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農林水産省

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更新日:2015年6月24日

すぐにわかるトランス脂肪酸

油脂や脂肪酸ってどんなもの?

  • トリアシルグリセロールあぶらには、常温で液体のあぶら(油)と固体のあぶら(脂)があります。これをまとめて、油脂(ゆし)と呼んでいます。この油脂は、脂肪酸グリセリンという分子からできています。この油脂や脂肪酸、グリセリン、コレステロールなどをあわせて脂質と呼んでいます。
  • 脂肪酸は、炭素(C)の原子が鎖状につながった分子で、その鎖の一端に酸の性質を示すカルボキシル基(-COOH)と呼ばれる構造を持っているのが特徴です。脂肪酸は人間のからだの細胞を作るために必要なので、食品を通してバランスよくとる必要があります。また、エネルギー源としても使われます。 飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸
  • 脂肪酸には、鎖の長さや炭素の二重結合の数と位置によってたくさんの種類があり、炭素の二重結合がない飽和脂肪酸炭素の二重結合がある不飽和脂肪酸の2種類があります。
  • グリセリンは脂肪酸のカルボキシル基と結合することができる手を3本持っていて、グリセリンに脂肪酸が3個つながったものは「トリアシルグリセロール(またはトリグリセリド)」と呼ばれています。私たちが普段食べている油脂の成分の多くはこのトリアシルグリセロールです。エネルギー源として使われる脂肪酸は、私たちの体内でトリアシルグリセロールとして蓄えられています。健康診断の項目にある血液中の「中性脂肪」とは、このトリアシルグリセロールを測定したものです。

トランス脂肪酸ってなんだろう?

  • 不飽和脂肪酸には、炭素の二重結合のまわりの構造の違いにより、シス型トランス型の2種類があります。 トランス型シス型
  • シス(cisとは、“同じ側の、こちら側に”という意味で、脂肪酸の場合には水素原子(H)が炭素(C)の二重結合をはさんで同じ側についていること表しています。トランス(transとは、“横切って、かなたに”という意味で、脂肪酸の場合では水素原子が炭素の二重結合をはさんでそれぞれ反対側についていることを表しています。 
  • 天然の不飽和脂肪酸のほとんどは、炭素の二重結合がすべてシス(cis)型です。これに対して、トランス(trans)型の二重結合が一つ以上ある不飽和脂肪酸をまとめて「トランス脂肪酸(trans-fatty acid)」と呼んでいます。  

食品にはどうしてトランス脂肪酸が含まれているの?

トランス脂肪酸には、天然に食品中に含まれているものと、油脂を加工・精製する工程でできるものがあります。

天然にできるものバター牛乳牛肉

天然の不飽和脂肪酸はふつうシス型で存在します。しかし、牛や羊などの反芻(はんすう)動物では、胃の中の微生物の働きによって、トランス脂肪酸が作られます。そのため、牛肉や羊肉、牛乳や乳製品の中に天然に微量のトランス脂肪酸が含まれています。

油脂の加工・精製でできるものスナック類クリームパンドーナツマーガリン

常温で液体の植物油や魚油から半固体又は固体の油脂を製造する加工技術の一つである「水素添加」によってトランス脂肪酸が生成する場合があります。

水素添加によって製造されるマーガリン、ファットスプレッド、ショートニングや、それらを原材料に使ったパン、ケーキ、ドーナツなどの洋菓子、揚げ物などにトランス脂肪酸が含まれています。

また、植物から油を絞る際には、精製する工程で好ましくない臭いを取り除くために高温で処理を行います。この際に、植物に含まれているシス型の不飽和脂肪酸からトランス脂肪酸ができるため、サラダ油などの精製した植物油にも微量のトランス脂肪酸が含まれています。

トランス脂肪酸にはどんな種類があるの?

  • 不飽和脂肪酸には、鎖の長さや二重結合の数と位置によってとてもたくさんの種類があります。トランス脂肪酸も同じで、「トランス脂肪酸」という名の脂肪酸が一種類だけあるのではなく、トランス型の二重結合を持つたくさんの種類の不飽和脂肪酸をまとめてトランス脂肪酸と呼んでいます。
  • 例えば、食品に含まれる主なシス型の不飽和脂肪酸と鎖の長さが同じで、かつ、炭素の二重結合の数と位置が同じトランス脂肪酸の数は次の表のようになります。

