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農林水産省

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(3)輸出戦略の再構築に向けて


農産物の販売量を拡大し、農業者の所得を増大させていくためには、海外への販路開拓を通じた輸出拡大の取組も重要です。我が国では、平成32(2020)年までに輸出額1兆円水準を目指すという目標の実現に向けて、取組を進めているところです。

基本計画においても、「世界的な日本食の広がりやアジア諸国等における経済発展に対応し、高品質な我が国の農林水産物・食品の海外販路を維持・拡大することにより、輸出額を平成32年までに1兆円水準とすることを目指す」としています。


(円高や東電福島第一原発の事故の影響によりアジアを中心に輸出額が減少)

我が国の農林水産物・食品の輸入額については、近年、7兆~8兆円程度で推移しています。一方、輸出額については、輸入額に比べて相対的に低い状況にはあるものの、近年は、おおむね増加傾向で推移してきました。

しかしながら、円高による影響や東京電力株式会社福島第一原子力発電所(以下「東電福島第一原発」という。)の事故に伴う諸外国の輸入規制強化により、平成23(2011)年の輸出額は4,511億円となり、前年の4,920億円から大きく減少しました(図3-23)。



輸出先国・地域別にみると、特に香港、韓国、中国をはじめとしたアジア地域への輸出が減少していますが、EUへの輸出はほぼ横ばいとなりました(表3-14)。農林水産物・食品の輸出額の内訳を品目別にみると、農産物及び水産物で減少しており、特に、畜産品、穀物等、野菜・果実等の減少率が大きくなっています(表3-15)。

農林水産物・食品の輸出が減少している現状を踏まえ、諸外国に対し、政府一体となって我が国の食品の安全確保の取組を情報提供し、輸入規制撤廃・緩和の働きかけを実施しています。また、主要輸出先国において、日本産食品の安全性や魅力のPRを行うなどにより、早期の信頼回復につなげていくこととしています。

このような働きかけと並行して、国内においては、諸外国の輸入規制に対応するため、都道府県の協力の下、産地証明書等の発行体制の整備や輸出農産物にかかる放射性物質の検査機器の導入に対する支援を行いました。


(輸出戦略の再構築に向けた提言を取りまとめ)

日本産農林水産物・食品への信認を回復し、輸出額を拡大していくためには、東電福島第一原発の事故の影響や円高等の課題を踏まえた戦略を再構築することが必要です。

このため、農林水産省は、関係省庁と連携し、有識者からなる農林水産物・食品輸出戦略検討会を立ち上げました。この検討会での審議の結果、平成23(2011)年11月に、検討会における提言として、「農林水産物・食品輸出の拡大に向けて」が取りまとめられました(図3-24)。

提言では、農林水産物・食品の輸出額1兆円水準を実現するという目標が改めて示され、目標達成に向けた5つの戦略が掲げられました。

戦略1の「福島第一原子力発電所事故の影響への対応」は、我が国の農林水産物・食品への信頼を回復するため、安全性確保に向けた我が国の取組に関する情報発信、諸外国に対する輸入規制の緩和・撤廃への働きかけ、輸出回復に向けたPR・プロモーション活動の展開等を国と関係者が協力して、粘り強く、タイムリーに、誠実・丁寧に対応することとしています。

戦略2の「国家戦略的なマーケティング」は、諸外国との競争に勝ち抜き、さらなる輸出の拡大を図るため、ジャパン・ブランドの構築等、品目別に最適なマーケティング体制を構築し、戦略的なプロモーションを展開するとともに、各種セミナーの開催による情報提供や人材の育成、輸出先国・地域における在外公館や独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)によるサポート体制を強化することとしています。

戦略3の「ビジネスとしての輸出を支える仕組みづくり」は、農林水産物・食品の輸出ビジネスを成長産業として育成していくため、ファンドの創設、産業界の技術やノウハウの蓄積の活用等の輸出を後押しするスキームを構築し、このスキームの下、新たなビジネス・モデルの構築を推進することとしています。

戦略4の「確かな安全性・品質の確保と貿易実務上のリスク等への的確な対応」は、日本産食品への信頼を回復し、輸出機会の増大を図るため、海外で通用する安全・品質管理体制の構築を推進するとともに、知的財産保護の推進や地理的表示によるジャパン・ブランドのイメージ向上等を図るほか、輸出先における通関や検疫をめぐる個別案件への迅速な対応等に取り組むこととしています。

戦略5の「海外での日本の食文化の発信」は、日本食文化を次世代に継承するとともに、我が国の農林水産物・食品の輸出を拡大していくため、観光等の他分野・他産業との連携、在外公館等における日本食文化の発信機能の強化、日本食文化を理解し支える海外人材の育成等の取組を推進することとしています。


図3-24 「農林水産物・食品輸出の拡大に向けて」の概要

事例:販路拡大に向けた輸出の取組
三重県(熊野市、御浜町、紀宝町)
タイの売場の様子
タイの売場の様子

三重南紀農業協同組合が管轄する三重県熊野市(くまのし)、御浜町(みはまちょう)、紀宝町(きほうちょう)では、温暖多雨な気候を活かして、9~10月に収穫する極早生温州(ごくわせうんしゅう)と10~12月に収穫する早生温州を中心に様々なかんきつ品種が栽培されており、かんきつの収穫も1年を通じて行われています。

しかしながら、同地域で生産量の多い早生温州については、産地間の競争が激しく、価格が低迷するという問題をかかえていたことから、三重南紀農業協同組合は、新たな販路の拡大に向けてみかんのタイへの輸出を展開しています。

