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農林水産省

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(3)食料自給率の向上と食料供給力の強化

(世界のなかで低い水準にある我が国の食料自給率)

我が国の食料自給率は、長期的に低下傾向で推移している。供給熱量ベースでは、昭和40年度の73%から33年後の10年度には40%へと低下し、以後、17年度まで8年連続横ばいとなっている(*1)(図1-35)。

一方、生産額ベースでは、昭和40年度の86%から40年後の17年度は69%と、供給熱量ベースに比べ緩やかな低下となっている。これは、国内生産が野菜、果実、畜産物といった比較的付加価値の高い品目の割合を高めてきたこと等を反映していると考えられる。

我が国の食料自給率(供給熱量ベース)は、主要先進国と比べて最低の水準にある(図1-36)。また、穀物自給率(重量ベース)は、我が国は世界173の国・地域のなかで124番目に位置し、経済協力開発機構(OECD)加盟国30か国のなかでも27番目(*2)と低い水準にある(14年)。

*1 現在の供給熱量ベースの食料自給率水準については、7割の国民が低いと認識している調査もある。(内閣府「食料の供給に関する特別世論調査」(18年12月公表)。P31の脚注2参照データ(エクセル:15KB)

*2 OECD加盟国のうち、ルクセンブルクのデータが不明なため、同国を順位に含めていない。

(長期的には、食生活の変化が食料自給率の低下に影響)

食料自給率(供給熱量ベース)の長期的な低下は、食生活が大きく変化し、供給熱量の品目構成が変化したため、国内生産では供給が困難な農産物の輸入が増加したことが影響している。

国民1人1日当たりの供給熱量を昭和40年度と40年後の17年度を比較すると、2,459kcalから2,573kcalへと4.6%の増加にとどまっているなかで、自給可能な米の割合が低下する一方、畜産物や油脂類の割合が上昇している(図1-37)。

消費のふえた畜産物の生産に必要な飼料穀物(とうもろこし等)や植物油脂の原料となる油糧種子(大豆等)の生産には広大な農地が必要となる。我が国の主な輸入農産物の生産に必要な農地は約1,200万haと試算され、我が国は国土条件の制約等からこのような広大な農地を国内で確保することは困難であるとともに、生産コストのうえからも国際競争上、不利な面があり、飼料穀物や油糧種子等の多くを海外に依存するようになった。

図1-37 供給熱量の構成の変化と品目別の食料自給率(供給熱量ベース)

(国内生産の減退も食料自給率の低下に影響)

一方、国内生産の減退も食料自給率(供給熱量ベース)の低下に影響している。

作付延べ面積の減少とともに、1人1日当たりの国産熱量は昭和40年度の1,799kcalから17年度には1,021kcal(*1)へと43%の減少となっている(図1-38)。この減少は、主に国産熱量の大半を占める米の生産が消費の減少に伴い減少してきたことによるが、食の外部化の進展等を背景とする外食・中食(なかしょく)(*2)産業の加工・業務用需要の高まりに、国内生産が十分対応しきれていないことも影響している。野菜、果実の国内生産は、主に家庭消費用に仕向けられており、加工・業務用需要への対応の遅れから生産が減少していることも考えられ、昭和60年ごろを境に国内消費の動向とかい離が拡大している状況にある(図1-39)。

*1 この熱量は6~7歳(男性)の基礎代謝量(生きていくために必要な最小のエネルギー代謝量)と同等の水準(厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2005年版)」)。

*2 [用語の解説]を参照。

(飼料自給率は近年ほぼ横ばいで推移)

畜産物の自給率(供給熱量ベース)は、飼料自給率の影響を受ける。これは、輸入飼料により生産された畜産物は自給しているとはいえないため、畜産物自体は国産であっても、計算上、国産熱量には算入しないことにしているためである。

飼料需要量の長期的な動向をみると、濃厚飼料(*1)の需要量は大幅に拡大しており、その多くは輸入に依存している(図1-40)。このことは、前述のとおり我が国の国土条件の制約等によるところが大きく、食料自給率低下の一因となっている。

一方、粗飼料(*2)の需要量は、昭和60年度以降おおむね横ばいで推移するなかで、一定程度輸入に依存している。これは、畜産経営において、自給粗飼料の生産による経営コストの引下げよりも、飼養規模の拡大による粗収益の増大を図る方が経営上有利であったこと等から、利便性が高く、労力負担の軽減にもつながる輸入粗飼料が利用される傾向にあることが影響しているものと考えられる。

こうしたなかで、17年度の飼料自給率は、粗飼料では76%、濃厚飼料では11%となっており、両者の総合では前年と同じ25%と近年ほぼ横ばいで推移している(図1-41)。

*1 とうもろこし、油かす、ぬか類等からなる飼料で、粗飼料に比べ栄養価が高く、炭水化物やたんぱく質を多く含んでいる。

*2 イネ科、マメ科の牧草類、わら類等からなる飼料で、濃厚飼料に比べ栄養価は低いものの、繊維質を多く含んでいる。

(飼料自給率の向上に向けた様々な取組)

