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農林水産省

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(2)環境保全に向けた農業の推進

(環境保全型農業直接支援対策を開始)

環境保全に向けた農業に対する支援については、平成19(2007)~22(2010)年度の間、農地・水・環境保全向上対策において、農地・農業用水等の資源の保全向上に関する地域ぐるみでの共同活動への支援と、化学肥料・化学合成農薬の使用を大幅に低減する先進的な営農活動への支援とを一体的に実施しました。しかしながら、共同活動の素地がない野菜、果樹での取組が進まないなどの状況があったため、意欲ある農業者が取り組む環境保全に効果の高い営農活動に対して幅広く支援を行っていくことが必要とされました。このことについて、基本計画においては、農地・水・環境保全向上対策の効果と課題を明確化した上で、「環境保全機能の維持・向上に関する直接的な助成手法(例えば「環境支払」)のあり方も含め、国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全等の多面的機能の維持の観点から、今後の施策のあり方について検討する」としています。

このため、個々の農業者の環境保全機能の維持・向上に資する取組を直接的に支援する観点から、平成23(2011)年度から、戸別所得補償制度の本格実施に併せて、農地・水・環境保全向上対策とは切り離した形で環境保全型農業直接支援対策が開始されました(図3-65)。

平成23(2011)年度の環境保全型農業直接支援対策の申請件数は7,918件、申請面積は2万957haとなりました(*2)。都道府県別の申請面積は、北海道が4,179haと最も多く、次いで新潟県2,720ha、福井県2,447haとなっています。

なお、平成24(2012)年度からは、炭素貯留効果の高いたい肥の水質保全に資する施用(*3)、バンカープランツ(*4)、江の設置(*5)等、地域を限定して支援の対象とする地域特認取組についても、交付金が支払われることとなっています。


*2 平成23(2011)年8月末現在の申請状況。先進営農活動支援交付金は含まない。
*3 炭素の割合の低いたい肥を過剰に施用すると窒素成分が流出して水質を悪化させることから、炭素の割合が高いたい肥を適正に施用すること
*4 天敵をとどめるために、作物の周囲に植える植物のこと
*5 生物に生息場所を提供するため、水田に栽培期間中を通じて湛水することができる溝(江)をつくる取組

図3-65 環境保全型農業直接支援対策の概要

(エコファーマーの認定を推進)

環境負荷の軽減等に配慮した持続的な農業を推進するエコファーマー(*1)は、「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律」に基づき、農業改良資金の償還期限の特例措置を受けることができるほか、各都道府県による助言や技術指導を受けることができます。また、近年では、農地・水・環境保全向上対策で実施されていた先進的な営農活動への支援や、前述した環境保全型農業直接支援対策に取り組む際の要件となっています。

このような支援措置や、環境に配慮した農産物を求める消費者ニーズの高まり等を背景に、エコファーマー認定件数は、平成23(2011)年3月末現在で、21万2千件となっています(図3-66)。前年からの推移を地域別にみると、北陸において最も認定件数が増加(1万1千件増加)しています。これは、福井県と農協とが協力し、平成23(2011)年産米を農協に出荷する米生産農家をすべてエコファーマー化するという目標を掲げ、各種PR活動を強力に推進し、同県の認定件数が2,946件から1万3,693件に大きく増加したことによります。一方、九州の認定件数は1千件減少していますが、この背景としては、高齢化等により、5年の認定期間を終了した農業者のうち、再認定を受ける者が少なかったこと等があげられます。


*1 〔用語の解説〕を参照


環境保全型農業に対する理解や意欲の高いエコファーマーは、21万件を超えるまでに増加してきたものの、個々での取組にとどまっており、その取組レベルには差があります。また、エコファーマーに対する消費者等の認知度の低さや、コストに見合った適切な対価の支払いといった課題もあります。これらの課題を解決するためには、農業者自身による技術の習得や改良、消費者ニーズの把握や理解の促進、販路の開拓等の取組が必要です。このため、全国ネットワークを設立し、多様な農業者の取組情報の共有、技術の習得を行う全国交流会・研究会を開催して、流通関係者・消費者との交流を行い、エコファーマーの取組の一層の展開を図っています。


事例:エコファーマーによる組織的取組
愛知県(豊橋市)
栽培されているなす
栽培されているなす

愛知県豊橋市(とよはしし)のJA豊橋茄子(なす)部会は、県内でいち早く訪花昆虫を導入し、平成14(2002)年には、豊橋茄子のブランド力を高めるため、部会員全員がエコファーマーの認定を受け、環境に配慮した栽培に取り組んでいます。

