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農林水産省

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(2)食品産業をめぐる状況変化への対応


(食品リサイクルと食品ロスの削減)

図2-4-8 業種と分別レベルに応じたリサイクル手法

食品リサイクル法(*1)では、食品製造等の過程で発生する加工残さ、流通・消費過程等で発生する売れ残りや食べ残し等の発生抑制を行うとともに、発生した食品廃棄物等については、飼料化や肥料化等の再生利用に取り組むことにより、廃棄処分を減らし、環境負荷の少ない循環型社会の構築を目指しています。

平成22(2010)年度における食品廃棄物の年間総発生量は、食品産業全体で2,086万tとなっており、発生抑制、飼料や肥料等への再生利用、熱回収、減量の再生利用等の実施率は、食品産業全体では82%に達していますが、食品流通の川下に至るほど、分別が難しくなることから、実施率は低下しています(図2-4-8、表2-4-3)。


*1 正式名称は「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」
 

このような中、農林水産省及び関係省庁は、平成24(2012)年4月に、過剰生産・在庫及び返品等により発生する可食部分の廃棄処分が多い16業種について、他の業種に先行して発生抑制の暫定目標値を設定しました。

今後、定期的に報告される取組のデータを検証し、今回、目標値が設定されなかった業種についても2年後の平成26(2014)年度を目途に目標値を設定する予定ですが、当面は自主的な努力により、廃棄処分されている部分の発生抑制に努めるとともに、再生利用の更なる推進を図ることが必要です。

また、食品廃棄物の中にはまだ食べられるのに捨てられている「食品ロス」が500~800万t発生しており、その原因の一つとして、いわゆる3分の1ルールといった流通過程において賞味期限が近づくことによる返品等の商取引慣行がありますが、こうした商取引慣行は、個別企業等の取組では解決が難しいため、フードチェーン全体における取組や業種を超えた対応により解決していく必要があります。

このような中、平成24(2012)年10月にフードチェーンに関わる食品関係企業から成る「食品ロス削減のための商慣習検討ワーキングチーム」が発足し、検討が進められた結果、平成25(2013)年3月に、商慣習の実態の把握とともに、納品期限の見直し等に向けた中間取りまとめが公表されました。

一方、食品ロスの約半分(200~400万t)は一般家庭からのものであり、食品ロス削減のためには消費者の意識改革も併せて実施していく必要があることから、内閣府、文部科学省、農林水産省、環境省及び消費者庁で構成される「食品ロス削減関係省庁等連絡会議」等を通じ関係府省庁による連携の下、国民運動の展開に向けた食品ロス削減の取組を推進していくこととしています。

(健康志向の高まりへの対応)

健康食品とは、法律上の定義はなく、一般的に広く健康の保持増進に資する食品として販売・利用されるもの全般のことです。例えば、健康増進法及び食品衛生法に規定されている特定保健用食品や栄養機能食品のほか、機能性を活かした一般食品等が該当します。高齢化の進行や健康志向の高まりの影響により、健康食品市場については、平成9(1997)年の約0.7兆円から平成23(2011)年の約1.2兆円まで1.7倍に拡大(*1)しており、中でも特定保健用食品の市場規模は、平成9(1997)年の約1,300億円から平成23(2011)年の約5,200億円まで4倍に拡大(*2)しています。

農林水産省では、機能性を有する農林水産物・食品について、人での有効性を科学的に明らかにするための研究を医学分野とも連携しながら進めるとともに、機能性成分を多く含む品種や栽培方法の開発、それらの農林水産物を活用した食品・新素材の開発・事業化を推進しています。


*1 健康産業新聞(平成23(2011)年12月公表)
*2 (公財)日本健康・栄養食品協会「特定保健用食品の市場規模調査」(平成24(2012)年3月公表)

(高齢化への対応)

高齢化の進行に伴い、高齢者人口と単身世帯数は増加傾向にあります(*1)。このような高齢化の進行は、食料の消費構造にも変化を与えており、食品産業では高齢化に対応した様々な取組が行われています。

日本公庫が食品関係企業を対象に行った高齢化への対応に関する調査によると、「安心・安全面の強化」は平成16(2004)年の47.3%から平成24(2012)年の36.1%に11.2ポイント低下するとともに、「健康機能性の強化」は平成16(2004)年の22.3%から平成24(2012)年の16.2%に6.1ポイント低下しています(図2-4-9)。一方、「商品の少量化」は平成16(2004)年の18.6%から平成24(2012)年の25.6%に7.0ポイント上昇し、同様に「商品の個包装・小分け化」は13%から19.9%に6.9ポイント上昇し、「食べやすい大きさ・形状・硬さへの変更」は11.9%から17.2%に5.3ポイント上昇するなど、高齢化に対応して、商品の質的な変化に加えて量的な変化も重視していることがうかがえます。




