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農林水産省

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(2)食料自給率の動向とその向上への取組

(我が国の食料自給率は低迷し、先進国で最低水準)

我が国では、過去40年あまりで1人当たりの国民所得が大きく増加し、食料需要も広がりをみせました。食生活は大きく変化し、国内で自給可能な米の消費が減少する一方、国内生産では供給困難なとうもろこし等の飼料穀物を必要とする畜産物や、大豆やなたね等の油糧種子を使用する油脂類の消費が増加しました(図1-22)。また、農産物価格の低下や農業所得の減少を主な要因として、基幹的農業従事者数、耕地面積が大きく減少し、耕地利用率も低下するなど、国内の食料供給力がぜい弱化しました。これら消費面、生産面それぞれの要因により、供給熱量(*1)ベースでの食料自給率(*2)は、昭和40年度(1965年度)の73%、昭和60年度(1985年度)の53%から大きく低下し、近年は40%前後で推移しています。


*1 、2 [用語の解説]を参照


なお、平成20年度(2008年度)の供給熱量ベースでの食料自給率は、さとうきび、大豆の国内生産の増加、国際価格の高騰によるチーズ、油糧大豆をはじめとした農産物輸入量の減少のため、前年度から1ポイント上昇し41%となりました(図1-23)。

供給熱量ベースの食料自給率を先進国と比べてみると、我が国は最低水準となっています(図1-24)。また、穀物自給率については28%前後であり、平成15年(2003年)現在、OECD加盟30か国中26位となっています。

このような状況とあわせ、中長期的な食料の確保に不安を抱えている我が国にとって、今後、特に需給のひっ迫が予想される穀物を中心として、最大限食料自給率の向上を目指すことが喫緊の課題となっています。




(都市部で低い食料自給率)

供給熱量ベースの食料自給率を都道府県別にみると、北海道、東北地方ではいずれも80%以上と高くなっており、北陸、九州地方でも総じて50%以上と高くなっています(図1-25)。一方、全国の人口の10%を占める東京都では食料自給率が1%、7%を占める大阪府では2%、同じく7%を占める神奈川県では3%であるなど、大都市部では非常に低い水準にあります。

このことは、人口が集中している大都市部が不測時に最も影響を受けることから、今後これらの地域の住民に食料自給率に関してより一層の関心をもってもらうとともに、大都市部に対する食料の安定供給のためにも、国内の農業生産の増大や流通基盤の整備等が必要であることを示すものです。



(食料自給率向上に向けた国民運動は推進パートナーとともに様々な取組を展開)

食料自給率向上のためには、生産面での取組はもとより消費面での取組も不可欠であることから、平成20年度(2008年度)より食料自給率向上に向けた国民運動「フード・アクション・ニッポン」が始まりました。この運動が広く国民的なものとなるよう、消費者に対する普及・啓発を行うとともに、国民運動の趣旨に賛同する農業者、食品製造業者、流通業者、旅館・ホテル業者、大学、自治体等幅広い分野の関係者が推進パートナーとなり、取組を一体となって進めています。推進パートナーは、平成22年(2010年)3月17日現在3千を超えています(図1-26)。

平成21年(2009年)10月には、このような「フード・アクション・ニッポン」の一環として、米粉の普及や消費拡大を図るため、生産者、メーカー、流通、外食企業による商品開発や販売促進等、関係者が一体となった取組を進める「米粉倶楽部」が始まり、共通のロゴマークを使って、米粉商品の消費拡大のための様々な活動が行われています。

また、自分の生活のなかの食料自給率アップにつながる様々なアイデアを「わたしのアクション」宣言として募集しています。これは、国民一人ひとりの日々の食生活が食料自給率問題と密接に関係していることを自ら考えてもらうための取組で、平成22年(2010年)3月31日現在7万4千を超える宣言が集まっています。

このほか、平成22年(2010年)1~2月にかけて、国産食料品等の購入に対してポイントを付与する取組の実証実験が、首都圏のスーパーマーケット80店舗で行われました。


コラム:各国の農産物の地産地消運動

消費者の農産物に対する安全志向、食文化の伝承、地球環境の保全等のニーズの高まりを背景として、海外においても農産物の地産地消活動が展開されています。

米国では、地域の家族農業を支援し、農村環境を保全しながら地域社会を維持するために、消費者が作付け前に栽培基準や品質等に関する注文を付け、その年1年分の農産物の代金の一部を農家に前払いして購入する活動を中心としたCSA(Community Supported Agriculture:地域支援農業)の活動により、全米で1万2千戸以上(平成19年(2007年))の農家が支援を受けています。

