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農林水産省

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(2)耕作放棄地の動向と担い手への農地利用集積の促進

(減少する耕地面積)

我が国の耕地面積は、長期的に減少傾向が続いており、18年は467万haとなった。かい廃面積は7年以降減少傾向にあるが、耕作放棄が非農業用途への転用を上回って推移しており、耕作放棄が耕地面積減少の大きな要因となっている(*1)。

米の生産調整による不作付け地の増加や労働力事情等により、作付延べ面積は長期的に減少傾向にあり、耕地利用率(*2)は、12年以降はほぼ横ばい傾向で推移している(図2-28)。

*1 農林水産省「耕地及び作付面積統計」データ(エクセル:17KB)

*2 耕地利用率=作付延べ面積/耕地面積×100

(増加する耕作放棄地)

17年の耕作放棄地面積は、12年より4万3千ha(13%)増加し38万6千haとなった。増加率は近年鈍化しているものの、1年当たりJR山手線内側の面積の1.4倍の耕作放棄地(*3)が増加したことになる(*4)。また、耕作放棄地面積は琵琶湖の面積の5.7倍、耕地面積の8%にまで達している。

農家等の区分別にみると、近年は、販売農家の耕作放棄地面積が減少している一方、土地持ち非農家(*5)や自給的農家の耕作放棄地面積が大きく増加している(図2-29)。

*3 [用語の解説]を参照。

*4 耕作放棄地面積を長さに例えると、歩道のある片側1車線の道路(幅10メートル)で地球から月までの長さになる。データ(エクセル:15KB)

*5 農家以外で、耕地及び耕作放棄地を5アール以上所有している世帯のこと。

(耕作放棄地をもつ土地持ち非農家や自給的農家の増加)

販売農家戸数が減少し続けているのに対し、土地持ち非農家戸数は増加し続けており、17年には、販売農家戸数の6割の120万戸(12年より9.5%増)にまで達している(*1)。土地持ち非農家のうち耕作放棄地をもつのは46.1%であり、販売農家の26.3%よりも大幅に高く、土地持ち非農家の耕作放棄地面積は販売農家の耕作放棄地面積を上回っている。

また、自給的農家戸数も増加し続けており、17年には88万戸(12年より12.9%増)となり、耕作放棄地をもつ割合も上昇して35.2%となっている。

*1 農林水産省「農林業センサス」データ(エクセル:16KB)データ(エクセル:16KB)

(担い手へ貸し付けるなど耕作の継続が重要)

土地持ち非農家では、貸付面積が耕作放棄地面積よりも増加しているものの、耕作放棄地も増加しており、自給的農家では所有農地のうち耕作放棄する割合が増加している(図2-30)。土地持ち非農家や自給的農家が所有する農地については、担い手へ貸し付けるか自ら耕作するなど、耕作の継続が重要である。

(中山間地域で多い耕作放棄地)

耕作放棄地面積は、農業地域類型別では中間農業地域に最も多く、耕地面積に対する割合では山間農業地域が最も高い(図2-31)。

耕作放棄地の発生原因に関する市町村へのアンケートによると、耕作者の高齢化や後継ぎ不在による労働力不足が多くあげられている(*2)。また、中山間地域では生産性が低いこと、都市的地域では相続による農地の分散化をあげる割合が高くなっている。

*2 (財)農政調査委員会「農業振興地域・農地制度等の実態把握及び効果分析に関する調査結果」(16年3月公表)。全国の市町村3,170を対象として実施したアンケート調査(回収率67.4%)。データ(エクセル:17KB)

(担い手への農地利用集積による耕作放棄地の解消が重要)

17年に改正された農業経営基盤強化促進法のもと、農業委員会が確認した現況等を踏まえて農地として活用すべき耕作放棄地を市町村基本構想で定めたうえで、耕作放棄地の所有者への指導や担い手への農地集積、その他農地としての利用の増進を図るための施策が実施されている。18年4月には、地域における耕作放棄地の解消・発生防止に向けた諸活動を支援するために「耕作放棄地対策推進の手引き」が作成され、施策の周知・徹底が図られている。