しかしながら、栄養バランスに配慮した弁当、薄味のそう菜等の高齢者向け加工食品の製造や販売が拡大する中、需要に見合った供給体制が整っていない状況が生じています。

このような状況を踏まえ、農林水産省は、平成23(2011)年12月、一般小売用の高齢者向け加工食品の供給を推進するための課題を明確にするとともに、食品製造業・小売業等の円滑な連携等による高齢者向け加工食品の安定的提供に向けた方策を整理した「高齢者向け加工食品の製造・流通推進に向けて」のガイドラインを策定しました。

また、介護食品については、介護食品に係る現状や課題を整理し、対応方向について検討するため、学識経験者や医療・介護関係者等から成る会議を開催し、将来を見据えた介護食品の存り方について論点整理を行うこととしています。


事例:利用者のニーズに応えた介護食品の開発

東京都世田谷区(せたがやく)の東京中央食品(とうきょうちゅうおうしょくひん)(株)は、鹿児島県の種子島(たねがしま)で生産されている安納芋(あんのういも)を使用した介護食品向けのデザートを開発しました。この商品は、「高齢者は便秘になりやすいので繊維質が豊富な介護食品が欲しい」という介護施設の関係者の声や、「飲み込む力が低下しているが甘くておいしいデザートを食べたい」という介護食品の利用者の声を受けて開発された介護食品で、安納芋の「食物繊維が豊富」、「ゆっくり加熱すると甘みが増す」という特性を活かしています。

香川県小豆島町(しょうどしまちょう)の(株)一ノ蔵(いちのくら)は、他の食品に利用していた電流を通じた加熱により食品の素材を破壊しない装置の特許技術を活用して、郷土料理である鯛飯を魚の頭まで食べられる介護食品として開発し、販売しています。この商品は、「高齢者は噛む力が弱くカルシウムが不足しがち」という介護施設の関係者や、「鯛飯は食べたいが鯛の骨の処理に手間がかかり食べなくなった」という介護食品の利用者の声を受けて開発された介護食品で、特許技術により骨まで食べられるようにすることでカルシウムの摂取を可能にしました。

安納芋を使用したデザート
安納芋を使用したデザート
骨まで食べられる鯛飯
骨まで食べられる鯛飯
 

(食料品アクセス問題への対応)

近年、飲食料品店の減少、大型商業施設の郊外化等が進行した結果、過疎地域のみならず都市部においても、高齢者を中心に食料品の購入や飲食に不便や苦労を感じる消費者が増加しており、食料品アクセス問題として社会的課題となっています。

内閣府が高齢者を対象に行った調査から、居住している地域で不便に思う点を都市規模別にみると、「日常の買い物に不便」、「交通機関が高齢者には使いにくい、または整備されていない」と回答する割合は大都市から町村になるほど高くなるほか、いずれの都市規模層においても上位項目となっており、移動に不便を感じている高齢者が多いと考えられます(図2-4-10)。



図2-4-11 食料品アクセスマップ(福岡県)

食料品アクセス問題が全国的な広がりをみせつつある中、農林水産省(農林水産政策研究所)は、平成24(2012)年5月、GIS(地理情報システム)を活用した食料品アクセスマップを作成しました(図2-4-11)。食料品アクセスマップとは、2分の1地域メッシュ(約500m四方の区画)という非常に小さな単位ごとに、生鮮品販売店舗から直線距離で500m以上離れている人口割合を推計したものです。本アクセスマップをベースとして、地域ごとの課題が分析され、必要な対策が講じられることが期待されます。

食料品アクセス問題の解決には、民間事業者や地域住民のネットワークを通じた継続的な取組が重要となっています。しかしながら、今後、本格的な高齢社会を迎えるに当たり、食料の安定的な供給に加え、高齢者の健康と栄養問題、地域公共交通の脆弱(ぜいじゃく)化等に対応する観点から、地方公共団体のみならず、国においても関係府省が連携していく必要があります。

 

(食品宅配サービスの広がり)