最近の飼料の国際需給の動向を踏まえると、飼料自給率の向上が必要である。

粗飼料は国内で自給が可能であり、稲発酵粗飼料(*1)の生産拡大や、国産稲わらの飼料利用の促進等が重要である。また、濃厚飼料の自給率向上のためには、食品残さの飼料化(エコフィード)の取組が重要である。このほか、一部には飼料用米の生産の取組がみられ、主食用米の1.5~2倍相当の10アール当たり収量が800~1,000kg(試験ほ場での成績)に達する超多収品種が開発されているが、採算面からは、さらなる多収品種の開発等が必要である。

*1 稲の子実が完熟する前に、子実と茎葉を一体的に収穫・密封し、嫌気的条件のもとで発酵させた貯蔵飼料。

事例:飼料自給率の向上に向けた取組

(1)稲発酵粗飼料の生産の取組

稲発酵粗飼料用稲の収穫

滋賀県高島市

滋賀県高島市(たかしまし)の安曇川(あどがわ)飼料用イネ生産組合は、14年より耕種農家が水田転作作物として生産した稲発酵粗飼料を畜産農家へ供給している。稲発酵粗飼料は、耕種農家にとって稲の栽培技術や機械等をそのまま利用できるうえ、麦や大豆の生産に不向きな湿田でも栽培が容易な転作作物である。

18年度は15.5haで生産され、2千頭を超える牛に供給されており、今後、畜産農家のニーズに合った稲発酵粗飼料の生産に向けて、生産の安定化と高品質化を図り、より一層の供給拡大を図ろうと考えている。

(2)食品残さの飼料化に向けた取組

食品残さから生産された飼料

北海道札幌市

北海道札幌市(さっぽろし)では、リサイクルセンターの誘致を行い、10年より市内のレストラン、食品工場等から排出される食品残さの飼料化に取り組んでいる。

市内より回収されセンターに持ち込まれた食品残さは、悪臭等も防止する油温減圧脱水乾燥法(密閉空間で短時間による処理が可能な技術)により処理され、飼料化が行われている。

この飼料は、12年に法律に基づく公定規格に収載され、製品はトン当たり1万5千円程度で、主に苫小牧(とまこまい)市の飼料メーカーに販売されている。主に豚・鶏用配合飼料の原料として活用されている。

(3)飼料用米で豚を育てる取組

飼料用米のほ場

山形県遊佐町

山形県遊佐町(ゆざまち)では、農地の有効活用と保全、食料自給率向上の観点から、16年度から「飼料用米プロジェクト」を立ち上げ、農家、農協、大学、養豚事業者、NPO法人、生協等と連携して飼料用米で豚を育てる取組を実施している。

飼料用米は地元農家やNPO法人が町の借り上げた耕作放棄地を活用して生産している。収穫された飼料用米は近郊の養豚事業者へ販売され、とうもろこしの割合を50%から40%に減らした配合飼料に混入されている。豚肉は18年より生協を通じて販売されている。

飼料用米の販売価格は、主食用米の6分の1程度であり、直播栽培や豚尿(液肥)の活用等コスト縮減の取組が進められているものの、生産費の一部を国の補助金で補てんしている状況にある。このため、高収量、一層の低コスト栽培の実現が課題となっている。

(食料自給率の向上は食料安全保障の確保の観点から重要)

現在の我が国は、飽食ともいうべき豊かな食生活を享受するなかで、供給熱量ベースで6割を輸入に頼っている。しかも、その輸入は特定国への依存が高く、輸入先国の作柄や作付け等の変動による影響を受けやすい状況にある。また、BSEや高病原性鳥インフルエンザの発生に伴う輸入禁止措置といった様々な要因により、食料供給が変動する可能性がある。最近では、水産物の世界的な需要の高まりを背景とした買付け競争の激化や、米国でのとうもろこしのエタノール原料用需要の拡大に伴う国際価格の上昇の動きがみられるなど、今後の食料価格への影響が注目されている。

このような状況のもとで、世界的な人口増加、開発途上国の経済成長に伴う穀物等の需要増大、水資源の不足、地球温暖化の進行による地球環境の変化等により、世界の食料需給は中長期的にはひっ迫する可能性が指摘されている。

現在の食料自給率の水準は、今日の食生活を反映したものであり、直ちに不測の事態における国内農業の食料供給力の程度を示すものではない。しかしながら、食料自給率は、国内の農業生産が国民の食料消費をどの程度賄えているかについて評価するうえで有効な指標であり、その向上を図ることは、持続可能な国内生産を維持し、国民の生存に不可欠な食料を安定的に供給するという食料安全保障を確保するうえで重要である。

(不測時には最低限必要な熱量は確保できるものの、食事は大きく変化)

