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農林水産省

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(3)鳥獣被害の現状と対策


(鳥獣被害額は減少したものの、シカによる被害額は増加)

野生鳥獣による農作物被害額は、近年、獣類の被害を中心として増加傾向で推移していましたが、平成23(2011)年度における農作物被害額は、226億円と前年度に比べて13億円(6%)減少しています(図4-1-9)。また、被害面積も、10万haと前年に比べて7千ha(6%)減少しています。

被害額の内訳をみると、獣類によるものが8割、鳥類によるものが2割を占めていますが、平成23(2011)年度の獣類による被害額をみると、イノシシによる被害額が前年度に比べて約6億円減少したのに対し、シカによる被害額が83億円で前年度と比べて5億円(7%)増加しています。

また、地域別にみると、北海道、九州、関東・東山、近畿等で大きくなっています(図4-1-10)。

このような中、農作物被害を及ぼす野生獣類であるシカ、イノシシについては、近年、捕獲数が増加傾向で推移しており、特に有害鳥獣捕獲等による捕獲が大きく増加しています(図4-1-11)。



一方、捕獲の担い手である狩猟者数をみると、平成2(1990)年度における狩猟免許所持者数は29万人でしたが、その数は年々減少し、平成21(2009)年度においては18万6千人となっています(図4-1-12)。また、狩猟者のうち、60歳以上の割合は、平成2(1990)年度の20%から平成21(2009)年度には61%まで上昇しており、狩猟者の高齢化が進んでいます。

鳥獣被害が増加する背景としては、農山漁村の過疎化や高齢化が進行し、耕作放棄地が増加したことや、里山等における住民の活動が減少したこと等が挙げられます。また、狩猟者の減少・高齢化に伴い、狩猟による捕獲圧が低下したことや、里山、森林管理の粗放化等により、野生鳥獣の生息環境が変化したこと等が考えられます。

鳥獣被害は農業者の営農意欲を低下させるなどにより、耕作放棄地を増加させる一因となっていますが、耕作放棄地の増加が更なる鳥獣被害を招くという悪循環を生じさせており、被害額として数字に表れる以上に農村の暮らしに深刻な影響を及ぼしています。

このため、総合的な鳥獣被害防止対策等への取組により、鳥獣被害の軽減を図ることが重要です。

 

(鳥獣被害を防止するための新たな仕組み)

鳥獣による被害防止対策を効果的に推進するため、平成24(2012)年3月に鳥獣被害防止特別措置法(*1)が改正されました。これにより、市町村長は、自らが行う被害防止施策のみでは対象鳥獣による被害を十分に防止することが困難であると認める場合は、都道府県知事に対して必要な措置を講ずるよう要請することが可能となったほか、対象鳥獣の捕獲等を始めとする被害防止施策の実施に要する費用に対して、国等が財政上の措置を講ずることが明記されました(図4-1-13)。

また、一定要件を満たす(1)鳥獣被害対策実施隊員(*2)、(2)平成26(2014)年12月3日までに鳥獣被害対策実施隊員になることが見込まれる捕獲従事者については、銃刀法(*3)に基づく猟銃の所持許可の更新等における技能講習を免除すること等の規定が追加されました。


*1 正式名称は、「鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律」
*2 被害防止対策への積極的な参加が見込まれる者のうちから市町村長が指名又は任命するもの。
*3 正式名称は、「銃砲刀剣類所持等取締法」

図4-1-13 鳥獣被害防止特別措置法の概要

(鳥獣被害対策の取組状況)

鳥獣被害の深刻化・広域化に対応する観点から、鳥獣被害防止特別措置法に基づく被害防止計画を市町村が作成し、地域ぐるみで鳥獣被害対策に向けた取組が推進されています。被害防止に取り組む市町村数は着実に増加しており、平成24(2012)年4月における計画作成市町村数は1,195まで増加しており、鳥獣被害が認められる全市町村(約1,500)の8割程度となっています(図4-1-14)。

各市町村は、被害防止計画に基づき、捕獲、侵入防止、環境整備を組み合わせた総合的な対策を実施しています。具体的には、鳥獣被害対策実施隊等による鳥獣捕獲や追い払いを始めとした地域ぐるみの被害防止活動や侵入防止柵の整備、地域リーダーの育成、被害防止や獣肉の利活用等にかかる人材育成に取り組んでいます。