部会ではエコファーマー栽培の統一基準を設け、(1)太陽熱消毒による土壌消毒剤の低減、(2)防虫ネットの展張による害虫侵入の低減、(3)抵抗性台木による病害低減、(4)訪花昆虫利用による着果促進剤の低減、(5)粘着板による害虫密度抑制等により、農薬に頼らない防除を推進しています。また、出荷箱へのエコファーマーマーク表記、店頭用POP広告やレシピ作成をとおして、卸売業者や消費者へのPR活動も展開しています。

このほかに、りん酸とカリを抑えたL型肥料導入によって施肥を適正化するとともに、肥料の窒素成分を緩効性にすることで、窒素流亡の低減が図られています。さらに、リアルタイム栄養診断(なす葉柄硝酸濃度測定)を実施し、適期に追肥を行うことにより、収量の向上も実現しています。

これらの取組の結果、平成21(2009)年においては、エコファーマー認定以前の平成13(2001)年と比較して、施肥量20%、化学合成農薬散布回数10%がそれぞれ低減し、環境保全とコストダウンの両立を実現しました。

今後は、なすの主要害虫であるアザミウマ類、コナジラミ類を捕食する天敵スワルスキーカブリダニを中心とした防除体系を確立し、環境に配慮した栽培に向けた取組を一層進めていきたいとしています。

 

(有機JAS制度を通じて有機農業を推進)

化学的に合成された肥料及び農薬を使用せず、遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、環境への負荷をできる限り低減した農業生産方法である有機農業について、基本計画においては、「有機JAS制度の活用を推進すること等を通じ、有機農産物の生産、流通の更なる拡大を促進する」としています。

平成23(2011)年4月現在、有機JASの認定を受けたほ場は田3,214ha、畑6,169haで耕地面積全体の0.2%となっています。また、平成22(2010)年度における有機農産物のJAS格付数量は、野菜を中心として、全体で5万6千tとなっています(表3-21)。


こうした中、農林水産省においては、有機農業の一層の推進を図るため、技術の開発、地域の実態に応じた栽培技術の体系化、実需者に対する講習会や地域ブロックごとのマッチングフェアの開催等の取組を支援しています。


事例:有機農産物の市場拡大に向けた取組
千葉県(成田市)
商談会への出店の様子
商談会への出店の様子

千葉県成田市(なりたし)の農事組合法人ナチュラルシードは、平成17(2005)年に有機JAS認定事業者の認定を受け、野菜を中心に41haの有機農業に取り組んでいます。栽培品目は、にんじん、ばれいしょ等60品目であり、自家採種を行うなど、種子の段階から安全・安心な農作物の生産を進めるとともに、有機JAS制度の認定を受けた全国の生産者グループとの提携を通じ、有機農産物生産者間のネットワーク化を進めています(現在、ネットワーク内の提携生産者は約1,500人)。空港が近いという立地条件に加え、このネットワークを活用することにより、全国から直接有機農産物を集荷できるため、年間をとおした販売が可能となっています。

有機農産物の主な販売先は、生協やスーパーマーケットですが、さらなる販路やネットワークの拡大を目指して、農産物展示会、商談会等への積極的な出展を進めています。

また、国内外双方の販路拡大を図るため、農産物の商談会や海外で開催される有機専門見本市への出展、香港やシンガポール等への輸出に向けた検討を鋭意進めています。

 

(農林水産省生物多様性戦略の改定)

我が国では、生物多様性保全を重視した農林水産業を強力に推進するための指針として、平成19(2007)年7月に「農林水産省生物多様性戦略」(以下「戦略」という。)を策定しました。その後、平成20(2008)年6月に「生物多様性基本法」が施行され、平成22(2010)年10月に生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開催され、さらに平成23(2011)年10月に生物多様性地域連携促進法(*1)が施行されました。

このような国内外の動きに対応し、農林水産業を持続可能な産業として維持・発展させていくためには、農林水産業と密接に関連している生物多様性を保全し、持続的に利用していくことが不可欠です。このため、我が国の農林水産業、農山漁村が有する生物多様性の保全等の機能をより一層発揮することとし、平成24(2012)年2月に戦略の改定を行いました。

新たな戦略では、生物多様性をより重視した持続可能な農林水産業を推進し、それを支える農山漁村の活性化を図ることとしています。また、幅広い国民の理解と参加の下、地域の創意工夫を活かした生物多様性保全の取組を総合的に推進することとしています。平成23(2011)年度から開始された環境保全型農業直接支援対策は、生物多様性保全等に効果の高い営農活動に取り組む農業者等を直接支援するものであり、本戦略の方針に沿った重要な取組の一つとなっています。

今後は、本戦略で示された課題や方向性に基づき、農林水産業における生物多様性に関する取組を推進することが重要です。


*1 正式名称は「地域における多様な主体の連携による生物の多様性の保全のための活動の促進等に関する法律」

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