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農林水産省

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(2)国際的な食料需給をめぐる動向

(バイオ燃料生産の拡大による食料需要との競合)

近年の原油価格の高騰、国際的な地球温暖化対策、エネルギー安全保障への意識の高まり等を背景に、世界各国でバイオ燃料の生産が拡大しています。

平成22(2010)~32(2020)年の10年間において、バイオエタノールの生産量はブラジル、バイオディーゼルはEU(27)(*2)で大きく増加し、それぞれ1.6倍、2.1倍となる見通しとなっています(図2-37)。農産物のバイオ燃料向けの需要は平成32(2020)年には、世界の穀物生産の13%、植物油生産の15%、さとうきび生産の30%を占めると見込まれ(*3) 、国際食料需給への影響が懸念されます。


*2 平成24(2012)年3月現在、EUに加盟している27か国
*3 OECD-FAO「Agricultural Outlook 2011-2020」


(各国における輸出入規制等の動き)

食料需給のひっ迫や食料価格高騰の際には、輸出規制により、自国内の食料安定供給を優先させる傾向がみられます(図2-38)。平成22(2010)年にはロシアが干ばつによる穀物の減産から8月以降の小麦、大麦、とうもろこし等の輸出禁止措置を実施し、その後、ウクライナやカザフスタンといった国においても穀物や油糧種子について輸出枠の設定や輸出禁止といった措置が実施されました。その後、平成23(2011)年に入り、穀物の生産が回復してきたことにより、当該規制措置を緩和する動きがみられます。


図2-38 農産物の輸出規制の状況

穀物の価格高騰への対応策として、穀物等の輸入関税の引下げ等の動きもみられます。EUでは、ロシアの穀物輸出禁止以降、飼料用穀物の価格高騰を防ぐため、とうもろこしの輸入関税の賦課の一時停止(平成22(2010)年8月)や小麦・大麦の輸入割当枠内の関税賦課の一時停止(平成23(2011)年2月)を実施しています。また、インドネシア、モロッコ、韓国、ロシア等においては、平成23(2011)年に穀物等の輸入関税の一時的な引下げや輸入関税賦課の一時停止等の措置がとられました。

一方、アフリカやアジア等の途上国を中心に、食料価格の高騰も一因となった抗議行動や暴動等が相次いで発生しました(図2-39)。平成22(2010)年末から北アフリカや中東で発生した大規模反政府デモや抗議活動(アラブの春)についても、食料価格の高騰が発生の一因となったとみられています。


図2-39 食料品価格高騰を一因とする各国の抗議運動や暴動

(国際的な食料価格高騰への対応)

平成23(2011)年6月22~23日、フランスのパリで開催されたG20農業大臣会合において、食料安全保障の確保を目的とした食料・農産物価格の乱高下への対処について議論され、G20による具体的な取組を盛り込んだ「食料価格乱高下及び農業に関する行動計画」が合意されました。この行動計画では、各国が食料の生産、消費、在庫情報を共有する「農業市場情報システム(AMIS(*1))」や過度な食料価格変動の際の対応を策定する「迅速対応フォーラム」等を立ち上げるとともに、地域における緊急人道備蓄の可能性の検討等に取り組むこととされました。

これを受けて平成23(2011)年11月3~4日に開催されたG20カンヌ首脳会議では、この行動計画の実現に向け各国が協力することが合意されました。


*1 AMIS は、Agricultural Market Information System の略

(中長期的にみた食料需給見通し)

農林水産省(農林水産政策研究所)が予測分析した、「2021年における世界の食料需給見通し」では、「総人口の継続的な増加、所得水準の向上等に伴う新興国・途上国を中心とした食用・飼料用需要拡大に加え、緩やかに増加するバイオ燃料原料用需要も要因となり、農産物需要は増加が見込まれ」、「世界の食料需給は、今後も穀物等の需要が供給をやや上回る状態が継続し、食料価格は高値圏で、かつ伸びは逓減(ていげん)するものの上昇傾向で推移する」としています。

主要品目別の価格の動向をみると、平成21(2009)~33(2021)年までの間の実質価格の増加率は、米(2%)や小麦(5%)に比べて、肉類(6~12%)、脱脂粉乳(24%)、植物油(34%)、バター(39%)等が高くなると見込んでいます(表2-10)。

