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農林水産省

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3 国際的な情報交換等


食品安全委員会では、年に数回、海外から有識者を招いて意見交換会や勉強会を開催しており、国際的に活躍されている方々から食品の安全性に関する最新の知見を直接聞くことができる貴重な機会となっています。平成28(2016)年5月には、「牛海綿状脳症(BSE)と食の安全に関する科学」と題して、英国動植物衛生庁及びエジンバラ大学から講師を招き、国際セミナーを開催しました。

また、平成28(2016)年度は、リスク評価機関間の情報共有など国際的な協力を推進するため、ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)と協力覚書(MOC)を新たに締結しました。

国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所国立健康・栄養研究所では、「栄養と身体活動に関するWHO協力センター」として、アジア太平洋地域の研究機関等とのネットワークづくりを目指して研究交流を継続的に行っています。平成28(2016)年3月に開催した第7回アジア栄養ネットワークシンポジウムでは、WHO西太平洋地域事務局栄養テクニカルリードによる世界の乳幼児期・若年期の肥満増加の現状と同課題への取組をテーマとした基調講演に続いて、ディーキン大学国際肥満センター(肥満予防に関するWHO協力センター)副センター長及び日本、マレーシア、ベトナム、モンゴル、フィリピン、フィジー各国からの講演者による学童の肥満予防のための施策の報告を踏まえて情報交換・意見交換を行いました。

第7回アジア栄養ネットワークシンポジウムにおける基調講演と総合討論

第7回アジア栄養ネットワークシンポジウムにおける基調講演と総合討論

事例:2017年冬季アジア札幌大会におけるフードレガシーを活かした食育
「HOT(ほっと)ネットワーク ~広げよう世界へ、つなげよう未来へ~」

第8回札幌アジア大会冬季競技大会組織委員会
北海道栄養士会冬季アジア札幌大会栄養サポート委員会

平成29(2017)年2月、アジア地域における冬季スポーツの発展を図ることを目的として開催される総合国際スポーツ大会「2017年冬季アジア札幌大会」が開催され、過去最多の32の国・地域から約2,000人の選手・関係者が参加しました。選手の宿泊施設として既存の3ヶ所のホテルの利用が決まり、組織委員会から北海道栄養士会に各ホテルで提供するアスリートの食事について専門的な意見を求めて相談がありました。

レシピコンクールに参加した学生たち

レシピコンクールに参加した学生たち

これを受け、北海道栄養士会では、北海道在住の公認スポーツ栄養士6名で冬季アジア札幌大会栄養サポート委員会(冬季アジア栄養サポート委員会)を立ち上げ、「HOT(ほっと)(ほっと)ネットワーク~広げよう世界へつなげよう未来へ」(HOT(ほっと):競技力発揮のため、ほっと:安全の確保・心を込めて)をフードレガシー(*1)として、各ホテルの食事に関する支援業務と併せて、フードレガシーを開催地域で活用していく方法も、第8回札幌アジア大会冬季競技大会組織委員会と一丸となり検討していきました。

 

その結果、大会開催100日前記念イベントに合わせて北海道の食材の魅力を知ってもらうこと(広げよう世界へ)、北海道の食を支える人材育成(つなげよう未来へ)を目的にした食育イベント「HOT(ほっと)・ほっと北海道レシピコンクール」が浮上しました。

コンクールでは、「参加アスリートをHOT(ほっと)(ほっと)にするのはあなたのレシピ!」をサブタイトルにして、<1>アスリートの特性を考慮した心のこもった(HOT(ほっと)・ほっと)、安心(ほっと)するレシピであること、<2>大会期間中に入手可能な北海道の食材を指定食材(主菜部門:ホタテと玉葱、デザート部門:人参と乳製品)として使用すること、<3>応募対象は、北海道の食の未来の担い手となる管理栄養士、栄養士及び調理師を目指す学生とすること、の3つを条件にレシピを募集しました。

大会参加選手への提供

大会参加選手への提供

調理審査は、札幌市食育推進会議会長や公認スポーツ栄養士、調理師など専門家に依頼するとともに、調理審査前日には、入賞レシピをイベント会場に展示して、来場された市民による投票も行いました。

また、主菜、デザート部門で優秀賞を受賞したレシピを実際に選手や関係者が滞在するホテルで提供することにより、アジア圏の方々に北海道の自然が生み出した食材をアピールする機会も得ながら、レシピコンクールを実施しました。

○優秀賞 受賞レシピ〔主菜部門〕

あけたらHOTなホタテのグラタンの写真

タイトル:あけたらHOTなホタテのグラタン

指定食材以外に使用した北海道産食材:じゃがいも(2種)、かぼちゃ、牛乳、チーズ

レシピのポイント:北海道の乳製品で骨を強くしよう!見た目は普通だが、開けてみたらじゃがいも、かぼちゃでカラフルななかにホタテが埋もれている。カルシウムが多く含まれておりスポーツ選手の基盤となる体を丈夫にすることができる。(このグラタンで成人男性1日のカルシウム目標量の半分を摂取できる。)