また、鳥獣被害防止の技術開発として、効果的な捕獲技術の開発、鳥獣被害の少ない営農管理手法の研究や鳥獣の侵入経路遮断技術の開発も進めているほか、GIS(地理情報システム)を用いて被害の発生し易い場所の絞込みを行ったり、GPS(衛星利用測位システム)首輪による獣類の行動範囲・パターンの把握等による鳥獣対策の構築も検討されています。このほか、都道府県域を越える複数の市町村が連携して行う広域的な鳥獣被害対策への取組もみられます。

このような中、被害防止対策に積極的に参加し、鳥獣の捕獲等を適正かつ効果的に行うことができる者として鳥獣被害対策実施隊の活躍が期待されています。しかしながら、鳥獣被害対策実施隊を設置している市町村数は521(平成24(2012)年10月末現在)と、被害防止計画を作成している全市町村の5割弱にとどまっており、今後、その増加が求められています。

 
事例:地方公共団体による鳥獣被害対策の取組
高知県香美市、徳島県那賀町
捕獲技術を学ぶ研修会
捕獲技術を学ぶ研修会

高知県香美市(かみし)では、平成13(2001)年頃からシカによる農作物の被害が出始めました。さらに、植林による自然林の減少やシカによる自然林の樹皮剥ぎによる立ち枯れの増加等により森林環境が悪化し、他の獣類(イノシシ等)による被害も増加してきました。

このため、香美市は、平成17(2005)年からシカの捕獲報償金の支払いを開始し、現在では、サル、イノシシ等へも支払範囲を広げています。また、狩猟者を育成するため、事前講習費や免許取得(第一種銃猟免許のみ)に係る経費の助成、射撃技術の向上を目指した射撃講習会等も行っています。現在、香美市では登録された221人の狩猟者により、獣類の捕獲圧を年々強めており、例えば、シカは年間1,700頭程度捕獲しています。また、平成24(2012)年度からは地域ぐるみで捕獲圧を高めるモデル事業(*)を実施しています。

一方、防護による対策も進めており、防護柵の設置に当たり、必要な資材に対して一定割合の補助を行っています。しかしながら、防護柵や電気柵を設置しても維持管理が不適切で効果が現れていない地区もあるため、講習会等による啓発や先進事例の紹介により個々の農家意識を高めて、柵の設置から維持管理まで、他人任せにならないよう、集落ぐるみの取組を指導しています。

また、鳥獣被害には県境がないことから、平成19(2007)年、隣接する徳島県那賀町(なかちょう)と連携し「阿佐(あさ)地域鳥獣被害防止広域対策協議会」を設立し、共同で研修会を実施する中、それぞれの取組についての情報交換を行っています。獣害対策では、それぞれが独自の対策を実施している状況でしたが、研修会等を通じてお互いの取組方針や施策を理解し合う中、対策も捕獲と防護を組み合わせた総合的なものにシフトしています。


* 地域の協働により「わな猟」を実施、狩猟者1人に対し、複数の免許不所持者(農家、地域住民)がチームを組んで捕獲作業に取り組む。

事例:集落共通意識で農地を守る鳥獣被害総合防止対策
佐賀県太良町
耕作放棄地での牛の放牧による緩衝帯の設置
耕作放棄地での
牛の放牧による緩衝帯の設置

佐賀県太良町伊福区(たらちょういふくく)は中山間地域が大半を占める山合いの地域です。

伊福区では、従来よりイノシシ等による農作物の被害が発生していましたが、平成12(2000)年頃より、その被害が山間部から集落のある平坦地にも広がってきたため、個々の農家が行う被害対策から地区が一体となった対策に住民の意識転換を図り、平成13(2001)年度、中山間地域総合整備事業により鳥獣侵入防止柵を地区内の水田全域(11.4km)に設置し、住民が主体となって鳥獣侵入防止柵の適正管理に取り組むこととしました。

また、中山間地域等直接支払制度を活用し、地区内に獣害対策担当者を設置し、狩猟免許登録経費、箱罠の餌代、罠修理費等の経費を支出するほか、地区で5人の狩猟免許保有者を育成し、捕獲体制を構築しました。

