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農林水産省

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(1)地域社会・農村地域の現状と課題 イ 農村の集落機能の状況

(無住化が危惧される集落の9割は中山間地に存在)

農村社会は、農業生産活動を中心として、家と家とが地縁的につながった農業集落(*1)を基礎に維持・形成されています。平成17年(2005年)現在、全国に13万9千の農業集落(全域が市街化区域にある農業集落を除く)が存在し、そのうち、農業生産活動に不可欠な地域資源の利用や維持管理を共同で行うなどの集落機能があると確認されたのは、11万900集落となっています(*2)。

農業集落の動向をみると、昭和55年(1980年)から平成2年(1990年)の間に2,255集落が、平成2年(1990年)から平成12年(2000年)の間では4,959集落が農業集落としての機能を失っています。平成12年(2000年)までの10年間に農業集落としての機能を失った農業集落について、農業地域類型区分別にみると、その5割が中山間地にあります。さらに、2000年農林業センサスのデータを用いて平成13年(2001年)以降に無住化が危惧される集落(北海道、沖縄県を除く。)を推計したところによれば、その数は1,403集落となり、うち中山間地にある集落は9割で、地域別にみると、山陽、北陸、四国において多くなっています(*3)。


*1 [用語の解説]を参照
*2 農林水産省「農林業センサス」(平成17年(2005年))
*3 農林水産省「限界集落における集落機能の実態等に関する調査報告書」(平成18年(2006年)3月公表)

(集落の小規模化・高齢化や急激な人口減少は、集落機能の維持に影響)

特に過疎地域においては、集落の人口減少・高齢化によって、農地・山林等農村資源の維持管理や、農道や畦畔(けいはん)の草刈り等農業生産活動の補完、冠婚葬祭等生活の相互扶助といった集落機能が低下し、その維持が困難になることが懸念されます。

過疎地域等(*4)の集落では、その10%で機能が低下、5%で機能維持が困難とされています。また、集落機能の低下あるいは機能維持が困難とされる集落の割合については、世帯数が9戸以下の集落では5割、高齢者割合が5割以上の集落では4割、平成9年(1997年)から平成18年(2006年)の9年間で人口が50%以上減少した集落では6割、25~50%減少した集落で3割とされています(*5)。

一方、小規模・高齢化集落において、住民が生活するうえで一番困ったこと・不安なこととして、「近くに病院がない」、「救急医療機関が遠く、搬送に時間がかかる」、「近くで食料や日用品を買えない」等、生活に必要な基礎的サービスに関することが多くあげられています(図4-7)。年齢別にみると、世帯主の年齢が高くなるほど、「近くに病院がない」、「近くで食料や日用品を買えない」、「サル、イノシシ等の獣が現れる」ことを最も困っていることとしてあげる傾向にあります。また、世帯主が30~64歳の世帯では、「近くに働き口がない」ことをあげる世帯主が多く、これらの世帯が地域で居住を継続するためには雇用の確保が必要といえます。世帯主が30、40歳代の世帯では、「子どもの学校が遠い」も多くなっています。

また、別の地域に移りたい理由をみても、同様に生活上の理由が最も多くなっています(図4-8)。なお、「世帯の中で車を運転できる人がいなくなりそう」という割合も高くなっており、ここでも高齢化による影響がうかがえます。


*4 国土交通省「過疎地域における中心集落の振興と集落整備に係る調査」(平成11年度(1999年度))及び国土交通省「国土形成計画策定のための集落の状況に関する現況把握調査(平成18年度(2006年度))における調査対象区域。平成11年度調査時点で過疎地域に該当したものの平成18年度時点では非過疎地域に該当する地域が含まれます。
*5 国土交通省「維持・存続が危ぶまれる集落の新たな地域運営と資源活用に関する方策検討調査」(平成20年(2008年)3月公表)



(農業集落の維持のためには農業で十分な所得が得られるような対策が必要)