○優秀賞 受賞レシピ〔デザート部門〕

ほっくり野菜のシャキふわロールケーキの写真

タイトル:ほっくり野菜のシャキふわロールケーキ

指定食材以外に使用した北海道産食材:ヤーコン、かぼちゃ、長芋

レシピのポイント:タンパク質・ミネラルが豊富で体力維持にぴったりの優しい味わいのロールケーキ。やさしい人参・かぼちゃの甘さとヤーコンのしゃきしゃきとした食感、長芋の酸味のあるしっとりとしたクリームが特徴的で、生地、クリーム、トッピング全てで北海道の野菜が楽しめる。

(いずれも、受賞者作成のレシピから抜粋)

今回の取組では、北海道の自然が生み出した食材を使用し、その調理方法を未来の食の担い手である学生たちに考えてもらったこと、また、食材と調理方法をイベントで市民にPRしただけでなく、アジア大会の食事についても参加選手や関係者にPRしたことで、フードレガシーを活用した食育に繋げることができました。さらに、新聞報道などのメディアで紹介されたことで、より多くの方々にも取組を知ってもらうことができました。

このような取組が実施できたのは、行政(北海道)と大会運営機関(第8回札幌アジア大会冬季競技大会組織委員会)が後援し惜しまず協力してくれた結果、フードレガシーを活かす環境が整ったおかげだと心から感謝しています。

この経験から、栄養士会と行政、大会運営機関が協力すると1つの取組が色々な方向へと発展できる可能性があることが分かりました。これから開催される国際大会や2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の機会に、相互の協力で参加選手や関係者、そして開催地域の住民へ向けた取組が行われ、発展されることを期待したいと思います。

*1 レガシーとは遺産を意味しますが、国際オリンピック委員会(IOC)では、レガシーとは「長期にわたる、特にポジティブな影響」とし、競技大会のよい遺産(レガシー)を、開催都市ならびに開催国に残すことを推進しています。

コラム:官民連携「栄養改善事業推進プラットフォーム」の設置

世界には8億人近くも栄養不足とされる人がいるのをご存知でしょうか。5歳以下の乳幼児の死因の45%は栄養不良に関係しているといわれる一方で、肥満人口もまた世界の3分の2が途上国に集中しているのが現状です。こうした状況を受け、世界では平成25(2013)年に英国政府のイニシアティブで「Global Nutrition for Growth Compact」が作成され、平成27(2015)年に「持続可能な開発目標(SDGs)」、また平成28(2016)年には伊勢志摩サミット「食料安全保障と栄養に関するG7行動ビジョン」に途上国の栄養改善の重要性が盛り込まれるなど、国際的な取組が推進されています。

こうした国際的な動きに呼応して、日本政府は栄養改善に向けた官民連携パートナーシップを先導することを約束し、また英国やブラジルとの間で、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて世界的な栄養改善の取組を強化することを確認しました。平成26(2014)年に閣議決定された「健康・医療戦略」では、「新興国・途上国を含む各国の栄養改善のため、官民連携を通じた包括的ビジネスを含む事業の国際展開を進める」方針を表明し、それを受けて、平成27(2015)年3月に「栄養改善事業の国際展開検討チーム」を設立しました。その検討の結果、平成28(2016)年7月に官民連携で「栄養改善事業推進プラットフォーム(Nutrition Japan Public Private Platform)」を立ち上げることが決まり、同年9月に発足しました。

日本はかつての栄養不良の時代を学校給食や栄養教育などの優れた政策により乗り越えてきた歴史があります。また、近年の栄養過剰からくる生活習慣病対策も含めて、栄養改善に関する知見を官民で持っています。日本の民間企業の中には、CSR(企業の社会的責任)を超えたCSV(共有価値の創造)の実現に向けて、当該企業のビジネス展開の一部として海外における栄養改善事業(栄養を強化した食品等の普及・販売)に取り組む企業も出てきています。

コラム 図表1 「栄養改善事業推進プラットフォーム」と官民連携の枠組み

このプラットフォームは民間企業を中心に、共同議長であるJICA、食品産業センターのほかJETROなどの政府関係機関、学術研究団体や学識経験者、NGO、コンサルタント等が参加し、関連情報を共有・発信しつつ、企業のアイデアを基にして案件を形成します。一方、関係省庁は政府内に作業部会を設置し、プラットフォームが進める具体的事業への支援や要望や提案に応じた支援策を検討します。

このように「栄養改善事業推進プラットフォーム」は、官民連携の枠組み(【図表1】参照)の中で国際的な栄養改善事業を推進していくことで、途上国への支援の役割を果たすとともに、日本の経済成長にも寄与し、世界の栄養改善に継続的に貢献していきます。



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