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農林水産省

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食品中のクロロプロパノール類及びその関連物質の低減に関する国内の取組

作成日:2019年3月28日
更新日:2023年3月24日


農林水産省は、クロロプロパノール類やその関連物質について、国内外の食品中の含有実態等の情報提供や低減技術の有効性の検討等により、食品製造事業者の自主的な低減の努力を支援しています。また、リスク管理に必要な、国内外の調査・研究や低減技術に関する情報を積極的に収集しています。
2020年10月には、国内関係団体と連携し、関係事業者向けに食品中の3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類の低減のための手引き(PDF : 2,904KB)を作成しました。(PDF分割版はこちら
2023年3月には、アミノ酸液及びこれを原材料に含むしょうゆ中のクロロプロパノール類の低減対策の徹底について、関係団体へ要請しました。

3-MCPD及び1,3-DCPの低減に関する取組
しょうゆ及びアミノ酸液中のクロロプロパノール類の実態の把握
3-MCPDの摂取量推定
低減措置の策定・普及と有効性の検証 NEWアイコン

3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類の低減に関する取組
食品製造事業者による自主的な低減の支援
   国内関係事業者向け低減のための手引きの作成
研究事業の実施

農林水産省によるこれら物質の食品中含有実態調査の結果についてはこちらもご覧下さい。

3-MCPD及び1,3-DCPの低減に関する取組

しょうゆ及びアミノ酸液中のクロロプロパノール類の実態の把握(2004~2006年度)

農林水産省は、しょうゆの安全性を向上させる措置の必要性やその方法等を検討するため、しょうゆ及び酸加水分解植物性たん白(以下、「アミノ酸液」といいます。)に含まれる主要なクロロプロパノール類である、3-MCPD濃度の実態を調査しました。その結果、次のことがわかりました。

調査結果(詳細はこちら

  • 日本のしょうゆ生産量の8割以上を占める本醸造方式しょうゆは、原材料としてアミノ酸液を使用しないため、3-MCPD濃度は定量限界未満か、まれに定量されたとしても極めて微量である。
  • 加工食品の原材料用として大規模に製造・販売されているアミノ酸液は、クロロプロパノール類の低減対策が既に講じられている。アミノ酸液を原料とする混合醸造方式及び混合方式しょうゆの9割は、低減対策を講じたアミノ酸液が使用されているため、3-MCPD濃度は低い。
  • 混合醸造方式又は混合方式しょうゆ製造事業者が自ら製造したアミノ酸液(以下「自製アミノ酸液」といいます。)や、これらを用いて作られた混合醸造方式又は混合方式しょうゆの一部には、3-MCPDを高濃度で含むものがある。
  • アルカリ処理という工程を経て製造された自製アミノ酸液は、そうでないものと比べて3-MCPD濃度がとても低い。

3-MCPDの摂取量推定

しょうゆからの3-MCPDの摂取量推定

日本人がしょうゆから摂取する3-MCPDの一日の平均的な摂取量を試算すると、平均的な食生活をしている日本人では、2002、2006年に国際的な専門機関であるJECFAが設定した耐容一日摂取量注1(2 μg/kg 体重注2)の1%未満でした。通常の食生活では、しょうゆ由来の3-MCPDが健康に悪影響を及ぼす可能性は低いことがわかりました。

一方、自製アミノ酸液が使用された混合醸造方式又は混合方式しょうゆの中には、3-MCPD濃度がとても高いものもありました。混合醸造方式又は混合方式しょうゆは、本醸造方式しょうゆと比べて独特の風味を持ち、地域によっては好んで使われています。そこで、特定の銘柄の混合醸造方式又は混合方式しょうゆしか使わない人が、たまたま高濃度の3-MCPDを含む製品を使った場合、その製品から摂取する3-MCPDの量を推定しました。その結果、耐容一日摂取量を上回る場合があり、健康に悪影響を及ぼす可能性があることがわかりました。

