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農林水産省

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(3)飼料自給力・自給率の向上に向けた取組

(濃厚飼料の大部分は海外に依存)

家畜の飼料は、粗飼料と濃厚飼料に分けられる。粗飼料には、乾草やサイレージ(飼料作物を乳酸発酵させ、保存性・し好性を高めた飼料)、稲わら等があり、牛をはじめとする草食家畜に給与される。粗飼料の自給率は78%(2007年度)となっている。
一方、濃厚飼料には、とうもろこしを中心とする穀類、糠類(ぬか)、粕類(かす)等があり、豚や鶏のほか、肉用牛の肥育に多く使われている(図1-29)。国土条件の制約等から飼料向けの穀類は国内で生産が困難なため、濃厚飼料の自給率は10%(2007年度)にとどまっている。国内の耕地面積は462万8千ha(2008年)であるのに対し、飼料用穀物等の輸入量を生産するための面積は429万ha(2007年)と試算されている(農林水産省試算)。


(青刈りとうもろこしに加え、稲発酵粗飼料や飼料用米等の利用が重要)

粗飼料と濃厚飼料を合わせた飼料自給率は25%(2007年度)となっており、国は、これを2015年度に35%まで上昇させることを目標としている。その結果、供給熱量ベースの総合食料自給率は1ポイント上昇すると見込まれている。粗飼料は国内で自給可能であり、稲発酵粗飼料等の増産が重要である。また、濃厚飼料は自給率14%を目指しており、飼料用米の生産・利用やエコフィード(食品残さ利用飼料)利用の取組が重要である(図1-30)。

図1-30 飼料自給率の現状と目標

(国産飼料に立脚した畜産の確立が必要)

国内の畜産経営は、2006年ごろからの飼料価格の高騰を受けて経営コストが上昇するなど、厳しい状況にある。このようなことからも、飼料原料を輸入に過度に依存した畜産から転換し、国産飼料に立脚した畜産を確立していくことが重要である(図1-31)。

図1-31 国産飼料に立脚した畜産の確立

事例:未利用資源を活かした肉牛生産の取組

未利用資源を活かした肉牛生産の取組
北海道池田町
北海道十勝(とかち)地方に位置する池田町(いけだちょう)は、町内産ぶどうを原料とするワインの生産で知られているが、あか牛(褐毛和種)をブランド化した牛肉の生産にも力を入れている。
同町ではこれまで、ワインの製造過程で熟成時に発生する「おり」(沈殿物)を、産業廃棄物として有料(年間約30万円)で処理していた。これを有効活用しようと、ワイン工場を運営する町立ブドウ・ブドウ酒研究所とJA十勝池田町和牛生産組合あか牛部会が協力し、新たな飼料を生産する取組が2002年から始められた。この飼料は、十勝地域で生産されるてんさいの絞りかす(ビートパルプ)を乾燥成型したペレット飼料と「おり」とを、2対3の比率で混合して発酵させたものである。
「おり」の排出量が限定されるため、十分な量がつくれないという問題があるが、この飼料はたんぱく質が豊富で香りも良くなることから、牛のし好性も高く、生産者の間で好評である。この飼料の生産量不足を補うため、2008年度には、これまでたい肥にされていたぶどうの絞りかすを飼料化する試験も進められた。この取組は、食品循環資源の有効活用となることからも、「ワインと牛肉の町」としてのイメージの向上につながることが期待されている。
一方、あか牛は、黒毛和種に比べて、1.草(粗飼料)による飼育に適しており、放牧に向いていること、2.成長が早く、必要な飼料が少なくて済むことの特長がある。JAのあか牛部会では、町内で生産、肥育、処理、出荷までを一貫して行うあか牛を町名を冠した名称でブランド化するとともに、その価格の安さや国産飼料を多く与えて生産している点を「国民的救済牛」としてアピールしている。さらに、生産者が直接消費地に出向き、イベントで対面販売を行うなど、販売促進活動を積極的に行っている。黒毛和牛に比べて価格は安いが、町内の生産者は、あか牛の特性を活かし、繁殖・肥育一貫経営による経営の安定化に成功している。
 

