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農林水産省

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トランス脂肪酸に関する国際機関の取組

更新日:2023年12月20日

世界保健機関(WHO)は、生活習慣病を防ぐために食事からとる栄養素の量の目標を定めるなど、人々の健康のための様々な活動をしています。2018年5月には、加工食品を製造するときにできるトランス脂肪酸を減らすための行動計画を公表しました。その内容を、日本の状況とあわせて紹介します。

WHOによるトランス脂肪酸を減らすための取組

 トランス脂肪酸の摂取量の低減目標 NEWアイコン

WHOは、2003年に、生活習慣病を防ぐために食事からとる栄養素の量の目標〔外部リンク〕を公表しました。トランス脂肪酸については、総摂取エネルギーの1%相当より多くとらないようにすることを目標としました。
2023年には、飽和脂肪酸及びトランス脂肪酸の摂取に関するガイドライン〔外部リンク〕を新たに公表し、トランス脂肪酸については、とる量を総摂取エネルギーの1%に相当する量まで減らすことを強く勧告した他、1%未満に減らすこと、食事中のトランス脂肪酸を他の多価不飽和脂肪酸や植物由来の一価不飽和脂肪酸に置き換えることも推奨しています。これらは、トランス脂肪酸をとる量を減らすと死亡率や心血管疾患・冠動脈性心疾患のリスクが低減することや、他の不飽和脂肪酸に置き換えると血液中のLDLコレステロールが低減することなどが、複数の研究で示されたためであるとしています。これらの勧告等の対象となるトランス脂肪酸には、天然由来のトランス脂肪酸も含まれます。また、特定の食品の消費を妨げるものではないものの、油脂の加工由来のトランス脂肪酸を多く含む食品を主に避けるべきとしています。

なお、農林水産省は、平成17-19(2005-2007)年度に、日本人のトランス脂肪酸の摂取量を推定するための調査研究を実施しました。その結果、日本人がとっているトランス脂肪酸の平均的な量は、総摂取エネルギーの0.44~0.47%に相当する量でした*1

*1 食品安全委員会の食品健康影響評価〔外部リンク〕でも、日本人がとっているトランス脂肪酸の量について、農林水産省の調査と同じような結果を示しており、「通常の食生活では健康への影響は小さいと考えられる」としています。

トランス脂肪酸低減に向けた各国政府への呼びかけ NEWアイコン

WHOは、2018年5月14日、トランス脂肪酸をとる量の目標とは別に、加工食品を製造するときにできるトランス脂肪酸を減らすための行動計画として、下表の6つの要素からなる「REPLACE」を公表しました。WHOは、各国の政府に対し、この「REPLACE」を使って、2023年までに、加工食品を製造するときにできるトランス脂肪酸を減らすよう呼びかけています。

REview 加工食品を製造するときにできるトランス脂肪酸について、どんな食品からとっているか、政策を変える必要性があるかを再検討する
Promote 加工食品を製造するときにできるトランス脂肪酸を含む油脂の代わりに、より健康に良い油脂を使うことを促進する
Legislate 加工食品を製造するときにできるトランス脂肪酸を減らすための法律や規制を制定する
Assess 食品中のトランス脂肪酸の量と、人がトランス脂肪酸をとる量の変化を確認し、評価する
Create 政策決定者、食品事業者、消費者に、トランス脂肪酸が健康に与える影響について意識させる
Enforce 政策・規制を守ることを徹底させる


WHOは、毎年、加工食品を製造するときにできるトランス脂肪酸低減に向けた世界の取組状況を把握しており、直近では2023年1月にレポート〔外部リンク、PDF : 4.7MB〕を公表しました。さらに、トランス脂肪酸の低減に向けた各国の取組状況を4段階に分けて整理してウェブページ〔外部リンク〕に掲載し、随時更新しています。

WHOは、「REPLACE」の1つの要素として、加工食品を製造するときにできるトランス脂肪酸の規制を重視しており、特に、食品中のトランス脂肪酸濃度の上限値(脂質100 g当たりトランス脂肪酸2 g以下)の設定や、部分水素添加油脂の食品への使用の規制を推奨しています。こうした規制を導入する国の数は、食事から脂質やトランス脂肪酸を多くとっている国を中心に増えつつあり、WHOによると、2015年には7か国でしたが、2020年には14か国になり、2023年12月時点で56か国に達したと報告されています。一方、低所得国や、トランス脂肪酸摂取による冠動脈性心疾患の負荷が大きいと推定される上位15カ国(日本は含まれていません。)のうち12カ国において、こうした規制の導入に至っていないことなどが課題となっています。

