このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

作成日:平成29年7月19日

肉用牛の消化管内・肝臓・胆汁のカンピロバクター分布状況調査

 2.3.2.2. 食肉処理加工施設

 2.3.2.2.2. 肉用牛の消化管内・肝臓・胆汁の菌分布状況調査(平成24年度)

と畜時の肉用牛の消化管内・肝臓(表層と内部)・胆汁のカンピロバクターの分布を把握するために、1か所のと畜場において以下のとおり採取した試料を対象に、カンピロバクターの調査を行いました。

1回調査では、肉用牛72頭から、消化管内容物(第一胃内容物、十二指腸内容物、直腸内容物)、肝臓(表層と内部)、胆のう内の胆汁を採取。

2回調査では、肉用牛138頭から、肝臓(表層と内部)と胆のう内の胆汁を採取。

その結果、第1回調査では、カンピロバクターは、肉用牛72頭のうち51頭(71%)から分離されました。胆汁から分離された頭数が最も多く34頭(47%)、次いで十二指腸内容物27頭(38%)でした。陽性牛51頭のうち、胆汁と十二指腸内容物のいずれかからカンピロバクターが分離された牛は42頭(82%)でした。

第2回調査では、肉用牛138頭のうち48頭(35%)からカンピロバクターが分離されました。カンピロバクター陽性牛の全ての胆汁からカンピロバクターが分離され、そのうち23頭は肝臓内部からも分離されました。

(1) 目的

と畜時の肉用牛の消化管内・肝臓・胆汁のカンピロバクターの分布を把握する。

(2) 試料の採取

第1回調査

平成24年5月~6月に、1か所のと畜場で、解体処理された肉用牛72頭から第一胃内容物、十二指腸内容物、直腸内容物、肝臓(表層と内部)、胆のう内の胆汁を採取しました。
 

第2回調査

平成24年5月~7月に、第1回調査と同じと畜場で、解体処理された肉用牛138頭から肝臓(表層と内部)と胆のう内の胆汁を採取しました。

(3) 微生物試験

第一胃内容物、十二指腸内容物、直腸内容物、肝臓(表層:表面を含む36 cm2×深さ1 cmの表層、内部:火炎殺菌した表面を取り除いた、その下層部36 cm2×深さ1 cm)、胆汁を試料として、カンピロバクターの定性試験(3.1.1.1 (5)3.1.1.7 (3)3.1.1.7 (4)を行いました。これらの試料のうち1点でもカンピロバクターが分離された肉用牛は、陽性(カンピロバクター保有)と判定しました。

分離されたカンピロバクターについては、1個体につき1株(同一試料から異なる菌種が分離された場合は、1菌種につき1株)、生化学的試験及びPCR法により菌種(Campylobacter jejuni, C.coli, C.fetus)を同定(3.1.3.1))しました。

(4) 結果

第1回調査

カンピロバクターは、肉用牛72頭のうち51頭(71%)から分離されました。試料別にみると、胆汁から分離された頭数が最も多く(34頭)、次いで、十二指腸内容物(27頭)、直腸内容物(26頭)、第一胃内容物(6頭)、肝臓表層(2頭)、肝臓内部(1頭)の順でした。カンピロバクター陽性牛51頭のうち42頭(82%)では、胆汁又は十二指腸からカンピロバクターが分離され、このうち23頭(55%)では、直腸内容物からカンピロバクターは分離されませんでした(表28)。

菌種別にみると、カンピロバクター陽性牛の51頭のうち、C.jejuniのみが分離された牛は31頭、C.coliのみが分離された牛は8頭、C.fetusのみが分離された牛は2頭、C.jejuniC.coliの両方が分離された牛は8頭、C.jejuniC.fetusの両方が分離された牛は1頭でした。胆汁から分離されたカンピロバクター34株のうち、27株はC. jejuni、7株はC. coliでした。

 

