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(1)世界の食料事情と農産物貿易の動向 ア 世界の食料事情

(穀物、大豆の国際価格は依然として高水準)

穀物、大豆の国際価格は、平成18年(2006年)秋以降、主要国での天候不順等、食料需給をめぐる様々な要因に加え、原油市場とともに穀物市場への投機資金の流入により上昇基調で推移し、平成20年(2008年)春から夏にかけて過去最高値となりました(図1-1)。平成20年(2008年)夏以降は、小麦等の豊作予測等に加え、世界金融危機による投機資金の流出、世界的な不況による穀物需要の減退懸念から、価格は最高値に比べ大幅に低下しました。

その後、平成20年(2008年)末以降は、南米での干ばつ、米国の天候不順による作付けの遅れ、中国の旺盛な大豆の輸入需要等により、価格は再び上昇基調で推移しました。また、平成21年(2009年)6月以降は、米国が良好な天候に恵まれたこと等から値を下げたものの、10月以降は米国中西部での低温・雨がちの天候等により価格が上昇し、平成22年(2010年)春時点における価格水準は、平成18年(2006年)秋ごろに比べ1.2~1.7倍と依然として高くなっています。



(世界の食料需給には様々な不安要因)

世界の食料需給に関しては、穀物等の需要量、生産量とも増加傾向にあり、穀物の総需要量(約22億t)に対する期末在庫量の割合(期末在庫率)も高い水準で推移してきました。しかし、2007/08年度(*1)には生産量の減少等により穀物の期末在庫率が17.4%となり、国際連合食糧農業機関(FAO)が設定した安全在庫水準(*2)の下限17~18%に近づき、食料危機といわれた1970年代前半と同程度となりました(図1-2)。この期末在庫率は、2008/09年度には、価格高騰を受け世界的に穀物の作付けが拡大するなか、良好な天候に恵まれ大幅な増産となったことから20.9%まで回復し、2009/10年度には、穀物全体の生産量が需要量をわずかに上回ることから21.7%になると予測されています。

しかしながら、中長期的にみると、世界の食料需給をめぐっては、需要面では開発途上国を中心とした人口の増加、中国・インド等の経済発展、バイオ燃料の増加等による食料・農産物需要の増大、供給面では収穫面積・単収の伸び悩み、地球規模の気候変動の生産への影響といった様々な不安要因があります。


*1 穀物年度で、2007/08年度は2007年9月~08年8月のことをいいます。
*2 昭和49年(1974年)、世界の食料供給を保障するのに最低限必要な水準として設定されたもの(全穀物)


(開発途上国を中心とした人口の増加)

世界の人口は、開発途上国を中心に増加を続けており、昭和45年(1970年)の37億人から、平成20年(2008年)には1.8倍の68億人となりました(図1-3)。今後も、先進国の人口はほぼ一定で推移するのに対し、アフリカを中心とした開発途上国で人口の増加が引き続くことから、世界の人口は、約40年後の平成62年(2050年)にはさらに1.3倍の91億人に達すると見込まれています。



(BRICsを中心とした経済成長に伴う食料需要の増大)

近年、BRICs(ブリックス)(*1)(ブラジル、ロシア、インド、中国)等では、豊富な資源や経済改革の進展等を背景として、高い経済成長が続いています(図1-4)。平成20年(2008年)後半の世界金融危機の影響もこれらの国には限定的で、今後も引き続き高い経済成長が見込まれています。

これらの国では所得向上により食生活が変化し、油脂類、肉類の消費が増加しています。肉類の生産には多量の飼料が必要とされるため、世界全体で食用とともに飼料用の穀物需要が増大しており、平成42年(2030年)には27億t、平成62年(2050年)には30億tに増加するものと見込まれています(図1-5)。


*1 [用語の解説]を参照

世界全体の人口の2割に当たる13億人を擁する中国についてみると、所得水準の向上に伴う油脂類、肉類の消費増により、大豆油、家畜の飼料である大豆粕の原料となる大豆の輸入量が一貫して増加しています。平成21年(2009年)の世界各国の大豆輸入量は合計で8千万tとなっていますが、そのうち中国の輸入量は4千万tと全体の5割に達し、今後も増加し続けると予測されています(図1-6)。

また、主な品目別に世界全体の食料消費量に占める中国の消費量の割合をみると、穀物、鶏肉、果物は人口割合とほぼ同じ2割前後となっています(図1-7)。豚肉、野菜等については、その割合が大きく高まり、現在では5割近く、すなわち全世界の消費量の約半分を中国が消費していることになります。このように、中国の消費動向が今後の世界の食料需給に大きな影響を与え得ることがうかがえます。




(バイオ燃料生産増加に伴う穀物の燃料仕向けの増加)

近年の原油価格の高騰、国際的な地球温暖化対策、エネルギー安全保障への意識の高まり等を背景に、バイオエタノール、バイオディーゼル等バイオ燃料の需要が急増しており、今後も大きくふえると見通されています(図1-8)。これに伴い、米国、ブラジル、EU等で、バイオ燃料の原料としてのとうもろこし等の穀物、さとうきび、なたね等の油糧種子等の需要が増大し、これらの作物の生産量のうち燃料仕向量の割合が大きく上昇しています。

