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農林水産省

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(1)環境保全に向けた農業の推進


(農業と環境は相互に影響)

農業生産活動は自然循環機能(*1)を有しており、適切な農業生産活動は、農地等において良好な二次的自然環境を形成するとともに、自然環境の保全、良好な景観形成等、環境保全上の多様な機能を発揮する面を有しています(図3-8-1)。

一方、農業資材の不適切な利用や管理等は、環境への負荷や二次的自然環境の劣化を招くなどのおそれがあります。例えば、不適切な施肥は、河川や地下水等の水質汚染・富栄養化を招くおそれがあるほか、温室効果ガスである一酸化二窒素の発生、土壌劣化等、様々な面で環境へ負荷をかけるリスクがあります。


*1 自然界における生物を介在する物質の循環に依存し、かつこれを促進する機能。

図3-8-1 農業の自然循環機能のイメージ

このように、農業と環境は相互に影響を与えています。持続的な農業の実現に向けて、農業の持つ物質循環機能を活かすとともに、生産性との調和に留意しつつ、肥料・農薬の使用等による環境負荷の軽減に配慮した生産を行うことが重要です。このため、農林水産省では、環境保全効果の高い営農活動の導入を推進しています。

(農薬による環境負荷を軽減する防除の推進)

農薬による環境負荷を軽減しつつ、病害虫の発生を抑制する防除体系として総合的病害虫・雑草管理(IPM(*1))があります。IPMとは、病害虫や雑草の発生しにくい環境を作るとともに、病害虫の発生予察情報やほ場の観察により適切な防除の時期を判断し、天敵(生物的防除)や粘着板(物理的防除)等の多様な防除技術を適切に組み合わせて防除を実施するものです。農林水産省では、農薬に依存した防除ではなく、IPMの考え方を採り入れた、従来以上に環境負荷を低減する防除を推進しています。


*1 IPMは、Integrated Pest Managementの略。

事例:施設なす栽培における天敵を利用した防除の実践
熊本県熊本市
大長なすの栽培風景
大長なすの栽培風景

なすの害虫であるアザミウマ類やコナジラミ類の防除に当たっては、農薬散布に多大な労力が必要です。このため、熊本県熊(くま)本(もと)市(し)のJA鹿本大長(かもとおおなが)なす部会(部会員8人、栽培面積約3ha)においては、普及指導員の指導を受けて、同害虫の天敵であるスワルスキーカブリダニ(以下「天敵」という。)を導入した減農薬栽培の取組が進められています。

天敵の導入に当たっては、防虫ネットにより害虫がハウス内に侵入するのを防ぎ、天敵を放飼(ほうし)する前に、天敵に影響の少ない農薬を散布して害虫の密度を抑制しておくこと、天敵が増殖・活動しやすい15℃以上の環境を保つことが重要となっています。

その上で、天敵の利用と合わせ、害虫の発生状況に応じて天敵に影響の少ない農薬を用いて計画的に防除を行った結果、天敵の導入前に比べて、殺虫剤の使用量を4割程度、農薬散布回数を2割以上減らすことができました。

同部会では、引き続き天敵を中心とした防除を実践し、安全・安心な大長なすの生産に取り組んでいきたいと考えています。

 

(エコファーマーの認定件数は着実に増加)

エコファーマーとは、「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律」に基づき、環境と調和のとれた農業生産の確保を図り、農業の健全な発展に寄与することを目的として、土づくりと化学肥料、化学合成農薬の使用低減に一体的に取り組む計画を策定し、都道府県知事から認定を受けた農業者の愛称です。エコファーマーに対しては、環境保全に効果の高い営農活動に取り組んだ場合に支援される環境保全型農業直接支援対策(*1)等の支援措置が講じられています。

エコファーマーの認定件数は、平成24(2012)年3月末時点で21万6千件となっており、伸び率は鈍化しているものの、増加しています(図3-8-2)。平成24(2012)年の認定件数を地域別にみると、前年に比べて東北では3,600件減少しましたが、北陸では7,800件(うち福井県が7,400件)増加しており、全体の増加に大きく寄与しています。


*1 環境保全型農業直接支援対策については第4章第2節「農業・農村の持つ多面的機能の発揮」を参照。

(有機JAS認定ほ場は増加傾向)

