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農林水産省

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(2)農業と教育・福祉・観光等との連携


(子供の農業・農村体験の取組)

子供に農業・農村体験をさせることは、農業への理解と関心や食と食生活への興味を高めるのみならず、農村地域の人々との交流を通じて、人間関係を構築する力が身につき、人間性の向上にも効果があるといわれています(*1)。

子供が農業・農村に関する体験を行う主な取組として、一定期間(例えば1週間程度)の宿泊体験活動を行う「子ども農山漁村交流プロジェクト」や、日帰り等で作付けや収穫作業等を体験する「教育ファーム」があります。

「子ども農山漁村交流プロジェクト」は、平成20(2008)年度から農林水産省、文部科学省、総務省の連携の下で取り組まれており、子供が農林漁家に宿泊することにより、農山漁村の生活や農林漁業を体験し、食の大切さを学んでいます。このプロジェクトは、平成24(2012)年度までに、43道府県141の受入モデル地域を中心とした全国の受入地域において実施されています。

また、「教育ファーム」は、自然の恩恵や食に関わる人々の様々な生活への理解を深めること等を目的として、教育機関(小・中学校、幼稚園、保育園)や農業漁業者等が主体となり開設した農場において、一連の農作業等(*2)の体験を提供する取組となっています。

農林水産省が全国市町村を対象に行った調査によると、平成22(2010)年度において、全市区町村のうち「市区町村内に教育ファームの取組をおこなっている主体がある」と答えた市区町村の割合は8割(1,384市町村)を占めています。

一方、社団法人農山漁村文化協会が作成した「教育ファーム推進事業報告書(*3)」によると、農業体験と併せて「生き物探し」を体験した小学生は、農業体験のみ実施した小学生と比べて、自然や生き物への興味・関心や観察力、自然や生き物を大切にする気持ちが高まる傾向がみられます(図4-3-10)。また、農業体験と併せて「草取り」を体験した中学生は、農業体験のみ実施した中学生と比べ、人と協力する姿勢や汗を流して働くことの大切さがより実感されており、農業体験と関連した体験を併せて行うことで、学習の効果が一層高まると考えられます。

さらに、子供を指導する生産者側も、指導回数が増すことにより、「地域が活性化する」、「農業への理解が広がる」と認識する割合が高くなるとともに、「食の安全に対する意識が高まった」、「農業に誇りを持つようになった」、「つきあいが広がった」、「コミュニティや消費者との関係を大切にするようになった」等の効果への認識が高まる傾向にあります。


*1 農林水産政策研究所「子どもを対象とした農林漁家宿泊体験による農山漁村振興の実態と課題」(平成22(2010)年5月公表)
*2 一連の農作業等とは、農林漁業者等の実際に業を営んでいる者による指導を受けて、同一人物(子供)が同一作物について2つ以上の作業を2日間以上の期間をかけて行うこと。
*3 (社)農山漁村文化協会「教育ファーム推進事業調査報告書」(平成22(2010)年3月公表)


このような中、農林漁家の生きがいの充実や地域の活性化を図るため、地域住民や地方公共団体、観光事業者等が連携し、修学旅行生等をターゲットとした農林漁業の体験型学習を展開したり、農林漁家の女性や高齢者が民家泊の受入先となり、生業に根ざす生活・食文化等を子供たちに伝授する取組等がみられます。

北海道の松前町(まつまえちょう)ツーリズム推進協議会では、大学やNPOと連携し、農林漁業等の地域産業や伝統・文化を活かし、するめ加工体験や松前杉での木工づくり体験、北海道史の学習等の子供の教育体験プログラムを開発・整備してきました。また、地域関係者と定期的に勉強会・連絡会を開催し、地域ぐるみで子供を受入れるための体制作りを進めることにより、農林水産業を教育に活かした取組を地域全体で推進しています。

(健康や精神の安定面からみた農業・農村)

農山漁村における安らぎや癒(い)やしの提供、農作業等の体験を通じた精神の安定や健康の維持・増進等、農山漁村・農林水産業の有する機能に対する期待が高まっています。

内閣府が全国の55歳以上の男女を対象に行った調査によると、職業別にみた退職希望年齢については、「働けるうちはいつまでも働く」と考えている人の割合は農林漁業者が最も高く72%を占めています(図4-3-11)。また、職業別にみた過去1か月の気分について、農林漁業者は、「どうにもならないくらい、気分が落ち込んでしまう」と感じる割合は17%と最も低く、「落ち着いて、穏やかな気分」をいつも感じていた割合は53%と最も高いなど、農林漁業が健康や精神の安定面に寄与している状況がうかがえます(図4-3-12)。