穀物の需給見通しを地域別にみると、各地域とも生産量は増加する見通しとなっていますが、アジア、アフリカ、中東地域においては、生産量は消費量の伸びを下回っています。この結果、これらの地域では、純輸入量が拡大し、食料の偏在化傾向は引き続き拡大するとしています(図2-40)。




また、国連食糧農業機関(FAO)、国際農業開発基金(IFAD)、世界食糧計画(WFP)の共同報告書によると、世界の食料価格が今後も高止まりし不安定な状況が続くとしています(*1)。また、新興国での消費拡大や世界の人口増加等により、「食料のさらなる需要増が見込まれる」としており、特に食料を輸入に依存するアフリカ等の貧困層が大きな影響を受けるとしています。


*1 FAO、IFAD、WFP「The State of Food Insecurity in the World 2011」

コラム:国際機関等による食料需給見通し

穀物をはじめとする農産物の需給見通しについては、各国際機関が世界の食料需給見通しを公表しています。これらの見通しのモデルについては、すべての農作物で平年作が続くことが前提となっています。

また、見通しには、輸出国の立場、各国の農業政策、途上国の食料問題への関心等がそれぞれ反映されています。我が国では農林水産省(農林水産政策研究所)が食料輸入国の立場から、同様に食料輸入国であるアジア各国の需給分析を強化して、我が国独自に将来の食料需給を見通し、世界の食料事情の変化に対応した新たな食料戦略の検討に活用しています。


世界の食料需給見通し

今後の長期的な食料需給を需要面からみた場合、昭和25(1950)年に25億人であった世界の人口は、昭和62(1987)年に50億人、平成11(1999)年に60億人と途上国を中心に増加を続け、国連人口基金(UNFPA)の推計によると、平成23(2011)年10月に70億人を超えたとしています(図2-41)。今後も人口の増加傾向は続き、平成62(2050)年に93億人、平成112(2100)年までに100億人を上回るとしています(*1)。

世界の人口の増加が続く中、栄養不足人口(*2) は平成22(2010)年には全人口の13%を占める9億3千万人となっています。前年より改善されましたが、世界食料サミット(平成8(1996)年)において平成27(2015)年までに4億2千万人に削減するとした目標に対し、依然として高水準にあります(図2-42)。アフリカ東部の「アフリカの角(つの)(*3)」 と呼ばれる地域では、平成22(2010)年後半からの干ばつによって重大な食料危機が発生しました。特にソマリアでは飢饉(ききん)という深刻な事態に陥り、多くの人々が飢餓(きが)に苦しみ、難民・避難民が増大しました。この地域を含め、対外的な支援を必要としている国は、平成23(2011)年12月現在で33か国となっています(*4) 。


*1 国連人口基金「State of World Population 2011」
*2 FAOにおいて「食物から摂取する熱量が、軽労働に従事した際の一定の体格の維持を前提として、国や民族ごとに算出される基準値よりも低い状態にある人々の数」と定義
*3 エチオピア、エリトリア、ジプチ、ソマリア、ケニアが含まれる地域
*4 FAO「Crop Prospects and Food Situation」


また、世界的な金融危機による世界経済の低迷後、先進国を中心に経済成長にぜい弱性がみられる一方、長期的にみれば新興国・途上国においては、経済成長が続き所得も上昇するとみられ、畜産物、油脂類、水産物に対する需要は、食文化や気候・風土等で違いはあるものの増加する傾向にあると考えられています。

一方、供給面からみた場合、品種改良や化学肥料の投入、かんがい施設の整備、遺伝子組換え作物の導入による密植栽培等により単収の向上が見込まれるものの、途上国の工業化に伴う優良農地の減少や、新たな農地の開拓による森林伐採等の自然環境への負荷に対する配慮といった農用地の面的拡大への制約、農産物が収穫後に相当失われているといった課題もあります。

これまで、単収の向上により生産量の増加が支えられてきましたが、近年、単収は伸び悩んでいます(図2-43)。さらに、地球温暖化、資源の枯渇、土壌劣化、水資源の制約等不安要素も多く存在しています。

このように、世界の農産物需給は不安定性を有しており、場合によってはひっ迫する可能性もあります。このため、これらの需給変動要因の影響についても注視していく必要があります。



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