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農林水産省

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遺伝子組換え農作物に関するQ&A

I 安全性評価全般について

1. 遺伝子組換え農作物の安全性は、どのように審査されていますか。

我が国における遺伝子組換え農作物の使用等の可否を判断するに当たっては、あらかじめ、食品及び飼料としての安全性、生物多様性への影響について、科学的な審査を行っています。
その際、
・ 食品としての安全性に関しては、食品安全基本法(平成15年法律第48号)及び食品衛生法(昭和22年法律第233号)
飼料としての安全性に関しては、食品安全基本法及び飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(昭和28年法律第35号)
生物多様性の確保に関しては、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成15年法律第97号)
に基づき、申請ごとに審査を行い、問題のないもののみが輸入、流通、栽培等される仕組みとなっています。

II 生物多様性影響評価について

2. 「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)」は、どのような法律ですか。

(1) カルタヘナ法は、国際的に協力して生物多様性の確保を図るため、遺伝子組換え生物等の使用等の規制措置により、カルタヘナ議定書*の的確かつ円滑な実施を確保することを目的とした法律です。

(2) 法律では主に次のことが規定されています。
 
(a) 遺伝子組換え生物等の第一種使用等
遺伝子組換え生物等の「第一種使用等」とは、拡散防止措置などの特別な管理を行わなくても生物多様性に影響することなく、屋外等で使用することです。例えば、遺伝子組換え農作物の輸入、流通、栽培や、遺伝子組換え生ワクチンの動物への接種など、使用の過程で環境との接触が予想されるものは、全て第一種使用等に該当します。
第一種使用等をする際には、これ先立ち、遺伝子組換え生物等の種類ごとに使用方法などのルール(「第一種使用規程」といいます)を定め、それによって生物多様性に影響が生じないか審査を受ける必要があります。審査の結果、問題がないと認められた場合のみ、その使用等が認められます。

(b) 遺伝子組換え生物等の第二種使用等
遺伝子組換え生物等の「第二種使用等」とは、遺伝子組換え生物等の環境中への拡散を防止しつつ使用することです。例えば、遺伝子組換えマウスの飼育施設内での飼養や繁殖、また、遺伝子組換え微生物(動物用医薬品)の工場内での培養などが挙げられます。
第二種使用等についても、これに先立ち、環境中への拡散を防止するための措置(拡散防止措置)が適切なものとなっているか確認を受ける必要があります。

(c) このほかに、未承認の遺伝子組換え生物等の国内への流入を防ぐための輸入時検査の仕組み、輸出の際の相手国への情報提供、科学的知見の充実のための措置、国民の意見の聴取、違反者への措置命令、罰則等が規定されています。

生物多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書
 

3. カルタヘナ法でいう「生物多様性影響」とは、具体的には、どのようなものですか。

  カルタヘナ法でいう「生物多様性影響」とは、遺伝子組換え生物等の使用等により生ずる影響であって、生物の多様性を損なうおそれ(野生動植物や微生物の種又は個体群の維持に支障を及ぼすおそれなど)のある状態をいいます。
具体的には、
(a) 遺伝子組換え農作物が、農耕地以外の生態系に侵入して、その繁殖力の強さ等により、従来の野生植物を駆逐してしまうこと
(b) 遺伝子組換え農作物が作り出す有害物質によって周辺の野生動植物や微生物が死滅してしまうこと
(c) 遺伝子組換え農作物が近縁の野生種と交雑して、野生種が交雑したものに置き換わってしまうこと
などを想定しています。

なお、カルタヘナ法において、生物多様性影響は野生でない植物への影響を考慮していません。農作物は、人が野生植物から改良を重ねて作り出した植物であり、人が作り出す環境に適応した植物であることから、野生植物に含まれず、遺伝子組換え農作物が組換えでない農作物に与える影響については、生物多様性影響評価の対象になりません。
 

4. 遺伝子組換え農作物による生物多様性への影響は、どのように審査しているのですか。

(1) 生物多様性の確保については、カルタヘナ法に基づき、申請ごとに審査を行っています。遺伝子組換え農作物により、生物多様性に影響が生ずるか否かについては、
(a) 雑草化して他の野生植物に影響を与えないか(競合における優位性)
(b) 野生動植物に対して有害な物質を生産しないか(有害物質の産生性)
(c) 在来の野生植物と交雑して遺伝子が広がらないか(交雑性)
等の観点から、最新の科学的知見に基づき、審査をしています。

(2) 審査は、農林水産省及び環境省が以下の手順で行っています。
(a) 申請者に、最新の科学データ、緊急時の措置を定めた計画書等を申請書とともに提出するよう要求
(b) 提出データ等の妥当性等を確認
(c) 学識経験者の意見を聴取
(d) 必要に応じて、申請者に対し、追加データ、試験等を要求
(e) 承認の可否を判断