佐賀県からイノシシ被害対策モデル集落に指定された平成19(2007)年度からは、地区内の被害状況を把握するために被害マップを作成するとともに、イノシシ等の隠れ家となる竹林の伐採や餌となる収穫残さの適切な処理等に取り組んでいます。

これらの取組に加えて、耕作放棄地に飼料作物を作付けし、牛を放牧することにより、イノシシ等と農地の間に緩衝帯を設置するとともに、鳥獣侵入防止柵を適正に管理するための点検会の開催や点検結果の全戸回覧等による適正管理の周知徹底を図っています。さらに、狩猟免許保有者を中心に罠による捕獲を強化したほか、捕獲技術向上のための研修会の開催や箱罠の改良にも取り組んでいます。

このような中、「自分たちの農地は自分たちで守り、イノシシは自分たちで捕獲する」という共通意識が定着し、住民が主体的に鳥獣被害対策に取り組んだ結果、伊福区では農業共済の対象となるような被害はなくなっています。

一方、伊福区以外の地区でも、鳥獣被害対策に対する考え方が変わってきており、各地区の住民が主体となったイノシシの捕獲等がみられるようになりました。この結果、太良町内における有害鳥獣の捕獲頭数は年々増加し、被害額は減少傾向となっています。

 

(捕獲した鳥獣を地域資源として活用)

鳥獣被害を防止するとともに、捕獲した鳥獣を地域資源として収益に転換していくため、捕獲した鳥獣を食材として有効利用することが重要です。

しかしながら、野生鳥獣の肉は、一般的になじみが薄いため、食材として活用するためには、レストラン、旅館、ホテル等に広く需要を開拓していく必要があります。さらに、捕獲の際に個体を傷付けない高い技術が必要であるほか、捕獲後の放血、解体後の冷凍・冷蔵方法といった捕獲後の処理が品質に大きく影響するなどの課題もあります。

このため、農林水産省では、(1)捕獲した鳥獣の加工処理施設の整備、(2)捕獲した鳥獣を用いた商品の開発、販売・流通の経路の確立等の取組を支援するほか、食肉利用の取組を全国的に推進する観点から、衛生管理・品質確保等に係るマニュアルの作成・配布や技術研修等を実施しています。

このような中、食肉加工品やレシピの開発等、獣類を地域資源として活用する取組が全国各地で行われています。また、親しみやすい商品名の工夫やジビエ(狩猟鳥獣肉)料理としての活用等を通じて認知度の向上に向けた取組も行われています。


事例:鳥獣被害対策を収益に転換する取組
愛知県名古屋市
フレンチレストランでのジビエ料理試食会
フレンチレストランでの
ジビエ料理試食会

愛知県名古屋市(なごやし)のNPO法人ボランタリーネイバーズ(平成13(2001)年設立)は、鳥獣被害対策に取り組む集落や団体に対して、捕獲したイノシシやシカ等を地域資源として有効に活用するための支援を行っています。

同法人は、イノシシ等の肉をジビエ料理の食材としてレストラン等に供給するための販路開拓やイノシシ等の皮を工芸品の材料として活用するための商品開発等を行うことにより、鳥獣被害対策に取り組む集落等とレストランや皮革加工業者等をつなぐ役割を担っています。

これまで、捕獲されたイノシシ等は埋設処分されることがほとんどでしたが、新たな販路開拓や商品開発を行うことにより、捕獲したイノシシ等が商品となり、ビジネスや地域の活性化に発展する転機となるものです。

一方、イノシシ等を活用したジビエ料理や工芸品等は一般の消費者にとってなじみが薄いことから、同法人は県内の高級ホテルのシェフによる料理コンテストやジビエ料理を提供するレストランを巡るスタンプラリーの実施、マラソン大会等各種イベントにおけるPR活動、一般消費者向けの料理教室の開催、レシピの開発等を積極的に実施しています。

これらの取組の結果、同法人の活動は、新聞やテレビに取り上げられる機会が多くなり、ジビエ料理等の認知度が向上してきました。今後は、ジビエ料理の普及に対応した食材の安定的供給や地産地消の拡大に努めていく考えです。

 


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