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農林水産省

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第3節 食料供給コスト縮減に向けた取組

(コスト縮減による農業の体質強化が重要)

我が国農業の体質を強化するためには、食料の生産から流通にわたる諸問題を解決し、食料供給コストの縮減を図ることが重要である。

食料供給コストの縮減は、小売価格の低下や付加価値の高い商品の提供等を通して消費者の利益につながるばかりか、生産者や食品産業事業者にとっても輸入品に対する競争力を高めることになる。また、コスト縮減による利潤の増加を投資に振り向けることで、多様なニーズに対応した事業の展開も期待できる。

(5年で2割のコスト縮減を目指し、取りまとめられたアクションプラン)

政府は、18年4月の「21世紀新農政2006」のなかで、食料供給コストを5年で2割縮減する目標を掲げた。これを受けて、同年9月には「食料供給コスト縮減アクションプラン」(アクションプラン)が取りまとめられ、加工用原料を含む生鮮品の生産・流通段階を対象に重点的な取組項目が提示された(図2-54)。

なお、19年4月にはアクションプランの見直しを行い、加工食品と水産物のコスト縮減の取組、コスト縮減の検証方法等を加える改定を行った。

図2-54 食料供給コストの構成とアクションプランの関係

(生産コストの構成は、生産資材費が2~3割で、労働費は3~5割)

農業の生産コスト構成をみると、水稲やキャベツ等の露地野菜の場合、肥料、農薬、農機具といった生産資材費が全体の2~3割で、労働費が3~5割を占める(図2-55)。

このうち、生産資材費の縮減については、資材の製造・流通団体等が「農業生産資材費低減のための行動計画」を策定し(8年度策定、13年度改定)、その実行が進められてきた。最近の価格は農薬と農機具で年々低下しているが、肥料はむしろ上昇しており、原油等の原料・燃料や海上運賃の高騰を反映して17年には特に高まった(図2-56)。

このように、生産資材費は国際市場における原料価格等の変動にもさらされており、企業努力だけでは解決し難い部分があることには留意が必要である。

(アクションプランにおける生産コスト縮減の取組)

アクションプランにおいては、品目ごとのコスト構成に応じた多様な取組を推進するとされた。生産資材費の縮減については、製造段階では低価格資材の供給を拡大することとされている(図2-57)。流通段階では広域をカバーする配送拠点の整備や、工場から産地への直送体系の構築等の合理化を図り、利用段階では、土壌診断に基づく適正施肥、防除暦の見直しによる農薬使用の合理化、担い手への作業集積による農業機械の稼働面積の拡大といった各種の取組を図ることとされている。

また、資材費以外の生産コストの縮減についても、新たな生産技術・品種の導入に取り組むことにより、労働時間の短縮とともに、品質や単収の向上を図ることとされている。

(モデル事業による効率的な資材利用体系の確立)

農林水産省では、18年度から3か年の予定で生産資材費縮減のモデル事業を実施している。この事業では、農業機械の稼働面積の拡大や、肥料、農薬の低投入化に資する新技術を導入するとともに、肥料を袋詰めせずにバラの状態、または大型の袋(フレコン)詰めの状態で大量一括受入れを行うなど、生産資材の合理的利用体系の確立を図ることとされている。最終的には、モデル地区において稲作の農業機械、肥料、農薬の費用総額の15%削減を目指すこととされている。

(経営規模拡大、技術開発による生産コストの縮減もアクションプランの重点項目)

生産コストの縮減には、これらの取組とあわせて、経営規模の拡大や省力化技術の開発を進めることが必要である。この一環として、19年産からの品目横断的経営安定対策の導入等により、担い手への農地利用集積を促進していくこととされている。

今後は、一層のコスト縮減に向けて、担い手への面的なまとまりのある形での農地利用集積に対して支援を進めるとともに、農地の効率的利用のため、農業経営に意欲的な企業等の新規参入を促進する必要がある。

(小売価格のうち米で3割、キャベツで5割を占める流通コストの縮減が重要)

生鮮品小売価格の内訳をみると、集出荷経費、卸売経費、小売経費等の流通コストは、米の場合で3割、青果物(キャベツ)の場合で5割を占めている(図2-58)。

こうした流通コストは、個々の小売では十分果たすことのできない機能である、多品種の生鮮品の集分荷に要するコストを含むものである。今後、国内の生産者や流通業者の体質強化を図っていくためには、青果・水産物流通の6~7割を扱っている卸売市場の流通をはじめ、物流全般にわたってより一層のコスト縮減が重要となっている(図2-59)。

(一層効率的な卸売市場流通の実現)

卸売市場は、生産者に対する販路の提供や、透明性の高い価格形成機能をはじめとする様々な役割を担っており、今後とも、生鮮食料品流通において重要な役割を果たすものと考えられる。したがって、流通コストの縮減に当たっては、市場流通における効率的な流通システムの構築に向けた改革の着実な推進が必要である。