近年、消費者から電話やファックス等を通じて注文を受け、希望する食品を自宅まで配達する食品宅配サービスが拡大しています。食品宅配サービスの市場規模は、平成18(2006)年度には1兆4,354億円でしたが、平成22(2010)年度は2千億円(17%)増加し1兆6,806億円となる見込みとなっており、今後もその拡大が予測されています(図2-4-12)。

このような中、食品業界の様々な業種において、食品宅配サービスへの対応を強化する動きがみられます。食品宅配サービス市場における業種別構成をみると、そう菜宅配や牛乳宅配がやや減少傾向にある中、生協宅配、宅配ピザ、在宅配食サービス、コンビニ・ネットスーパー宅配はいずれも増加傾向にあり、今後の市場規模も拡大することが見込まれています。中でも、コンビニ・ネットスーパー宅配は、市場全体に占める割合は小さいものの、平成22(2010)年度における市場規模は前年度比77%増の632億円となっており、急速に拡大しています。



日本公庫が消費者を対象に行った調査によると、食品宅配サービスの利用経験は、消費者の48%が「何らかの利用経験がある」と回答しています(図2-4-13)。これを年代別にみると、20歳代では3割程度となっていますが、40歳代では5割、60歳代では6割を占めています。



また、食品宅配サービスを利用する理由をみると、「農家等生産者からの直接配送」や「こだわり食材販売業者の宅配サービス」では、「品質が優れているから」とする割合がそれぞれ59%、46%を占めており、商品の品質の良さを理由とする割合が高くなっています(図2-4-14)。一方、「スーパーやコンビニ等の宅配サービス」では「買い物に出かけずにすむから」とする回答が44%を占めるとともに、「重い食材を運ばずにすむから」とする回答が49%を占めるなど、利便性を理由とする割合が高くなっています。「生協の宅配」では利便性、品質両面を支持する割合が高くなっています。

今後、単身世帯や共働き世帯の増加、高齢化の進行等に伴い、食品宅配サービスの市場は拡大することが予測される中、食品宅配サービスを提供する事業者は、利用者の多様なニーズに的確に対応した展開をしていくことが課題となっています。


(アジアを中心とした海外市場への進出が増加)

日本を除く世界の食の市場規模は、平成21(2009)年の340兆円から平成32(2020)年の680兆円まで倍増すると推計されています(図2-4-15)。特に、近年、所得水準の向上を背景とした食料消費の増大・多様化等が進む中国、インド、ASEAN諸国等のアジアにおいては、平成21(2009)年の82兆円から、平成32(2020)年には229兆円まで3倍に増加すると推計されています。これらの国は我が国と食文化が類似していることから、我が国食品産業のアジア市場におけるビジネスチャンスが拡大しています。



このような中、食品産業のアジアにおける現地法人数は、近年、増加傾向で推移しており、平成17(2005)年の533社から平成23(2011)年の667社まで増加しています(図2-4-16)。この数は、海外展開する食品産業の3分の2を占めており、今後、成長が見込まれるアジア等の海外需要を取り込む動きが加速している状況となっています。



一方、食品産業のアジアを中心とした海外展開の本格化に伴い、食品製造業における海外売上高に占めるアジアの比率も大きく増加しています。食品製造業の現地法人における売上高の推移をみると、アジアを拠点とする現地法人の売上高は、平成17(2005)年度は全体の44%(8,438億円)でしたが、平成23(2011)年度には55%(1兆4,591億円)に達し、平成24(2012)年度には58%(1兆6,429億円)まで上昇することが見込まれています(図2-4-17)。



また、近年は、コンビニエンスストア各社においても、アジアを中心とした海外展開の取組が進展しています。国内の主要コンビニエンスストアの海外店舗数の推移をみると、平成17(2005)年度の2万5千店舗から平成23(2011)年度には4万5千店舗まで増加しています(図2-4-18)。特に、韓国、台湾、タイを中心としたアジア地域の店舗数が多く、海外店舗全体の77%を占めています。今後も、コンビニエンスストア各社による海外展開が進展し、更に店舗数が増加することが見込まれます。



事例:食品産業の海外展開の取組
バンコクにおける店舗の様子
バンコクにおける店舗の様子

国内の外食業界での低価格競争が激しくなる中、和食外食チェーンの「大戸屋(おおとや)ごはん処(どころ)」は、「人々の心と体の健康を促進し、フードサービス業を通じ人類の生成発展に貢献する」という経営理念の下、平成17(2005)年にタイ1号店の海外進出の成功を皮切りに、現在まで台湾、香港、シンガポール、インドネシア、中国、米国と7か国・地域に70店舗以上を出店しています。

