このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

健康に関するリスクコミュニケーションの原理と実践の入門書

  • 印刷

概要

「健康に関するリスクコミュニケーションの原理と実践の入門書」は、アメリカ合衆国疾病管理予防センター(Center for Disease Control and Prevention; CDC)のウェッブサイトに掲載されているPrimer on Health Risk Communication Principles and Practicesを、食品総合研究所国際食品研究官(当時) 山田友紀子が、CDCの毒物・疾病登録局(Agency for Toxic Substances and Disease Registry; ATSDR)の許可を得て翻訳したものです。

主として環境に由来する健康問題について取り扱っています。環境中の有害物質に曝されることに関する国民の懸念や不安に答える立場にあるATSDRのスタッフと他の政府機関の職員そして企業を対象としています。アメリカ合衆国や英語に特有な状況も見られますが、大部分は日本における環境に由来する健康リスクや他の健康リスクに関するコミュニケーションにも役立つと思われます。

英語の原文をお知りになりたい方は、ATSDRにお問い合わせください。

健康に関するリスクコミュニケーションの原理と実践の入門書

〔注〕参考文献のいくつかはかなり古いが、それに含まれる情報は今でも有効であり、適切な情報を提供してくれる。

「情報の受け手を、最初から参加させよう」

Barry Johnson, Ph.D.
米国保健省公衆衛生総局長官補
毒物・疾病登録局局長補(1987)

「もし、我々のメッセージが相手に理解されなかったら、メッセージの受け手のせいではないと考えねばならない」

Baruch Fischhoff
カーネギーメロン大学工学・政策学部(1985)

目次

序文

ATSDRの使命

健康リスクコミュニケーションにおける問題の概観と原理

住民集会での情報提供

マスメディアとの協力

参考文献

 

序文

有害物質廃棄地での有毒物質への暴露が公衆衛生に及ぼす影響を決定する際、国民は重要な情報を提供する。公衆衛生の専門家は、地域社会の欲求を知らねばならないし、公衆衛生に関する技術的な問題及び、地域社会の心理学的かつ政治的、社会的、経済的な欲求に関する対話を手助けしなければならない。

この入門書の目的は、各種の聴衆に対して健康に関するリスクコミュニケーションをするための原理と方法の枠組みを提供することである。これは、環境中の有害物質に曝されることに関する国民の懸念や不安に答える立場にあるATSDRのスタッフと他の政府機関の職員そして企業を対象としている。

この入門書は、まずATSDRの使命と、健康に関するリスクコミュニケーションへの地域社会の参加が重要であることを簡単に説明している。残りの部分は、健康リスクについてコミュニケーションを行う際の問題と原理に関する考察及び、国民に情報を公表したり、マスメディアと効率的に相互作用するための提言に当てられている。

この入門書は、健康リスクコミュニケーション実施に関連した原理の特定を目指しているが、健康リスクコミュニケーションの効率の尺度は、活用されている原理の数によってのみ計られる、ということを言うつもりはない。むしろ、どのように手引きを利用するかは、必要性、優先順位その他の考慮すべき事項によって、ケースバイケースである。

目次にもどる

ATSDRの使命

1980年にアメリカ議会によって創設された毒物・疾病登録局(ATSDR)は、連邦政府の公衆衛生総局の一局で、米国保健省の一部である。ATSDRの使命は、廃棄地や予定外の環境放出、その他の環境汚染源からの有害物質に曝されることやそれに伴う人の健康への悪影響と生活レベルの低下を予防することである。

ATSDRによる健康リスクコミュニケーションへの地域社会参加の役割と重要性

健康リスクコミュニケーションは、ATSDRにおいて、強調され重要性が認められている発展中の分野である。過去十年間健康リスクコミュニケーションは、有害物質に曝されることに起因する健康への悪影響を予防したり、軽減したりするための包括的努力の不可欠な部分であった。全ての意志決定が、利用できる全ての情報に基づいてなされることを保証するのは、ATSDRの責任である。地域住民、廃棄地の職員、市民グループ、健康問題専門家、州、地方政府代表は、有害物質に曝されたときの健康リスクについて、ATSDRが効果的にコミュニケーションをするために必要な情報の独自の発信源である。彼らは、廃棄地の歴史、地域社会の健康に対する不安、人口構成、天然資源の使用、環境汚染、環境への経路、健康への影響結果などに関する情報を提供する。地域社会からの情報は、リスクコミュニケーションの過程において、いくつかの段階で必要とされる。情報収集の過程で地域社会を巻き込むことによって、ATSDRによるコミュニケーションがより信頼性の高いものとなるとともに、問題を解決するのに地域社会が参画するお膳立てができる。地域社会は、彼らの生活を脅かす問題を特定し、特徴を知り、解決することに積極的に参加しなければならないし、参加したいと思っている。

目次にもどる

健康リスクコミュニケーションにおける問題の概観と原理

リスクの複雑性と不確実性に配慮せずに単に情報を配布するだけでは、効果的なリスクコミュニケーションができるとは限らない。工夫によって建設的なメッセージの作成、伝達、受け入れを可能にし、有意義な行動に導くことができる。こうした手法がどのように作用するか、そして効果を高める一般的原則について考察しなさい。

目次にもどる

 

リスクコミュニケーション:神話と対策
(Chess他、1988)

世間一般の神話を鵜呑みにすると、効果的なリスクコミュニケーションプログラムの開発の妨げとなることがしばしばある。こうした神話と、可能な対策について考察しなさい。

神話:リスクコミュニケーションプログラムに必要な時間や資源が充分ない。

対策:スタッフ全員を、もっと効果的なコミュニケーションができるように教育する。住民を参加させるための時間を確保するようにプロジェクトを組む。

 

