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農林水産省

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(1)世界の食料事情と農産物貿易交渉 ウ 農産物貿易交渉の動向

(WTO交渉やEPA/FTA交渉が進行中)

世界経済は、第二次世界大戦後、ガット(関税及び貿易に関する一般協定)や1995年にガットの成果を発展的に継承した世界貿易機関(WTO)の体制のもとで、持続的に発展してきている。現在、21世紀の貿易ルールの構築に向け、150の加盟国・地域(*1)が共通のルールを決めるWTO 交渉に加え、WTO の多角的な貿易体制を補完するものとして、特定の国・地域間で関税撤廃等を行うEPA/FTAに関する交渉等が進められている(図1-15)。

*1 2007年1月現在。

図1-15 世界の農産物貿易ルールの概要

(我が国の関税は既に低く、貿易わい曲的な国内支持も大幅に削減済)

ガット体制での最後のラウンド(多角的貿易交渉)となったウルグアイ・ラウンドは、農業分野の国境措置(関税、輸入数量制限等)、国内支持(*2)、輸出競争(輸出補助金)を対象に、1995年から2000年までの6年間で保護水準を引き下げることで1993年に実質的に妥結された。

我が国は、ウルグアイ・ラウンド等累次のラウンドに基づき、関税引下げ等を行い、大部分の農産物は既に無税または低関税となっている(*3)。また、国内支持では、ウルグアイ・ラウンドにおいて削減対象とされた、貿易や生産に影響を及ぼす「黄」の政策について、我が国は農政改革の推進により、その助成合計量(AMS)(*4)を約束水準の16%(2003年)とするなど、米国、EUに比べ大幅に削減されている(図1-16)。

*2 政府が農業生産者のために行うすべての政策。貿易を歪める程度に応じ「黄」「青」「緑」に区分される。

*3 農産物の関税率では、既に無税となっている品目の割合で23.9%、10%未満で51.9%である(財務省「実行関税率表」を基に農林水産省で算出)。

*4 [用語の解説]を参照。

(2001年にドーハ・ラウンド開始)

WTO農業交渉は、ウルグアイ・ラウンド農業交渉の合意事項を受けて、他の交渉分野に先行する形で2000年3月から開始された。2001年11月にはカタールのドーハにおいて第4回WTO閣僚会議が開催され、ドーハ開発アジェンダ(ドーハ・ラウンド)が立ち上げられた(図1-17)。ドーハ・ラウンドでは、農業、非農産品、サービス等の分野について、一括して受諾することが宣言された(図1-18)。

(各国の意見の隔たりが大きくドーハ・ラウンドは中断)

2005年12月の第6回閣僚会議で採択された香港閣僚宣言を踏まえ、2006年初めからモダリティ(*1)合意等に向けて、精力的に交渉が続けられてきたが、各国の意見の収れんがみられなかったため、4月末にモダリティの合意には至らなかった。

その後、ロシア・サンクトペテルブルクで行われたG8サミット(*2)での要請を受け、2006年7月下旬のG6(*3)閣僚会合において集中的な議論が実施されたが、米国の農業補助金の削減、EUやG10(*4)の農業の市場開放、開発途上国の非農産品・サービスの市場開放等について各国の意見の隔たりが縮まらず、WTO事務局長の判断により、交渉が一時中断されることとなった。我が国は、交渉の早期再開のために全力を尽くし、交渉を再び軌道に乗せ、合意を達成する決意であるとの総理コメントを公表した。

*1 [用語の解説]を参照。

*2 主要8か国首脳会議。日本、米国、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、ロシアがメンバー国。

*3 WTO交渉を実質上リードしているメンバー国で、米国、EU、ブラジル、インド、豪州、日本の6か国。

*4 日本、スイス、ノルウェー、韓国等の食料純輸入国グループ。データ(エクセル:14KB)

(交渉の中断から再開へ、バランスのとれた貿易ルールの確立を目指す我が国)

2006年9月以降、G20(*1)やケアンズグループが閣僚会合を開催するなど、各国が交渉再開に向けた動きを示した。同年11月には、WTO事務局長が各交渉議長に対し、それぞれの事情に応じた協議を進めるよう促し、農業分野でも、集中的な議論を行うこととされた。また、2007年1月にスイスのダボスで非公式閣僚会合が開催され、我が国は交渉の公式の再開を主張し、多くの加盟国から支持され、今後技術的議論を開始することが確認された。

我が国は、「多様な農業の共存」を基本理念とし、「攻めるところは攻める、譲るところは譲る、守るところは守る」という姿勢で、国内農業の構造改革を強力に進めながら、輸出国と輸入国のバランスのとれた貿易ルールの確立と、開発途上国への貢献を目指しており(図1-19)、我が国の主張がドーハ・ラウンドの成果に最大限反映されるよう、戦略的かつ前向きに対応していくこととされている。

*1 ブラジル、インド等の有力途上国グループ。データ(エクセル:14KB)

図1-19 WTO農業交渉にのぞむ我が国の考え方

関税のもつ意味

関税とは、今日では一般に「輸入品に課される税」として定義され、現在では、他国に比べて相対的に競争力が弱い国内産業を保護する「保護関税」としての機能が重要視されています。

農業では、我が国の国土が急峻(きゅうしゅん)かつ狭小であり、これら国土条件の制約を考慮すると、国内農業における国際競争力の強化は容易ではなく、米国や豪州等の農業との間には埋めることができない生産性の格差が存在します。関税は、こうした条件の違いから生ずる国産品と輸入品との競争力の格差を補正する重要な手段であり、WTOでも認められている正当な措置です。