シス型不飽和脂肪酸の名称と構造式

炭素の数

炭素の二重結合数

対応するトランス脂肪酸の数
オレイン酸
オレイン酸

18

1

1

リノール酸
リノール酸

18

2

3

α-リノレン酸
αリノレン酸

18

3

7

γ-リノレン酸
γリノレン酸

18

3

7

アラキドン酸
アラキドン酸

20

4

15

イコサペンタエン酸(EPA)
EPA

20

5

31

ドコサヘキサエン酸(DHA)
DHA

22

6

63

* リノール酸、α‐リノレン酸は、どの文献でも、食事から摂取しなければいけない必須脂肪酸とされています。
  • トランス脂肪酸と呼ばれるものは、主なものだけでも多くの種類があることがわかります。現時点では、食品に含まれているすべてのトランス脂肪酸の量を精確に測定できる方法は確立されていません。そのため、食品に含まれているトランス脂肪酸の表示をしなければいけない国では、測定が可能なトランス脂肪酸、または主要なトランス脂肪酸の合計量を表示すればいいことにしています。

トランス脂肪酸が体に悪いって本当?

  • 脂質は三大栄養素の一つであり、食品からとる量が少なすぎると健康リスクを高めることがあります。一方で、脂質は炭水化物(でんぷんや糖類)、たんぱく質に比べて、同じ量当たりのエネルギーが大きいため、とりすぎた場合は肥満などによる生活習慣病のリスクを高めることも知られています。そのため、飽和脂肪酸やある種の不飽和脂肪酸には、食品からとる際の目安量や目標量が定められています。 ハート
  • トランス脂肪酸については、食品からとる必要がないと考えられており、むしろ、とりすぎた場合の健康への悪影響が注目されています。具体的には、トランス脂肪酸をとる量が多いと、血液中のLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が増えて、一方、HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)が減ることが報告されています。日常的にトランス脂肪酸を多くとりすぎている場合には、少ない場合と比較して心臓病のリスクを高めることが示されています。
  • トランス脂肪酸による健康への悪影響を示す研究の多くは、トランス脂肪酸をとる量が多い欧米人を対象としたものであり、日本人の場合にも同じ影響があるのかどうかは明らかではありません。
  • 油脂の加工でできるトランス脂肪酸と天然にあるトランス脂肪酸では、健康に及ぼす影響に違いがあるのかどうか、また、たくさんの種類があるトランス脂肪酸の中でどのトランス脂肪酸が健康に悪影響を及ぼすのかについては、十分な証拠がありません。 

トランス脂肪酸の目安量はどのくらい?

  • 国際機関が生活習慣病の予防のために開催した専門家会合(食事、栄養及び慢性疾患予防に関するWHO/FAO合同専門家会合)は、食品からとる総脂肪飽和脂肪酸不飽和脂肪酸等の目標値を2003年に公表しました。
  • その中で、トランス脂肪酸の摂取量を、総エネルギー摂取量の1%未満とするよう勧告をしています。日本人が一日に消費するエネルギーは平均で約1,900 kcalですので、平均的な活動量の場合には一人一日当たり約2グラム未満が目標量に相当します。

脂質や食塩のとりすぎにも気をつけて!

  • トランス脂肪酸を日常生活でとりすぎた場合には生活習慣病になる可能性が高くなりますが、食品に含まれている栄養素には、同じようにとりすぎによって健康に悪影響を及ぼすものがあります。 食塩
  • 日本人において、一番の問題と考えられているのは、食塩のとりすぎです。厚生労働省の調査では、日本人の男性で約6割、女性で約7割が目標量(成人男性10グラム未満、成人女性8グラム未満)を超えていることが示されています。食塩をとりすぎると高血圧やがん、脳卒中のリスクが高くなることが示されており、減塩はこれらの生活習慣病の予防に有効であると考えられています。
  • 人間はエネルギーを脂質、炭水化物、たんぱく質からとっています。総エネルギーのうち、脂質から得られるエネルギーの割合は「脂肪エネルギー比率」と呼ばれています。この脂肪エネルギー比率が高くなると、肥満やメタボリックシンドローム、心臓病のリスクが高くなるとされています。脂肪エネルギー比率が高いと、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸もとりすぎている可能性があります。厚生労働省の調査では、日本人の男性の約2割、女性で約3割が目標量の範囲を超えて脂質を摂取していることが示されており、この脂質をとりすぎている人の割合がだんだん増えていることが報告されています。
  • トランス脂肪酸だけではなく、飽和脂肪酸などを含めた脂質のとりすぎ、食塩のとりすぎにも十分に注意してください。

日本では何をしているの?