注1 人が一生涯にわたって毎日摂りつつけても健康への悪影響がないと推定される一日あたりの量です。

注2 JECFAは、2016年に3-MCPD及び3-MCPD脂肪酸エステル類のリスク評価を行い、それまで3-MCPDに設定していた耐容一日摂取量(2 μg/kg 体重)を取り下げ、3-MCPDと3-MCPD脂肪酸エステル類の総量(3-MCPD換算)の耐容一日摂取量として、4 μg/kg 体重を設定しました。

トータルダイエットスタディによる3-MCPDの摂取量推定

クロロプロパノール類は、主に酸加水分解植物性たんぱくに含まれていますが、酸加水分解植物性たんぱくを含まない食品からも検出されています。また、アミノ酸液は、混合醸造方式又は混合方式しょうゆの他にも、様々な加工食品の原材料として用いられています。そこで、日本人が食品全般から摂っているクロロプロパノール類の総量や、我が国で流通しているクロロプロパノール類を含む食品の種類を把握するため、トータルダイエットスタディ注3を2005~2007年度に実施しました。

クロロプロパノール類を含む可能性がある、脂質を含む食品群(穀類、いも類、豆類、種実類、野菜類、魚介類、肉類、乳類、油脂類、菓子類、調味料・香辛料類)を対象に、マーケットバスケット方式で3-MCPD摂取量を調査しました。その結果、実際に3-MCPDが検出されたのは、調味料・香辛料類と魚介類(佃煮等の調味料を含むもの)の2つの食品群のみで、平均的な食生活をしている日本人の3-MCPD摂取量は、2.0~4.7 μg/日であると推定しました。これは、2007年当時にJECFAが設定していた耐容一日摂取量(2 μg/kg 体重)注2の2~5%と小さいことから、日本人の平均的な食生活では、3-MCPDが健康に悪影響を与える可能性は低いと考えられました。

注3 リスクの推定には、危害要因による健康への悪影響の性質を評価するとともに、人がどの程度その危害要因を摂取しているか(摂取量)を推定する必要があります。この摂取量の推定方法の一つが、トータルダイエットスタディです。詳しくは、トータルダイエットスタディに関するガイドラインをご覧ください。

 

低減措置の策定・普及と有効性の検証

日本人が食品から摂取する3-MCPDの量を推定したところ、食品に含まれる3-MCPDが健康に悪影響を与える可能性は低いことがわかりました。 しかし、自製アミノ酸液を使用している混合醸造方式又は混合方式しょうゆ製造事業者の一部では低減技術の導入が遅れており、過去の調査結果では、3-MCPD濃度が高い混合醸造方式又は混合方式しょうゆをとり続けた場合には、JECFAが設定した耐容一日摂取量を超える可能性があることもわかりました。

アミノ酸液中のクロロプロパノール類の低減技術

1970年代後半にアミノ酸液などの酸加水分解植物性たんぱくにクロロプロパノール類が含まれていることが発見されて以降、我が国のアミノ酸液業界は、クロロプロパノール類の濃度を低減するために製造工程や製造方法を改良し、世界に先駆けて対策を行ってきました。その結果、クロロプロパノール類の濃度が低いアミノ酸液の製造を可能とする一連の技術を確立しました。その中でも、「アルカリ処理」と呼ばれる工程を行うことが特に有効です。

「アルカリ処理」とは、植物性たんぱくを塩酸で加水分解し、水酸化ナトリウム等で中和した後、さらに水酸化ナトリウム等を過剰に加えてアルカリ性にし、この条件下で加熱してクロロプロパノール類を加水分解し、その後再び塩酸などで中和する方法です。 これらの日本の産業界で開発されたアミノ酸液に含まれるクロロプロパノール類の低減技術は、コーデックス委員会が策定した実施規範においても採用され、国際標準として世界中で用いられています。

低減措置の策定・普及

農林水産省は、2008年度に、消費者の健康被害の発生を未然に防止する観点から、アミノ酸液及び混合醸造方式又は混合方式しょうゆについて、アミノ酸液の製造工程でのアルカリ処理の実施、大規模に製造・販売されているアルカリ処理がされたアミノ酸液の購入・使用等、クロロプロパノール類の低減対策を導入するよう関係業界に要請しました。 (通知文(PDF : 78KB)