(3) この結果、生物多様性に影響を生じさせるおそれがないと認められたもののみを承認しています。

 

5. 遺伝子組換え農作物を長期間使用した場合に、評価時に予測できなかった生物多様性影響が生ずることはないのですか。

(1) 生物多様性影響評価は、最新の科学的知見を踏まえて行っていますが、評価時点では予測できなかった環境の変化により、生物多様性影響が生じたり、承認以降の科学的知見の充実により、生物多様性影響が生じる可能性が明らかになったりすることは否定できません。

(2) そこで、国では、遺伝子組換え農作物を開発した企業等に対して、緊急時の対応を定めた緊急措置計画書の作成を求めている他、承認後も、必要に応じて当該遺伝子組換え農作物の使用等に伴う生物多様性影響等についての情報提供を求めています。さらに、担当大臣は、必要に応じて使用方法の変更や栽培の中止などの命令をすることとしています。
 

6. 生物多様性影響評価に必要なデータを得るために必要な試験は、開発企業自身ではなく、第三者機関が実施すべきではないですか。開発企業が不十分な実験データを提出したり、実験データを改ざんしていたりする懸念はないのでしょうか。

(1) 生物多様性影響評価に必要なデータは、遺伝子組換え農作物を使用しようとする者等が自ら集めることになっています。

(2) このため、農林水産省及び環境省は、形態及び生育の特性等の多数かつ多様な試験データを申請者に要求し、申請者から全てのデータが提出されれば、統計的な解析を含めデータの科学的な検証・検討を行っています。不足するデータがあった場合には、データの追加提出等を求めているほか、データが不適切であったり、試験方法が不適当な場合には、試験のやり直しや追加試験の実施等を申請者に求めています。

(3) このように試験データを揃えた上で、様々な分野の専門的な知見や経験に基づく検証・検討を行っていることから、データの改ざん等は困難と考えられます。

 

7. カルタヘナ法では、遺伝子組換え農作物に係る第一種使用規程の承認に当たって、学識経験者の意見を聴くこととなっていますが、どのように行っているのですか。

(1) 農林水産大臣が所管する遺伝子組換え生物等(農作物等)に係る第一種使用規程については、「生物多様性影響評価検討会」を農林水産省と環境省が合同で開催し、学識経験者の意見を聴取しています。

(2) 具体的には、
(a) 遺伝子組換え生物等の特性に関し専門的な知見を有する専門家と、影響を受ける可能性のある生物、生態系等に関し知見を有する専門家が、それぞれ専門的な見地から検討を行う検討会(分科会)を開催した上で、
(b) 分科会での学識経験者の意見の内容を踏まえ、全生物種の専門家が入り、より幅広い視点から総合的な検討を行う検討会(総合検討会)を開催するという手順で意見聴取を行っています。

(3) なお、生物多様性影響評価検討会のうち総合検討会については、審査の透明性等を確保するため、公開で開催することとしています。

 

8. カルタヘナ法に基づく遺伝子組換え農作物の承認状況を教えてください。

我が国でカルタヘナ法に基づき承認されている遺伝子組換え農作物は、以下に掲載されています。

<遺伝子組換え生物等の承認と確認>
https://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/carta/torikumi/index.html#1

III 使用時等の管理について

9. 遺伝子組換え農作物の、輸入状況及び国内での栽培状況を教えてください。

(1) 日本は、飼料用途や食用油、甘味料等の原料として、トウモロコシ、ダイズ、セイヨウナタネ及びワタを大量に輸入しています。正確な統計データはありませんが、これら農作物の大半が「遺伝子組換え不分別」で輸入されることから、多くが遺伝子組換え体であると推定されます。

(2) また、現時点で国内で栽培されている遺伝子組換え農作物は、青いバラ及び青いファレノプシス(コチョウラン)となっています。
 

10. 栽培用の種子に、未承認の遺伝子組換え農作物が混入していないか、国では検査を行っているのですか。

(1) 農林水産省では、平成16年2月にカルタヘナ法が施行された後から、我が国で未承認の遺伝子組換え体が混入するおそれがあると考えられる輸入農作物の種子・苗については、植物防疫所において、検査を実施しています。

(2) この検査では、組換えられた遺伝子の有無を確認し、未承認の遺伝子組換え体が見つかった場合は、輸入者に対し、廃棄の指導を行っています。

(3) 平成30年4月1日からは、未承認の遺伝子組換え体をこれに該当すると知らないで輸入するおそれが高い場合として農林水産大臣が指定した生産地及び植物種については、輸入しようとする者に対して、その都度届出を義務づけるとともに、登録検査機関による検査を受けることを命じています。
 