我が国では、大部分の農産物は既に無税または低関税となっていますが、米、小麦、乳製品等一部の関税割当品目を中心に、一定水準の税率を設定し、無秩序かつ大量の輸入を防止しています。その税率はウルグアイ・ラウンド合意等に基づき、内外価格差を基礎に設定されたのものです。仮にこれら品目の関税を撤廃した場合、(1)農業総産出額がその4割に当たる約3兆6千億円減少する、(2)食料自給率(供給熱量ベース)が40%から12%まで低下するなど、農業だけに止まらず、我が国社会全体へ甚大な影響が及ぶと試算されています(*2)。

現在、農業の構造改革を遂行しているなか、「いのち」の源である国内農業を今後とも維持・発展させていくため、関税のもつ意味は非常に大きいといえます。

*2 農林水産省「国境措置を撤廃した場合の国内農業等への影響(試算)」(19年2月)。試算に当たっては、「我が国がすべての国に対し、すべての農産物及び農産物加工品・加工食品等の関税をはじめとする国境措置を撤廃する」、「国内需要量は変わらない」等いくつかの前提が置かれている。

(急増する世界のEPA/FTA)

近年、WTO加盟国が増加し、各国間の意見の調整に時間を要するようになってきた。

こうしたなかで、特定の国・地域間のみで関税撤廃等を行うEPA/FTAが世界中で急増し、その件数は、1990年代の41件から2006年には148件となっている(*1)。協定内容は、物やサービスの貿易だけではなく、投資、知的財産、協力等を含む包括的なものになってきている。農産物では、関税撤廃の例外品目や再協議品目を設定するなど、柔軟性のある取扱いがされることが多い(表1-1)。

*1 WTO通報ベースの件数(2006年の197件)から既存のFTAへの新規加盟等の重複分を除いた件数。

表1-1 EPA/FTAの農産物での例外的な取扱いの一例

(アジア諸国を中心に広がる我が国のEPA/FTAの取組)

我が国は、WTO交渉の多角的な貿易体制を補完するものとして、EPA/FTAを推進している(図1-20)。特に、アジア諸国とのEPA交渉においては、我が国と相手国双方の農林水産業・食品産業の共存・共栄を目指し、関税撤廃をはじめとする市場アクセスの改善と農林水産業協力を組み合わせて積極的に交渉に取り組んでいる(*2)。

2006年においては、チリ、インドネシア、ブルネイと大筋合意に達した。このうち例えばインドネシアとは、我が国関心品目のぶどう、りんご、かき等と相手側関心品目であるえび等の即時関税撤廃を実現し、インドネシアにおける農林漁業者の生活向上も目的とした協力が盛り込まれた。また、我が国の重要品目の米麦や乳製品等は除外または再協議とされた。

*2 農林水産省「農林水産分野におけるアジア諸国とのEPA推進について(みどりのアジアEPA推進戦略)」(2004年11月策定)

図1-20 我が国のEPA/FTAをめぐる状況

(農業の重要性を踏まえ、戦略的に取り組むEPA交渉)

EPA/FTA交渉に当たっては、国内農業への影響を十分踏まえ、「守るべきもの」は「守る」との方針のもと、国内農業の構造改革の進捗状況にも留意しつつ、相手国における知的財産権の保護や食の安全の確保等を含む総合的な質の高いEPAの実現を目指し、戦略的に取り組むこととされている(図1-21)。

図1-21 EPA/FTAにのぞむ我が国の考え方

(日豪政府間の共同研究報告書が取りまとめられた後、EPA交渉の開始に合意)

我が国と豪州との間では、2005年4月の日豪首脳会談において、EPAの実現可能性またはメリット・デメリットも含め、両国の経済関係を強化する様々な方策を幅広く検討する政府間の共同研究を開始することが合意された。共同研究は同年11月に開始、2006年9月までに5回開催され、12月に共同研究報告書が取りまとめられた。本報告書では、交渉は、「段階的削減」のみならず「除外」及び「再協議」を含むすべての柔軟性の選択肢が用いられるものとして開始されるとの文言が記述されている(図1-22)。その後、日豪首脳会談で政府間交渉の開始が合意され、2007年4月に第1回交渉が行われた。

図1-22 「日豪経済関係強化のための共同研究報告書」の農林水産分野の概要

(豪州の輸出農産物の多くは、我が国の重要品目)

豪州の農業は、新大陸で展開され規模が極めて大きく、我が国農業の構造とは大きな格差がある(表1-2)。また、我が国にとって豪州は、米国、中国に次ぐ第3位の農林水産品輸入先国である。豪州から我が国に輸出される農林水産品の70%が有税品目であり、その過半が牛肉、小麦、乳製品、砂糖等、我が国の農業や地域経済にとって非常に重要な品目である(図1-23)。

(豪州産農産物の関税が撤廃された場合の影響は甚大)

仮に、豪州産の農産物関税が撤廃された場合、小麦や砂糖、乳製品、牛肉等の輸入が大幅に拡大し、我が国農業に大きな悪影響が及ぶおそれがある。

また、農業への直接的な影響に加えて、輪作にかかる他品目の生産や関連産業の経営・雇用への甚大な影響、国土・環境保全といった多面的機能、食料自給率等、我が国の社会全体に影響が大きく波及することが懸念される。

さらに、日豪間の関税撤廃は、WTO交渉に重大な影響を及ぼし、米国、カナダ等からのさらなる自由化の要求につながり、極めて厳しい国際貿易問題が惹起(じゃっき)される可能性もある。

我が国は、国内農林水産業への影響を十分踏まえ、「守るべきもの」はしっかりと「守る」との方針のもと、米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖をはじめとする重要な農林水産品が、関税撤廃の例外となるよう、政府一体となって粘り強く交渉することとされている。

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