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農林水産省

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平成28年度(2016)食品中の3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類の含有実態調査の結果について

2018年3月30日公表


農林水産省は、平成28年度に、食用こめ油中の3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類の含有実態を調査しました。 その結果、平成28年度の食用こめ油中の3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類の濃度は、試料の採取方法が異なるため統計学的な比較はできないものの、平成24・25年度の調査結果より低い傾向にあることが確認できました。 農林水産省は、食品中のこれらの物質の低減に向けて、国内の関係事業者による自主的な努力を引き続き支援するとともに、国際的な実施規範の作成にも貢献します。

調査の背景と目的

3-MCPD脂肪酸エステル類とグリシドール脂肪酸エステル類は、油脂の脱臭精製工程で生成する化学物質です。分析技術の進歩により、近年、その存在が明らかになりました。

農林水産省が平成24・25年度に調査した結果、国内で流通している食用植物油脂中の3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類の濃度は、それまでに収集した諸外国の調査結果と比べ、低い傾向であることが確認できました。このうち食用こめ油については、これらの物質の濃度が国内の他の油種より高いものもありました。

食品安全委員会は、平成27年3月に、「3-MCPD脂肪酸エステル摂取による健康被害の報告は確認されておらず、現在の科学的知見においては、これまでと同様に日本人における健康への影響は低いと考えている」(注)、そして、「現在使用されている食用油の摂取について、直接健康影響を示唆するものではないが、ALARA(As Low As Reasonably Achievable) の原則に則り、引き続き合理的に達成可能な範囲で、できる限りグリシドール脂肪酸エステルの低減に努める必要がある」と結論しました。

近年、諸国で、食品中のこれらの物質の低減が進められています。我が国でも、食用こめ油の製造事業者が、自主的に低減に向けて努力しているとの情報が得られました。そこで、農林水産省は、更に措置をとる必要があるかどうかを検討するため、国内で流通している食用こめ油中の3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類の含有実態を平成28年度に調査しました。

(注)食品安全委員会は、平成29年6月に、食品からの3-MCPD脂肪酸エステル類の摂取について、「食品中の3-MCPD脂肪酸エステルの濃度を低減するための適切な取組みが進められることが重要」との考え方を公表しました。
食品からの3-クロロ-1,2-プロパンジオール(3-MCPD)脂肪酸エステルの摂取(食品安全委員会)[外部リンク]

調査対象食品

食用こめ油*:30点
*「食用植物油脂品質表示基準(平成23年9月30日消費者庁告示第10号)」で定められた食用こめ油

試料採取方法

平成28年12月~平成29年2月に、小売店又はインターネット販売サイト等を通じて、市販品を購入しました。点数は、精製事業者の販売量シェアに応じて配分しました。同じ製品を複数試料とする場合は、賞味期限が異なるものを購入しました。

調査対象物質及び分析法

油脂を構成する脂肪酸には、様々な種類があります。食品中の3-MCPD及びグリシドールも、様々な脂肪酸と結合して様々な脂肪酸エステルができます。平成28年度の調査では、3-MCPD脂肪酸エステル類とグリシドール脂肪酸エステル類のそれぞれの総量を把握するため、どのような脂肪酸と結合しているのかに関わらず濃度を測定しました。つまり、3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類を分解して、脂肪酸がとれた3-MCPDの濃度及び脂肪酸がとれたグリシドールの濃度を測定しました*。
* DGF Standard Methods Section C-Fats C-VI 18 (10)(AOCS Official Method Cd29c-13と同じ)を用いました。分析法の詳細や妥当性確認の結果は、こちらをご覧ください。

調査結果の概要

平成28年度の食用こめ油中の、3-MCPD脂肪酸エステル類から脂肪酸がとれた3-MCPDの濃度を表1に、グリシドール脂肪酸エステル類から脂肪酸がとれたグリシドールの濃度を表2に示しました。