平成21年(2009年)12月に行われたアンケート調査によると、集落内の農地・農業用水・農道等の農業生産資源を将来にわたって維持し続けることについて、農業者の9割が「維持し続けることは難しくなる」もしくは「どちらかといえば維持し続けることが難しくなる」としています(図4-9)。

集落内の農業生産資源、農村資源を維持していくために必要な施策については、ほとんどの農業者は「農業で十分な所得が得られるような対策」をあげており、また「農村資源維持活動に対する支援対策」、「若者等の人材の確保対策」をあげる農業者も8割と多くなっています(図4-10)。

このように、我が国の農業集落においては、人口減少・高齢化により集落機能が低下しているなかで、地域において十分な所得が得られることが求められており、戸別所得補償制度、農業・農村の6次産業化対策等各般の対策が必要になっていることがうかがえます。




事例:これ以上集落を消滅させない、地域活性化の取組
新潟県糸魚川市(いといがわし)

新潟県糸魚川市根知(いといがわしねち)地区は、糸魚川市と長野県松本市(まつもと)を結ぶ、塩や海産物の運搬路だった「塩の道(千国街道)」の側を流れる姫川に沿った谷間の地域です。歩荷と呼ばれた荷運びの人や牛で物資を運搬していた時代、また、その後のJR大糸線、国道148号線の整備を行っていた昭和40年(1965年)ごろまでは農業以外の就業機会にも恵まれていました。

しかし、JR大糸線、国道148号線の開通後は就業機会も少なくなり、また豪雪で冬期に交通が遮断されることから、主に山間の集落で人口減少が進み、7集落が年間を通じて居住者がいない消滅集落となりました。また、昭和50年(1975年)ごろから子どもの数が減り、地区内の学校が減るとともに、学校を求めて子どもをもつ世帯が地区外に転出する傾向がみられました。昭和35年(1960年)には4,159人だった地区の人口は、現在1,225人となっています。

地区の景色
地区の景色

農業の面をみると、標高100 ~ 200m程度の地域にある水田178haでは、ほ場整備事業が行われたものの、高齢化の進行や米価の下落により耕作放棄地(*1)が拡大しつつありました。このような状況に対応するため、地元の有志が平成12年(2000年)に農業生産法人を設立して農業を行うようになり、その後、平成16年(2004年)には構造改革特区を活用して建設業者も農業に参入しています。

根知地区では、その間にも過疎化・高齢化が進行し、集落機能が低下してきました。その危機感から「根知地区振興計画作成委員会」が組織され、地域住民全員を対象としたアンケート調査の結果を踏まえ、平成17年(2005年)2月に7集落が一体となった地域振興計画が定められました。これ以上集落を消滅させないという決意を込め、Zがアルファベットの最後の文字であることから、振興計画の愛称を「プロジェクトZ」と命名し、これを基に地域で様々な取組を行っています。

耕作放棄地の再利用(そばの刈取り)
耕作放棄地の再利用
(そばの刈取り)

平成17年(2005年)11月には、地域の営農を守るため、担い手のいない農地を規模拡大希望の農業者に紹介する根知農地利用調整委員会「田互作(たごさく)」を設立し、地域内の耕作放棄地の拡大を抑止するとともに、農業参入した建設業者と連携して耕作放棄地の復旧にも取り組んでいます。国道沿いには農産物直売所を設置し、地域農産物、もちや漬物等の加工品の製造販売に取り組んでいます。国道から集落に通じる主要道の沿線には、女性グループが中心となってひまわりやコスモス等を植栽し、景観保全に取り組んでいます。

また、地域の史跡や塩の道の資料館、温泉等の観光資源と農業を組み合わせ、グリーン・ツーリズム等の体験交流活動にも取り組んでいます。平成22年(2010年)2月には、首都圏からのツアー客を受け入れ、イタヤカエデの樹液を採取して、煮詰めてメイプルシロップをつくる体験等の機会を提供しています。

7集落が一体となって振興計画を定め、取り組むことによって、地形条件が不利な集落への協力体制が整備されるとともに、農業や加工・直売、観光等様々な取組が拡大し、地域活性化につながっています。

 
*1 [用語の解説]を参照

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