(稲発酵粗飼料や飼料用米の生産は近年増加傾向)

水田のフル活用のため、稲を家畜の飼料として活用する取組も拡大している。子実と茎葉のすべてを活用する稲発酵粗飼料、副産物の稲わらの生産・利用のほか、飼料向けの米(子実)の生産・利用が行われている。稲発酵粗飼料と飼料用米の作付面積は増加し、4年前に比べ、それぞれ2.0倍、36.6倍となると見込まれている(図1-32)。


(稲発酵粗飼料や飼料用米の取組は稲作農家、畜産農家の双方にメリット)

稲発酵粗飼料の収量は、飼料用品種を用いれば、2,500 ~ 3,500kg/10a(現物)となる。飼料用米は、加工用・稲発酵粗飼料用品種で多収のものも使われており、なかには主食用米(530kg/10a)(*1)の1.5倍程度の700 ~ 800kg/10aの収量が見込まれるものもある(表1-3)。
稲発酵粗飼料や飼料用米の生産・利用には、稲作農家と畜産農家の双方にメリットがある(図1-33)。また、毎年、飼料用に輸入されるとうもろこし(約1,200万t)の代替として飼料用米の利用可能性は大きい。稲発酵粗飼料や飼料用米の普及拡大のためには、多収品種の開発、低コスト栽培技術の導入によるコスト低減、専用機械の導入、生産者と需要者の間の安定的な供給計画の策定、種子の安定供給体制の確立等が重要である。
*1 2008年産水稲の10a当たり平年収量

表1-3 飼料用米への利用が見込まれる品種
図1-33 稲発酵粗飼料・飼料用米のメリット
 
事例:飼料用米の利活用に向けた取組

飼料用米の利活用に向けた取組
青森県藤崎町
青森県藤崎町(ふじさきまち)の常盤村(ときわむら)養鶏農業協同組合では、飼料自給率の向上を目指し、2006年度から飼料用米を使った養鶏事業に取り組んでいる。地元の稲作農家が生産調整の一環として生産した飼料用米(玄米)を組合が50円/kgで買い取るとともに、鶏ふんたい肥を稲作農家の水田に還元するという取組も行っている。購入した飼料用米は、飼料製造業者に送られ、飼料用米を57%配合した飼料(自給率75%)が製造される。これを給与した結果、卵の黄身の色は、通常より淡く、レモンイエローとなった。青森県農林総合研究センター畜産試験場の研究によると、飼料用米(玄米)はとうもろこしと100%代替できることが判明した。
現在、この卵は試行的にデパートや生協で1日120個の限定販売を行っている。とうもろこしに比べて餌代がかさむ分、一般の卵より高い価格(6個入りで630円)となっているが、栄養成分の違いや国産飼料から生産されているという安心感から、売行きは好調である。
 
※上記取組について、現在は、卵の通常販売を行っています。

(放牧には様々な利点があり、今後推進していく必要)

放牧は、飼料費の節減だけでなく、飼養管理や飼料生産作業の省力化、牛の健康増進による衛生費の削減、繁殖成績の向上といった効果により、畜産・酪農経営の収益性を高めることが期待できる。また、水田の活用や耕作放棄地の解消を通じた農地の保全、イノシシをはじめとする獣害防止にも有効である。
近年、低コストのソーラー電気牧柵や効果的なダニ忌避(きひ)剤が開発されたこともあり、肉用繁殖牛を耕作放棄地や水田に放牧する取組が、中国・四国地方を中心に全国的に広がっている(図1-34)。その手法の一つとして先進地の山口県が2001年度から始めた「レンタカウ制度」は、牛の放牧を希望する耕種農家に、行政機関が仲介して畜産農家等から牛を貸与する仕組みである。このような放牧の取組を普及させるため、国による支援が行われている。
今後は、中山間地域における耕作放棄地の解消や棚田保全の観点から、転作田、野草地等多様な土地を利用した放牧を推進していく必要がある。


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