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農林水産省

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第4節 都市農業の保全と振興


(都市農業が有する多様な役割)

都市農業(都市及びその周辺の地域における農業)は、消費地に近いという利点を活かし、個人への直売や直売所等を通じた新鮮な農産物の供給という重要な役割を果たしています。また、このような役割に加え、建築物の密集する都市における貴重な空間として災害時の防災空間を確保する役割、農業体験・交流活動の場や心やすらぐ緑地空間を提供する役割、都市住民の農業への理解を醸成する役割等、多様な役割を果たしています(図4-4-1)。


図4-4-1 都市農業の多様な役割

特に、東日本大震災を契機として、都市農地の防災空間としての機能に関心が高まっており、国土交通省が市街化区域内農地を保有する地方公共団体を対象として実施したアンケート調査によると、市街化区域内の農地において、今後、まちづくりの中で活用したいと考えている機能については、防災機能を挙げる地方公共団体が最も多く、次いで市街地緑地機能となっています(図4-4-2)。



このような中、農地の防災機能を活かした取組として防災協力農地への取組が増加しています。これは、災害が発生したとき、その農地を防災空間として利用する内容の協定を地方自治体が農業関係者等と自主的に締結するもので、平成24(2012)年3月末現在で、三大都市圏特定市(*1)のうち7都府県50自治体において取り組まれています。

防災協力農地は、災害時における避難経路の一部となったり、指定避難所にたどり着けないときの一時的な避難場所となるなど、協定内容に応じた様々な役割が期待されています。


*1 東京都の特別区、三大都市圏(首都圏、近畿圏、中部圏)にある政令指定都市及び既成市街地、近郊整備地帯等に所在する市。

事例:災害時における生産緑地の活用の取組
東京都小平市
農家の協力による「災害協力農地」
農家の協力による
「災害協力農地」

東京都小平市(こだいらし)とJA東京むさしは、平成24(2012)年9月1日に「災害時における生産緑地の活用と生鮮食料品の調達に関する協定」を締結し、大災害が発生した場合、一時的な緊急避難場所や生鮮食料品の提供を行うため、市内の生産緑地を「災害協力農地」として活用する取組を行っています。

同市と同JAは、平成15(2003)年に同様の災害協定を締結していましたが、旧協定においては、農地全般を災害協力農地の対象としたため、農地の転用や売却による混乱が発生しました。このため、新協定では、協力農地が継続的に活用できるよう対象農地を生産緑地に限定し、各農家に協力を依頼しました。

新協定では、東日本大震災による防災意識の高まりもあり、平成25(2013)年3月末現在、202件の同意が得られています。旧協定では、同意数が9件程度であったことを踏まえると関心の高まりがうかがえます。

今後は、市内の対象農家の約半数に当たる300件の同意を目標に農家へのPRを進めるとともに、市の防災計画への位置付けや地域住民との連携をとった防災訓練の実施等、市民への周知についての検討が進められています。

 

(都市農業を取り巻く状況)

地方公共団体等が都市住民を対象に実施した都市農業・都市農地に関する各種調査をみると、都市の中で食料生産を継続し、農地を保全することを望む割合が高くなっています(*1)。

例えば、東京都が行ったアンケート調査では、東京都内の主業的な野菜生産者の売上げに占める直売等の割合が75%を占めているなど(*2)、地元の畑で採れた野菜を安心・安全なものとして評価し、積極的に購入する消費者が増えており、都市における住民と農業との関わりは着実に深化しています。

このように、住民が都市地域に残る農業との関わりを深めていく中、都市住民と都市農地が共生するまちづくりを進めていくことが重要となってきています。

生活協同組合連合会が農業に興味を有する学生を対象に行った調査をみると、農業に興味を抱く契機となったものは、「実際の体験」43%、「テレビ番組」42%、「学校の授業」31%、「親」30%となっており、農業体験やテレビ番組が農業に興味を持つきっかけとなったという回答の割合が高くなっています(*3)。