平成28年度の食用こめ油中の3-MCPD濃度、グリシドール濃度は、全ての試料で定量限界(0.08 mg/kg)以上でした。

平成28年度の食用こめ油中の3-MCPD濃度及びグリシドール濃度は、試料の採取方法が異なる(注)ため統計学的な比較はできないものの、平成24・25年度の調査結果より低い傾向にあることが確認できました。ただし、これらの物質の濃度に幅があったことから、こめ油の原料や製造方法の変更などにより、これらの物質をさらに低減できる可能性があると考えられます。

(注)平成24・25年度の調査では、試料の採取にあたって販売量シェアは考慮していません。

表1 食用こめ油中の3-MCPD濃度の分析結果(単位:mg/kg)
調査年度 試料点数 定量限界 定量限界
未満の点数
最小値
(mg/kg)
最大値
(mg/kg)
中央値
(mg/kg)
平均値
(mg/kg)
平成28年度 30 0.08 0 0.16 0.67 0.33 0.34
(参考)
平成24・25年度
24 (平成24年度)  0.3
(平成25年度)  0.08
0 0.3 1.0 0.5 0.5

 

表2 食用こめ油中のグリシドール濃度の分析結果(単位:mg/kg)
調査年度 試料点数 定量限界 定量限界
未満の点数
最小値
(mg/kg)
最大値
(mg/kg)
中央値
(mg/kg)
平均値
(mg/kg)
平成28年度 30 0.08 0 0.67 2.2 1.1 0.99
(参考)
平成24・25年度
24 (平成24年度)  0.3
(平成25年度)  0.08
0 1.0 6.8 2.9 2.3

 

今後の対応

(1)低減に向けた事業者の努力の支援とリスク管理に必要な知見の収集

農林水産省は、食品中の3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類について、国内外の含有実態等の情報提供や、低減技術の有効性の検討等により、食品製造事業者による自主的な低減の努力を引き続き支援します。また、リスク管理に必要な以下の知見を収集します。

  • 基礎的な知見
    • 生成・分解メカニズム
    • 体内動態・毒性
    • 油脂を原料とする加工食品に適用できる、妥当性が確認された分析法
      -特に調製粉乳について、油脂の抽出法の改良等による添加回収率の改善
  • 低減技術に関する知見
    • 産業的に実行できる、油脂や油脂を原料とする加工食品中の濃度の低減技術
    • 低減技術の適用による、食品の品質や他の有害化学物質への影響
  • より現実的な摂取量の推定に必要な知見
    • 加工調理による食品中の濃度の増減
    • 油脂を原料とする加工食品中の含有実態
    • 油脂や油脂を原料とする加工食品の消費量

(2)国際的な議論への貢献

健康影響評価への貢献

2016年(平成28年)11月に、国際的なリスク評価機関であるFAO/WHO合同食品添加物専門家委員会(JECFA: The Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives)は、3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類の、食品からの摂取による健康影響を評価しました。この結果、油脂や乳児用調製乳中のこれらの物質の濃度を低減するための努力を継続すべきであると勧告しました。この評価では、農林水産省が提出した、平成24・25年度の食品中の含有実態調査結果が活用されました。 JECFAは、この評価の中で、食品(特に油脂)中の3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類の含有実態データを更に提出するよう各国に求めました。農林水産省は、今後の国際的な健康影響評価や議論にも貢献できるよう、平成28年度の調査結果も、このウェブページの公表とともに国際機関に提出します。

コーデックス委員会における実施規範の作成への貢献

JECFAの評価結果を受け、コーデックス委員会は、「食用精製油脂及び当該油脂を使用した製品(特に乳児用調製乳)中の3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類の低減のための実施規範」の作成を進めています。農林水産省は、関係事業者と連携し、有効な低減技術の情報を提供すること等により、この実施規範の作成に貢献します。 

お問合せ先

消費・安全局食品安全政策課

担当:化学物質管理班
代表:03-3502-8111(内線4453)