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農林水産省

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(2)農地の集積・集約化に向けた農地中間管理機構の始動


(耕地面積は年々減少)

平成26(2014)年の耕地面積は、前年と比べて1万9千ha減少し、451万8千haとなっており、近年は緩やかな減少傾向が継続しています(図2-1-3)。

また、平成25(2013)年の作付(栽培)延べ面積は416万7千haとなっており、水陸稲が38%、飼肥料作物が24%を占めています。耕地利用率の推移をみると、近年は92%前後で推移しており、平成25(2013)年の耕地利用率は91.8%と前年並みとなりました。



(荒廃農地の現状と対策)

市町村及び農業委員会が現状では耕作できないと判断した荒廃農地(*1)(客観ベース)の面積は、平成25(2013)年において27万3千haあり、そのうち再生利用可能なものが13万8千ha、再生利用困難なものが13万5千haとなっています(表2-1-1)。

一方、耕作放棄地の面積は、高齢農業者のリタイア等に伴い増加傾向にあります。過去1年以上作付けせず、農地所有者が再び耕作する考えのない耕作放棄地(主観ベース)の面積についてみると、平成22(2010)年は39万6千haとなっています(図2-1-4)。また、耕作放棄地面積率も上昇しており、平成22(2010)年では10.6%となっています。このような中、特に、土地持ち非農家(*2)が所有する耕作放棄地面積は、平成22(2010)年では耕作放棄地面積全体の半分を占めています。


*1、2 [用語の解説]を参照

このような地域の人と農地の問題を一体的に解決していくために、集落や地域における徹底的な話合いを通じて、地域農業を担う経営体や農地利用の在り方等を示した「人・農地プラン」の作成と定期的な見直しを推進しています。特に担い手が十分にいない地域では、信頼できる農地の中間的受皿である農地中間管理機構(*3)の活用により、地域の農地を任せられる者を見いだし、荒廃農地の発生抑制や農地集積につなげることが期待されます。

平成25(2013)年12月の「農地法」改正では、農地中間管理機構を活用して遊休農地(*4)の発生防止・解消を円滑に進められるよう対策が強化されました。具体的には、<1>まだ遊休農地になっていなくても、賃貸借の終了や耕作者の死亡・転居等により耕作をする者のいなくなった農地等について遊休農地対策の対象とする、<2>農業委員会(*5)が遊休農地の所有者に対して、農地中間管理機構に貸す意思があるかどうかを含めて具体的な利用意向調査を行い、同機構に貸し付ける方向に誘導する、<3>遊休農地の所有者が意向表明どおり実行しない場合は、農業委員会が農地中間管理機構との協議を勧告し、最終的に都道府県知事の裁定により同機構が利用権を取得することができることとし、<4>所有者が不明の遊休農地や共有持分の過半を有する者が確知できない遊休農地については、公告制度により、農地中間管理機構が利用権を取得できることとしました。

なお、耕作放棄地再生利用緊急対策交付金による荒廃農地の再生・利用に向けた取組等が行われており、平成25(2013)年において再生された荒廃農地の面積は1万5千haとなっています。


*4 [用語の解説]を参照

事例:耕作放棄地への放牧による肉用牛繁殖経営

栃木県茂木町
放牧前
放牧前
放牧後
放牧後
瀬尾亮さん
瀬尾亮さん

栃木県茂木町(もてぎまち)の瀬尾ファーム代表の瀬尾亮(せお まこと)さんは、平成14(2002)年に妻の実家を継ぐ形で就農し、耕作放棄地を活用した肉用牛繁殖経営を行っています。山林76ha、水田1ha、畑20aを所有するしいたけ栽培を主とする経営でしたが、耕作地が狭く山に囲まれた耕作放棄地が多い地域での今後の経営を考え、和牛繁殖農家を目指し、子牛1頭の飼養から開始しました。現在では、近隣の休耕田や耕作放棄地等を複数の地権者から借り受け、規模を拡大し、繁殖和牛と子牛を合計35頭飼養し、放牧面積3.6haのほか、0.9haを採草地として利用しています。

放牧は、繁殖雌牛の妊娠鑑定後から分娩約1か月前まで行い、3日に1回程度、牛の健康状態及び放牧地の状況を見回っています。放牧は、主に5月から10月下旬頃まで行い、放牧時は放牧草のみを採食させ、飼料費の節減につなげています。加えて、牛は自由に運動することで健康になり、分娩間隔が短くなるなど繁殖雌牛としての供用期間も長くなっています。また、牛舎で飼養している牛へのきめ細かな管理が可能となり受胎率も向上し、ふん尿処理量が減少するという効果も出ています。