神話:リスクについて国民に公表することは、住民を落ち着かせるよりも必要以上に恐怖心を持たせることになりかねない。

対策:国民に彼等の懸念や不安を表明する機会を提供することによって、恐怖心が生じる可能性を減らす。

 

神話:コミュニケーションは啓蒙教育より重要でない。国民は真のリスクを理解すれば、それを受け入れるであろう。

対策:国民にどのように対応するプロセスについて、データを説明する方法についてと同じように注意を払う。

 

神話:環境に関係する健康問題を解決する方法が見つかるまで、公表するべきではない。

対策:リスク管理の選択肢に関する情報を公開して討議し、利害関係のある地域社会を解決法の立案に参加させる。

 

神話:このような問題は難しすぎて国民は理解できない。

対策:国民があなたの政策に賛成しないことと、高度に専門的な問題を誤解していることを、はっきりと分離して考えるべきだ。

 

神話:専門的な判断は専門家に任せるべきである。

対策:国民に情報を提供する。地域社会の不安に耳を傾ける。政策立案時に、様々な専門を持つスタッフを参加させる。

 

神話:リスクコミュニケーションは、自分の仕事ではない。

対策:公務員として国民に対して責任がある。コミュニケーションを仕事に統合することを身につけ、同僚もそうするよう手助けする。

 

神話:国民は少しでも情報を提供すると、限りなく情報を欲しがる。

対策:国民がわずかでも情報を欲しがっている時に、その要望に従えば、彼等が際限なく情報を求める可能性は低くなる。闘争の場を避けること。国民を早くから、そして多くの機会に参加してもらう。

 

神話:国民の言うことに従うと、公衆衛生にとってそれほどの脅威ではない問題に、ただでさえわずかな資源を投入することになる。

対策:早めに国民に耳を傾けることによって論争を避けるとともに、あまり重要でない問題に不相応なエネルギーを費やすことがないようにする。

 

神話:活動家グループは、根拠無き不安を掻き立てる元凶である。

対策:活動家は国民の怒りを集束する働きをする。環境グループの多くは理性的で責任感がある。彼等と対立するよりも協力するべきである。

目次にもどる

 

リスク情報提供の7大原則
(CovelloおよびAllen、1988)

1.国民を協力者として受け入れ参加させる。

目標は、知識ある国民を養成することであり、国民の不安を払拭したり行動を変えることではない。

2.慎重に計画を立て、努力の結果を評価する。

目標、聴衆、媒体が異なれば違った行動が必要である。

3.国民の特定の不安に耳を傾ける。

国民は、しばしば統計や細かい事実より、信用、信頼性、能力、公正さ、共感により関心を持つ。

4.正直、率直、公明正大な態度をとる。

信用および信頼を得るのは難しい。それらは一度失えば、再び獲得することはほとんど不可能である。

5.信頼できる情報源と協力する。

組織間の対立や意見の相違は、国民とのコミュニケーションを一層困難にする。

6.マスメディアの要望を満たす。

マスメディアは、通常、リスクよりも政治、複雑よりも単純、安全よりも危険に関心を示す。

7.明瞭に、思いやりを込めて話す。

病気、傷害、死亡などを悲劇として認めることを、妨げるような努力をしてはならない。国民はリスク情報を理解しても、行政とは意見が一致しないかもしれない;一部の人々はそれだけでは満足しないだろう。 

目次にもどる

 

コミュニケーションの相手についての知識

あなたがコミュニケーションを行う相手のことを知れば知るほど、リスクコミュニケーションプログラムの成功する可能性は高まる。早い段階で、コミュニケーションの相手のこと、彼等がどのような不安を抱き、リスクをどのように受け取り、誰を信頼しているのかを知りなさい。

どのような人か

  • 同僚
  • 地区住民
  • 選出公務員
  • 市民団体
  • 医療提供者
  • マスメディア
  • 規制官庁
  • 環境活動家
  • 請負業者
  • その他

特徴

  • 不安
  • 態度
  • 関心の程度
  • 関与の程度
  • 歴史
  • 知識の程度
  • 意見
  • 関心を持つ理由
  • 関与の種類

彼等は支持者になるであろうか、それとも反対者になるであろうか?

国民の不安の分類

  • 健康
  • 安全性
  • 環境
  • 経済
  • 審美性
  • 公正
  • 過程
  • 合法性

目次にもどる

 

リスク認知に影響する要素
(Fischhoff他、1981)

国民によるリスクの程度の認知は、数字で示されるデータ以外の多くの要素の影響を受ける。

  • 自発的なものと感じられるリスクは、押し付けられたと感じられるものよりも受け入れ易い。
  • 自分で制御・管理が可能と感じられるリスクは、他人によって制御・管理されていると感じられるリスクよりも受け入れ易い。
  • 明らかに利益があると感じられるリスクは、全然または少ししか利益を感じられないものよりも受け入れ易い。
  • 国民に公平に及ぶと感じられるリスクは、国民に不公平に及ぶと感じられるものよりも受け入れ易い。
  • 自然由来であると感じられるリスクは、人為的と感じられるものよりも受け入れ易い。
  • 統計に基づいていると感じられるリスクは、突発的と感じられるよりも受け入れ易い。
  • 信用できる源から起こっていると感じられるリスクは、信用できない源からと感じられるものよりも受け入れ易い。
  • 熟知していると感じられるリスクは、経験がない、または外来であると感じられるリスクよりも受け入れ易い。
  • 大人に影響すると感じられるリスクは、子供に影響すると感じられるものよりも受け入れ易い。

目次にもどる

 

地域社会との交流
(Chess他、1988)

