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農林水産省

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(1)付加価値の向上や知的財産の創造・保護・活用の取組 イ 知的財産の創造・保護・活用の取組

(イノベーションの力を活用した競争力強化の取組)

既存の産業や社会に新しい分野や構造を生み出すイノベーションの力を活用し、我が国農業や食品産業の活性化を図ることが重要である。

近年、全国の産地では、機能性成分を有した様々な農作物の栽培や商品開発が行われている(表2-12)。こうした新食品や植物・昆虫由来の化粧品用素材、高機能繊維等の新素材の市場規模は、現在約200億円となっているが、22年度には700億円程度に拡大することを目標に、新食品や新素材の開発・商品化等を担う産地形成の促進に取り組むこととされている。こうした新食品の開発・商品化にあたっては、消費者保護の観点から、安全の確保や関連法令の遵守等が必要である。

このほか、リモートセンシング等のIT、直播や不耕起といった栽培技術、病害抵抗性を有した新品種等を活用した農業生産技術等を確立し、国内農業の競争力強化を図ることとされている。

表2-12 機能性成分を多く含む農作物品種の例

事例:機能性農産物の生産・商品化の取組

種子島ゴールド

鹿児島県西之表市

鹿児島県西之表市(にしのおもてし)の「さつまいも一町歩会」では、肝機能改善作用の効果が期待されるアントシアニンを多く含んだ品種である「種子島ゴールド」の生産・販売に取り組んでいる。2年に種子島で発生したさつまいもの重要害虫であるアリモドキゾウムシが10年に根絶され島外への移出が可能になったことや、「種子島ゴールド」等の新品種が開発されたことから、競争力のある産地づくりに向けた取組が活発化している。

JA種子屋久では種子島ゴールドを焼き芋に加工し、商品化を図っており、人気を博している。

事例:ITを活用した農業生産

ほ場でのデータ入力の様子

宮崎県都城市

宮崎県都城市(みやこのじょうし)の有限会社では、ITを活用した農業生産・経営管理を行っている。同社では87ha(阿蘇農場を含む)に及ぶ直営農場のすべてのほ場ごとに栽培履歴や作業履歴の記録を行っており、作業が終わるとその場で携帯型のコンピュータ端末からデータ入力を行っている。

この取組により、ほ場ごとの原価計算が可能となったほか、生産履歴の分析により農作業の改善や品質管理の徹底につながっている。また、生産履歴情報を消費者へ開示するシステムとしても活用されており、消費者からの信用・信頼を得る結果ともなっている。

(知的財産に関する施策を戦略的・総合的に推進)

我が国の農林水産物・食品は、農林水産業・食品産業関係者の努力や技術、伝統・文化といった貴重な知的財産により成り立っており、他国に類をみない特質・強さを有している。このような知的財産を適切に保護しながら活用し、国際競争力強化や収益性向上につなげることが重要である。

このため、18年2月に「農林水産省知的財産戦略本部」が設置され、19年3月に、知的財産に関する総合的な戦略として「農林水産省知的財産戦略」が策定された。同戦略において、植物新品種の保護強化、遺伝子特許の活用をはじめとした家畜の遺伝資源の保護・活用、特許等の技術移転による新需要の創造といった、知的財産の創造・保護・活用のための施策の戦略的・総合的な推進を図ることとされ、例えば地域ブランド化の取組に対する支援や「日本ブランド」確立の手法のひとつとして和牛の統一マークの策定といった具体的な施策が取りまとめられた(図2-64)。

図2-64 知的財産の戦略的な創造・保護・活用

(知的財産権の取得及び利活用の促進)

農林水産省関係試験研究機関による、食品の機能性解明や農林水産物の新品種の開発等の特許・品種登録等の出願を促進し、知的財産権を積極的に取得するとともに、これらの知的財産権を民間企業に技術移転し実用化・商品化を促進するため、技術移転機関(農林水産大臣認定TLO(*1))の活動体制の強化に向けた支援が行われている。

*1 TLO:Technology Licensing Organization

(育成者権の侵害に対する対応の強化)

近年、アジア諸国等への種苗の違法な持ち出しや、その収穫物の違法輸入等の我が国の育成者権の侵害事例が顕在化している(表2-13)。

こうしたことから、我が国の植物新品種の育成者権の保護を図るため、関係法律の改正により取締りが強化されるとともに、国内外での育成者権の取得促進、品種保護Gメンの設置やDNA品種識別技術の開発・活用への支援等が行われている。

また、育成者権侵害に対し、より有効で使いやすい制度への見直し等について検討が行われ、育成者権の保護の強化や活用の促進に関する総合戦略が策定されており、その着実な推進が重要となっている。

表2-13 植物新品種にかかる法体系の整備と育成者権の侵害事例

(アジア諸国へ品種保護制度の整備を働きかけ)

植物新品種は、「植物の新品種の保護に関する国際条約」(UPOV(ユポフ)条約)により国際的に保護されているが、アジアにおいて同条約を締結している国は、日本、中国、韓国、シンガポール、ベトナムのみであり、また、日本以外の国では全植物を保護の対象としていない状況となっている(表2-14)。

このため、EPA交渉等の様々な場面において、アジア諸国に対し、品種保護制度の整備、保護対象植物の拡大と運用の改善等を強く働きかけるとともに、アジア地域植物品種保護制度総合支援事業として品種保護制度に関する説明セミナーを実施するなど、品種保護制度の整備・拡充の取組が行われている。加えて、我が国の育成者においても権利侵害への対応として海外における育成者権の積極的な取得が重要となっている。

表2-14 主要なアジア諸国の品種保護の状況

(畜産における知的財産保護を検討)

畜産においては、過去に我が国から輸出された和牛精液等を利用して生産された外国産の子牛や牛肉が輸入され流通するなど、我が国の畜産に影響を与えかねない状況となっている。しかしながら、家畜には植物のような国際条約がなく、また、精液の段階では形質が未確定で、さらに精液だけでは産子の能力は不明であり、同じ能力の牛を増殖することはできないことから、植物新品種と同様の育成者権の設定は困難な状況となっている。

このため、家畜の遺伝資源の保護・活用を図るため、和牛に特有な遺伝子に関する特許の取得促進や「和牛」表示の厳格化を図るための表示要件の明確化等の取組が行われている。

(地域ブランド化によって訴求力を高めることが重要)

国内の各産地では、輸入農産物・食品を含めた他地域の農産物・食品といかに差別化を図り、消費者の購入意欲を喚起していくかが課題となっており、地域ブランドの確立によって消費者への訴求力を高めることが重要である。こうした認識を踏まえ、生産者団体等による地域ブランド化の取組や各都道府県における地域ブランド認証制度、地域ブランド育成事業といった取組が行われている。

地域ブランド化の取組を成功させるためには、農産物・食品の品質を保証し、地域の魅力と農産物・食品が互いに好影響をもたらしながら消費者から高い評価を得ていくことが必要であり、その実現に向けた取組を行うことが重要である。

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