また、農林水産省が普段農作業をしていない人に対して実施したアンケート調査によると、農作業に取り組むのに必要なインセンティブとして、「市民農園が自宅付近に設置される」が約半数を占めています(図4-4-3)。

農業に接する機会の少ない都市部の学生等にとっては、学校の授業における農業体験は貴重な体験の一つとなるほか、テレビや学校の授業等で農業に関心を持った学生等が、手軽に土や作物に触れることができるような環境を教育の一環として整備したり、都市住民等にとって利便性の高い市民農園を整備することは、農業に対する関心を高め、理解を深めることにもつながります。


*1 東京都「都政モニターアンケート結果」(平成21(2009)年6月公表)
*2 東京都「野菜生産農家の出荷・販売に関する実態調査」(平成24(2012)年3月公表)
*3 パルシステム生活協同組合連合会「農業に興味がある学生の実態調査」(平成24(2012)年5月公表)

事例:地域で都市農業・都市農地を支える取組
大阪府東大阪市

農地の8割以上が市街化区域内という典型的な都市農業地域にある大阪府東大阪市(ひがしおおさかし)では、平成21(2009)年5月から、地場農産物を買うことで地元の農地を守ってもらう「ファームマイレージ2」(*)運動をスタートさせました。

この取組は、地元で生産された「エコ農産物」(農薬や化学肥料の使用を抑えた府認証の農産物等)を購入し、貼り付けてあるエコラベルを48枚集めると、300円の割引と農地の守り手になったという感謝状が贈られるというものです。ほかにも感謝状を多く集めた人を対象に農業体験ツアーを開催するなど、消費者と生産者をつなぐ取組も併せて行っています。

地元産のエコ農産物を販売している直売所
地元産のエコ農産物を
販売している直売所

平成25(2013)年3月末現在、感謝状を贈った方は延べ5千人を超え、エコ農産物の栽培面積や売上等も年々増加しています。また、ラベルに記載されている連絡先により、消費者からの感謝や応援メッセージが生産者に直接届けられ、それが生産意欲の向上につながっています。

市では、今後も消費者ニーズに応じ、地元での収穫体験、地元野菜を使った料理コンテスト等、直売所に来ない人まで対象を広げたイベント等を企画し、地産地消を進めていきたいとしています。


* 「ファーム」には育てる場、「2」には距離×距離=面積(2乗)という意味が隠れています。

(都市部で進む市民農園の開設)

市民農園は、主として都市住民がレクリエーション等を目的として農作業を行う施設をいいます。その形態としては、利用者が農園の開設者から小面積に区分けされた農地を借り受けて農作業を行うもの(貸付け方式)のほかに、農地を借り受けずに、農園の開設者である農業者の指導を受けながら、植付けから収穫までの一連の農作業を体験するもの(農園利用方式)があり、初心者から経験者まで様々な人が利用しています。特に、農園利用方式については、農家の丁寧な指導・交流の下で行われる本格的な農業体験を通じて、農園が都市住民や消費者の農業理解を広げるための貴重な場となっています。

このように、農業体験を通じて、健康増進や生きがいづくり、相互のふれあいを求める都市住民のニーズが高まる中、市民農園の開設数は、都市的地域を中心に増加傾向にあり、平成13(2001)年度の2,676か所から平成23(2011)年度の3,968か所まで約1.5倍に増加しています(図4-4-4)。



市民農園の開設数は増加傾向にありますが、平成23(2011)年度の市民農園の空き区画に対する応募率は、全国平均で1.2倍となっています。特に大都市で応募倍率が高くなっており、東京23区では2.6倍、名古屋市3.0倍、大阪市3.3倍となっています。このため、都市部においては、利用者を市区内に居住する住民に限定している市民農園が多くなっており、今後、更なる開設に向けた取組を推進していくことが重要です。

また、市民農園の開設主体としては、地方公共団体が最も多く、全体の59%を占めており、次いで農業者が20%、農業協同組合が13%となっています(図4-4-5)。平成17(2005)年の特定農地貸付法(*1)の改正後は、地方公共団体や農業協同組合以外の多様な主体による市民農園の開設が可能となっており、農業者やNPO、企業によるものが増加しています。