有効性の検証 NEWアイコン

2009、2011年度には、低減措置の効果を検証するため、2006年度の調査時点で自製アミノ酸液を使用していた混合醸造方式又は混合方式しょうゆ製造事業者を対象に、自製アミノ酸液及びこれを原料とする混合醸造方式又は混合方式しょうゆ中の3-MCPD濃度の実態を調査しました。その結果、次のことがわかりました(詳細はこちら)。

  • 製造事業者が低減対策を導入したことにより、自製アミノ酸液や混合醸造方式又は混合方式しょうゆ中の3-MCPD濃度が大きく低減したこと
  • 低減対策に取り組んでいない製造事業者や、低減対策の効果が十分現れていない製造事業者の自製アミノ酸液や混合醸造方式又は混合方式しょうゆでは、依然として3-MCPD濃度が高いこと
  • 混合醸造方式又は混合方式しょうゆから摂る3-MCPDの量は、平均的にしょうゆを摂取している日本人では、耐容摂取量と比べて十分低い値だが、3-MCPD濃度が特に高い製品だけを摂取し続けると想定した場合は、耐容摂取量より少ないものの、やや高い水準であること

農林水産省は、2012年度に、まだ低減対策に取り組んでいない製造事業者に対しては低減対策を実施すること、低減対策を講じていても効果が十分に現れていない製造事業者に対してはより効果の大きい低減対策を可能な範囲で実施することの指導を徹底するよう、関係業界に要請しました。(通知文(PDF : 77KB)

2016、2021年度には、改めて低減措置の効果を検証するため、2006年度の含有実態調査の時点で自製アミノ酸液を使用していた混合醸造方式又は混合方式しょうゆ製造事業者を対象に、自製アミノ酸液やこれを原料とする混合醸造方式又は混合方式しょうゆ中の3-MCPD濃度の実態を調査しました。その結果、次のことがわかりました(詳細はこちら)。

  • 調査対象としたほぼ全ての製造事業者が低減対策に取り組んでいること
  • 混合醸造方式及び混合方式のしょうゆ中の3-MCPD濃度が、2011年度に比べてさらに低減し、2021年度においても低い水準で維持されていたこと
  • 日本人が混合醸造方式又は混合方式しょうゆから摂る3-MCPDの量は、3-MCPDを高濃度に含むしょうゆを継続して摂取し続けると仮定した場合でも、2016年に国際的な専門機関が設定した暫定最大耐容一日摂取量(4 μg/kg 体重)の約1割と十分低い値であること

これらの結果を受け、農林水産省は、関係業界に対し、低減対策の継続を要請するとともに、さらなるクロロプロパノール類の低減が望まれる一部製造事業者に対しては、より効果の大きい低減対策を可能な範囲で実施するよう指導の徹底を要請しました。(通知文(PDF:92KB)

農林水産省は、引き続き、製造事業者と連携し、しょうゆ及びアミノ酸液のより一層の安全性向上に向けた取組を後押ししていきます。

3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類の低減に関する取組

国際的なリスク評価機関(JECFA)が、精製油脂や乳児用調製乳中の3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類の濃度を下げるための努力が必要と勧告したことを受け、コーデックス委員会が低減のための実施規範を策定し、世界各国が食品中の3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類の濃度を低減させるための検討を行っています。

我が国の食品製造事業者は、食品中の3-MCPD脂肪酸エステル類やグリシドール脂肪酸エステル類の濃度の自主的な低減に努めています。植物や魚から搾ったそのままの油脂(原料油脂)には、好ましくない色や匂いがついていたり、不純物が含まれていたりすることがあります。このような原料油脂から製品をつくるためには、色や匂い、不純物を除くため、高温で加熱するなど、精製する必要があります。このときに、3-MCPD脂肪酸エステル類やグリシドール脂肪酸エステル類ができてしまうことがあります。食品製造事業者は、原料油脂を精製する工程で3-MCPD脂肪酸エステル類やグリシドール脂肪酸エステル類ができるのを抑えるため、精製後の油脂の風味や色が悪くなるなど、食品としての品質が損なわれてしまわないよう気をつけながら、以下の対策を行っています。