地域社会の参加の重要性を認識しなさい。市民の参加が重要であるのは、(a)市民は、自分たちの生活に直接影響する問題についての決定権を持っている、(b)地域社会からの情報の入手は、行政機関がより正しい判断をするのを助ける、(c)意思決定の過程に関与することは、特定のリスクをより深く理解し、そのリスクに対してより適切に対応することにつながる、(d)ある問題で影響を受ける人々は、その問題を解決するための方程式に新たな変数を加える、(e)協力関係は、信頼を高めるのに役立つ、からである。最後に、地域社会からの情報が求められないか、考慮されない場合には、国民の信頼と行政機関の資源を蝕む争いが起こりがちである。

可能な限り、地域社会を意思決定過程に参加させなさい。

  • できるだけ早い段階で地域社会を参加させなさい。
  • 国民の役割を、最初から明確にしなさい。
  • もし、行政機関が地域社会に対してごく限られた意思決定権しか与えられないときは、その状況を伝えなさい。
  • 地域社会がどのような形態の参加を望んでいるのかを、見つけなさい。

種々の聴衆の要望を把握し、それに対応しなさい。

  • 最初に、ある状況における様々な利害関係者を把握し、非公式にそれぞれの代表者と面会しなさい。
  • 市民擁護団体の長所、弱点を認識しなさい。
  • 全ての人々を平等・公平に扱いなさい。

適宜、公聴会に代わるものを開催しなさい。特に、より小規模で堅苦しくない集会を開きなさい。

  • 大規模な国民集会を開かねばならない場合には、行政機関と地域社会を公平に扱うような待遇をする。
  • 大きなグループを小さなグループに分割することを考えなさい。
  • 集会の目的を明確にしなさい。集会に対する市民の要望に充分応えることができない場合は、代替案を提示しなさい。
  • 状況によっては、1対1の対話が最も有効であることもある。

国民の価値観や感情は、環境保健問題の正当な側面であり、こうした懸念は重要な情報をはらんでいる可能性があることを認識しなさい。

  • 国民の感情を曝け出すための集会を開催しなさい。
  • 国民が価値観や感情を表明する時は、その声に耳を傾けなさい。
  • ある問題に対する国民感情を認めなさい。
  • 国民が感情的に話す時は、そうした感情に答えなさい。単にデータの説明に終始してはならない。
  • 地域国民からの電話に即座に対応できる体制を整え、彼らを尊重していることを示しなさい。
  • 行政の決定の要因となった価値観を認識し、それについて正直になりなさい。
  • ある問題に対する自身の価値観や感情を認識し、それがどのように自身に影響するかを知りなさい。

目次にもどる

 

コミュニケーション経路の選択

住民と効果的なコミュニケーションができるかどうかは、コミュニケーション方法の選択によって決まる。最も適切なコミュニケーション媒体を選択するには、伝えたい内容及び対象となる聴衆を考慮しなさい。いくつかの提言を以下に示す。

対象:同僚
コミュニケーション経路:

ニュース発表およびファクトシート
現地視察
疑問や関心事に対処するための会議
ホットライン
新聞記事


対象:地域住民
コミュニケーション経路:

地域集会
新聞記事および広告
ラジオおよびテレビのトークショー
ちらし
図書館にある映画、ビデオ等
ダイレクトメール

 

対象:選出公務員、オピニオンリーダー、環境活動家
コミュニケーション経路:

頻繁に電話による会合
ファクトシート
訪問
地域集会に招待
ニュース発表
事前通知

 

対象:マスメディア
コミュニケーション経路:

自分の伝えたいメッセージに焦点を当てたニュース発表
明瞭で、有益な情報を伝えるファクトシート
現地訪問
記者会見

目次にもどる

 

信頼・信用の獲得と構築
(Covello、1992;Covello、1993)

建設的な対話ができるかどうかは、主として聴衆があなたのことを信頼・信用できると認めるかどうかによって決まる。聴衆がどのように判断し、認知するか考慮しなさい。

信頼および信用を評価するための要因

コロンビア大学リスクコミュニケーションセンターのV. Covello博士の研究によると、我々がどの程度信頼でき信用できるかを国民が評価する場合、4つの要素に基づいている。

  • 共感といたわり
  • 必要とされる能力および専門知識
  • 誠実さと率直さ
  • 献身と責任

信頼および信用を得ることは難しい。一度失えば再び得ることは更に難しくなる。

目次にもどる

 

落とし穴の回避

落とし穴:特殊用語

するべきこと:専門用語や略語の定義を明確にしなさい。
してはいけないこと:たとえ一部の聴衆であっても、理解できないような用語を用いること。

落とし穴:ユーモア

するべきこと:ユーモアを用いる場合は、自分を対象としなさい。
してはいけないこと:安全性、健康、環境問題に関連して用いること。

落とし穴:否定的な主張

するべきこと:根拠のない主張をされた場合は、それを繰り返さずに、論破しなさい。
してはいけないこと:その根拠のない主張を復唱、または言及すること。

落とし穴:否定的イメージの語句

するべきこと:肯定的または中立的な語句を使用しなさい。
してはいけないこと:国レベルの問題に言及すること。例えば、「ここはラブ・キャナル(Love Canal:毒性廃棄物問題が起きた地名)ではない。」

落とし穴:言葉に頼る

するべきこと:重要点を強調するために、視覚的手段を使いなさい。
してはいけないこと:言葉にのみ頼ること。

落とし穴:気分

するべきこと:冷静を保つ。疑問点や主張を出発点として、肯定的なことを言いなさい。
してはいけないこと:感情的になり、建設的にコミュニケーションをする能力が発揮できなくなること。

落とし穴:明瞭性

するべきこと:自分自身に、いいたいことを明瞭に言えたか問いなさい。
してはいけないこと:自分が理解されたと思い込むこと。

落とし穴:抽象化

するべきこと:実例、例え話、類似例を用いて共通の理解を築きなさい。

落とし穴:言葉以外のメッセージ

するべきこと:言葉以外の、あなたが発しているメッセージに敏感になりなさい。それらを、あなたの言っていることと一致させなさい。
してはいけないこと:ボディーランゲージ、会場におけるあなたの位置、あなたの衣服をあなたのメッセージと矛盾させること。