特に米国では、平成19年(2007年)12月に新エネルギー法(*1)が成立し、再生可能燃料を平成34年(2022年)までに360億ガロン(*2)(うち、とうもろこし由来のバイオエタノールは平成27年(2015年)までに150億ガロン)に拡大することとされており、とうもろこしの燃料仕向量が1.7倍に増加するものと見込まれています(図1-9)。


*1 正式名称は「Energy Independence and Security Act of 2007」(平成19年(2007年)12月19日成立)
*2 1ガロン=3.785リットル

(収穫面積・単収は伸び悩み)

一方、生産面をみると、世界全体の穀物の収穫面積は、平成20年(2008年)では6.9億haとなっていますが、開発途上国の工業化等による新たな可耕地の減少や砂漠化等が進むなかで、過去50年で8%の増加にとどまっています(図1-10)。また、これまで農業生産の拡大を支えてきた単収についても、遺伝子組換え作物の導入等で一定の伸びが期待されていますが、地球温暖化、水資源の制約、土壌劣化等による影響も懸念されています。

このほか、世界の農業生産には、各地での豪雨や干ばつをはじめとした異常気象の頻発等不安要因も存在しています(図1-11)。



図1-11 農業生産への影響が懸念された主な気象状況(2009年度)

(食料価格も中長期的に上昇する見込み)

このような食料需給をめぐる状況のもとで、農林水産省(農林水産政策研究所)は、「今後とも穀物等の在庫水準が低く需給がひっ迫した状態が継続し、価格水準は平成19年(2007年)以前に比べ高く、かつ、上昇傾向で推移する(穀物価格は平成19年(2007年)に比べ名目で31~46%、実質で6~17%上昇)」と予測しています(図1-12)。

また、他の国際機関においても、例えば経済開発協力機構(OECD)及びFAOでは、「2008年の価格高騰と同様の過度の価格変動の可能性は今後数年間排除できない」と警告し(*1)、米国食料農業政策研究所(FAPRI)では「現在より高い価格水準で需要と供給による調節が行われる」(*2)等の予測を発表しています。


*1 OECD‐FAO「Agricultural Outlook 2009-2018」
*2 FAPRI「FAPRI 2009 U.S. AND WORLD AGRICULTURAL OUTLOOK」


(穀物等の生産は特定国に集中)

世界の穀物等の生産の状況をみると、米国、中国、インド、ブラジル等に多くが集中しています(図1-13)。このような特定国に生産が集中する状況は、「食料危機」といわれた1970年代から基本的には変化していません。例えば、米では、13億人の人口を擁する中国と12億人の人口を擁するインドで世界の生産量の半分、上位5か国で7割が占められています。小麦では上位5つの国・地域で世界の生産量の7割程度、大豆では上位3か国で世界の生産量の8割が占められています。また、大豆ととうもろこしでは、米国だけで世界の生産量の4割が占められています。



(穀物等の輸出も特定国に集中)

農産物については、基本的にはまず生産国の国内消費に仕向けられます。生産量に対する輸出量の割合をみると、例えば、原油では55%、乗用車では44%となっている一方、米では6%、小麦では21%となっているなど、農産物では、鉱工業品に比べ輸出に仕向けられる割合が低い傾向にあります(図1-14)。また、主な農産物の輸出は、生産と同様、特定の国・地域に集中しており、上位5つの国・地域で全体の7割以上が占められています(図1-15)。このため、農産物・食料については、輸出国での不作や作付けの転換、輸出規制の実施等があった場合、国際市場が大きな影響を受ける構造となっています。




(世界の栄養不足人口は10億人を超過)

農産物の生産と輸出は特定の国・地域に集中していますが、食料の分配にも大きな偏りがみられます。世界保健機関(WHO)によれば、世界では16億人が太りすぎ、4億人が肥満(*1)とされ、また、我が国では世界の食料援助量(600万t/年)と同程度の食品廃棄物(可食部)500~900万t/年が発生しています(*2)。その一方で、開発途上国を中心に毎日2万5千人が餓死(子どもは6秒に1人が餓死)するとともに、世界全体の栄養不足人口も平成21年(2009年)に10億人を超えたと推定されています(図1-16)。

栄養不足人口は、FAOにおいて「食物から摂取する熱量が、一定程度の強度の労働に従事した際の一定の体格の維持を前提として、国や民族ごとに算出される基準値よりも低い状態にある人々の数」と定義されています。平成8年(1996年)の世界食料サミットでは、その人口を半分程度に削減するとの目標が打ち出されましたが、アジア・環太平洋、サハラ以南のアフリカの国々を中心にふえ続けています。


*1 WHO基準ではBMI30以上を肥満、25以上30未満を太りすぎと判定します。BMIについては[用語の解説]を参照
*2 農林水産省「平成17年度食品ロス統計調査」(平成18年(2006年)8月公表)


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