環境保全型農業の一環として、有機農業の取組を推進していくことも必要です。有機農業とは、化学肥料や農薬を使用しないこと、遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、環境への負荷をできる限り低減した方法で行う農業です。有機農業のうちJAS法(*1)に基づく生産方法の基準を満たしているものについては、有機農産物のJAS規格認定を受けることができます。有機JAS認定を受けることにより、自ら生産・製造した食品に有機JASマークを貼付して市場に供給することができます。

有機農業の取組状況をみると、有機JASの認定を受けたほ場面積は、平成24(2012)年において田3千ha、畑6千haで耕地面積全体の0.2%となっていますが、国内全体の耕地面積が減少する中、増加傾向で推移しています(表3-8-1)。また、平成23(2011)年度の有機農産物のJAS格付数量は、5万8千tとなっており、品目別では野菜が4万t(69%)と最も多く、次いで米が1万t(17%)、果実が2千t(4%)の順となっています。

農林水産省では、有機農業の更なる普及を図るため、有機農業への参入促進、栽培技術の体系化、有機農産物の理解促進等、地域段階だけでは対応が困難な取組や有機農業に取り組む産地の収益力を向上させるための取組に対して支援を行っています。


*1 正式名称は「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」


事例:自家採種を通じた有機農業の取組
千葉県佐倉市
自家採種した種
自家採種した種

千葉県佐倉市(さくらし)で農業を営む林(はやし)重孝(しげのり)さん(58歳)は、自家採種を通じた有機農業に取り組む野菜農家です。林さんは、昭和52(1977)年、22歳のときに親の後を継いで農業を始めましたが、埼玉県小川町(おがわまち)の金子(かねこ)美登(よしのり)さんの農場で1年間の有機農業の研修を経た後、昭和55(1980)年から本格的に野菜づくりを始めました。当初は、害虫等の被害により収穫は惨憺(さんたん)たる状況でしたが、4年から5年経つうちに虫を食べる天敵(テントウムシやカマキリ)が戻ってくるなど、農薬や化学肥料がなくても野菜が生産できることを実感しました。

自家採種に取り組むようになったのは、市販の野菜種子が化学肥料や農薬の使用を前提に品種改良されており、有機農業には適さないのではないかと考えたことによります。自家採種において交雑を防ぐための人工交配や選抜を重ねるうちに、これらの野菜は土が肥え過ぎず、やせ気味の土のほうがおいしく育つことも分かってきました。また、市販の種子は、野菜の大きさや形が流通に適すること、色の鮮やかさを求める消費者ニーズ等に沿って品種改良されますが、林さんは食べておいしい野菜を作ることを目標として、交雑を防ぐための人工交配や選抜に取り組んできました。

現在、林さんの野菜の栽培面積は1.8haで、年間80品目、150品種の野菜を生産していますが、このうち自家採種の野菜は60品種であり、野菜の栽培面積の3分の2を占めています。また、収穫した野菜や加工品を地元の消費者(約100世帯)に軽トラックで配送しています。

林さんは新規就農者への研修にも熱心で、現在4人の若者を研修生として受け入れています。これまで林さんが受け入れた研修生は数十人ですが、それぞれ地元の農業に取り組んでいます。2か月に1度行われる農園見学会には、消費者や農業を志す若者が訪れ、熱心に林さんの話に聞き入っています。

 

(農薬・化学肥料の使用量は減少傾向)

こうした環境保全型農業の取組の成果は、農薬・化学肥料の使用実績にも現れています。平成22(2010)年における化学肥料(窒素肥料)の利用状況について、10a当たりの需要量をみると、平成2(1990)年の12.0kgに比べて2.7kg減少し、9.3kgになっています。また、平成23(2011)年における10a当たりの農薬の出荷量は、平成2(1990)年の9.5kgに比べて4.0kg減少し、5.6kgになっており、化学肥料の需要量と農薬の出荷量は、それぞれ減少傾向で推移しています(図3-8-3)。



なお、化学肥料と農薬の使用量を諸外国と比較すると、化学肥料については、日本の使用量は259kg/haと諸外国と比べて大きな差はありません。一方、農薬については、農薬使用量の計算方法や農薬の定義が国によって異なるため単純な比較はできませんが、我が国の農薬使用量は欧州各国に比べて多くなっています(図3-8-4)。この背景には、温暖多雨で、病害虫・雑草の発生が多く、農薬を使用しない場合の減収や品質低下が大きいといった実情があります。




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