落とし穴:攻撃

するべきこと:攻撃は、問題に向けなさい。
してはいけないこと:攻撃を、人または組織に向けること。

落とし穴:約束

するべきこと:できることだけを約束しなさい。厳密な順番を立てそれに従いなさい。
してはいけないこと:守れない約束、最後まで責任を持てない約束をすること。

落とし穴:保証

するべきこと:達成できたこと、継続中の努力を強調しなさい。
してはいけないこと:保証はできませんと言うこと。

落とし穴:推測

するべきこと:実際に行っていることに関する情報を提供しなさい。
してはいけないこと:最悪の事態を推測すること。

落とし穴:金銭

するべきこと:健康、安全、環境問題を重視していることに言及しなさい;公衆衛生に対するあなたの道義的な義務は、財政的な考慮に優先する。
してはいけないこと:あなたの懸念の例として、費やされた金銭に言及すること。

落とし穴:組織への所属

するべきこと:1人称代名詞を用いなさい(「私」「私共」)。
してはいけないこと:大きな組織の一員であることを前面に出すこと。

落とし穴:非難

するべきこと:問題解決の分担責任を負いなさい。
してはいけないこと:非難や責任を他人に転嫁すること。

落とし穴:「オフレコ」

するべきこと:話したことやしたことは、全て公開記録の一部とみなしなさい。
してはいけないこと:副次的な注釈を加えたり「内緒話」をすること。

落とし穴:リスク/利益/コストの比較

するべきこと:リスクと利益を別々のコミュニケーションで議論しなさい。
してはいけないこと:費用をリスクの程度に絡ませて議論すること。

落とし穴:リスクの比較

するべきこと:リスクを客観的に捉えるために、リスクの比較をしなさい。
してはいけないこと:関係のないリスクを比較すること。

落とし穴:健康リスクに関する数字

するべきこと:真のリスクは0から最悪の場合の推定値の間であることを強調しなさい。リスクに関する数字よりも国および州の基準に基づいて行動しなさい。
してはいけないこと:絶対的なことを話したり、素人である国民がリスクに関する数字を理解することを期待すること。

落とし穴:数字

するべきこと:実績、傾向、達成したことを強調しなさい。
してはいけないこと:大きな否定的数字を挙げたり繰り返すこと。

落とし穴:専門的な内容や討論

するべきこと:あなたの発言を、共感、必要とされる能力、誠実さ、献身性に集中させなさい。
してはいけないこと:詳細過ぎる説明をしたり、長時間に及ぶ専門的討論に加わること。

落とし穴:説明時間の長さ

するべきこと:説明時間を最大15分間までにしなさい。
してはいけないこと:予定時間を立てずに漫然と行うこと。

目次にもどる

 

効果の評価

コミュニケーションプログラムの計画時には、測定可能な目標を立てなさい。それぞれの構成要素に関して、何がうまく行き、どこをどうすべきであったか、そしてその理由を考えなさい。

プログラムの各部分について以下の問いかけをしなさい。

  • 目標は達成されたか。
  • 変化は、プログラムを実施した結果か。
  • 何がうまく行ったか、またその理由は。
  • どこをどうすればもっとうまくできたか、またその理由は。
  • プログラムはどう改善できるか。
  • 得られた教訓は何か。
  • その教訓を学ぶべきは誰か。

目次にもどる

 

住民集会での情報提供

あなたが何をするか、そしてそれをどのように行うかは、聴衆がどうあなたやあなたの組織、提供しようとしている情報を認知するかを左右する。よく準備し、効果的に発表をしなさい。

集会の前

聴衆を知りなさい

利害関係、関心、疑問を予想しなさい。
集会への準備において、それらを考慮に入れなさい。

発表の準備をしなさい

聴衆をひきつける導入部分を作りなさい。
最大限3個のキーメッセージを作りなさい。
裏付けデータを集めなさい。
視聴覚機器を活用した発表を準備しなさい。
練習しなさい。

質問に答える準備をしなさい

質問を予想して、その答えを準備しなさい。
質疑応答の練習をしなさい。

目次にもどる

 

冒頭の発表

聴衆をひきつける強力な冒頭の発表は、その集会の流れを決定し、信頼や信用を築く上で重要である。内容は以下のとおりである。

I.導入

  • 個人的な関心
  • 組織としての責任および意図
  • 集会の目的および計画

II.キーメッセージ

  • 最大で3個の、覚えて帰ってほしいポイント
  • キーメッセージを裏付ける情報

III.結論

  • まとめ

 

I.導入

共感を感じてもらうことが、信頼や信用を築く上で不可欠であり、聴衆は最初の30秒間で判断するということを覚えていなさい。導入部には以下の項目を含めなさい。

個人的な関心を述べる

例‐「今夜お集まりいただいた人々の数を見れば、この問題に関して皆様が私と同様深い関心を抱いていることが分かります」

組織としての意図を述べる

例‐「私は環境および市民を守ると約束します。私ども“X”の職員はこの地域社会と長い付き合いがあり、この問題に関して地域社会と協力して取り組みたいと考えています。」

集会の目的および計画を述べる。(各集会毎に異なる内容でなければならない)

例‐「今夜、約15分間、この報告内容を皆様にお伝えします。その後、討論、質問、その他関心事の相談の時間を設けます。更に詳しい情報が必要な方または討論を続けたい方には、集会終了後も私どもがお相手いたします。」

II.キーメッセージおよび裏付けデータ

キーメッセージとは、集会終了後も市民が心に留めおいてほしい事項である。それらは問題の核心にせまるものであり、短く、簡潔にする。

例‐「私達はその地域の井戸を広く検査し、その水が、安心して飲める水質基準をすべて満たしていることを確認しました。」

キーメッセージを作成するには:

  • ブレーンストーミング。自由に考え、伝えたい情報を全て書き出しなさい。
  • キーメッセージの選定。最も重要な概念を特定しなさい。3個に絞られるまで、この過程を繰り返しなさい。
  • 裏付け情報の特定。リストに載せたその他の情報もキーメッセージの裏付けとなると思われる:それを反映するように整理しなさい。

III.結論

  • キーメッセージを1語1語繰り返しなさい。 
  • 今後の活動についても述べなさい。短期的そして長期的に、このプロジェクトに関してあなたの組織は何を行うのか。

目次にもどる

 

発表補助素材

視聴覚機材を活用した発表をすることで、メッセージをよりよく理解しやすくすることができる。言葉を視覚と関連付けることにより、人々の記憶に残りやすくなる。“Effective Business and Technical Presentation”(Morrisey and Sechrest 1987)は、質の高い発表を準備する上での指針を更に詳しく説明している。

理解の助けとなる素材等

  • グラフ
  • 図解
  • 図表
  • 用語集
  • 地図
  • ビデオ、映画等
  • 35mmスライド
  • 現地視察
  • ポスター
  • 写真
  • 実例
  • 配付資料 

目次にもどる

 

計画と準備

要素:部屋の大きさ、聴衆の数、席の配置、視野を妨害する物、照明、コンセントの場所

するべきこと:あらかじめ機材を設定し、焦点調節し、試験し、配置する。

照明を付けたり消したりする係を指定する。

聴衆が去るまで、機材はそのままにする。

道具:予備バルブ、三又のアダプター[訳注:高電圧の機器のためのもの]、延長コード、ダクトテープ、職員の電話番号、何も書かれていないOHPシート、スライドトレー、OHPシート、マーカー・チョーク、予備の発表原稿 

目次にもどる

 

設計の指針

効果的な視覚素材は

  •  単独で使える。
  • 重要概念を視覚的に伝える。
  • 1つの主要な考え方だけを支持する。
  • 可能な限り、言葉の代わりに写真や図表を使用してある。
  • 1行に最大で6個の単語[訳注:英語の場合]、1枚に最大10行の約束を守っている。
  • 簡潔な句またはキーワードで表現されている。
  • 重要点は色またはコントラストで強調してある。
  • 事実を正確に表現している。
  • 念入りに造られている‐すっきりしていて、明瞭かつ整然としている。
  • 印象が強い。

目次にもどる

 

発表をするにあたって忘れてはならないこと

発表を計画、練習、実施する時は、以下に掲げる音声とそれ以外のコミュニケーションの要素を考慮しなさい。

声量

声の大きさは、自信、能力、率直さを反映する。あなたの発表に取り入れるために、聴衆の反応を観察しなさい。周囲の状況に応じて、調節しなさい。

発音

明瞭に正確に話しなさい。なじみのない言葉には気を付けなさい。適宜、用語のスペルや定義を説明しなさい。

話す速度、リズム、調子

テンポを変化させなさい。重要なメッセージを伝える時はゆっくりと話し、強調するために間をあけたり、声の調子や句の長さを変化させなさい。「OK」、「~のような」、「ではない」、「あ~」などの言葉を繰り返し使用するのを避けなさい。

顔の表情、目と目との対話

相手の目を見ることは非常に重要である。口、目、額、眉毛もコミュニケーションをおこなう。

姿勢

姿勢は態度を表す。両足を少し開いて、直立姿勢をとるようにする。

手振り、身振り

手振り、身振りは、コミュニケーションの効果を高めたり、低くしたりする。自分の手振り、身振りに気を遣い、それらが適当であることを確認しなさい。

衣服、身だしなみ

職場で普段身に付けているであろうと聴衆が想像するような衣服、またはそれよりもややカジュアルな衣服を着用する。

注意をそらす行為

頻繁に咳払いをしたり、時計を見たり、鍵や小銭をもてあそんだり、歩き回ったりなどの仕草を繰り返すことをさけなさい。

目次にもどる

 

リスクの比較
(Covello他1988;Covello1989)

リスクデータを説明する時には、リスクを示す数字を他の数字と比較してみるのもよい。

以下に留意しなさい。

  • 比較によってリスクを相対的に評価できる。
  • 利益によってリスクを正当化してはいけない。
  • 関係のない比較または誤解を招くような比較は、信頼や信用を損なう。 

目次にもどる

 

リスクの比較のための指針

第1ランク(最も許容される)

  • 異なる2つの時期に起きた同じリスクの比較
  • 標準との比較
  • 同じリスクの異なる推定値の比較

第2ランク(第1ランクに次いで望ましい)

  • あることをする場合としない場合のリスクの比較
  • 同じ問題に対する代替解決手段の比較
  • 他の場所で経験された同じリスクとの比較

第3ランク(第2ランクに次いで望ましい)

  • 平均的なリスクと、特定の時間または場所における最大のリスクとの比較
  • ある有害作用の1つの経路に起因するリスクと、同じ効果を有する全てのソースに起因するリスクとの比較

第4ランク(かろうじて許容できる)

  • 費用との比較、費用対リスクの比の比較
  • リスクと利益の比較
  • 職務上起こるリスクと、環境からのリスクの比較
  • 同じソースに由来する別のリスクとの比較
  • 病気、疾患、傷害などの他の特定の原因との比較

第5ランク(通常許容できない‐格別な注意が必要)

  • 関係のないリスクの比較(例えば、喫煙、車の運転、落雷)

 
市民がリスクを認知するときに重視する要素を思い出しなさい;これらの要素を無視するほど、その比較の効果は低下する。

 目次にもどる

 