平成22(2010)年には、試験的に1.7tを輸出し、試食会等を通じた現地での反応を確認した上で、平成23(2011)年には、7tまで輸出を拡大して販売を行いました。輸出されたみかんは、タイのバンコク市近隣の百貨店を中心に富裕層向けに1kg当たり約1,200円で販売されていますが、発売から1か月程度で完売するなど、高い評価を得ています。

今後は、タイへの輸出量を増やしつつ事業を軌道に乗せるとともに、香港や台湾等への輸出についても検討することとしています。

また、輸出により海外における産地の知名度を高めることを通じ、国内でのブランド力の向上にも結び付くことを期待しています。

 

(地理的表示の保護制度の導入に向けた検討)

地理的表示とは、いわゆる地域ブランドのことであり、地域の自然的特性を活かした方法またはその地域の伝統的方法により生産・加工された結果、当該地域に固有の品質または特徴を有する産品が、特定の地域を原産地とすることを示すために使用される名称をいいます。

このことについて、基本計画においては、「決められた産地で生産され、指定された品種、生産方法、生産期間等が適切に管理された農林水産物に対する表示である地理的表示を支える仕組みについて検討する」としています。また、再生基本方針においては、「我が国の高品質な農林水産物に対する信用を高め、適切な評価が得られるよう、地理的表示の保護制度を導入する」としています。

地理的表示の保護制度では、我が国の地域特産品となっている農林水産物や食品について、高付加価値化・ブランド化を一層推進し、農山漁村の活性化が図られるようにするため、一定の生産・品質等の基準を満たしている産品についてその名称使用を認めるとともに、基準を満たしていない産品についての名称使用を禁止する公的な仕組みを導入することとしています。

この地理的表示の保護制度の導入により期待される効果としては、地域ブランドである農林水産物や食品の対外的信用を高めることにより、対象産品の海外への輸出促進につながることがあげられます。また、消費者の信頼が向上することにより、対象産品の価格が上昇するとともに、生産者の所得が増加するなどの効果もあげられます。さらに、地域ブランドである農林水産物の加工食品化やグリーンツーリズム等の取組との連携により、農山漁村の活性化に資することが期待されます。

これらの状況を踏まえ、平成24(2012)年3月、農林水産省は、適切な時期に地理的表示の保護制度を創設できるよう、有識者等による研究会を立ち上げました。

今後の検討に際しては、地域性を活かした農林水産物や食品の生産者が消費者との間で信頼の絆により結び付き、双方の利益や効用が向上するような制度の構築が求められています。


コラム:日本食文化をユネスコ無形文化遺産に
無形文化遺産登録に向けたPR パンフレット
無形文化遺産登録に向けたPR パンフレット

ユネスコ(UNESCO*1)では、人類共通の遺産として世界の有形・無形の遺産の登録・保護を行っています。

「無形文化遺産」は、地域に根付く芸能や社会的慣習等、習慣や人間の知恵といった形のないものを対象としており、現在、日本では歌舞伎や雅楽等、20件が登録されています。

近年、世界では、自国の食習慣を「無形文化遺産」に登録する動きがあり、平成22(2010)年には、フランスの美食術、地中海料理(スペイン、イタリア、ギリシャ、モロッコ)、メキシコの伝統料理、平成23(2011)年には、トルコのケシケキの伝統が登録されました。

このような状況を踏まえ、我が国でも、地域社会の弱体化や食生活の画一化の進展等の影響により、失われつつある伝統的な食文化を継承するための手段として、日本食文化のユネスコ無形文化遺産への登録を目指すこととなりました。

申請に当たっては、「和食;日本人の伝統的な食文化」と題し、「和食」を、「「自然の尊重」という精神を食事の場で表現するという社会的慣習(習わし)」と定義しています。この中で、日本食文化は、(1)日本の国土に根ざした多様な食材を新鮮なまま使用、(2)米を中心とした栄養バランスに優れた食事、(3)食事の場において「自然の美しさ」を表現、(4)正月や田植え、収穫祭のような年中行事と密接に関連という4つの特徴があるとしています。

また、登録提案に際しては、登録すべき日本食文化が文化としてきちんと意識されているかどうか、食文化を無形文化遺産として次の世代に受け継いでいく体制・方法がしっかりととられているかどうかが審査されます。このため、国民へのアンケート調査を行ったところ、日本の食文化を次世代に継承すべきと「強く思う」または「そう思う」が98%、日本食文化の無形文化遺産登録を「強く支持する」または「支持する」が92%と、極めて高い支持が示されています*2。さらに、約1,500のコミュニティ、団体等から、本取組に対する賛同があるところです。

これらのことを踏まえ、ユネスコへの申請書は、平成24(2012)年3月末に提出され、今後、早ければ平成25(2013)年秋に登録の可否が決定されます。

今回の日本食文化のユネスコ無形文化遺産登録へ向けた取組によって、私たち日本人一人ひとりが、自らの食生活や未来に伝えるべき日本の食文化について、改めて考える契機となることが望まれます。


*1 UNESCOは、United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization(国際連合教育科学文化機関)の略。教育・科学・文化を通じて国際理解や国際協力を推進し、人々の交流をとおした国際平和と人類の福祉を促進する国際連合の専門機関
*2 日本食文化の世界無形遺産登録に向けた検討会「国民意向調査速報結果」(平成23(2011)年9月)、20歳以上の日本国民を対象として実施したwebアンケート調査(有効回答総数3,134)

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