江戸時代(えどじだい)の後期、飢饉(ききん)や凶作(きょうさく)で米を食べることができなかった八戸市(はちのへし)とその周辺を含む南部では麦やそばを栽培(さいばい)しました。麦やそばの粉から、やわらかい麦せんべいやそばせんべい(てんぽせんべい、もちせんべい)ができ、明治時代になってかたく焼いた南部(なんぶ)せんべいが誕生しました。南部せんべいはそのままでも主食や間食として食べられますが、汁物にちぎって入れる食べ方もしました。これが「せんべい汁」のはじまりです。
せんべい汁には野菜のほか、川でとれるウグイやカニ、山でとれるキジ、ウサギなど季節の食材が使われてきました。最近はとり肉を入れて作ることが多く、サバの水煮缶(みずにかん)や馬肉を使うこともあります。せんべい汁に入れる南部せんべいは「おつゆせんべい」ともいい、煮こんでも溶けにくいように、汁物専用のものが作られています。