり計画」は、都市との情報通信基盤の格差を解消するために整備を行うことやITの進展により新たな情報化の可能性を検討する以前に、農山漁村に住む人々が生産活動を行い、生活を営むために必要な情報の提供、交換等を実現するという人を中心にした計画とすることが重要である。そういう意味では、「人間こそがマルチメディア」であり、人抜きではITの議論はできない。
ブロードバンド化の進展により高速かつ大容量の情報(動画等)が利用できるようになったことから、遠隔地の高齢者の健康相談や、家畜、作物、農地等の管理等新たな農林漁業の展開の可能性が広がったと言える。しかし、ITに任せることにより新たな農林漁業経営ができるものではなく、農林漁業者自身がいかにITを使いこなしていくかという視点が重要である。
国民に安全で美味しい食料を提供していくとともに、洪水の緩和、森林や農地を通した水の循環による都市用水の供給、美しい農山漁村が国民のやすらぎの場となっていること等、農林漁業を通して発揮される多面的機能による便益を都市住民も享受している。このような消費者、都市住民の農山漁村との関わりを踏まえ、消費者や都市住民の視点も持ちながら農山漁村のIT化を進めていくことが望まれる。
農山漁村でITの利用を進めるにあたっては、都市に比べ疎な居住空間等の中でどのような農林漁業振興ができるかが課題である。施設の整備に、国や地方公共団体等の公的資金の投資や、利用者である農林漁業者、農山漁村の住民に相応の負担を求めることから、納税者や利用者の理解が得られるような効果が発現されるものでなくてはならない。
ITは農林漁業や農山漁村での生活において都市に比べ不便さや不利な条件を解消する手段として期待できる。ITの利活用として次の3つが挙げられる。第一に、農業生産や農産物等の流通・販売でのITの活用である。第二に、農山漁村で安全、安心、快適に生活するために住民の防災や健康管理等へのITの活用である。第三に、文化、精神面の豊かさを支えるITの利活用で、教育、文化活動、生涯学習、さらには都市と農山漁村の交流等を通した豊かなライフスタイルの実現等である。情報通信基盤整備がそれぞれどの分野に位置づけられるものであるか整理することにより、計画立案、国・地方公共団体との役割分担、農林漁業者・その他住民への説明等に活かすことができる。
ITを使ったむらづくりをどのように進めるのかではなく、過疎化、高齢化が進む中、新たな農林漁業の展開方向や市町村合併による地域の整備の方向を見定めながら、農林漁業を中心に据え、豊かで住みやすいむらづくりを行うためにITをどのように活用していくかが重要である。
山村は都市に比べて広い空間でありながら人口が少なく、居住環境が疎であることや農山漁村の人口に占める高齢者の割合が高いなど、都市とは人口分布や構成が異なる。情報についても質や量が異なることを踏まえ、農山漁村に相応しいITの活用方法を検討することが重要である。さらに、農林漁業者や農山漁村の人たちがイメージできるIT時代の農山漁村振興モデルを提示することが必要である。
情報システムを整備することそれ自体よりも、情報を農林水産業経営や日常生活の中でいかに利用するかが重要であることを認識し、先進地域におけるITの利活用方法やコンテンツ、利用者のニーズについて十分調査した上で、地方公共団体、農林漁業者、都市住民等が使ってみよう、見てみようと思う魅力のある情報の提供を可能とするシステムの整備を行うべきである。
ブロードバンド、移動通信、放送と通信の融合等については、具体的に何ができるかを見据えた整備を行うことが必要である。また、テレビ放送のデジタル化に対応した施設の整備、ユビキタスサービスの進展、IPv6の展開、情報家電、ICカード等新たなITの進展にも配慮する必要がある。
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農村振興局整備部農村整備官
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