中でも、日本のしょうゆやみそに代表される発酵食品による和食文化を世界に伝えるべく、ごはん食という共通の食文化を持つアジアを基点として、急速に店舗数を拡大しています。

食材の調達方法や品質管理を工夫・徹底することで、日本と同じレベルの商品を、現地の高級日本食レストランより安価に提供している点が、現地で行列のできる店として、成長している大きな要因です。しょうゆ、みそはもちろん、味の決め手となるタレ類や、コロッケ等揚げ物用のパン粉、現地で調達できないうどん、そば等は日本から輸出する一方、豚肉や鶏肉等現地で安くかつ品質の高い食材は現地での調達を進めています。

このように、和食店の店舗展開(Made by Japanの取組)により、和食文化が現地に浸透し、バンコクの日系百貨店ではしょうゆやみその販売量が増加するとともに、日系の中食店でも和食の食材の売れ行きが好調となるなど、味の決め手となる素材は日本からの輸出(Made in Japanの取組)が増えています。

今後は、アジアを基点としつつ、欧米での展開も視野に入れています。

 

(国内市場が成熟化する中、食品産業にとってM&Aは重要な経営展開の一つ)

近年、我が国においては、高齢化等による国内市場の成熟化や国際競争の激化等を背景に、企業の経営戦略の一環として、M&A(*1)を通じた業界再編や企業体質の強化、海外事業の強化等が図られています。我が国のM&Aは、独占禁止法の改正を始めとする法的環境の整備等が進められたことから、1990年代後半から国内企業間におけるM&Aを中心に増加しましたが、平成20(2008)年以降はリーマンショックを契機とする金融危機や世界不況等により、M&A全体の件数は減少しました(図2-4-19)。しかしながら、海外に成長基盤を移す日本企業による海外企業のM&A(IN-OUT:日本-外国)は増加しており、特に、平成22(2010)年からは、円高を背景として、その動きが活発化しています。


*1 Mergers and Acquisitionsの略。企業の合併、買収のほか、事業譲渡、株式譲渡等、経営権の移動を伴う提携。


このうち、我が国の食品業界については、2000年代以降、製糖、製粉、製油等の素材型食品企業において同業種間によるM&Aが活発化し、業界再編が進展したほか、パン・菓子、飲料、調味料等の加工型食品企業において異業種間によるM&Aが活発化し、事業領域の拡大や相互補完の取組が進展しました。2000年代後半以降は、飲料企業を中心に海外を対象とした大型のM&A(IN-OUT(日本-外国))が活発化しています。特に、ビールメーカーにおいては、酒類の国内消費量が減少する中、今後の酒類消費拡大が期待される新興国等への事業展開等を目的として、活発なM&Aが行われています。

我が国の食品企業による海外企業のM&A件数をみると、平成18(2006)年の19件以降減少に転じ、平成19(2007)年以降は横ばいで推移していましたが、平成23(2011)年は平成18(2006)年と同水準の19件まで増加しました(図2-4-20)。しかしながら、我が国企業による海外企業のM&A全体に占める割合は、4%前後にとどまっている状況です。

国内市場が成熟化する中、我が国の食品産業の海外展開は、新たな市場の開拓、収益性や経営効率の向上、原料調達力の強化や新商品・サービスの開発等に結び付く可能性があることから、海外企業のM&Aは、今後の経営展開における重要戦略の一つになるものと考えられます。


(食品産業の将来ビジョンに基づく取組の進展)

農林水産省が平成24(2012)年3月に策定した「食品産業の将来ビジョン」では、食品産業がイノベーションの誘発とバリューチェーン(*1)の形成により国内市場を活性化し、海外市場を開拓する際の戦略的視座として、「消費者起点」、「地域起点」、「グローバル起点」の3つを明示し、平成21(2009)年に95兆円だった食品関連産業全体の市場規模を平成32(2020)年までに120兆円に拡大することを官民共通の目標としています。

平成24(2012)年度は、この目標の達成に向けて、平成25(2013)年2月の(株)農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)の設立等、農林漁業の成長産業化に向けた取組を実施するとともに、医食農連携による次世代産業モデルの形成に向け、「医食農連携グランドデザイン」の策定に向けた検討を進めるなど、新たな需要・市場の構築に取り組んでいます(表2-4-4)。


*1 [用語の解説]を参照。

表2-4-4 「食品産業の将来ビジョン」の取組状況


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