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農林水産省

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(3)食料産業の取組

(食料産業は食の供給を担う重要産業)

食料産業は、農水産業をはじめとして、食品産業(食品製造業、食品流通業、外食産業)、これらに関連する資材供給産業、流通産業といった食にかかわるすべての産業によって構成される。

これらの産業は、それぞれ食料の生産・加工・流通等の機能を担っており、生産から消費に至る食料供給の連鎖体系を構築している。この体系の川上では農水産物の国内生産が12兆円であるのに対し、加工・外食等の段階を経るにつれて経済価値は高まり、川下となる飲食費の最終消費額としては80兆円の規模まで膨らんでいる(図1-64)(*1)。

*1 農水産物については、12兆円の国内生産のほかに、3兆円の輸入がある。

図1-64 食用農水産物の生産から飲食費の最終消費に至る流れ(12年)

(簡便性や安全性をはじめとするニーズの多様化に直面)

食料産業を取り巻く環境は変化を続けており、消費者ニーズも多様化している。例えば、飲食費の最終消費額の内訳をみると、食の外部化や簡便化を反映して、加工品と外食を合わせた割合は昭和55年に7割だったが、20年後の12年には8割と次第に上昇している。

また、食と農の距離が拡大し、農業生産の現場や食品流通の実態がみえにくくなったとの声があり、消費者の間では食品について健康・安全志向が強くなっている(*2)。

*2 農林漁業金融公庫「平成17年度第1回消費者動向等に関する調査(インターネットを利用した食料品の購入状況に関するアンケート調査)」(17年9月公表)データ(エクセル:15KB)

(縮小傾向が続いた国内の市場規模)

食料産業を構成する主な業種の出荷・販売額は、11年以降、バブル崩壊やデフレ等の影響が尾をひいて減少傾向が続いた。14年2月以降は景気全般が緩やかに回復しているため、近年は出荷・販売の減少率も鈍化しつつあるが、依然厳しい状況が続いている(図1-65)。

(輸入品との競合が激化)

こうした市場環境のなかで、生産から消費に至る食料供給の各段階で輸入品の流入が目立っている。近年は食料消費に占める加工品と外食の割合が高まっているが、例えば、野菜については、多くの品目で加工・業務用仕向けの輸入割合が増加傾向にある(図1-66)。輸入品の方が割安であることや、大量かつ均質の農産物を安定的に調達したいとのニーズから、実需者が国外の産地から農産物を仕入れるようになっている。

(ニーズの多様化をはじめとする環境変化への対応が課題)

人口が減少局面にあるなか、今後、食料産業の市場規模は縮小を続けるおそれがある。この結果、限られた市場において、輸入品との競合も一層激しくなると見込まれる。加えて、最近では、水産物の世界的な需要の高まりを背景とした国際価格の上昇がみられるなど、原材料調達競争の激化も表面化している。今後、食料産業が安定的な食料供給を担っていくためには、これらの環境変化に対応していくことが不可欠であり、企業のなかには、業務・資本提携や経営統合により、この環境変化を乗り越えようとする動きもみられる。

(革新的な技術やノウハウを導入して、多様なニーズに対応する動き)

このようななか、国内の農家のなかには、食品製造業や外食産業のニーズに合わせて、栽培法や品質、出荷時期等の調整を行ったり、農産物を加工して出荷したりするところが現れている。実需者の間でも、国内の特定農家から食材を調達することによって、生産者の顔がみえる安心感を重視する消費者に訴求する動きがある。

最近の注目点としては、新興企業が革新的な生産技術や経営ノウハウを導入し、農産物の生産・販売に取り組むいわゆる農業ベンチャーの事例がある。これらの事例では、情報技術(IT)やバイオ技術等を駆使して、消費者や実需者からの多様なニーズを満たすことに成功している。

事例:農業ベンチャーの取組

(1)有機野菜をインターネット上で販売し、多様な消費者ニーズに対応

ホームページ上で販売される野菜

東京都品川区(しながわく)の企業は、国内で千戸の農家と契約を結び、インターネット上で有機野菜を販売している。ITを用いることで、直販体制を構築して流通コストを削減するだけでなく、顧客の感想を電子メールで吸い上げるなど、ニーズの把握にも役立てている。寄せられた感想は契約農家にも還元され、付加価値の高い野菜作りの参考として活用される。また、妊婦や小さな子どものいる顧客を対象に専用の販売ホームページを開設するなど、顧客の属性に応じたきめ細かいサービスも展開している。この企業の取組は30代の女性を中心に評判となっており、売上も13年3月期の8千万円から18年3月期は26億8千万円へと拡大している。