<輸入時の届出の対象となる種子・苗>
植物種名 生産地
パパイヤ タイ又は台湾
ワタ インド又はギリシャ

11. 輸入港の周辺等でこぼれ落ちた遺伝子組換えセイヨウナタネの種子が発芽・生育し、我が国の生物多様性に影響が生ずることはないですか。

(1) セイヨウナタネは日本の在来植物を駆逐して生物多様性に影響を及ぼす侵略的な生物種とは見なされていません。実際に、我が国はセイヨウナタネの長期にわたる輸入実績がありますが、我が国の生物多様性に影響を与えた事例は確認されていません。

(2) 遺伝子組換えセイヨウナタネは、カルタヘナ法に基づく生物多様性影響評価において、従来の非遺伝子組換えセイヨウナタネと比べて生存能力や交雑性が高まっていないと評価されており、我が国の生物多様性に影響を与えることはないものと判断されています。

(3) なお、農林水産省は、遺伝子組換え農作物による我が国の生物多様性への影響を懸念する声にも応えつつ、承認した遺伝子組換えナタネにより生物多様性への影響が生じていないことを確認するため、輸入港周辺における遺伝子組換えセイヨウナタネの生育実態について、継続的に調査しています。
これまでの調査では、一部の港湾や、主要輸送経路沿いの河川敷等において遺伝子組換えセイヨウナタネの生育は確認されたものの、繁殖して、非遺伝子組換えのセイヨウナタネやその近縁種を駆逐したり、遺伝子組換えセイヨウナタネと近縁種の交雑体が広がったりする等の事実は確認されていません。
詳しくは当該調査結果を御参照ください。

<農林水産省:遺伝子組換え植物実態調査>
https://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/carta/torikumi/index.html#2
<環境省:遺伝子組換え生物による影響監視調査>
http://www.biodic.go.jp/bch/natane_1.html

12. 輸入港の周辺で生育する遺伝子組換えセイヨウナタネが他のアブラナ科の野菜と交雑して新たに遺伝子組換え野菜ができることはないですか。

(1) セイヨウナタネは同属のBrassica rapa(ハクサイ、カブ、コマツナ、チンゲンサイ、ミズナ、在来ナタネなどが含まれる。)や、Brassica juncea(カラシナ、タカナなどが含まれる。)などと交雑することが知られています。これらの野菜は、通常、花が咲く前に収穫されるため、遺伝子組換えナタネと交雑する可能性は低いと考えられます。

(2) また、これらは種が異なることから、交雑したとしても雑種そのものの形成が困難であり、かつ、雑種が形成されたとしてもそれが生育する可能性は極めて低いことが知られています。例えば、セイヨウナタネと最も交雑しやすいとされる在来ナタネでは、交雑が起こる確率は最大で約16%、交雑により得られた雑種個体の生存率は2%未満との報告があります。農林水産省が実施している遺伝子組換えナタネの生育実態調査においても、在来ナタネを含む近縁種との交雑個体が見つかったことはありません。

 

13. 除草剤耐性や害虫抵抗性の遺伝子組換え農作物の栽培により、それらの遺伝子が他の野生植物や雑草、昆虫に移行し、耐性等を持った野生植物や雑草、昆虫が国内でも増えるのではないでしょうか。

(1) 我が国の生物多様性影響評価では、遺伝子組換え農作物と野生植物の雑種が雑草化し、我が国の生物多様性に影響を与えることがないと判断した上で、承認されています。

(2) また、遺伝子組換え農作物を食べた昆虫に農作物の遺伝子が移行することはありません。

(3) 一方、植物や昆虫は、組換え遺伝子が導入されていなくても、特定の農薬の長期散布や大量散布により、その農薬に対する耐性を獲得することがあります。したがって、農薬の使用に当たっては、作用機作の異なる農薬を順に使用することなど、使用方法を工夫し、雑草や昆虫が農薬耐性を獲得することを極力抑えることが必要です。

IV 海外の情報について

14. メキシコで在来種のトウモロコシから遺伝子組換えトウモロコシの遺伝子が検出されたということですが、事実関係を教えてください。

(1) 2001年に、トウモロコシの原産地とされるメキシコ南部のオアハカ州で、トウモロコシの在来種から遺伝子組換えトウモロコシの導入遺伝子が発見されたとの研究論文が科学誌(Nature 2001)で発表されました。しかし、この論文の実験手法、実験結果の解釈や考察について疑義を呈する様々な論文が出された結果、本論文を掲載した科学誌(Nature)は、「この研究結果には発表に値する十分な証拠がなかった」との短評を2002年に発表し、当該論文の掲載を撤回しました。

(2) その後、メキシコ及び米国の共同研究チームが2003~2004年にオアハカ州の125の畑で採取された153,000粒のトウモロコシを調査したところ、導入遺伝子は発見されなかったとの報告が2005年になされています(PNAS 2005年8月30日号)。
 

添付資料

遺伝子組換え農作物に関する Q&A(PDF : 249KB)

お問合せ先

消費・安全局農産安全管理課

担当者:組換え体企画班・組換え体管理指導班
代表:03-3502-8111(内線4510)
ダイヤルイン:03-6744-2102

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