農林水産省が市民農園・家庭菜園の農作業実践者と非実践者とを対象として行った調査によると、現在、生きがい(喜びや楽しみ)を「十分感じている」割合は、農作業実践者(36%)は、非実践者(28%)を8ポイント上回っています(図4-3-13)。

また、地域の人たちとのつながりについては、「強い方だと思う」、「どちらかといえば強い方だと思う」割合は、農作業実践者(38%)が非実践者(22%)を16ポイント上回っています。

さらに、農作業の健康への効果については、農作業実践者の約9割が「ある」、「ややある」と回答したのに対し、非実践者は約7割にとどまっています。



このような中、農作物等に接することによる癒(い)やし・安らぎの効果や、農作業を行うことによる健康の維持・増進の効果等に着目し、農山漁村を教育、医療・介護の場として活用する取組が広がっています。

近年では、野菜や草花等を育てることを通じて心身を癒(い)やしていく園芸療法が心身を患う子供たち等の治療に用いられるほか、障害者や高齢者等のリハビリに活用されています。

また、福祉団体が農業活動に取り組み、作付けや収穫等の農作業を通じて収入を確保したり、入所者の身体機能の向上を図る取組も広がっています。


事例:園芸療法士として花とのふれあいの機会を提供する取組
愛媛県松前町
竹中伸枝氏
竹中伸枝氏

愛媛県松前町(まさきちょう)の竹中伸枝(たけなかのぶえ)さんは、実家が経営する「竹中園芸」でシクラメン等の花を栽培しながら、園芸療法士として活動しています。

竹中さんが園芸療法を知ったきっかけは、平成10(1998)年に農業研修でスイスを訪れた際、知的障害の子供が搾乳体験で牛とふれあい喜ぶ姿を見て、園芸でも同様の取組ができるのではないかと感じたことでした。帰国後、英国式の園芸療法を半年間学んだ後、兵庫県立淡路景観園芸学校の園芸療法課程の第一期生として1年間学び、「兵庫県園芸療法士」の資格を習得しました。

現在は、心臓病の子供とその家族を対象に、花とのふれあいを通じて楽しみや季節を感じることができる1回完結型の園芸教室等を開催しています。園芸教室は、患者が季節を感じたり、花づくりの達成感を味わったり、何より褒めてもらうことができる場として好評を得ているほか、看病等でストレスを感じている家族のストレス解消や交流の場にもなっています。

将来は、高齢者も障害者も園芸を楽しむことができるような支援をしながら、多くの方が生涯にわたって園芸に親しむことができる環境を整えていきたいと考えています。

 

(農業生産法人等による医療・福祉等との連携)

社会福祉法人が農業生産法人等の農地を借り受けて、作物の栽培や販売等に取り組む活動が増加する一方、農業生産法人等が障害者に適した作業を用意して障害者の雇用を受け入れたり、高齢者の働きやすい環境を整備し、高齢者の雇用拡大と健康や生きがいの向上に結び付けようとする取組がみられます。また、農業と医療の連携した取組も全国各地で展開されています。

例えば、香川県では、農業者や農業者団体(農協)、障害者施設と協力しながら、障害者と農業者とのマッチングを実施しています。農業の人手不足に対応する形で、障害者の働く場を確保することにより、農業分野における障害者の就労を支援しています。

また、北海道滝川市(たきがわし)の公益財団法人そらぷちキッズキャンプは、難病と戦う子供たちのための医療ケア付きキャンプ場を整備し、豊かな自然環境や基幹産業である農業を活用し、自然療法、レクリエーション療法に取り組んでいます。さらに、北海道増毛町(ましけちょう)のパプヤの里は、農業体験を通してハンディキャップを持つ人の社会復帰やストレス解消等を図るリハビリ農園を運営するとともに、医療関係者との交流を促進し、園芸療法を含む医療実習の場としても農園を活用しています。

このほか、鳥取県鳥取市(とっとりし)の株式会社LASSIC(ラシック)のように農業・農村の持つ癒(い)やし・安らぎ機能を活かし、日常生活におけるストレスや強い不安、悩みを抱えた労働者を、田舎暮らしや農業体験を行う中で改善する取組もあります。

東日本大震災の被災地である宮城県南三陸町(みなみさんりくちょう)では、仮設住宅の入居者等が利用できる農園を開設し、農作業を通じた被災者の心のケアを行っています。その際、農作業の指導に当たっては農村の高齢者も活躍しています。

岩手県立高田病院では、東日本大震災による長期の仮設住宅での生活に伴い、生活不活発病や生きがい喪失によるうつ状態の発症を予防するため、仮設住宅の入居者に対して、農作業を促すことにより、心身の健康維持管理に取り組んでいます。病院が行ったアンケートの結果では、農作業に参加したことにより、生活充実感や生きる意欲の改善が図られたことが明らかになっています。