表28:消化管内容物からのカンピロバクターの分離状況

カンピロバクターが分離された部位

陽性頭数

胆汁、十二指腸、直腸、第一胃

2

胆汁、十二指腸、直腸、肝臓表層

1

胆汁、十二指腸、直腸

6

胆汁、十二指腸、第一胃、肝臓内部

1

胆汁、十二指腸、肝臓表層

1

胆汁、十二指腸

9

胆汁、直腸、第一胃

1

胆汁、直腸

5

胆汁のみ

8

十二指腸、直腸

4

十二指腸のみ

4

直腸のみ

7

第一胃のみ

2

51

 

第2回調査

カンピロバクターは、肉用牛138頭のうち48頭(35%)から分離されました。試料別にみると、胆汁から分離された頭数が最も多く(48頭)、次いで、肝臓表層(30頭)、肝臓内部(23頭)の順でした。胆汁からカンピロバクターが分離された48頭のうち、4頭は肝臓内部から、11頭は肝臓表層から、19頭は肝臓表層と内部の両方からカンピロバクターが分離されました(表29)。

菌種別にみると、カンピロバクター陽性牛の48頭のうち、C.jejuniのみが分離された牛は41頭、C.coliのみが分離された牛は5頭で、C.jejuniC.coliの両方が分離された牛はいませんでした。また、C.fetusのみが牛2頭から分離されました。胆汁から分離されたカンピロバクター48株のうち、41株はC. jejuni、5株はC. coli、2株はC.fetusでした。

                                                     表29:消化管内容物からのカンピロバクターの分離状況

カンピロバクターが分離された部位

陽性頭数

胆汁、肝臓内部、肝臓表層

19

胆汁、肝臓内部

4

胆汁、肝臓表層

11

胆汁のみ

14

48

指導者・事業者の皆様へ

1と畜場において、牛体内のカンピロバクターの分布を調査した第1回調査では、カンピロバクターは、肉用牛72頭のうち51頭(71%)から分離されました。胆汁から分離された頭数が最も多く(34頭)、次いで十二指腸内容物(27頭)でした。陽性牛51頭のうち、胆汁と十二指腸内容物のいずれからカンピロバクターが分離された牛は42頭(82%)でした。このうち、23頭(55%)では、直腸内容物からカンピロバクターは分離されませんでした。したがって、生前に採取することが可能な直腸便のみを採取してカンピロバクターの保有状況を調べた場合、陽性牛を見逃す可能性があると推測されました。

と畜場は、受け入れる牛がカンピロバクターに感染し、カンピロバクターが直腸以外の消化管にも分布している可能性を考慮して、衛生対策を実施する必要があります。厚生労働省は、と畜場における衛生管理措置及び食肉検査(外部リンク)や、と畜・食肉処理場におけるHACCP(外部リンク)の導入を推進しています。関連法令や通知(検索画面へ)(外部リンク)等を参照してください。

同じと畜場における第2回調査でも、肉用牛138頭のうち48頭(35%)からカンピロバクターが分離されました。過去の調査(2.3.2.2.1)では、胆のう内の胆汁からカンピロバクターが分離された牛の一部では、肝臓表層からもカンピロバクターが分離されています(31.3%、09月29日)。今回の調査では、カンピロバクター陽性牛の全ての胆汁からカンピロバクターが分離され、そのうち23頭は肝臓内部からも分離されました。胆のうは、胆管を介して肝臓とつながっています。胆のう内の胆汁中に存在するカンピロバクターが、胆のうを切除する際等に肝臓表面に付着したり、肝臓内部に入ったりする可能性については、引き続き情報を収集していきます。

通常の加熱調理(中心部を75℃以上で1分間以上加熱)を行えば、カンピロバクターは死滅します。厚生労働省は、飲食店や食肉販売店等の事業者に対し、牛の肝臓を生食用として販売・提供することを禁止しています。関連法令等やリーフレット(外部リンク)を参照してください。

お問合せ先

消費・安全局食品安全政策課

担当者:危害要因情報班
代表:03-3502-8111(内線4457)
ダイヤルイン:03-6744-2135
FAX番号:03-3597-0329