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農林水産省

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(3)環境保全に向けた食料分野での取組


(食料の輸送に伴う環境への負荷軽減に向けた取組が重要)

我が国は、世界一の農産物純輸入国であり、多種多様な農畜水産物・加工食品を多くの国・地域から輸入しています。これらの輸入に伴うCO2排出量は、年間1,690万tと試算されています。これは、我が国の国内における食料品全体(輸入食料品含む)の輸送に伴うCO2排出量900万t(試算)の1.87倍となります(*1)。

食料の輸送量に輸送距離を乗じた指標として「フード・マイレージ」があります。これは、1990年代から英国で行われている「Food Miles(フードマイルズ)運動」を基にした概念であり、「生産地から食卓までの距離が短い食料を食べた方が輸送に伴う環境への負荷が少ないであろう」という仮説を前提として考え出されたものです。

例えば、東京でブロッコリー1個(250g)を買った場合、米国(西部のカリフォルニア州)から輸入したブロッコリーでは、フード・マイレージは0.25kg×8,579km=2,145kg・km、輸送によって排出されるCO2の量は51gとなります。一方、愛知県から輸送したブロッコリーでは、それぞれ0.25kg×298km=75kg・km、13gとなります。

人口1人当たりの輸入食料のフード・マイレージは、我が国では平成13(2001)年に7,093t・km、平成22(2010)年には6,770t・kmとなっています(*2)。諸外国と比較すると、データが10年前のものであることに留意する必要がありますが、米国1,051t・km、英国3,195t・km、フランス1,738t・km、ドイツ2,090t・kmとなっており、我が国のフード・マイレージは相当程度高い水準となっています。 データ(エクセル:31KB)

このようななか、今後、我が国においては、食料の輸送に伴う環境への負荷軽減に向け、国内生産の拡大、地産地消の推進等の取組を行っていくことが重要です。

なお、フード・マイレージの計算については、トラック、鉄道、船舶等の輸送手段によるCO2排出量の違いが反映されていないことや、輸送面に限定された指標であり、施設園芸等の生産や加工、消費、廃棄面での環境負荷は考慮されていない点に留意する必要があります。このため、近年は、CO2の排出をより包括的にとらえた指標、「CO2の見える化(*3)」の一つの指標である、カーボンフットプリント(*4)を使用することも多くなっています。


*1 中田哲也「食料の総輸入量・距離(フード・マイレージ)とその環境に及ぼす負荷に関する考察」(農林水産政策研究No.5、平成15(2003)年12月) データ(エクセル:29KB)
*2 輸入食料にかかる数値は、輸入国内の輸送距離を含んでいません。輸出国内の輸送距離は含みます。
*3 温室効果ガスの排出、排出削減や農業者の排出削減努力等を消費者にわかりやすく示すことです。
*4 「CO2の見える化」の代表的な取組で、製品のライフサイクル全体(原材料調達~廃棄・リサイクル)で 排出される温室効果ガス排出量をCO2量に換算し表示するものです。関係省庁で連携して試行事業を実施しています。

(カーボンフットプリント等の取組による「CO2の見える化」の進展)

消費者に対しては、販売される農産物・加工食品等においての「CO2の見える化」を通じ、CO2削減に向けた取組の必要性について、普及・啓発等を行っていくことも重要です。この「CO2の見える化」の代表的取組であるカーボンフットプリントとは、ある製品の原材料調達から生産、流通、使用・維持管理、廃棄・リサイクルの全段階で排出された温室効果ガスの排出量を合計し、それをCO2排出量に換算して商品に表示し、農業者や消費者の排出削減意識を高めようとするものです。

農林水産省では、カーボンフットプリントの算定・表示に必要となる「商品種別算定基準(PCR(*1))」策定や、この基準に基づくCO2排出量の算定・表示を支援しており、これまで実際に米、ばら、野菜(ピーマン)にカーボンフットプリント表示をした農産物の販売例があります。そのほか、民間団体等で独自にCO2排出量を計算し、マークを表示している事例もみられます。

なお、カーボンフットプリントの取組のほかにも、CO2削減効果を等級的に表示する方法もあり、農林水産省では、農業者自らの生産段階におけるCO2の排出削減努力を適切に表示するためのルールづくりを支援しています。


*1 PCRは、Product Category Ruleの略

コラム:地元食材を使った和食におけるフード・マイレージの計算
石川県産食材を使用した和食献立
石川県産食材を使用した和食献立

フード・マイレージの指標を用いて、地産地消が輸送に伴う環境負荷低減にどの程度の効果を及ぼすかについて、石川県の和食献立を用いて、石川県産食材を使用した場合と、市場流通に委ねて輸入食材も含めて使用した場合とを比較計測した例があります。

献立の内容は、「せりごはん」(写真左下)、「しいたけと春菊の味噌汁」(同右上)、「能登豚の野菜巻き」(同右下)、「源助大根のふろふき」(同左上)です。

市場流通に委ねて輸入食材も含めて使用した場合は、伝統野菜等石川県産食材を使用した場合に比べ、フード・マイレージは256 倍、CO2 排出量は44 倍の水準になります。


