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農林水産省

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(2)都市と農村の共生・対流の一層の促進 イ 若者や団塊世代の定住等へのニーズと支援の取組

(二地域居住や定住に強い願望)

図3-36 二地域居住や定住への意識
データ(エクセル:30KB)

また、都市地域に住んでいる50歳代層は、平日は都市部で生活し、週末は農村地域で生活するといった二地域居住や、農村への定住に対する願望が強い。定住に対する願望は、20歳代層でも強くなっている(図3-36)。

(団塊世代では就労意欲と農業への関心が高い)

東京都内に勤める50歳代を対象にした調査では、9割が定年後働く意思があると回答し、そのうち3割が農業を「是非やってみたい」あるいは「機会があればやってみたい」としており、高い就労意欲と農業への関心がうかがわれる(*1)。また、三大都市圏の住民を対象とした意識調査によると、団塊世代を含む50歳代層において「ふるさと暮らしをしたい」とした4割のうち、1割が仕事として農業をしながらの定住を考えている(*2)。

これらの背景として、団塊世代のなかには幼少期を地方で過ごし、高度経済成長期に都市圏に移住した者が多いことに加え、自らの健康について関心が高く、健康とかかわりの深い食生活や生活環境の問題について、意識が高いことも考えられる。

*1 りそな総合研究所(株)「定年退職後の「職」に関する調査」(17年12月実施)。「gooリサーチ」登録モニターのうち、東京及び東京近郊在住の50歳代の会社員を対象として実施したインターネットによるアンケート調査(回答総数828)。データ(エクセル:18KB)

*2 NPO法人100万人のふるさと回帰・循環運動推進・支援センター「都市生活者に対するふるさと回帰・循環運動に関するアンケート調査」(17年1月公表)。三大都市圏の50,150人を対象として実施(回収率45.4%)。データ(エクセル:22KB)

ダーチャ(郊外の住居付き家庭菜園)で過ごす休日(ロシア)

モスクワ郊外のダーチャ

ダーチャは、多くが手作りの簡素な住居付きの郊外の家庭菜園で、ロシアの大都市に住む人々の多くが保有しています。旧ソ連崩壊による食料不足時にあっては、市民の食料確保に重要な役割を果たしたともいわれ、そこでのばれいしょやその他の野菜、果物等の生産量は農業生産全体のなかでも大きな割合を占めています。週末、自然のなかで農作業や住居の整備、収穫物を利用した保存食づくり、近くでのきのこ狩りを行うなど、実益を兼ねながら気持ちの良い汗を流すことで、日常のストレスを解消するいやしの場ともなっています。

ロシア以外にもダーチャと同様のものは存在し、また、ドイツのクラインガルテンをはじめ、それぞれの国の歴史や生活文化、自然・社会条件等のなかで様々な市民農園等の形態が培われてきています。近年、我が国でも二地域居住への関心・願望が高まっており、ログハウス等を付設した滞在型市民農園の整備も進められています。我が国の生活・文化や自然・社会条件等に合った独自のスタイルで、今後、さらに普及・発展していくことが期待されます。

(年齢層により異なる定住に必要な事項)

定住を実現するため必要な事項について、医療施設の整備や、居住に必要な家屋、土地の安価な入手をあげる者が多い(図3-37)。20歳代層では、就職に関する情報の入手を最も必要としており、就職や転職といった問題をかかえつつも、これらを契機とした定住への潜在的願望の強さがうかがわれる。また、50歳代層では、農山漁村での居住に必要な家屋や土地を安く入手することを最も必要としている。農村では都市部に比較して、そのまま居住できる適切な不動産物件や手軽な賃貸物件も少なく、その確保に労力を要することがうかがわれる。

(地域の医療や福祉のサービスの充実に向けた取組が重要)

農村地域における、必要時に速やかに適切な医療サービスが受けられる医療体制の確立や、介護サービスの供給体制の整備、地域における様々な健康増進のための取組が重要になっている。このようななか、農協系統の様々な組織では、医療サービスの提供のほか、介護保険事業、高齢者の生活支援、地域ボランティア組織による農協助け合い活動への取組等、多様な高齢者福祉活動が行われている。今後、農村地域の高齢化の進行に伴い、より幅広い医療・福祉サービスの提供へのニーズが高まるものと考えられ、地域に根ざした農協系統の組織が、その特徴を生かしつつ健全にこれら活動の展開を図り、農村地域を支えていくことが期待される。

