このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

(2)バイオマスの利用の加速化と地球環境対策

(バイオマスの利活用は農林水産業の新たな領域を開拓)

バイオマスは、太陽のエネルギー等から生物が作り出す有機性資源で、エネルギーや工業製品に利用可能である。また、バイオマスを燃焼する際に放出される二酸化炭素は、生物の成長過程で大気から吸収されたものであるため、バイオマスには大気中の二酸化炭素を増加させない「カーボンニュートラル(*1)」と呼ばれる性質がある。

このため、バイオマスの利活用は、地球温暖化防止や循環型社会の形成という視点に加え、従来の食料等の生産の枠を超えて、耕作放棄地の活用を通じて食料安全保障にも資するなど、農林水産業の新たな領域を開拓するものである。

*1 [用語の解説]を参照。

(未利用バイオマス利用は停滞)

バイオマスは主に、家畜排せつ物や食品廃棄物をはじめとした「廃棄物系バイオマス」、稲わら、籾(もみ)がらといった農作物非食用部や間伐材、台風で倒れた被害木等の林地残材といった「未利用バイオマス」、エネルギーや製品向けの作物として生産される「資源作物」に分類される(表2-15)。2002年12月のバイオマス・ニッポン総合戦略策定後、廃棄物系バイオマスの利用率は着実に向上しているが、未利用バイオマスの利用率は1%の向上にとどまっており、林地残材はほとんど利用されていない状況である(図2-65)。また、資源作物の利活用は現時点ではほとんど認められない状況となっている。

(世界のエタノール生産量は大幅増加)

近年、地球温暖化防止や原油価格の高騰等を背景に、世界各国でバイオ燃料の生産・利用の取組が進められている。

世界のエタノール生産量は増加傾向で推移しており、2006年の生産量は約5千万klと2000年の1.7倍に増加している(図2-66)。これらのエタノールはほぼ全量がとうもろこし、さとうきび等を原料に製造されており、米国、ブラジルがバイオエタノールの利用に積極的に取り組んでいるほか、中国、インド等のアジア諸国でも利用が進められている。

(世界のバイオディーゼル燃料の生産量も増加傾向)

表2-16 主要国におけるBDF生産量

菜種油や大豆油等から製造されるバイオディーゼル燃料(BDF)の生産も各国で取り組まれている。特に、欧州連合(EU)ではその利用に積極的に取り組んでおり、2005年の生産量は362万klと2000年の4.5倍の大幅な増加となっている。近年、米国でもBDFの生産が増加しており、2005年の生産量は28万klと推計され、前年の3倍に増加している(表2-16)。

このほか、マレーシアやインドネシア等のアジア諸国でもBDFの利用が進められている。

(国産バイオ燃料を2011年度には単年度で5万kl導入が目標)

我が国のバイオエタノールの製造・利用については、全国6か所の地域において実証試験が行われているが、いずれも小規模なものにとどまっており、実用的な規模となっていない。

一方、BDFについては、自治体やNPOにおいて取組がみられるほか、最近では一般事業者によるBDFの利用の拡大がみられるが、現在のところその取組は小規模なものとなっている。

このようななか、農林水産省では、バイオ燃料の実用化に向け、安価に調達できる食料生産過程の副産物や規格外農産物等を活用して国産バイオ燃料の本格的導入を図るため、バイオ燃料の地域利用モデルの整備と技術実証を行うこととしており、2011年度には単年度で国産バイオ燃料5万klの導入を目指している。

事例:バイオ燃料の利活用に向けた取組

E3走行試験車と給油機

北海道十勝地域

北海道十勝(とかち)地域では、2003年度から、エネルギー作物としての最適種を明らかにするための栽培・変換技術の研究、バイオエタノール生産の事業可能性調査、寒冷地でのバイオエタノールの実用化に向けたE3(エタノールを3%混合したガソリン)製造、自動車への供給を通じた実証試験を行っている。

2006年度には、規格外小麦から製造したバイオエタノールを使用したE3の公道走行試験を実施した。ここでの取組は、日本でも有数の農業地帯から生産される作物を利用してバイオエタノールの本格導入と十勝地域のバイオマス資源の活用を目指している。

今後の課題は、輪作体系の安定強化や規格外作物の有効利用を図りつつ、商業レベルでのバイオエタノールの本格製造とE3の普及拡大であり、この取組により、十勝の農業が食料供給だけでなく、エネルギー生産の役割を担うことが期待される。

(国産バイオ燃料の生産拡大に向けた工程表を作成)