  • 農林水産省が実施した調査研究(2008年)から、日本人が、一人一日当たり食べているトランス脂肪酸の平均的な量は0.92~0.96グラムと推定されます。これは平均総エネルギー摂取量の0.44~0.47%に相当します。 内閣府の食品安全委員会は、2007年にトランス脂肪酸に関するファクトシート[外部リンク](PDF:247KB)を公表しており、その中でも日本人のトランス脂肪酸の摂取量は平均総エネルギー摂取量の0.3~0.6%と見積もられると報告しました。
  • 日本人でも食事からとる脂質の量が多い場合には、トランス脂肪酸をとる量も多くなることが報告されています。そのため、食塩や脂質を控えめにし、いろいろな食品をバランスよく食べるという食生活指針の基本を守れば、トランス脂肪酸によって心臓病のリスクが高まる可能性は低いと推定されます。 農林水産省では、健やかな食生活を送るためには、トランス脂肪酸という食品中の一成分だけに着目するのではなく、現状において日本人がとりすぎの傾向にあり、生活習慣病のリスクを高めることが指摘されている脂質そのものや塩分を控えることを優先すべきと考えています。
  • 最近では、日本でも食品事業者による自主的な努力によって、トランス脂肪酸の含有量が従来よりも少ない食品が販売されています。天然にあるトランス脂肪酸を減らすのは難しいと考えられていますが、油脂の加工でできるトランス脂肪酸は新たな技術を利用することで低減することができます。食品事業者は、食品に含まれている油脂の加工由来のトランス脂肪酸をできるだけ減らすとともに、同時に飽和脂肪酸についても減らしていくことが望まれます。
  • 現時点では、日本において食品中のトランス脂肪酸について、表示の義務や含有量に関する基準値はありません。また、トランス脂肪酸だけではなく、不飽和脂肪酸飽和脂肪酸コレステロールなどの他の脂質についても表示の義務や基準値はありません。
  • 厚生労働省が、国民の健康の維持・増進、生活習慣病の予防を目的に定めている「日本人の食事摂取基準(2015)」では、脂質に関しては、総脂質飽和脂肪酸多価不飽和脂肪酸について目標量(※1)や目安量(※2)の基準を定めています。トランス脂肪酸について、目標量の基準は定められていません。

※1  一定の栄養状態を維持するのに十分な摂取量。 
※2  生活習慣病の予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量。

  • 内閣府の食品安全委員会は、2012年3月に、食品に含まれるトランス脂肪酸に関する食品健康影響評価(リスク評価)の結果を公表しました。その中で、「リスク管理機関においては、今後とも日本人のトランス脂肪酸の摂取量について注視するとともに、引き続き疾病罹患リスク等に係る知見を収集し、適切な情報を提供することが必要である。」としています。農林水産省は、引き続き関係情報の収集・解析を行うとともに、国民の皆様が健全な食生活を送ることができるよう、このウェブページなどを通して情報提供を行っていきます。

外国ではどんなことをしているの?

  • 生活習慣病の予防のため、先進国の多くは飽和脂肪酸トランス脂肪酸などを含めた脂質の取りすぎについて注意喚起を行っており、バランスのとれた健康的な食生活を推奨しています。
  • トランス脂肪酸をとる量が多く、生活習慣病が社会問題となっている国では、加工食品に飽和脂肪酸やトランス脂肪酸などの含有量の表示の義務づけや部分水素添加油脂の食品への使用規制(注)、食用油脂に含まれるトランス脂肪酸の上限値の設定をしているところがあります。  

(注)米国の規制に関し、「トランス脂肪酸がGRASの対象から除外された」や「トランス脂肪酸の食品への添加が禁止された」との報道がありますが、GRAS対象から除外されたのは、トランス脂肪酸を含む”部分水素添加油脂”です。加工食品の製造工程で、トランス脂肪酸自体を食品に添加しているわけではありません。
部分水素添加油脂についてはこちらの解説をご覧下さい。

  • トランス脂肪酸には多くの種類があって、そのすべての合計量を測定するのは難しいため、国によって表示すべきトランス脂肪酸や規制の対象とするトランス脂肪酸の範囲を指定しています。

例えば、

米国では、多くの食品に適用できる分析法を指定(AOAC Official Method 996.06)し、この分析法で測定したトランス脂肪酸の総量をまとめて表示するよう定めています。

デンマークでは油脂の加工でできる炭素の数が14から22までのトランス脂肪酸を規制の対象としており、天然にできるものは除いています。

  • トランス脂肪酸の摂取量が少ない国々では、トランス脂肪酸について表示の義務づけや、上限値の設定は行わずに、飽和脂肪酸とトランス脂肪酸の総量を自主的に低減するように事業者に求めています。 

お問い合わせ先

消費・安全局食品安全政策課
担当者:製造流通安全企画班
代表:03-3502-8111(内線4459)