イタリアでは、(1)伝統的な食材や料理、質の良い食品等を守る、(2)質の良い素材を提供する小規模な生産者を守る、(3)子どもを含め消費者に味の教育を進めるといった活動指針を掲げ、各地に残る地場の食材を活かした伝統料理を尊重し将来に伝えていく「スローフード運動」が展開されています。

韓国では、農業団体が中心となって、「地元の旬の食品や伝統食は身体に良く、体と土は一体である」という「身土不二」(しんどふじ)のスローガンに基づき、国産品の優先的な購入を推進する活動が行われています。


(水田の有効活用を目指し、新規需要米の作付け拡大を支援する取組が開始)

一方、国内生産の面での取組として食料自給率向上の要となるのは、水田を余すことなく活用し、主食用米以外の作物の増産を図ることです(図1-27)。

このためには、今後、米の需給調整を効率的に進めつつ、不作付水田における米粉用米、飼料用米の作付け拡大等に取り組むことが必要となっています。このような課題に着実に取り組むため、麦、大豆、米粉用米、飼料用米等の戦略作物の作付け拡大を目指した「水田利活用自給力向上事業」とともに、「米戸別所得補償モデル事業」により米を対象とした所得補償を実施し、「水田農業の担い手」等の経営を支えていく必要があります。



事例:各国の農産物の地産地消運動
新潟県

現在、関係者が連携して米粉利用を推進する気運が、全国的に高まっています。

新潟県内には、生産者、製粉業者、加工業者が連携して事業計画を作成し、米粉利用を推進している事例がみられます。ここでは、全国的にも早くから米粉用米の作付けが行われ、平成21年度(2009年度)には390haに規模を拡大して生産しています。収穫された米粉用米は、農協を通じて地元製粉会社に出荷され、そこで製粉された米粉は、大手コンビニエンスストアチェーンをはじめ、製パン・製めん・製菓業者、学校給食事業者等へ広く出荷されています。また、地元加工業者による「米粉パン粉」の製造も行われています。

今後、このような需要を伴った計画的な米粉用米の生産・活用の取組が、各地に広がることが期待されます。

 

(平成32年度(2020年度)に食料自給率50%を目指すなどの目標を策定)

既にみてきたように、世界の食料需給はひっ迫基調にあり、多くの国民をかかえる我が国にとって、中長期的な食料の確保に不安をいだかざるを得ない状況です。このため、今後の農政においては、特にひっ迫が予想される穀物を中心として、食料自給率を最大限向上させていくことが必要です。

一方、食料生産を支える我が国の農村は、過疎化、高齢化が止まらず、これに兼業機会の減少も重なり、地域の活力がますます低下するなど、極めて厳しい状況にあります。しかし、我が国には、農地・農業用水等の資源や、高度な農業技術、人的資源がなお現存します。食料自給率向上に向けて、農業者、食品産業事業者、消費者等すべての関係者が最大限努力し、克服すべき諸々の課題を解決していかなければなりません。

このため、戸別所得補償制度の導入、「品質」や「安全・安心」といった消費者ニーズに適った生産体制への転換、6次産業化による活力ある農山漁村の再生を基本とした政策体系への転換を行うこととします。

このようなことを前提として、平成22年(2010年)3月に策定された「食料・農業・農村基本計画」において、平成32年度(2020年度)の総合食料自給率目標は、我が国のもてる資源をすべて投入した時に初めて可能となる高い目標として供給熱量ベースで平成20年度(2008年度)の41%を50%まで引き上げることとしています。また、野菜・果実や畜産物等の生産活動をより適切に反映する生産額ベースの総合食料自給率目標は、平成20年度(2008年度)の65%を70%まで引き上げることとしています(表1-1)。



(今後の食料自給率向上に向けた取組)

今後の食料自給率向上に向け、まず、生産面では、水田をはじめとした生産資源を最大限活用することが第一歩です。特に、小麦の二毛作を飛躍的に拡大するとともに、作付けられていない水田や有効利用が図られていない畑地を有効に活用した米粉用米・飼料用米、大豆等の作付けの大幅拡大、技術開発とその普及を通じた単収・品質の向上、耕作放棄地(*1)の解消等を通じた農地の確保を推進する必要があります。基本計画では、平成32年(2020年)において、延べ作付面積は495万ha、農地面積は461万ha、耕地利用率は108%を目標としています(表1-2)。