不測の事態が発生して食料輸入が途絶するなどの事態に陥ったときに、いも類等の熱量効率の高い作物への生産転換により、国内生産のみで昭和20年代後半に供給されていた熱量とほぼ同水準の国民1人1日当たり2,020kcalの熱量供給が可能であるとの試算結果がある(*1)。しかしながら、この水準は最低限必要な熱量を確保するものではあるが、食事の中身はいも類が増加し、牛乳・乳製品、肉類は減少するなど、現在とかけ離れたものとなる。

こうしたなかで、現在の食料自給率の水準を正しく認識している者は、22.5%との調査結果もあり、我が国の食料自給率の現状が正しく認識され、その向上の意義について理解が促進されるようにしていくことが重要である(図1-42)。

*1 27年度の食料自給率目標が達成された場合における農地面積(450万ha)、農業技術水準等のもとで、熱量効率を最大化した場合の国内農業生産による供給可能量である。トピックス1(P5)参照

(食料自給率目標は、国民参加型の取組の指針として重要な意義)

食料自給率目標を掲げることは、食料消費と農業生産の両面にわたる国民参加型の取組の指針として重要な意義を有している。このため、17年3月に策定された食料・農業・農村基本計画において、食料自給率目標が設定された。

同基本計画においては、基本的には食料として国民に供給される熱量の5割以上を国内生産で賄うことを目指しつつ、当面の実現可能性を考慮して、27年度の目標は供給熱量ベースで45%、生産額ベースで76%に設定された。

供給熱量ベースの食料自給率目標は、既に12年3月に策定された前回の基本計画においても45%(22年度)と設定されていたが、消費面で食生活の見直し等の必要性、生産面で主要品目ごとの生産性や品質等の向上に向けた課題が提示されていたものの、課題解決のためのテーマ設定や具体的な取組手法が明示されていなかった。

このため、食料自給率向上に向けて関係者の主体的かつ継続的な取組を喚起することができず、このことが十分な成果が得られなかった一因と考えられる。

(18年度の行動計画では、可能な限り定量的な目標を掲げて取組を推進)

17年の基本計画では、関係者の具体的な行動を呼び起こすため、政府、地方公共団体、農業者・農業団体、食品産業の事業者、消費者・消費者団体等の関係者からなる食料自給率向上協議会が設立され(17年4月)、関係者の具体的な取組内容やその取組目標を示した行動計画に基づく取組状況等について、定期的に点検・検証を行い、工程管理が実施されている。

17年度の行動計画では、食料消費面、農業生産面における各取組の目標が定量的に設定されているものがあまり多くなく、その効果について点検・検証を行いにくかったため、18年度の行動計画では可能な限り定量的な目標が掲げられた(表1-4)。

表1-4 「平成18年度食料自給率向上に向けた行動計画」で掲げられた主な取組目標

(健康維持につながる栄養バランスに優れた「日本型食生活」)

昭和50年代半ばには米を中心に栄養バランスに優れた「日本型食生活(*1)」が実現しており、このころの供給熱量ベースの食料自給率は52~54%と現在より高くなっている。

近年、食習慣の乱れや運動不足等による肥満や生活習慣病の増加がみられ、栄養バランスに優れた「日本型食生活」を実践することは、脂質の過剰摂取をおさえられるなど、健康維持につながるものと考えられる。

*1 P67を参照

(国産農産物の消費拡大は食料自給率向上に寄与)

国産農産物の消費拡大は、地域農業を応援するとともに、食料自給率の向上に寄与する。例えば、米の消費増が食料自給率に与える影響を試算したところ、ごはんを1食につきもう一口食べると、供給熱量ベースで1%向上することになる(表1-5)。

このように、食料自給率は国民一人ひとりの食生活によって変化する面もあり、日々の生活のなかで、食料自給率が身近なものとして認識されることが重要である。

(国産農産物の消費拡大は地球温暖化の抑制にも寄与)

また、国産農産物の消費拡大を通じて輸入が減少すれば、海上輸送に伴う温室効果ガス(二酸化炭素)排出量の削減にもつながることになる。食料輸入量に輸送距離を乗じた「フード・マイレージ」の概念に基づく試算によると、輸入に要した輸送に伴う二酸化炭素の排出量は、国内輸送の約2倍にのぼるとされる(図1-43)。

このように、国産農産物の消費拡大は、食料自給率の向上に加え、地球温暖化の抑制にも寄与すると考えられる。

(国内農業の食料供給力が強化されることが必要)

こうした取組を通じて国産農産物の消費拡大が進展すれば、消費者が国内農業を見直す契機となり、ひいては国内生産の増大を喚起することも期待される。その一方で生産者は、これまで以上に消費者・実需者ニーズに的確かつ積極的に対応していくことが求められる。

また、食料自給率目標の達成に向けて、平素から農地・農業用水等の農業資源の確保、農業の担い手の育成・確保、農業技術水準の向上等を図ることは、国内生産の増大や不測時における食料の安定供給の確保につながるものであり、これらの取組を通じて、国内農業の食料供給力が強化されていくことが必要である。

このように、自国の資源を有効利用して食料の安定供給を図ることは、世界の食料需給の安定にも寄与することになる。

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