(2)バイオ技術で夏秋いちごを開発し、業務用いちごの周年供給を実現

培養室で育成されるいちごの苗

北海道東神楽町

北海道東神楽町(ひがしかぐらちょう)の企業は、夏秋期に収穫可能ないちごの新品種を開発し、組織培養の技術を用いて増殖育成した種苗を契約農家に販売している。果実に関しては、農家が収穫する果実を買い戻す仕組みを確立し、菓子メーカーや製パン会社等に業務用として販売している。

従来は、国産いちごは夏場に端境期を迎えるのが一般的であったため、1年を通じて一定の数量と品質が求められる業務用いちご市場では、夏場は米国産等の輸入品の独壇場となっていた。これに対し、この企業のいちごは夏場に安定して供給され、しかも日本人好みの甘さがあることから、夏場の業務用いちご市場において1割のシェアを奪うヒット商品となっている。

(食品廃棄物の再生利用等の現状は業種ごとにばらつき)

食品産業から発生する食品廃棄物については、17年度で発生量が約1千100万トンとなっており、発生抑制が進んでいるとは言い難い状況にある(図1-67)。その一方、食品廃棄物等の肥料や飼料等への再生利用等実施率は、食品産業全体として17年度に52%まで上昇しており、一定の成果が認められる。しかし、食品産業を構成する業種ごとにみると実施率にばらつきがあり、食品製造業では80%を超えるのに対し、外食産業では20%程度にとどまっている。

今後、食品廃棄物の発生を着実に抑制するとともに、取組が進んでいない業種の再生利用等実施率も向上させる必要がある。外食産業の一部では、食品廃棄物の流通を見直し、効率的なリサイクルに取り組んでいる事例もみられ、このような取組を広げていくことが重要である。

事例:外食産業における食品廃棄物の効率的な再生利用の取組

外食産業の場合、食品廃棄物が店舗ごとに少量で発生するという特徴があり、食品廃棄物の効率的な再生利用が困難となっている。そこで、外食産業の業界団体である(社)日本フードサービス協会では、食品廃棄物をたい肥にリサイクルするうえで、店舗ごとに異なっていた食品廃棄物収集業者を集約して効率化する先進的な事業に茨城県南西部で取り組んでいる。

(我が国の食品産業においても国際化が重要)

我が国の食品産業は、海外への展開が欧米の食品産業に比べて遅れている。世界各国の主要な食品製造企業の地域別売上構成をみると、欧米の代表的な企業には国外販売の割合が10%を超えるものが多く、なかには80%以上の企業もある。これに対し、国内の代表的企業の海外売上比率はほとんどが10%未満で、例外的に20%台の企業がみられるにすぎない(16年)(*1)。また、欧米の代表的企業は売上高純利益率もおおむね10%前後の範囲にあり、国内の代表的企業の約1~5%を上回っている。

今後、我が国では高齢化が進展し、人口が減少局面にある一方で、国内市場の成熟化、原材料調達競争の激化も見込まれるため、食品産業がもっぱら国内市場に依存したままでは、経営基盤は弱体化し、食料の安定供給機能にも支障が生じるおそれがある。また、国産農水産物の3分の1は加工品・外食向けに出荷されていることから(*2)、我が国の食品産業の経営基盤の弱体化は、国内農業に対してもマイナスの影響を及ぼすと考えられる。

*1 国内企業については各社有価証券報告書により、海外企業については各社決算資料を基に農林水産省で算出。データ(エクセル:20KB)

*2 図1-64参照

(海外への投資を促進する東アジア食品産業共同体構想)

我が国に隣接する東アジアの各国は高い経済成長を続け、我が国とは共通の食文化を有する。こうした魅力的な市場に着目して、政府は、東アジア食品産業共同体構想を18年に「21世紀新農政2006」のなかで打ち出し、食品産業の海外投資を促進している。

本構想のねらいは、東アジアの活力を活かして食品産業の経営体質と国際競争力を強化し、ひいては輸出市場を開拓することにある(図1-68)。具体的な目標としては、中国・韓国・東南アジア諸国連合(ASEAN)を基本に、食品産業の現地法人売上を5年で3~5割引き上げることとされている。この目標を実現するため、海外投資の決定に際して必要な現地情報の収集や、知的財産権・ブランドの保護、相手国政府に対する投資阻害要因となる制度の改善の働きかけを推進していくことが求められている。

図1-68 東アジア食品産業共同体構想の基本的考え方

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