引き続き、担い手への農地利用集積のための支援策や中山間地域等直接支払制度等の積極的な推進により、将来にわたって農地の適切な農業利用を図っていくことが重要である。

事例:耕作放棄地を解消した地域における様々な取組

(1)農業委員の積極的な指導により耕作放棄地を解消した取組

耕作放棄地を解消した農地

兵庫県加西市

兵庫県加西市(かさいし)の農業委員会は、農地パトロールで独自調査を行ったところ、耕作放棄地の大部分が集落営農組織や大規模農家の存在しない地域にあると判明した。

このため、地域水田農業ビジョンに基づいて担い手の育成を推進すると同時に耕作放棄地解消の必要性を認識し、独自調査による耕作放棄地一覧データを作成し、それをもとに所有者への意向調査を実施した。その調査結果をもとに、農業委員が積極的に指導したところ、担い手による作付けや所有者の保全管理により、3.6haの耕作放棄地を解消することが可能となった。

(2)企業の新規参入により大規模に耕作放棄地を解消した取組

耕作放棄地を解消してかんしょ栽培する農地

鹿児島県阿久根市

鹿児島県阿久根市(あくねし)のでん粉・練り製品製造業者は、原料にでん粉用かんしょを使用していたが、焼酎ブームによって不足したため、構造改革特区を活用して、自らかんしょ等の生産を開始した。18年10月現在では13haまで耕地面積を拡大させており、1社で東京ドーム2.8個分の耕作放棄地を解消した。さらに、季節雇用だった工場従業員が年間雇用となり、地域活性化にも貢献している。

(3)基盤整備によって耕作放棄地を解消した取組

事業実施後

事業実施前

群馬県嬬恋村

群馬県嬬恋村(つまごいむら)は、夏秋キャベツを中心とした高原野菜栽培が盛んだが、ほ場への農道が未整備で機械化営農が図れず、耕作放棄が進行している地域があったため、農地環境整備事業を導入した。

これによって生産区域における3.8haの耕作放棄地で野菜等の営農が再開され、保全管理区域における3.2haの耕作放棄地を植樹するなど農地保全に利活用している。

(担い手への農地利用集積は進んでいるもののさらなる加速化が必要)

農地の権利移動は、賃借権等の利用権(*1)の設定が件数・面積ともに増加し、所有権移転より大きな割合を占めている(*2)。農業経営基盤強化促進法に基づく賃借権の設定は、17年には全国で19万6千件、10万8千haとなり、5年前よりそれぞれ12.0%、19.2%増加した。

これを経営耕地面積規模別にみると、大きい階層ほど設定面積が大きく、小さい階層ほど貸し手としての設定面積が大きくなっている(図2-32)。また、認定農業者等の担い手が経営する耕地面積は17年度末で181万haと、全耕地面積の4割にとどまっており、「農業構造の展望」で見込む7~8割程度に向けて、農地利用集積のさらなる加速化が必要である(*3)。

*1 [用語の解説]を参照。

*2 農林水産省「土地管理情報収集分析調査」データ(エクセル:15KB)データ(エクセル:16KB)

*3 農林水産省調べ。データ(エクセル:16KB)

(借り手の不在や営農意欲減退が担い手への農地利用集積の阻害要因)

市町村に対する調査では、土地利用の問題として、耕作放棄の次に虫食い的な開発があげられ(*4)、担い手への面的にまとまりのある形での農地利用集積を阻害していると考えられる。

また、担い手への農地利用集積の阻害要因として、農地の貸し手は、借り手の不在や自分ができる限り作業を続けたい意向、資産として保有したい意向を、借り手は、農産物価格低下による営農意欲の減退やほ場条件の悪さを多くあげている。