発表の計画表の例

プロジェクト

時間

場所

日取り

聴衆

  • 氏名
  • 関心事

導入

  • 個人的関心の表明
  • 組織の責任の表明
  • 集会の目的と計画

キーメッセージ

  • 内容
  • 裏付けデータ

結論

  • 総括

質疑応答

  • 予想される質問
  • 解答

発表用資料

  • 視聴覚素材
  • 配布物

 目次にもどる

 

コミュニケーションにおける10の致命的罪悪 

1. 準備不足にみえる。

2. 質問に適切に答えない。

3. 自分または組織の言い訳をする。

4. 知っているべき情報を知らない。

5. 視聴覚素材の使用が下手。

6. 予定からずれているように見える。

7. 関係者を参加させない。

8. 意思の疎通を図らない。

9. 計画的でないようにみえる。

10. 間違った内容を伝える。

目次にもどる

 

質疑応答

発表内容と同様、個々の質問や関心事に対する受け答えもその集会が成功するかどうかの鍵となる。準備して練習しなさい。一般的にどのように質問に答えるか、またどのようにして特定の質問に答えるかを考えなさい。

指針

  • 準備する。主題と聴衆がわかっていると、質問の多くは予想できる。応答を考えて練習しなさい。
  • キーメッセージから外れない。質疑応答を、キーメッセージを再び強調する機会として利用しなさい。
  • 返答は簡潔にして、重点だけを述べる。返答時間は2分以内とする。
  • 自己管理を練習する。相手の話を聞きなさい。自信を持ち、事実に基づいて話しなさい。感情をコントロールしなさい。
  • 誠実に話をし、行動をとる。事実のみを話す。答えを知らない場合はそのように言いなさい。約束したことは守りなさい。質問内容がよく理解できない場合は、質問を繰り返すか言い替えるかして意味を確認しなさい。

目次にもどる

 

質問例

以下の質問例は、よく遭遇する質問を示す。それと同時にキーメッセージの例および応答上の秘訣も示す。異なった種類の難しい質問に関しては、“Communication with Power: Encountering the Media”(Bary Mcloughlin Associates, Inc., 1990)を参照のこと。

 

あなたは“X”の代表としてここに居られるわけですが、“X”には何故有害物廃棄地を調査する計画がないのですか。

キーメッセージ:私達には有害物廃棄地を調査する政策があります。実際、・・・

  • 質問者の考えには同意できないことを、積極的に表明しなさい。無視するような態度をとってはいけない。
  • 丁寧にしかし毅然とした態度をとりなさい。
  • 質疑応答の機会を利用して、あなたの立場やメッセージを繰り返し伝えなさい。

 

 

あなたの上司はこの場所には問題はないと確信していると言っていますが、その方は自動車店の近くに1,000ガロンの油、シンナー、溶剤が廃棄されて重大な健康問題を起こす可能性があることをご存知ないのでしょうか。それとも、調査の結果に影響を与えようとしているのですか。

キーメッセージ:こうした物質の廃棄の安全性についての評価は、住民の安全を継続して確保するために私達が行っている調査の一部です。

  • 否定的イメージの言葉を繰り返さない。相手の否定的な主張を繰り返さずに反駁しなさい。
  • あなた自身のメッセージに話を戻しなさい。

 

あなたは水質に関する役所の立場を話されました。それではあなたならこの水を飲みますか。

キーメッセージ:飲料水の水質に関して、私は役所の担当者としてだけでなく、一市民としても関心を持っています。この問題について私が知っていること、私の性格を考えると、はい、私はその水を飲むでしょう。

  • 個人的な質問に備えなさい。
  • 役所の立場と意見が一致しない場合は、広報担当の役を引き受けないほうがよい。

 
あなた方がここで行っていることは、EPAの方針と一致していますか。

キーメッセージ:私達はEPAの指針に従っており、我々の調査結果は全てEPAに送っています。

  • 適当な担当者または組織に質問を差し回しなさい。
  • 知っていることに対してのみ、また所属する機関のみを代表して話しなさい。

 

この問題に関してこれまで費やされた費用の正確な金額をご存知ですか。

キーメッセージ:私は正確な金額を知りません。お名前と電話番号を教えてくだされば・・・までにお調べ致します。

  • 知らないと言いなさい。
  • いつまでに調べておきましょうと申し出なさい。
  • 嘘をついたり答えを作り上げたりしてはいけない。
  • 調べると約束した以上は約束を守りなさい。

 

この地域の汚染を見逃したことを認めると恥になるので、あなたの役所と州の規制当局は重大な汚染地域を内密に浄化し、適正な有害廃棄物調査を行わないことに取り決めたと聞いています。あなたの役所がこの環境問題に関して腰が重く、素早く対応しないのは何故ですか。

キーメッセージ:私達の目標は、地域住民の安全と健康を最大限守ることと、関連する全ての連邦法および州法に従うことにあります。私達は調査結果を折にふれ公表してきました。

  • 主題を直截な表現で伝えなさい。

 

地元企業があなたの機関に対して損害賠償を求めて起こした訴訟についてどのような対応をとる予定ですか。

キーメッセージ:これは正当な質問です。審理が続いておりますので、私はこの問題に関して話をすることはできません。

  • 答えることのできない理由を話しなさい。

 

このプログラムを運営するために、あなたはどのような資格をお持ちですか。

キーメッセージ:この種のプログラムの管理に数年の経験があり、またプログラムが全ての面で満足に実施できるように専門家のチームを抱えております。

  • 敵意を抱いたり感情的になって応答してはいけない。
  • 感情的な言葉を使用してはいけない。

 

パブリックコメントを求めないと最終的な決定はできないことさえ、あなたは知らないのですか。

キーメッセージ:最終決定をする前に、パブリックコメントを真剣に考慮しなければならない。

  • 敵対的または否定的な語調を避けて再度述べる。

 