耕作放棄地の活用に当たっては、湿地対策として排水溝を掘ったり、飲水確保のために太陽光発電揚水システムを活用するなど、放牧しやすい環境づくりに努力してきました。また、農地の借受けに関しては、地域や地方公共団体、農協の理解や協力を得ることにより拡大することができ、中山間地域の耕作放棄地の解消に貢献しています。

今後、放牧場で分娩と育成を行うことによる放牧頭数の増加に加え、放牧面積の拡大、放牧期間の延長等に取り組むことを検討しています。

 

(農地流動化は着実に進展)

農地の権利移動(流動化)については、「農地法」第3条に基づく所有権の移転等に加え、平成5(1993)年の「農業経営基盤強化促進法」の制定(認定農業者制度の創設)等により、利用権(賃借権等)の設定を中心として、毎年着実に進展しています(図2-1-5)。)



(農地面積の半分は担い手が利用

このような中、農地面積に占める担い手の利用面積は、平成5(1993)年の認定農業者制度の創設以降、認定農業者を対象とした施策の効果もあり、着実に増加してきましたが、平成22(2010)年から認定農業者を要件としない施策が実行されたこと等から、近年は横ばいで推移しています(図2-1-6)。平成26(2014)年における担い手への農地利用集積面積は221万haとなっており、農地面積の5割を利用している状況にあります。



(農地中間管理機構の始動)

望ましい農業構造の姿として、今後10年間で担い手が利用する面積を全農地面積の8割に引き上げていくことが必要です。

担い手への農地の集積・集約化を進めるため、公的な農地の中間的受皿となる農地中間管理機構を都道府県段階に整備する「農地中間管理事業の推進に関する法律」が平成26(2014)年3月に施行され、同年11月までに47都道府県において農地中間管理機構が指定されました。

農地中間管理機構は、地域内の分散し錯綜(さくそう)した農地利用を整理し、担い手ごとに農地を集約化する必要がある場合に、出し手から借り受けた農地をまとめて担い手に貸し付けるほか、必要な場合には農地の大区画化等の条件整備を行い、担い手がまとまりのある形で農地を利用できるよう配慮して貸し付けることとしています。

農林水産省では、農業者向けパンフレットの配布等により制度を広く周知するとともに、全都道府県の農地中間管理機構の役員等に対する研修会を開催し、優良事例である熊本県の紹介等の実施や都道府県別ヒアリング、主要県の現地調査と個別指導等を実施し、各都道府県の農地中間管理機構の体制整備を推進しています。


事例:熊本県における農地中間管理機構の取組

熊本県

熊本県では、担い手への農地集積や受皿となる営農組織の育成を推進するため、熊本県「ふるさと・農地未来づくり運動」推進本部を設置し、市町村等の関係機関の総力を結集する体制を整備しています。推進本部の本部長は知事が務め、知事自ら新聞やラジオ等を利用して「知事に農地を預けていただきたい」と呼びかけるなど、知事の強力なリーダーシップの下、本活動を推進しています。

これまでに徹底した話合い活動を行う農地集積重点地区を64地区指定し、話合い活動のコーディネートや農地のマッチング等の現場で実際に活動する人員を約40人配置しています。農地集積を行うための事業費として、国庫補助事業を活用するほか、県独自の予算も措置しています。重点地区における農地中間管理機構を活用・連携している地域の動きとして、<1>100haを超える規模の大規模生産法人を設立し、効率的な生産体制を作る取組、<2>基盤整備事業の受益地内のほとんどの農地を農地中間管理機構が借り受け、担い手にまとまった農地を貸し付け、担い手への集積・集約化を図る取組、<3>高齢化の進む果樹農家の農地を参入企業が活用する取組等が進行しています。


基盤整備後の借受農地のイメージ
 

(農地情報公開システムの整備)

農地中間管理機構を活用し、農地の集積・集約化を進めるためには、各地域の農地の利用状況等をデータベース化し、これを電子地図に表示し、誰でも見られるようにすることが重要です。

このため、平成25(2013)年の「農地法」改正において、農業委員会は農地台帳及び電子地図を整備し、インターネット等で公表することが義務付けられました。各地域の農地の利用状況等を誰でも見ることができる農地情報公開システムの整備を進め、平成27(2015)年4月から稼働を開始しました(図2-1-7)。今後、本システムを「人・農地プラン」の話合い等にも活用し、農地の集積・集約化を進めていくこととしています。


図2-1-7 農地情報の公開画面のイメージ


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