WHOは、「REPLACE」の取組をさらに加速化するため、各国政府を対象に、加工食品を製造するときにできるトランス脂肪酸の低減への取組状況に関する認証制度〔外部リンク〕を設ける旨を202010月に発表しました。2023年4月に申請の受付が開始され、2023年11月には5か国が認証されています。認証を受けるには、WHOが推奨する内容を満たす規制を導入していることだけでなく、その規制が効力を持つよう監視体制が整備されていることが必要です。このため、WHOは食品中のトランス脂肪酸の分析法に関する手順書〔外部リンク〕20211月に公表し、2023年4月には、途上国においても簡単に分析が実施できるよう簡略化された手順書〔外部リンク、PDF:1.6MB〕も公表しました。

トランス脂肪酸低減に向けた食品事業者への呼びかけ

WHOは、2019年4月23日、食品事業者に対しても加工食品を製造するときにできるトランス脂肪酸の低減を呼びかける声明〔外部リンク〕を発表しました。食品事業者向けに示された取組の概要は以下のとおりです。

  • 食品の製造方法を変更し、原料油脂中の加工由来のトランス脂肪酸を、飽和脂肪酸で代替することなく低減する(2023年までに、食品中の脂質100 g当たりのトランス脂肪酸2 g未満)
  • 食品包装にトランス脂肪酸の含有量を表示する
  • トランス脂肪酸や飽和脂肪酸濃度が低く、より健康によい油脂の供給を増やす
  • トランス脂肪酸の低減に向けた取組の進捗を評価できるようにする(トランス脂肪酸を含む油脂の生産量や販売量の開示等)

こうした動きに対応し、2019年、国際的な食品・飲料の業界団体が、2023年までに、会員事業者の製品中の脂質100 g当たりに含まれる油脂の加工由来のトランス脂肪酸を2 g以下にすることを誓約〔外部リンク〕しました。WHOは、この制約の実行を期待するとともに、大規模な油脂供給事業者に対し、世界の食品事業者に販売する油脂製品中のトランス脂肪酸の低減をさらに進めるよう期待すると述べています。

日本では、食品事業者が、食品に含まれるトランス脂肪酸を減らすための対策に取組んでいます。
農林水産省が、平成26~27年度に食品中のトランス脂肪酸濃度を調査した結果、調査方法は一部違うものの、平成18~19年度の調査よりも、食品中のトランス脂肪酸濃度が低い傾向にあることが確認できました。食品事業者による、トランス脂肪酸を減らすための対策の効果が現れていると考えられます。

出典:食事、栄養、慢性疾患予防に関するWHO/FAO合同専門家会合報告書(英文)〔外部リンク〕 
         WHO REPLACE Trans Fat〔外部リンク〕

コーデックス委員会における取組 

コーデックス委員会では、複数の部会においてトランス脂肪酸に関する取組が進められています。
これまでに、栄養表示のガイドラインに「トランス脂肪酸の摂取量が公衆衛生上の懸念である国においては、トランス脂肪酸の表示を検討すべきである」との記載を追加したほか、食品中にトランス脂肪酸を含まない(トランス脂肪酸フリー)旨の表示の要件等について、栄養・特殊用途食品部会(CCNFSDU)を中心に検討しました。トランス脂肪酸フリーの表示については議論がまとまらず作業中止となりましたが、現在は、WHOのREPLACEも考慮し、食品中のトランス脂酸を減らすためにどのようなことができるか、食品表示を担当する食品表示部会(CCFL)と油脂の個別食品規格を担当する油脂部会(CCFO)で議論しています。
2021年9月に開催された第46回CCFL〔外部リンク、PDF : 2,174KB〕では、食品中のトランス脂肪酸濃度の表示の義務付け等に関する作業を開始することが提案されましたが、合意には至らず、食品中のトランス脂肪酸を減らすためにCCFLができることについてさらに検討することになりました。
2021年10月に開催された第27回CCFO〔外部リンク、PDF : 1,298KB〕でも、食品中のトランス脂肪酸を減らすためにCCFOができることについて検討することに合意しました。取組の例として、油脂のコーデックス規格〔外部リンク〕に部分水素添加油脂の使用禁止の規定を盛り込むことが挙げられました。

国際機関の過去の取組

上記のような取組のほか、WHOと国連食糧農業機関(FAO)の合同会合やコーデックス委員会等では、これまでに脂質と脂肪酸について、食品からとる量の目標を設定したり、栄養表示について議論したりしています。過去の議論に関してはこちらを御覧下さい。

お問合せ先

消費・安全局食品安全政策課

担当:化学物質管理班
代表:03-3502-8111(内線4453)

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