事例:農業・園芸と福祉との連携による取組
京都府京都市
障害者福祉施設の皆さんの収穫祭
障害者福祉施設の
皆さんの収穫祭

京都府京都市(きょうとし)の「NPO法人京(きょう)の園芸福祉研究会」理事長の溝川長雄(みぞかわおさお)さんは、市民農園の普及や園芸福祉士の育成等を通じて、農業の持つ健康増進や癒(い)やし機能を活用した福祉活動に取り組んでいます。

溝川さんは、平成15(2003)年に地元の園芸福祉に関わる有志を集めて同研究会を設立し、その後、平成22(2010)年には、農業体験農園「すこやかファームおとわ」(京都市山科区(やましなく))を開設し、京都府内の園芸福祉士(200人程度)の活動拠点としました。同農園は、一般市民(50人)のほか、京都市内の障害者福祉施設3団体が利用しており、各団体は週に1度、5~10人が農作業を行っています。通常、各団体の入所(通所)者は、終日屋内で作業を行っているため、農園での作業を楽しみにしています。また、収穫した野菜をバザーで販売することにより、やりがいの創出にもつながっています。さらに、同農園で行われる様々な交流会や共同で行う農作業を通じて、地域住民との交流も図られています。

今後、同研究会は、園芸福祉士の育成のみならず、園芸福祉士を福祉関連施設・団体等に斡旋する活動を展開するほか、農業関係者、福祉関係者、教育関係者といった各担当分野を超えた官・民ネットワーク作りの中核となることを目指しています。

 

(農業と観光との連携)

農業と観光との連携による取組として、観光農園や農家レストランがあります。観光農園は、入園料や土産物の販売等による所得の増大のみならず、観光農園訪問者が周辺地域の施設へ立ち寄ること等による地域経済への波及が期待できます。また、農家レストランは、自らが生産した農作物や地域の食材を調理し、地域ならではの料理を提供することにより、農産物の高付加価値化や地域文化の提唱等が行えます。

観光農園や農家レストランを経営している農業経営体数は、平成17(2005)年から平成22(2010年)までの間に、観光農園は16%、農家レストランは51%増加しています。

これを農業地域類型別にみると、観光農園は、平地農業地域(19.6%)における増加率が大きくなっています。一方、農家レストランは、中間農業地域(63.2%)における増加率が最も大きくなっています(表4-3-2)。



また、平成22(2010)年における観光農園や農家レストランを経営している農業経営体数の割合を農業地域類型別にみると、平地農業地域と中間農業地域を合わせると、ともに65%前後を占めていますが、観光農園は農家レストランと比べて都市的地域で展開されている割合が高く、農家レストランは観光農園と比べて山間農業地域の割合が高くなっています(図4-3-14)。

観光農園や農家レストランに取り組む農業者は、収入の増大を実感している者も多く(*1)、6次産業化(*2)による農業所得向上のための取組の一つとして、全国各地で様々な取組がみられます(*3)。


*1 農林水産省「食料・農業・農村及び水産業・水産物に関する意識・意向調査」(平成24(2012)年1~2月実施)
*2 [用語の解説]を参照。


事例:農業と観光との連携による取組
広島県三次市
観光農園での果物狩り
観光農園での果物狩り

広島県三次市(みよしし)の(有)平田(ひらた)観光農園は、同県中北部の中山間地域に位置しています。同社は昭和59(1984)年に設立され、果樹を主体とした観光農園を経営するとともに、ドライフルーツ、ジャム、ジュースや調味料等の加工品の製造・販売、農家レストランの経営、産地直売等、多角的な事業を展開しています。

設立当初の品目は、りんごとぶどうのみでしたが、その後、おうとう、もも、くり、いちご等の新植を進め、年間を通じて果物狩りを楽しむことができます。現在、栽培している果樹は14品目、150品種を数え、フルーツのテーマパークを形成しています。

観光農園の来園者は、日帰りの家族が多く、年間の来園者数は16万人を超えるなど、地域における観光拠点となっています。

また、同社では観光農園を経営する一方、地域の果樹農家と加工組合の組織化やドライフルーツ会社の設立に尽力するなど、地域と連携した農産物加工品の販売等を進めています。

このような取組により、同社の平田克明(ひらたかつあき)会長は、観光庁の観光カリスマ百選に選定され、地元の廃校を活用した農村体験塾をNPO法人で開校するなど、農業と観光との連携を通じた地域の活性化に貢献しています。

 


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