作成日:平成29年7月19日
肉用牛農場のシガ毒素産生性大腸菌保有状況調査
2.3.1.2. 食肉処理加工施設
2.3.1.2.3. 肉用牛の消化管内及び体表からのシガ毒素産生性大腸菌の検出と腸内細菌科菌群の菌濃度の関連に関する調査(平成25、26年度)
と畜時の牛の十二指腸内容物、直腸内容物及び体表からのシガ毒素産生性大腸菌O157の検出と、腸内細菌科菌群の菌濃度との関連の有無を把握するために、3か所のと畜場において以下のとおり採取した試料を対象に、シガ毒素産生性大腸菌O157及び腸内細菌科菌群の調査を行いました。 |
(1) 目的
と畜時の牛の十二指腸内容物、直腸内容物及び体表からのシガ毒素産生性大腸菌O157の検出と腸内細菌科菌群の菌濃度との関連の有無を把握する。
(2) 試料の採取
○第1回調査
平成25年9月~11月に、と畜場1か所で解体処理された肉用牛103頭から、十二指腸内容物、直腸内容物を採取しました。あわせて体表をふき取り、それを試料としました。
○第2回調査
平成26年7月~10月に、と畜場2か所で解体処理された肉用牛130頭から、十二指腸内容物、直腸内容物を採取しました。あわせて体表をふき取り、それを試料としました。
(3) 微生物試験
十二指腸内容物、直腸内容物、体表の拭き取り(牛の臀部上部 25 cm2)試料を用いて、大腸菌O157の定性試験(3.4.1.1 (2)、3.4.1.4)を行いました。分離された大腸菌O157について、シガ毒素産生性大腸菌かどうかを判定するため、PCR法(3.4.3.3 (2))により、シガ毒素遺伝子(stx)の有無の確認及び亜型の分類を行うとともに、病原性に関わる遺伝子であるインチミン1遺伝子(eae)やエンテロヘモリシン2遺伝子(hlyA)の有無を確認しました。平成26年度の調査では、さらにシガ毒素蛋白の産生の有無を逆受身ラテックス反応法(3.4.3.4)により確認しました。
また、十二指腸内容物、直腸内容物、体表の拭き取り(牛の臀部上部 25 cm2)試料を用いて、腸内細菌科菌群の定量試験(3.6.1.1、3.6.1.2) を行いました。
1 人の腸管粘膜への定着に関わる因子
2 溶血(赤血球の破壊)に関わる因子
(4) 結果
第1回調査
シガ毒素産生性大腸菌O157は、肉用牛103頭のうち3頭(3%)から分離されました。部位別にみると、十二指腸内容物(1頭)、直腸内容物(2頭)から分離され、体表からは分離されませんでした(表19)。また、同一個体の2つ以上の部位からは分離されませんでした。
分離された菌株は、すべて同じ性状(シガ毒素遺伝子stx2c保有、インチミン遺伝子(eae)及びエンテロヘモリシン遺伝子(hlyA)保有)を示しました。
また、腸内細菌科菌群はすべての試料から分離され、部位別の菌濃度の範囲は、十二指腸内容物で3.0 x 102 ~3.9 x 108 cfu/g、直腸内容物で3.0 x 102 ~3.6 x 106 cfu/g、体表で3.0 x 101 ~8.8 x 103 cfu/mLでした。
試料からのシガ毒素産生性大腸菌O157の検出と腸内細菌科菌群の菌濃度との関連は示唆されませんでした(表19)
表19:シガ毒素産生性大腸菌O157陽性試料の腸内細菌科菌群の菌濃度(平成25年度)
試料名(試料数) |
シガ毒素産生性大腸菌O157 |
全ての試料 |
|
検出数(検出率(%)) |
腸内細菌科菌群の |
腸内細菌科菌群の菌濃度※1,2 |
|
十二指腸内容物(103) |
1 (1%) |
1.5 x 107 |
3.0 x 102-3.9 x 108 |
直腸内容物(103) |
2 (1.9%) |
1.1 x 105、1.3 x 105 |
3.0 x 102-3.6 x 106 |
体表拭き取り(103) |
0 (0%) |
- |
3.0 x 101-8.8 x 103 |
1十二指腸内容物及び直腸内容物試料はcfu/g、体表拭き取り試料はcfu/mL
2上段:菌濃度の範囲、下段:中央値3
3 データを小さい順に並べたとき中央に位置する値
第2回調査
シガ毒素産生性大腸菌O157は、肉用牛130頭のうち11頭(8%)から分離されました。部位別にみると、十二指腸内容物(1頭)、直腸内容物(7頭)、体表(3頭)から分離されました(表20)。また、同一個体の2つ以上の部位からは分離されませんでした。
分離された菌株はすべて同じ性状(シガ毒素遺伝子stx2 保有、インチミン遺伝子(eae)及びエンテロヘモリシン遺伝子(hlyA)保有、シガ毒素2型蛋白産生)を示しました。
また、腸内細菌科菌群はすべての試料から分離され、部位別の菌濃度の範囲は、十二指腸内容物で1.0 x 101 ~2.1 x 1010 cfu/g、直腸内容物で1.1 x 104 ~2.4 x 1010 cfu/g、体表で1.0 x 101 ~2.0 x 107 cfu/mLでした。
試料からのシガ毒素産生性大腸菌O157の検出と腸内細菌科菌群の菌濃度との関連は示唆されませんでした(表20)
表20:シガ毒素産生性大腸菌O157陽性試料の腸内細菌科菌群の菌濃度(平成26年度)
試料名(試料数) |
シガ毒素産生性大腸菌O157 |
全ての試料 |
|
検出数(検出率(%)) |
腸内細菌科菌群の |
腸内細菌科菌群の菌濃度※1,2 |
|
十二指腸内容物(130) |
1 (0.8%) |
3.6 x 103 |
1.0 x 101-2.1 x 1010 |
直腸内容物(130) |
7 (5.4%) |
7.7 x 104-1.7 x 109 |
1.1 x 104-2.4 x 1010 |
体表拭き取り(130) |
3 (2.3%) |
1.7 x 103-2.0 x 107 |
1.0 x 101-2.0 x 107 |
1十二指腸内容物及び直腸内容物試料はcfu/g、体表拭き取り試料はcfu/mL
2上段:菌濃度の範囲、下段:中央値
まとめ 今回の調査から、と畜時の牛の十二指腸内容物、直腸内容物及び体表からシガ毒素産生性大腸菌O157が検出されることと、腸内細菌科菌群の菌濃度との関連は示唆されませんでした。したがって、十二指腸内容物、直腸内容物及び体表(拭き取り)のシガ毒素産生性大腸菌O157の検出の指標として、これらの試料中の腸内細菌科菌群の菌濃度を用いることは困難であると考えられました。 |
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