環境問題全てに対応するのは実に大変なことに違いない。

キーメッセージ:訓練や経験によって、環境、安全、健康などの問題に対応できるようになってきましたし、私がここに来たのは地域住民のために可能な限り最良の仕事をするためです。

  • 同情的手法にのめりこんではいけない。最後には同意する羽目になり、あなたの信用が傷つく可能性がある。

 

地下水汚染に関することですが、あなたの機関が周辺住民の健康のことを心配しないのは何故だと思いますか。

キーメッセージ:私達は近隣住民の健康のことを非常に気にしています。

 

それでは地下水汚染を元に戻す方法を決定するのに5年間以上も調査研究を続けているのは何故でしょう。

キーメッセージ:差し迫った危険があるどのような状況に対しても、即座に対策を取れることを、確認したいと思っています。様々な理由で多くの時間と費用を要した調査研究の間、健康に対する差し迫った脅威は発見できませんでした。もし発見していれば即座に対策を講じたでしょう。公衆衛生は常に私達の一番の関心事です。

  • 丁寧にしかし毅然としなさい。
  • あなたのメッセージにもどりなさい。
  • 繰り返しあなたのメッセージを伝えなさい。
  • 「公共地下水の汚染」などの否定的イメージの言葉の多用に注意する。

 

予想される最悪の事態は何か。

キーメッセージ:推測は避けたいです。私達は地域住民の健康と安全の確保のために努力しています。今行っている調査には土壌や地下水も含まれる予定です。

  • 推測してはいけない。
  • 推測の場合は推測と明確に表明しなさい。

 

この地には深刻な地下水問題があるとの噂がありますが。

キーメッセージ:その噂は初めて耳にしました。データを見る限りこの地には地下水問題はありません。

  • 噂に対しては応答してはいけない。
  • あくまでも真実を述べなさい。

 

何故拡張したいのですか。あなた方は偵察のために非公開の会合に身分を隠した社員を送りましたか。送ったのならどのような情報を持ちかえったのですか。

キーメッセージ:最初の質問にお答えしましょう。地域社会が関心を持つのは正当なことで・・・

  • 答え易い質問から答えなさい。
  • 一度に全ての質問に答えようとしてはいけない。

 

あなたなら、こうした汚染問題に関する住民の懸念に対応するために、上司に対してどのような行動をとるよう提案しますか。

キーメッセージ:私の上司は、環境の安全問題に関わっている人であれば誰からでも、助言や教示を求めることができます。私も頼まれれば、私にできるどのような援助も惜しみません。

  • 国民またはメディアに対して話をする際は、このような助言を与えてはいけない。  

目次にもどる

 

人の話を聞く場合にすべきこととしてはならないこと
(Atwater、1989)

すべきこと:

  • 人の話を聞く時の自分の癖を知る。
  • コミュニケーションの責任を分かち合う。
  • 話し手に神経を集中する。
  • 感情を含め、全体の意味するところを聞き取る。
  • 話し手から送られる音声以外の信号を観察する。
  • 好意的な態度をとる。
  • 共感を表明する。
  • 自分自身の意見を聞く。
  • 聞いた後、適当な行動をとる。

してはならないこと:

  • 話をしていないことを、聞いていることと勘違いする。
  • 聞いている振りをする。
  • 必要もないのに話しを遮る。
  • せっかちに判断を下す。
  • ひとりよがりな議論をする。
  • 話し手に対して「どんなお気持ちか私にはよくわかります」と言う。
  • 感情的な言葉に対して過剰に反応する。
  • 求められていないのに助言する。
  • 自分を隠すために人の話に聞き入る。

目次にもどる

 

敵対的な状況の管理

健康や環境に関する問題は、激しい怒りや敵意を呼び起こすことがある。怒りを放散し、敵意のエネルギーを別の方向に向けるために、できることを考えなさい。

 

留意事項

  • 環境問題は、怒りや敵意など激しい感情を呼び覚ます可能性がある。
  • 敵意は通常、組織の代弁者としてのあなたに向けられているのであって、個人としてのあなたに対してではない。
  • 敵意を誤った方法で扱うと、信用や信頼を壊すことになる。

 

あなたにできること

敵意の存在を認めなさい。

  • あなたが感情的にはなっていない、というメッセージを送りなさい。
  • 敵意が存在しないふりをすることは最悪の事態である。

 

自己管理を練習しなさい。

  • 不安をコントロールしなさい。
  • 不安は自信、集中力、勢いを削ぐ。
  • 人の言うことをよく聞きなさい。

 

きちんと準備しなさい。

  • 発表および予想される質疑応答の計画を立て、準備をし、練習をしなさい。

 

共感やいたわりの心を伝えなさい。

  • 人々の不満を認識しなさい。
  • 視線を合わせなさい。
  • 人の話をよく聞く態度をとりなさい。
  • 質問には、慎重にそして完全に答えなさい。

 

あなたのメッセージを常に念頭に置く。

  • 否定的なものを肯定的なものに変えなさい。
  • メッセージに立ち戻りなさい。  

目次にもどる

マスメディアとの協力

マスメディアとの協力は国民との対話の主要な機会の一つであるので、マスメディアとの良い協力関係は極めて重要である。インタビューの前後およびインタビュー中にするべきことならびに不慮の事態にするべきことを検討する。

目次にもどる

 

マスメディアの視点

マスメディアが一般的に関心を示すのは以下の事項である。

  • 人の利害関係
  • 良いニュースよりも悪いニュース
  • 大衆の視点
  • 白か黒かとか、安全か安全でないか、などの明瞭な答え
  • 第一面を飾るようなニュース性の強い話

目次にもどる

 