食品製造事業者による低減の対策例


<原料油脂の精製工程>


1. 3-MCPD脂肪酸エステル類やグリシドール脂肪酸エステル類の元となる物質を除く
精製前に原料油脂を水などで洗浄する
不純物を除くための吸着剤の使用量を増やす

2. 3-MCPD脂肪酸エステル類やグリシドール脂肪酸エステル類をできにくくする
好ましくない匂いを除くために加熱する工程で、温度が高くなりすぎないようにする

3. 加熱によりできてしまったグリシドール脂肪酸エステル類を減らす
再度、吸着剤を使用する

<加工食品に精製油脂を使用する場合>

食品の原料として使う精製油脂を、上記のような低減対策が講じられた油脂等、3-MCPD脂肪酸エステル類やグリシドール脂肪酸エステル類の濃度が低いものに変える

食品製造事業者による自主的な低減の支援

農林水産省は、食品製造事業者による自主的な3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類の低減を支援するため、以下を行っています。

国際的な実施規範策定への貢献

国内の関係団体・食品製造事業者と協力して、事業者が行っている3-MCPD脂肪酸エステル類やグリシドール脂肪酸エステル類の低減技術や情報をコーデックス委員会に提供し、これらの情報を、国際的なこれらの物質の低減のための実施規範日本語版(PDF:523KB))に反映しました。

国内関係事業者向け低減のための手引きの作成

国内関係団体と連携し、食品製造事業者が自主的に行う食品中の3-MCPD脂肪酸エステル類やグリシドール脂肪酸エステル類の低減の取組を支援するため、低減対策の手引きを作成しました。
食品中の3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類の低減のための手引き(PDF : 2,904KB)
(分割版)「はじめに~4.1.2 粗油の生産・処理」(PDF:1,590KB)
(分割版)「4.1.3 脱ガム~参考情報」(PDF:1,975KB)

国内外で得られた科学的な情報を参考に、3-MCPD脂肪酸エステル類やグリシドール脂肪酸エステル類の濃度を低く抑えるための対策例を、根拠データ及び実施上の留意点とともに解説しています。

研究事業の実施

食品の品質への影響が少なく、効果的に3-MCPD脂肪酸エステル類やグリシドール脂肪酸エステル類を低減する技術に関する知見を蓄積するため、以下の研究事業を実施しています。

食品中の3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類に関する研究(2018年度~)

2018年度から、「戦略的プロジェクト研究推進事業」で、食用精製油脂の安全性を向上させるための研究を行っており、以下の課題に取り組んでいます。

  • 食用精製油脂中の3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類濃度の管理技術の開発
  • 食用精製油脂を用いた加熱調理が加工食品中の3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類に与える影響の解明

(詳細)実施中の試験研究課題(課題解決型プロジェクト研究)(課題番号18064872、18063931)
(食品中の3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類に関する研究)

油脂を用いた加熱調理が、食材中の3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類の生成に及ぼす影響を把握するための分析法の開発(2017年度)

2017年度の「安全な農林水産物安定供給のためのレギュラトリーサイエンス研究委託事業」で、2種類のモデル加工食品(揚げポテトスナック、焼きクラッカー)を用いて、加熱調理が3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類の生成に及ぼす影響に関する基礎データを収集しました。

本研究で用いた試験条件においては、加工食品の製造工程で一般的に用いられると考えられる温度・時間での加熱により、3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類は増加しないことを明らかにしました。また、欧州食品安全機関(EFSA)が報告した分析法と、より迅速・簡便な分析が可能な酵素を用いた分析法の2つについて、必要に応じて改良を加えた上で、複数の加工食品の分析に使えることを確認しました。

(詳細)レギュラトリーサイエンスに属する研究-終了した研究課題(課題番号2901)

お問合せ先

消費・安全局食品安全政策課

担当:化学物質管理班
代表:03-3502-8111(内線4453)

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