事例:フード・マイレージ低減とカーボンフットプリントの取組
(1)NGOと生協によるフード・マイレージの低減
フード・マイレージ表示例
フード・マイレージ表示例

「フードマイレージ・プロジェクト」は、NGO 団体「大地を守る会」とパルシステム連合会、生活クラブ連合会、グリーンコープ連合の4 団体が、利用者に地域環境問題への関心を高めてもらうとともに、食生活のあり方や食料自給率の問題を考えてもらうきっかけとすることを目的に、平成21(2009)年9月から取り組んでいるものです。

大豆や小麦等日常的によく食べるにもかかわらず自給率が低い5つの品目を対象に、海外からの輸入品と国産品を消費した場合に生じる輸送にかかるCO2量の差を比較し、国産を選ぶことで減らせたCO2量を独自の単位「poco」(ポコ、CO2削減量100g に相当)を用いてカウントしています。平成22(2010)年10 月までの14か月間の取組の結果、「poco」は総計約3.8 億ポコ(3.8 万t-CO2(*1))となりました。

今後もフードマイレージ・プロジェクトを進めることによ り、国産品の利用を呼びかけることで輸送にかかるCO2削減 を訴え、食料自給率の向上につながる取組を進めていくこと としています。


*1 各温室効果ガスの排出量を温室効果をもたらす程度に応じてCO2算し、それらを合算したものです。

(2)しょうゆ製造業者によるフード・マイレージの低減
フード・マイレージの低いしょうゆ
フード・マイレージの低いしょうゆ
青森県藤崎町(ふじさきまち)

青森県藤崎町(ふじさきまち)にあるしょうゆ製造業者(株)中村醸造元は、「食料自給率の向上、地域の農業者・消費者のつながりの強化、経済や地域農業の活性化を図りたい」という社長の経営理念のもと、しょうゆの原料となる大豆、小麦を地元青森県産とするため、県内で農業を行う株式会社と契約栽培を行っています。平成16(2004)年から、地元産原料を使用した品質の高いしょうゆを開発・生産しており、しょうゆ蔵から半径50 マイル(80km)以内で収穫されたものだけを使用することにより、フード・マイレージの大幅な低下に努めています。地元産原料を使用したしょうゆの場合、輸入原料を使用したものよりフード・マイレージが低く、CO2 も99%削減されます。

同社の大豆、小麦の年間使用量は120 ~ 140 tで、主としてインド産大豆、カナダ産小麦を使用していますが、いずれは、すべて地元産大豆、小麦だけでしょうゆを生産したいと考えています。


(3)民間団体独自のカーボンフットプリント
北海道札幌市
食育館
コープさっぽろのカーボンフットプリントマーク
コープさっぽろのカーボンフットプリントマーク

北海道札幌市(さっぽろし)のコープさっぽろは、平成22(2010)年3月から、主原料が北海道産100%のみそ、しょうゆ、うどん、切りもち、肉まん、チャーハン、ほたてピラフ、グラタン等16 商品で、カーボンフットプリントの算定、表示に取り組んでいます。

同生協では、以前から組合員の間でCO2削減等の環境問題への関心が高く、エコフィード(食品残さ等を利用して製造された飼料)等の研究を行っていました。取組を進めているなかで、英国のスーパーマーケットが、「価格、おいしさ、安心」という従来の商品価値に、「環境」という新たな商品価値(カーボンフットプリント)を付加して食品を販売していることを知ったことから、室蘭工業大学と共同で研究し、カーボンフットプリントを導入しました。

英国のスーパーマーケットでは「原材料→原材料輸送→工場→製品輸送→店舗→商品の使用・調理→廃棄・リサイクル」の7段階をCO2の計算対象としていますが、同生協では、食品の販売者として管理ができる現実的な計算対象として、商品の使用・調理、廃棄・リサイクルを含まないものとしています。

計算したCO2排出量については、宅配ではカタログに、店舗ではポップ(アイキャッチャー)に独自のマークを表示しています。

札幌商工会議所が行った調査によると、コープさっぽろ等がカーボンフットプリントに取り組んでいることを知っている消費者は5%しかいませんでした(*1)。しかし、カーボンフットプリントの仕組みについて良いと考える消費者は83%、今後商品を選ぶ際に、カーボンフットプリントマークが付いていることが選択理由になると考える消費者は49%いました。このことから、カーボンフットプリントについて、取組意義はもちろん、取組主体、商品のPR もしっかり行っていくことの必要性がうかがわれます。


*1 札幌商工会議所「カーボンフットプリント認知度調査」(平成22(2010)年11 月)消費者341 名を対象としたアンケート調査


(4)国によるカーボンフットプリント表示に向けた算定基準整備

農林水産省では、平成21(2009)年度から、カーボンフットプリントの表示に向けて、算定基準の整備等の取組を始めました。現在では、「うるち米」、「花き」、「野菜及び果実」等の算定基準が決められており、実際にカーボンフットプリントの算定結果の表示が行われた例もあります。

今後、さらに、新たな品目について算定基準を策定するとともに、既に基準のある品目については、商品へカーボンフットプリントの表示が実際に行われるよう支援していくこととなっています。


フード・マイレージ低減とカーボンフットプリントの取組      


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