事例:医療機関が地域住民の健康管理に精力的に取り組み、健康増進に高い成果

地域における健康診断の様子

長野県厚生農業協同組合連合会の運営する佐久総合病院では、医療サービスの提供のほか、「予防は治療にまさる」との考えのもと、組合員である地域住民の健康管理活動に古くから取り組み、健康診断の受診促進や健康教育、健康に関する啓発や情報提供等の地域に根ざした活動を通じて、地域住民の健康増進に成果をあげてきた。子ども向けに高齢者福祉や環境保全のボランティア体験や安全な農産物の栽培・加工体験等、心身ともに健康に生活していくための幅広い健康教育を実施するとともに、在宅医療や自宅での介護支援といった様々な医療福祉サービスの提供に取り組んでいる。また、地域の様々な医療機関や行政、福祉施設等とも連携した体制の整備により、地域へのより良い医療福祉サービスの提供に努めている。

(都市住民は情報提供や相談対応等、ふるさと暮らしへの支援を要望)

都市住民は、ふるさと暮らし実現のための支援活動として、様々な形態での情報提供や相談への対応、現地体験の実施等を希望している(図3-38)。

(UJIターン者の受入れに地域住民の理解と協力が必要)

団塊世代の大量の定年退職者も含め、都市住民の田舎暮らし等に対する潜在的な志向を具体的な動きにつなげ、地域の活性化を図っていくためには、地域の特徴や良さを活かして快適に生活できる環境の整備や、UJIターン者がその経験・技術等を発揮しながら活きいきと暮らすことのできる、雇用やボランティア活動の機会の創出なども必要である。

そのためには、開かれた地域コミュニティを醸成するなど、地域住民の理解と協力を得ながら新たな体制づくりが重要である。

(市町村は団塊世代の定年退職を契機とした定住に期待)

全国の市町村においては、団塊世代の大量の定年退職に伴う影響に関し、社会保障等の公的負担増に対する懸念がある一方、約半数が都市圏から地方への交流・定住人口が増加し、また、地域活動が活発化すると考えており、これらに対する期待の高さがうかがわれる(図3-39)。

(UJIターン者を受け入れた効果を多くの市町村が認識)

UJIターンの受入れ実績がある市町村は、UJIターン者を受け入れた効果として、農林水産業の担い手の確保を最も多くあげており(*1)、また、現在実施されている支援施策も新規就農者への支援が最も多いことから、担い手確保の観点からの市町村の期待がうかがわれる。

*1 国土交通省「中高年者のUJIターンに対する意識調査」。UJIターンの実績が10人以上の市町村を中心とする全国241市町村を対象として実施(回収率64.7%)。データ(エクセル:18KB)

(共生・対流の促進に向けた行政の様々な支援)

現在、行政、関連する団体、民間企業など多様な主体において、共生・対流を促進するため、情報の提供をはじめ、様々な取組が行われている。

地方公共団体では、定住や就業・就農に関する支援、定住後の継続支援など、様々な取組が実施され、その充実が図られている(表3-4)。

表3-4 地方公共団体における定住促進等に関する支援策

(地域の関係者の連携が重要)

定住促進による地域活性化を目指して、企業の連携によるビジネスモデルが成果をあげている事例がみられる。また、農村へ定住した団塊世代が経験や技術等を活かせる起業や雇用、ボランティア活動等の場の創出のため、行政と企業、NPOが連携した取組もみられる。

事例:関連産業の連携による・共生・対流促進への取組

体験ツアー参加者とのパネルディスカッション

北海道旭川市

北海道旭川市(あさひかわし)の旅行・観光企画、運輸、不動産業、IT関連といった定住に際して関連ある業種の中小企業5社は、地域への定住促進による交流人口の増大と地域経済の活性化とともに、地域コミュニティの再生を図ることを目的に、「カムイミンタラ(アイヌ語で「神々の遊ぶ庭」の意)の伝道師」と名づけた共同組織を17年5月に設立した。インターネット等による情報提供、体験ツアーの企画、定住のための住宅地のあっせん、現地におけるきめ細かな案内等、移住に必要となるサービスを各企業がチームを組んで提供するとともに、地元との交流のつなぎ役として機能している。また、行政や関係者の理解を得つつ、定住促進や農業体験の企画等に取り組み、成果をあげている。今後は、行政の支援も得ながら地域のコミュニティ再生に向けた取組を展開していく予定である。

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