*4 (財)農政調査委員会「農業振興地域・農地制度等の実態把握及び効果分析に関する調査結果」(16年3月公表)。P102の脚注2を参照データ(エクセル:15KB)

(農地政策の再構築に向けた検討が必要)

担い手を育成・確保し、その経営の安定を図るためには、農地の利用集積、特に面的にまとまった形での集積を加速化することが重要であり、優良農地の確保、耕作放棄地の発生防止といった課題に対処するためにも、農地政策の再構築に向けた検討が必要である。

(大幅に増加している一般の株式会社の農業参入)

構造改革特区(*1)を活用した、農業生産法人以外の一般の株式会社や特定非営利活動法人(NPO法人(*2))等への農地の貸付けや、市民農園開設主体の拡大、農地取得の下限面積要件の緩和等については、17年9月から全国展開された。

このうち、一般の株式会社等による利用権の設定は、19年3月現在、農業生産法人以外の農業への参入法人は206法人となっており、16年10月と比べ2.9倍と大幅に増加している(*3)。参入法人の組織形態としては株式会社が最も多く、業種では建設業、食品会社が多くなっている(図2-33)。余剰労働力を活用したい地元の建設業者や、品質の高い原料の安定確保を図る食品産業事業者等が野菜や米麦の生産に取り組んでいる。

*1 地方公共団体等の自発的な立案により規制の特例を特定の区域に設けることで構造改革の推進を図る制度。

*2 [用語の解説]を参照。

*3 農林水産省調べ。データ(エクセル:15KB)

事例:一般の株式会社の農業への参入

(1)建設業者が参入し地元雇用の確保に寄与している取組

建設業者による畑造成

長野県大鹿村

長野県大鹿村(おおしかむら)は、高齢化と担い手不足により、耕作放棄地が増大し、また、公共事業の減少等から地元の建設業者にとっては従業員の就労の場の確保が課題であった。

そこで村内の建設業者4社は、経営の多角化と地域の活性化を図るため、地元観光産業と連携しつつ、15年から構造改革特区により耕作放棄地1.6haを含む2.7haを借り受け、普及指導員の指導のもと、特産品のブルーベリー等の生産を開始した。現在は厳しい獣害があり、また、農作業に不慣れであるが、雇用の確保や担い手のいない農地の有効利用に寄与している。

(2)そう菜製造業者が農業参入し環境保全型農業を推進する取組

そう菜店舗での表示

静岡県浜松市

静岡県浜松市(はままつし)は、環境保全型農業、都市との共生による地産地消の促進等に取り組んでいるが、農業従事者の高齢化により耕作放棄地が増加するなど課題が山積していた。そこで、有機農産物を使用するそう菜業者が自ら有機栽培を行うため、構造改革特区により2.8haの農地を借り入れて野菜を生産し、環境保全型農業の推進に貢献している。

(農業参入した法人は耕作放棄地解消に貢献)

農業へ参入した法人が借り入れている農地は、19年3月には、16年10月と比べて5倍の596haとなり、その6割は耕作放棄地やそのおそれのある農地であり、耕作放棄地の解消・発生防止に貢献している(*1)。各法人の借入面積は、野菜栽培に取り組む法人が多いことなどから、1ha未満が過半を占めているが、なかには1法人で借入面積が20ha以上の法人もみられる。また、過半は経営規模拡大の意向があり、その4割は10ha以上を目指している(図2-34)。

*1 農林水産省「農業生産法人以外の法人の農業参入の状況」(19年4月公表)データ(エクセル:15KB)

(農外法人の農業参入促進には希望にあった農地の確保が重要)

農外から法人が農業に新規参入する際の苦労・困難として、参入した法人、市町村ともに農地に関する問題をあげている(図2-35)。

今後、農地の効率利用を図るため、希望にあった農地を確保し、参入しようとする法人に提供していくことが重要である。

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