また、消費面からは、人口減少社会・高齢化社会の一層の進展が見込まれるなかで、従来以上に消費者理解を得ながら潜在的需要の掘り起こし等を進め、消費者や食品産業事業者に国産農産物が選択されるような環境を形成することが必要です。特に、我が国総人口の1割強に相当する約1,700万人にも及ぶ朝食欠食の改善による米の消費拡大や、健康志向の高まりを受けた脂質の摂取抑制等に取り組む必要があります。また、大豆加工食品について国産大豆の使用割合の大幅な引上げに取り組む必要があります。

さらに、単に和食への回帰をねらうだけでなく、技術開発の進捗等を踏まえ、欧風化した現在の食生活のなかに国産農産物を上手に取り込んでいく積極的な取組が必要です。特に、現在浸透しているパン食、めん食についての国産小麦・米粉の利用拡大、畜産物についての飼料自給率の向上に取り組む必要があります。

なお、国内生産の拡大に当たっては、各品目の実情や特性に応じ、実需者のニーズに合った供給、品質の向上、コストの低減等様々な課題がありますが、政府としては、戸別所得補償制度等の重要な施策を強力に実施するとともに、適切な情報提供を行うこと等により、これら関係者の取組を下支えする必要があります。他方、農業者には、需要を把握し、品質を向上し、コスト縮減に取り組む徹底した努力が求められます。

また、食料自給率の向上は、政府の強力かつ適切な施策の実施と関係者の努力のうえに成り立つものですが、その前提となるのが、国民の理解を得ることです。このため、国内外の食料事情や農業の多面的機能について、国民に対しわかりやすく情報提供していくことが重要です。加えて、供給熱量と摂取熱量(*2)との差が拡大していることから、食料安全保障の観点からも食べ残しの縮減に取り組むことが必要です。


*1 、2 [用語の解説]を参照

コラム:食料自給率向上と米油

我が国の供給熱量ベースでの食料自給率が低い理由の1つとして、供給熱量の15%程度を占める油脂類の自給率が3%(うち植物油脂の自給率は2%)にすぎないことがあげられます。現在、我が国で供給される油脂類の大部分は、大豆油、なたね油となっていますが、これらの原料は、そのほとんどを海外に依存しています。

昭和40年(1965年)ごろ、我が国の油脂類の自給率は31%(うち植物油脂の自給率は19%)となっていました。食生活のなかで油脂類の消費量そのものが小さかったという事情もありますが、国内産原料を用いた植物油の生産は12万tを超え、これを大きく支えていたのが「米油」でした。「米油」は玄米が精米される工程で取り除かれる「米ぬか」から抽出される油です。通常は、玄米から精米にされる過程で玄米の10%程度の「米ぬか」がとれ、「米ぬか」からは17%程度の油が抽出されるといわれています。

現在、国内で生産されている「米油」は、国内の食用植物油供給量の3%(6万t)程度にすぎませんが、優れた酸化安定性があり、フライ製品の品質を長く保つ油として高く評価されており、ポテトチップスや揚げせんべい等に用いられています。さらに、コレステロールの吸収を抑制する植物ステロールを多く含んでいるとされています。

このため、「米油」の需要は強く、製油業界の生産意欲も高いものの、米の消費減に伴い「米ぬか」の発生量が大幅に減少して需要・供給の双方の希望に応えられていないのが現状です。すなわち、米消費の拡大は、植物油の自給率向上にもつながる問題なのです。

今後の国産の「米油」の供給拡大に当たっては、現在、きのこの培地、飼料用、漬物用等様々な用途に仕向けられている「米ぬか」を油の原料としていかに安定的に調達できるか、米の需要増を通じた米の生産増により「米ぬか」をいかにふやしていくか等が大きな課題となります。

これらの課題が解決できれば、輸入米油(3万t程度)との置き換えが進み、国産の「米油」が増加することにより食料自給率の向上に寄与する可能性があります。


(食料自給率の向上には様々な便益)

食料自給率向上に向けて生産の増大を図ることにより、食料の安定供給という本来の目的以外にも、関連産業の生産増・雇用増等を通じた国民経済の面、農地の保全等を通じた多面的機能の面、フード・マイレージ(*1)の減少等を通じた環境の面等で様々な便益がもたらされます(図1-28)。


*1 輸入相手国からの食料輸送量に輸送距離を乗じた数値のことです。詳細は第3章(6)アのコラム「ライフサイクルアセスメントとフード・マイレージ」を参照

図1-28 食料自給率向上がもたらす食料供給以外の便益

棚田の風景(島根県雲南市(うんなんし))
棚田の風景(島根県雲南市(うんなんし))

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