これらの市民農園の中には、開設者による指導やマニュアルの提供を行う、収穫祭等のイベントを開催し地域住民との交流を図るなど特別な取組を行う農園もみられます。


*1 正式名称は、「特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律」

(「農」のある暮らしづくりの推進)

社会の高齢化・成熟化が進み国民の意識が多様化する中、都市で暮らす人々の中では、「農」のある暮らしを楽しみたいとのニーズが増加し、また、東日本大震災を経て、防災の観点からも都市農地を維持・活用すべきとの主張が聞かれるようになっています。

このような中、全国各都市及びその近接地域において、遊水機能の優れた水田の保全活動、学童の農業体験を通じた食育の推進、障害者雇用農園の整備等の「農」のある暮らしづくりに向けた取組が展開しています(図4-4-6)。


図4-4-6 「農」のある暮らしづくりに向けた取組

事例:小学校における体験農園の取組
東京都三鷹市
学校農園でのだいこんの収穫
学校農園でのだいこんの収穫

東京都三鷹市(みたかし)では 、児童が直接土に親しむことにより、農業に対する理解を深めることを目的として、平成4(1992)年から「学校農園事業」を実施しています。

この事業では、市の教育委員会が農協を通じて、市内小学校の農業体験に協力してもらえる指導農家を探し、その後、指導農家と学校が話し合い、作付けを行う作物や体験学習内容等を決めています。指導農家は様々な工夫をしつつ、時には保護者を巻き込みながら、児童に生命の大切さを伝えています。平成24(2012)年度現在、市内15の全ての小学校で学校農園が開設され、全学年が農園体験を行っています(*)。

このうち、中原(なかはら)小学校の取組をみると、指導農家である麻生(あさお)農園の協力の下、じゃがいも、落花生、だいこん等の農産物の種まきや収穫体験を行い、収穫物は児童が持ち帰ったり、給食の食材に活用しています。

学校農園事業は、都市農地の活用・保全に貢献するのみならず、児童にとっては、畑で実際に作物に触れたり、指導農家の方に作物の育て方等の工夫を聞くといった、農業体験を通じて、新たな発見や啓発に結び付いています。また、生命の尊さ、食物の大切さを学び、次代を担う子供たちへの食育活動の一環として大きな役割を果たしています。


* 13校は農園主(指導農家)の農地、2校は市有地等で開催。

事例:官民連携による市民農園を通じた都市と農村の交流
福岡県糸島市
大勢の市民が参加する収穫祭
大勢の市民が参加する
収穫祭

福岡県糸島市(いとしまし)の伊都(いと)貸農園は、民間主導による貸農園として、糸島市(旧前原市(まえばるし))が平成8(1996)年に開設した糸島市農業公園「ファームパーク伊都国(いとこく)」に隣接する形で開設しました。

糸島市は、民間主導による市民農園やみかんのオーナー園、いちご狩り園、水稲の田植えや収穫体験等の取組に支援を行っており、その支援の一つとして、農業公園がイベント等を行う際には、伊都貸農園と協同で実施し、一方、貸農園の利用者には農業公園の農具や施設を開放し、貸農園の利便性向上を図っています。

伊都貸農園は、福岡市(ふくおかし)の中心部から車で30分という都市近郊に位置していますが、山や川の自然に恵まれた田園地域にあることから、福岡市等の都市住民に人気が高く、平成8(1996)年に242区画でオープンしましたが、その後増設を重ね、現在では409区画まで拡大し、利用率は100%となっています。

同貸農園の利用者の約7割は福岡市民が占めており、貸農園は都市住民との交流拠点となっています。

また、貸農園利用者の多くは、糸島市が農業公園において開催する農業指導、土作り講習会、安心・安全制度の説明会等の講習会や農業体験等のイベントに参加し、農業技術を向上させるとともに、糸島市の農業について理解を深めています。さらに、貸農園利用者は、農業公園内の直売所を始め、近隣の直売所等で地元の農産物を購入するなど、地域の活性化にも貢献しています。

 


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