2006年11月に「国産バイオ燃料の大幅な生産拡大について関係府省一体で取り組むように」との総理の指示を受け、この実現に向け関係府省から成る「バイオマス・ニッポン総合戦略推進会議(*1)」において技術や制度面の課題を整理し、国産バイオ燃料の大幅な生産拡大に向けた工程表を作成し、2007年2月に総理に報告された(図2-67)。今後、この工程表に基づき、有効な利用がなされていない稲わらや木材等のセルロース系原料や耕作放棄地を利用した資源作物からエタノールを高効率に生産する技術開発等を進めることが重要である。

*1 内閣府、総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省の1府6省の局長レベルで構成。

(多様な手法について検討)

諸外国では、利用を促進するために、政府による導入目標の提示、税制、補助等の支援策がとられている。我が国においても利用状況等を踏まえ、諸外国の動向も参考としつつ、多様な手法について検討することとされている(表2-17)。

表2-17 諸外国におけるバイオエタノール導入への取組

(バイオマスタウンの構築の加速化が必要)

広く地域が連携し、実情に即した総合的なバイオマス利活用システムを構築するバイオマスタウン構想については2010年までに300程度の市町村での公表が目標とされており、現在のところ97市町村が公表している(2007年4月26日現在)。バイオマスタウンの構築を一層進めるために、林地残材等の未利用バイオマスの利用促進のためのモデル構築、地域の取組をコーディネートする人材の育成等が進められている。

事例:バイオマスタウンの取組

日田市バイオマス資源化センター

大分県日田市

バイオマスタウン構想を2005年6月に公表した大分県日田市(ひたし)では、中核施設の「日田市バイオマス資源センター」で、市域から集められた食品残さ(24t/日)、家畜排せつ物(50t/日)や農集排汚泥(6t/日)を受入れ、たい肥化、液肥化を行っているほか処理過程で得られるメタンガスを利用した発電(340kw)も行っている。

また、製材端材、建設発生木材、林地残材等を活用しての木質バイオマス発電(12,000kw)も本運転を開始している。

(バイオマス製品の普及に向けた一層の取組が必要)

バイオマスマーク

バイオマス製品の普及と需要の拡大を図るため、他の製品と識別できるよう「バイオマスマーク」が作られている。

最近では、バイオマスプラスチックが食品包装材等のほか、家電製品や自動車の一部にも使われ始めているが、石油由来の汎用プラスチックに比べ需要が小さく、今後も一層の普及に向けた取組が必要である。

(懸念される地球温暖化の環境への深刻な影響)

近年、人間活動の拡大に伴って二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素等の温室効果ガスが大量に大気中に排出されることで、地球が過度に温暖化するおそれが生じており、人類の生活環境や動植物の生息・生育環境への深刻な影響が懸念されている。

こうしたなか、我が国の年平均気温は100年当たり約1.07℃上昇している(図2-68)。

(地球温暖化対策の推進が重要)

我が国は、京都議定書の第一約束期間(2008~2012年)において、基準年(原則1990年)に比べ6%の温室効果ガスの削減を約束しているが、2005年度の総排出量(速報値)は8.1%増加した。このため、バイオマスの利活用や食品産業における環境自主行動計画の着実な実施等の温室効果ガスの排出削減対策や森林吸収源対策をさらに推進することが重要である。

また、地球温暖化の進行は、農作物被害の発生や栽培適地の移動等農業生産にも大きな影響を与えることが懸念されることから、中長期的な視点から地球温暖化適応策に関する調査研究、技術開発等を推進することが重要である。

さらに、世界全体で地球温暖化対策が進められるよう国際協調を図りつつ、京都議定書後(2013年)の将来の枠組みの構築に向けた取組を推進することが重要である。

(農業の自然循環機能を活かす国土の生物多様性保全施策の推進が重要)

熱帯雨林の急激な減少や種の絶滅の進行に対する危機感等を背景として、1992年、国連環境開発会議の開催にあわせ、生物多様性の保全等に関する国際的な枠組みである「生物多様性条約」が採択された。また、2002年の同条約第6回締約国会議において、「2010年までに生物多様性損失速度を顕著に減少させる」との目標が掲げられた。

我が国は1992年に同条約を締結するとともに、1995年10月には生物多様性国家戦略が、2002年3月には第2次戦略となる新・生物多様性国家戦略が策定された。

農業は、自然循環機能(*1)を有していることから、生物多様性に様々な影響を与える特性がある。すなわち、健全な生産活動を通じて多面的機能が発揮され、環境にプラスに働く反面、効率の過度な追求や不適切な資材の利用・管理によって環境への負荷や自然環境の劣化等を招くおそれがある。

このため、環境保全型農業の推進や農業農村整備事業に当たって環境への配慮を徹底するなど、生物多様性の保全に対する取組が進められている。

*1 [用語の解説]を参照。

お問い合わせ先

大臣官房広報評価課情報分析室
代表:03-3502-8111(内線3260)
ダイヤルイン:03-3501-3883