メッセージの準備

マスメディアは、誰が、何を、何時、どこで、何故、どのように(5W1H)に関する情報を求めている。

強い印象を与えるために、キーメッセージ伝達の準備と練習をする。

  • 放送の場合は、10~12語のサウンドバイト(ニュース番組などで繰り返し使われる短いビデオまたは録音)
  • 新聞等の印刷媒体の場合は、1~3行の引用文

目次にもどる

 

インタビューの前後およびインタビュー中
(DonovanおよびCovello、1989)

インタビュー前

するべきこと:

  • 誰がインタビューするのか尋ねなさい。
  • どんなテーマをカバーするのか尋ねなさい。
  • 知識不足などで、論じることができない内容が含まれているので、あなたがそのインタビューの適任者でないという場合は、その旨警告しなさい。
  • 形式および時間の長さを問い合わせなさい。
  • 他にインタビューされる人は誰かを尋ねなさい。
  • 準備と練習をしなさい。

してはいけないこと:

  • どのリポーターにして欲しいと告げること。
  • 事前にこんな質問をして欲しいと要求すること。
  • ある主題については質問しないよう言い張ること。
  • あなたの発言を編集しないよう要求すること。
  • 敵対している人を、すぐそばでインタビューしないよう言い張ること。
  • インタビューなど簡単だと決めてかかること。 

インタビュー中

するべきこと:

  • 正直、正確に話しなさい。
  • キーメッセージからそれないようにしなさい。
  • 結論を先に話し、それから裏付けデータを提示しなさい。
  • 事前に決めたところまで、積極的に話しなさい。
  • 今持っていない情報を調べることを申し出なさい。
  • テーマと内容を説明しなさい。
  • 事実を強調しなさい。
  • ある問題について話をすることができない場合には、その理由を述べなさい。
  • 誤りを修正する時は、内容をより明瞭にさせてくださいと言うことによって、行いなさい。

してはいけないこと:

  • 嘘をつくか真実を隠そうとすること。
  • 反対の弁明を、急場しのぎに作ったり、長々と述べること。
  • 話の中で触れたくない問題を提起すること。
  • あらかじめ、よく考えないこと。
  • 憶測すること。
  • 業界用語を用いるか、事実はそれ自身が物語るとみなすこと。
  • 仮説的な状況を推測し、それを論じること。
  • 「ノーコメント」とだけ言うこと。
  • 質問に対する答えを放送したり、印刷したりしないように要求すること。

インタビュー後

するべきこと:

  • 取材はまだ終わっていないことを忘れてはならない。
  • 協力的な姿勢を示す。必要な情報の取得の協力を申し出る。取材にいつでも応じる姿勢をとる。締切時間を厳守しなさい。
  • インタビューの結果としてできた記事を待って、それを読みなさい。
  • もし、記事に不正確なところがあれば、リポーターに電話を掛けて丁寧に指摘しなさい。

してはいけないこと:

  • インタビューは終わった、または機材のスイッチは切られたと思いこむこと。
  • それ以上話すことを拒絶すること。
  • 「私のでき映えはどうでしたか」と尋ねること。
  • 出版や放送の前に、その内容を見直したいと頼むこと。
  • リポーターよりその上司に、まず不満を述べる。

目次にもどる

 

危機的状況

健康、安全、または環境に対する、現実のもしくは認知された、または潜在的な脅威は、リスクコミュニケーションに危険をもたらすと同時に、コミュニケーションのいい機会ともなる。するべきこととしてはいけないことを検討しなさい。

するべきこと:

  • 今のうちに計画を立てなさい。
  • 即座に対応しなさい‐最初の24時間が決定的である。
  • 真正面から取り組みなさい。

してはいけないこと:

  • 危機が来ないことを期待すること。
  • 問題の判断を人任せにすること。
  • 国民に秘密にしておけば、彼等が情報を求めることもないだろうと考えること。

目次にもどる

参考文献

Atwater E. 1989. In E. Donovan and V. Covello. Risk Communication Student Manual. Chemical Manufacturers' Association, Washington, D.C.

Barry McLoughlin Associates 1990. Communicate with Power: Encountering the Media, New York.

Chess C, Hance BJ, Sandman PM 1988. Improving Dialogue with Communities: A Short Guide to Government Risk Communication. New Jersey Department of Environmental Protection.

Covello V. 1983. The perception of technological risks. Technology Forecasting and Social Change: An International Journal 23時28分5-297 (June).

Covello et al. 1988.

Covello V. 1989. Issues and problems in using risk comparisons for communicating right-to-know information on chemical risks. Environmental Science and Technology, 23 (12):1444-1449.

Covello V. 1992. Risk communication, trust, and credibility. Health and Environmental Digest 6(1):1-4 (April).

Covello V. 1993. Risk communication, trust, and credibility. Journal of Occupational Medicine 35:18-19 (January).

Covello V, Allen F. 1988. Seven Cardinal Rules of Risk Communication. U.S. Environmental Protection Agency, Office of Policy Analysis, Washington, D.C.

Covello V, McCallum D, Pavlova M. 1989. Effective Risk Communication: The Role and Responsibility of Government and Nongovernment Organizations. New York: Plenum Press.

Donovan E, Covello V. 1989. Risk Communication Student Manual. Chemical Manufacturers' Association, Washington, D.C.

Fischhoff B, Lichtenstein S, Slovic P, Keeney D. 1981. Acceptable Risk. Cambridge, Massachusetts: Cambridge University Press.

Morrisey G, Sechrest T. 1987. Effective Business and Technical Presentation (Third Edition). New York: Addison-Wesley Publishing Col, Inc.

目次にもどる 

お問合せ先

消費・安全局食品安全政策課
担当者:情報発信企画・評価班
代表:03-3502-8111(内線4474)
ダイヤルイン:03-3502-5719
FAX番号:03-3597-0329