このため、アクションプランにおいては、改正卸売市場法や同法に基づく第8次卸売市場整備基本方針に即し、卸売市場の再編・合理化、産地から小売業者へのダイレクト物流(商物分離電子商取引)導入市場の拡大、卸売市場管理運営への民間活力の導入等を推進し、一層効率的な卸売市場流通の実現を図ることとされている。

(物流全般の効率化等の取組を推進)

アクションプランにおいては、民間分野の努力だけでは進めにくい物流効率化の取組や、集出荷段階の取組等、流通コストの縮減に総合的に取り組むこととされている。

物流全般については、通い容器の普及、電子タグ(荷札)をはじめとする情報技術(IT)の活用、インターチェンジ近隣等への物流拠点の再編、配送の共同化等を推進し、燃料費の縮減を含む一層の効率化が必要である。また、集出荷段階では、段ボール箱を安価な茶色箱のまま流通させること、実需者ニーズに応じた規格での野菜の調製・出荷、産地の出荷規模の拡大といった様々な取組を推進することとされている。

事例:電子タグを活用した卸売市場の物流コスト縮減

東京都大田区の大田市場

物流管理効率化新技術確立事業の一環として、市場流通を電子タグによって効率化する実験が行われている。卸売市場には大量の生鮮品が入荷し、多数の卸・仲卸業者が取引に参加している。しかし、これらの業者には零細なところが多く、情報化も立ち遅れているため、市場流通は多大な人手を要する状況に留まっている。こうしたなか、無線通信によるデータの瞬時読み取りが可能な電子タグを市場流通の効率化に活用することが期待されている。

実際に東京都大田区(おおたく)の大田市場で電子タグの実証実験を行ったところ、卸売市場における青果物の流通に関して、検品や分荷等の作業時間が3割削減できることが確認された。その一方で、電子タグの読み取り精度の向上といった課題も浮き彫りになった。

こうした課題を踏まえて、電子タグの最適な取り付け位置を検証するなど、読み取り精度の向上に向けて実験を続ける予定である。これと並行して、生鮮品流通における電子タグの実用化を目指して、電子タグのコストを下げるプロジェクトも関係各機関によって進められている。

(生産資材の供給や農産物の販売において農協は大きな役割)

農協は、組合員である農業者の相互扶助を目的とする民間協同組織として、経済事業や信用事業、共済事業、指導事業を展開している。このうち、経済事業としては、生産資材等をメーカーから一括購入して組合員に供給する購買事業と、組合員の農産物を市場等に集出荷する販売事業を行っている。

農協の事業を農家が利用するか否かは任意であるものの、実際には農家が農協に依存する部分が大きい。農協を介した農家への生産資材供給シェアは化学肥料で9割、農薬と農業機械で6割と過半を占める。また、農産物販売における農協の利用率は米と野菜で5割にのぼっている(*1)。

*1 資材購買は14年度時点(農林水産省調べ)、農産物販売は米が16年度、野菜が15年度時点(全国農業協同組合連合会調べ)。データ(エクセル:17KB)

(農協の経済事業改革は立遅れ、組合員の満足度は低下)

農協の経済事業を改革すれば、生産資材コストや農産物の流通コストも縮減できると考えられる。実際に、農協は組合員への利益還元の目的で経済事業の改革を進めており、8年から12年までは「生産資材費用低減運動」として低コスト資材の普及拡大等に取り組み、その後も、類似の運動を2次、3次と続けてきた。

しかし、一連の改革を経た後でも、購買事業に対する組合員の満足度は17年度から18年度にかけてむしろ低下している(図2-60)。

(全農の改善計画による抜本的な経済事業改革)

経済事業の全国組織である全国農業協同組合連合会(全農)は、農林水産省の業務改善命令に基づき、17年12月に改善計画を策定した。全農は改善計画を新生プランと位置付け、生産資材手数料の引下げや米の流通コスト削減等、抜本的な経済事業改革に取り組んでいる。

改善計画の進捗状況は、四半期ごとに報告されることになっており、農林水産省では、アクションプランの一環としても継続的に監視、指導を行っている。18年12月末現在の進捗状況の報告では、コスト縮減に関する取組として、生産資材手数料や米の流通コストの削減等の到達点が示されている(表2-11)。

このように、一部については改革が進んでいる取組がみられるものの、全体としては改革の成果が農業者、特に担い手に実感されるには至っていないのが現状である。今後、農協等の現場段階と一体となって、改善計画の実行を徹底していくことが課題である。

表2-11 全農の改善計画の進捗状況(コスト縮減に関する主な取組、18年12月末現在)

(アクションプランの成果を高めるため、PDCAの仕組みを導入)

アクションプランの推進に当たっては、「計画(Plan)→実行(Do)→点検(Check)→改善(Act)」というPDCAの仕組みが導入されている。すなわち、アクションプランに基づくコスト縮減に向けた取組を5年間にわたって進めていくとともに、各年度末には1年間の実施状況・成果を点検し、必要に応じてアクションプランの見直し、充実を図っていくこととされている。

このようなサイクルを繰り返すことにより、5年で2割のコスト縮減という意欲的な目標に向けた取組を着実に推進していくこととされている。

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