作成日:平成29年3月31日
ブロイラー鶏群から製造された鶏肉のリステリア・モノサイトジェネス汚染状況調査
2.1.3.2. 食鳥処理場
2.1.3.2.3. ブロイラー鶏群から製造された鶏肉の菌汚染状況調査(平成25年度)
次のことを把握するために、食鳥処理場4か所において、9~10処理日にわたり、計78ブロイラー鶏群の盲腸内容物や鶏肉を対象にリステリア・モノサイトジェネスの調査を行いました。
その結果、リステリア・モノサイトジェネス陽性鶏群が搬入されていた食鳥処理場1か所では、陽性鶏群から製造された鶏肉の汚染率は28%であり、陰性鶏群から製造された鶏肉の汚染率(8%)より高くなっていました。また、盲腸内容物から分離された菌株の71%が血清型01月02日aであったのに対し、鶏肉から分離された菌株では97%が血清型01月02日bでした。 |
(1) 目的
リステリア・モノサイトジェネス汚染鶏肉はリステリア・モノサイトジェネス陽性鶏群から製造されるのかどうか、各処理日の1番目に処理される鶏群から製造される鶏肉と、2番目に処理される鶏群から製造される鶏肉で汚染状況は異なるのかどうかを把握する。
(2) 試料採取
食鳥処理場4か所(A~D10)において、平成25年5~12月の間にそれぞれ9~10処理日ずつを選び、第1鶏群(1番目に処理される鶏群)及び第2鶏群(2番目に処理される鶏群)を調査対象としました(計78鶏群)。各鶏群から、中抜き工程において15羽分の盲腸内容物(1鶏群につき5羽分をプールした試料3点)と、解体・包装後に鶏肉(ムネ肉及び肝臓の2種類)を5袋ずつ(1鶏群につき試料10点)採取しました。
10 食鳥処理場名A~Dは、他調査の結果で用いられている食鳥処理場名と関連ありません。
(3) 微生物試験
盲腸内容物及び鶏肉を試料としてリステリア・モノサイトジェネスの定性試験(3.3.1.1 (2))を実施しました。盲腸内容物の試料のうち、1点でもリステリア・モノサイトジェネスが分離された鶏群は、リステリア・モノサイトジェネス陽性と判定しました。分離されたリステリア・モノサイトジェネスについては、血清型を特定(3.3.2.1)しました。
(4) 結果
78鶏群のうち、12鶏群(15%)がリステリア・モノサイトジェネス陽性であり、これらの鶏群は食鳥処理場Aに搬入されたものでした。食鳥処理場B~Dに搬入された鶏群は、リステリア・モノサイトジェネス陰性でした。
食鳥処理場Aでは、リステリア・モノサイトジェネス陽性の12鶏群から製造された鶏肉の28%(33/120)、リステリア・モノサイトジェネス陰性の8鶏群から製造された鶏肉の8%(6/80)からリステリア・モノサイトジェネスが分離されました(表51)。
鶏群 |
鶏肉 |
試料点数 |
陽性点数 |
陽性率(%) |
---|---|---|---|---|
リステリア・モノサイトジェネス陽性鶏群 (12鶏群) |
全体 | 120 | 33 |
28 |
ムネ肉 | 60 | 33 |
55a |
|
肝臓 | 60 | 0 |
0 |
|
リステリア・モノサイトジェネス陰性鶏群 (8鶏群) |
全体 | 80 | 6 |
8 |
ムネ肉 | 40 | 6 |
15a |
|
肝臓 | 40 | 0 |
0 |
注釈 ap<0.01(99%以上の確率で、リステリア・モノサイトジェネス陽性鶏群から製造されたムネ肉は、リステリア・モノサイトジェネス陰性鶏群から製造されたムネ肉よりも、リステリア・モノサイトジェネス陽性率が高い。)
盲腸内容物から分離された21株のうち、15株(71%)の血清型は1/2aでした。一方、ムネ肉から分離された39株のうち、血清型1/2aは1株(3%)のみであり、残りはすべて1/2bでした。
また、食鳥処理場A~Dにおいて製造された鶏肉の汚染状況は、第1鶏群から製造されたムネ肉の汚染率は27%、肝臓の汚染率は1%でした。第2鶏群から製造されたムネ肉の汚染率は21%、肝臓の汚染率は1%でした。食鳥処理場によって鶏肉の汚染状況が異なる傾向がみられましたが、いずれの食鳥処理場でも、第1鶏群から製造された鶏肉と、第2鶏群から製造された鶏肉のリステリア・モノサイトジェネス汚染率は同程度でした(表52)。
表52:鶏肉のリステリア・モノサイトジェネス汚染状況
部分肉 | 処理場 | 鶏群 | 試料点数 | 陽性点数 | 陽性率(%) |
---|---|---|---|---|---|
ムネ肉 | A | 第1鶏群 | 50 | 22 | 44 |
第2鶏群 | 50 | 17 | 34 | ||
B | 第1鶏群 | 50 | 1 | 2 | |
第2鶏群 | 50 | 1 | 2 | ||
C | 第1鶏群 | 50 | 16 | 32 | |
第2鶏群 | 50 | 14 | 28 | ||
D | 第1鶏群 | 45 | 14 | 31 | |
第2鶏群 | 45 | 9 | 20 | ||
計 | 第1鶏群 | 195 | 53 | 27 | |
第2鶏群 | 195 | 41 | 21 | ||
肝臓 | A | 第1鶏群 | 50 | 0 | 0 |
第2鶏群 | 50 | 0 | 0 | ||
B | 第1鶏群 | 50 | 0 | 0 | |
第2鶏群 | 50 | 1 | 2 | ||
C | 第1鶏群 | 50 | 2 | 4 | |
第2鶏群 | 50 | 0 | 0 | ||
D | 第1鶏群 | 45 | 0 | 0 | |
第2鶏群 | 45 | 0 | 0 | ||
計 | 第1鶏群 | 195 | 2 | 1 | |
第2鶏群 | 195 | 1 | 1 |
なお、食鳥処理場B~Dで製造された鶏肉から分離されたリステリア・モノサイトジェネスのうち、81%(47/58)が血清型1/2a、17%(10/58)が1/2b、2%(1/58)が3aでした。
まとめ 食鳥処理場4か所に搬入された78鶏群のうち、12鶏群がリステリア・モノサイトジェネス陽性で、これらは食鳥処理場1か所に搬入されたものでした。この食鳥処理場では、陽性鶏群から製造された鶏肉の汚染率は24%で、陰性鶏群から製造された鶏肉の汚染率(8%)より高くなっていました。この結果から、農場で鶏群のリステリア・モノサイトジェネス保有率を下げることによって、食鳥処理場への菌の持ち込みを減らし、鶏肉の汚染率を減らせる可能性があると考えられました |
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